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No.889語彙力を伸ばす絵本の読み聞かせ方 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/02/12(Sun) 13:25

 親の子どもへの関わり方は、幼児期や小学校になってからの語彙力や学力にどう関係しているのかを調査した研究があります。その中で、絵本を母親に読んでもらい、その読み聞かせ方の違いがどう子どもの語彙力などに反映していくのかということが検討されています。(『しつけスタイルは学力基盤力の形成に影響するか』2012,浜野隆、内田伸子)
 
 今日は、その具体的な事例がについて紹介してみます。取り上げている絵本は『きつねのおきゃくさま』(あまんきみこ)。これは小2国語(教育出版)でも取り上げられています(添付ファイル参照)。
 あらすじは、お腹をすかせて歩いていた一匹のきつねが、痩せたひよこに出会います。きつねはそのひよこをすぐに食べるのではなく、「ふとらせてからたべよう」と決め、家に連れて帰ります。しかし、ひよこの「きつねおにいちゃん」という呼びかけに対して、きつねの心は揺らぎ、ひよこを大切に育てます。同じ様にきつねは、あひるとうさぎも育てることになります。ひよこ、あひる、うさぎが順調に「ふとってきた」頃、くろくも山からおおかみがやってきます。きつねは3匹を守ろうと勇敢に戦い、おおかみを追い払います。しかし、その夜、きつねは恥ずかしそうに笑って死んでいきます。
 
 この話をそれぞれタイプの異なるお母さんに、わが子に読み聞かせてもらいます。
まず最初のタイプの親の読み聞かせは以下のようです。Mは母、Cは子どもです。

タイプ1
 M 読み聞かせ終了後:分かった?(Cを見る)
M きつねさん,ほんとはどうしたかったんだっけ?(Cを見る)
C 食べたかった(Mを見て,小さな声で)
Mだけど,その前に戦って(ページに戻す)死んじゃったんだって。ほら。(Cを見る)
C なんで戦って?(Mを見て,小さな声で)
Mんとね(その前のページに戻す),おおかみって,きつねより全然大きいでしょ。
C うん(絵を見ている)
Mだから強いの。見て(おおかみを指さして),だって,こんな牙だってすごいんだよ,爪だって。
C ちょっと生えてる(きつねの爪を指さす)
Mえ,でも、だってこんなにすごいんだよ(おおかみの爪を指さしてCを見る)
C (黙る)

 もう一つのタイプの親の例は、以下のようです。
タイプ2
M きつねさん、死んじゃった(Cを見る)
C (Mと目を見合わせて悲しそうな顔をする)
M みんなを守るためにね…ゆうきりんりんで戦ったから
C (ページを戻して3ページ前からもう一度見ていく)
Mどうしてどうして? きつねさん、こんなぼろぼろになって死んじゃった
C (Mと一緒にページを持ってめくる)

 これら二つのタイプの違う親の読み聞かせについて研究ではこう解説されています。
「最初の例は、物語の余韻にひたる間もなく、母親がお話に対する理解を問うような質問を投げかける場面である。そして、子どもからの質問に対しては、説得的に説明している様子が見られる。子どもの「ちょっと生えている」というささやかな反論も、母親は自分の考えを押して、子どもを黙らせてしまう様子が見られる。」
 
 これに対して二番目の例ではこう解説されています。
「この事例は、子どもが、主人公のきつねが死んでしまうという、予想もしていなかった出来事に直面した場面のものである。母親が、子どもの驚きや悲しみの気持ちを受け止め、共感していることが窺える。そして、答えを明示してしまうのではなく、子どもが納得して次へ進むまで、十分に考える時間を与え、共感的に待つ様子が見られる。」

 さて、これら二つのタイプですが、最初のタイプの親と後のタイプとでは、子どもの内面に育つものは違ってきます。親が自分に共感してくれ、理解してくれるとき、子どもは自由に考え、頭も働かせます。そして、その結果として知識を広げ思考する力も高めます。このようなよい循環をつくることが結果的に語彙力や学力を高めることにつながると考えられます。
 実際、3000人近い幼児の語彙力、学力の調査の結果は、後者の親のタイプの子どものほうが、豊かな語彙と読み書きの力が高いことが数字の上でも立証されています(この調査は、韓国、中国、ベトナム、モンゴルなどとの国際比較によっても同じ結果が得られました)。

二つのタイプの違い - きいじい(掲示板管理者)   2017/02/12(Sun) 13:32 No.890
 研究の中では、こんな例も紹介されています。例1がタイプ2、例2がタイプ1です。

親のしつけスタイルの違い - きいじい(掲示板管理者)   2017/02/12(Sun) 13:48 No.892
 この研究で明らかになったことは、親の関わり方として「共有型」と「強制型」があり、「共有型」の親に育てられた子のほうが、語彙力が高いという結果でした(ファイル)。
 「絵本の読み聞かせ方」のタイプも、実はこの「共有型」と「強制型」の違いです。「共有型」の親は子どものペースに寄り添い、子どもの言おうとしていることを待ち、そこに共感しています。決して自分の考えを先に押しつけることはしていません。

子どもは楽しいこと、好きなことは自分から進んでやりたがります。子どもにとって遊びとは自発的で頭がいきいきと活動している状態です。無理やりやらされていることには頭も働かない。実際、脳の偏桃体は、「面白い!」「楽しい!」と感じるとワーキングメモリーに情報伝達物質が送られ、海馬が活性化し、情報を記憶貯蔵庫にどんどん蓄えることができると言われています。このようなよい循環をつくることが結果的に語彙力や学力を高めることにつながると考えられます。

No.884口話併用手話の利点は? 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/01/30(Mon) 09:23

 前回、手話から獲得し始めた高度難聴の子どもでも、やや遅れて音声言語の獲得が始まると書きました。その子たちの音声言語での発語状況を保護者に尋ねてみると、異口同音に「手話で身についた言葉が音声を伴って出てきている」ということでした。
 そこで、前回例に挙げたA児の1歳10か月時の発語をきくと、以下のような50語の単語が表出されているということでした。

☆固有名詞(2〜3音節の人の名前)6語
☆挨拶・呼びかけの言葉、一般名詞 26語
「おしまい、バイバイ、どうぞ、ちょうだい、オッケー、いいよ、大丈夫、ごめん、ありがとう、おーい、おめでとう、遊ぼう、おいで、ママ、先生、おっぱい、あいうえお、耳、鼻、目、口、蓋、皮、順番、まる、ばつ」
☆動詞・形容詞 18語
「ほしい、大きい、同じ、違う、ある、ない、痛い、怖い、可愛い、冷たい、待って、青い、赤い、黄色、赤、ピンク、黒、白(色名はモノの状態なのでとりあえず形容詞に分類)」

 A児の場合、まず視覚言語としての手話で単語を獲得し(表出は語彙表チェックで190語なので理解語を含めるとその2倍はあるでしょう)、意味・概念が伴っている単語の中から、固有名詞、あいさつや呼びかけなど日常生活の中で頻度多く使う語が音声に多く変わっているらしいこともわかります。

 一般に二言語習得者は情報を複数の形態に符号化できるため、情報を理解したり記憶したりする認知能力が、単一言語使用者に比べて優れている(井上智義,2016)と言われていますが、口話併用手話の場合は、聴覚からの音声語をききながら、手話(視覚)を同時に見るという特徴があるため、意味・概念をすでに獲得した手話から得ながら、同時に入力される曖昧な音韻情報を音声言語に変換し、一つの単語を手話と音声言語で二重に符号化しているのだろうと思われます。
 そして、こうした二重符号化ができると、単語や文の記憶に両面からアプローチできる利点があるため、文の記憶テストにも好成績を収めることができるのだろうと思います(「聴覚障害者のリハーサル方略」長南浩人・井上智義、1998)。

 以上のことから、最初に手話を獲得して、そののち音声言語獲得に至るという口話併用手話の言語獲得方略のメリットが見えてくるのではないかと思います。

No.878手話は口話(発語)を促進する? 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/01/21(Sat) 22:24

これまで手話を使うと口話が身につかなくなると言われてきました。それは違うなあという実感はあっても、「では、実証できるデータはあるの?」と言われても示せないままでした(勿論、手話が口話習得を妨害するというデータも存在しないのですが)。

しかし、手話を早期から導入している、ある聾学校の最近の保護者育児記録をみているうちに、「手話を使ったから音声の発語が促されているのでは?」と考えるしかない事例がいくつか存在することに最近気づきました。その中から2例、ファイルで示してみました。

まず、添付ファイル1ですが、いずれも高度難聴の聴者家庭の幼児で、生後半年前後から聾学校乳幼児相談に通い、まず手話の使用からスタートしています。父親も協力的で手話教室に通ったり、家族皆で手話を使うよう努力している家庭もあります。
記録が十分ではないのですが、2名のうち90dBの子の喃語は「手指喃語」、80dBの子は音声の「規準喃語」が出ていたようです。しかし、初語はいずれも手話です。その初語は、「アンパンマン」「電気」などで、いずれもグーやパーの手型が使われていて、幼児にも表出しやすい手型が使われる傾向があることがわかります。
初語表出以降、それぞれ個人差はあっても、ちゃんと手話での「語彙爆発」の時期があり、表出手話の語彙数は表のとおりです。語彙爆発について17名の聴幼児を調査した最近の研究(2012)では、聴児の語彙爆発期における単語表出速度1日あたり0.83語ですが、それに対して、A児は0.93語です(B児はデータが不足)。毎日、1語の割合で手話単語が身についていっているということが推測されます(ただ、これは語彙チェック表によるチェック数なので実際にはそれ以上と思われます)。

手話は口話(発語)を促進する? - きいじい(掲示板管理者)   2017/01/21(Sat) 22:32 No.879
さて、音声言語の表出についてですが、これは添付ファイル2です。
 B児(90dB)の例ですが、手話でどんどんことばを獲得していく過程で、1歳を過ぎてから音声での発語も出始めます。特徴的なのは、手話で獲得している語の日本語の単語だということです。これはどういうことでしょうか? 
 
 これはあくまで仮説にすぎないのですが、言語を身につけていく時に、B児は見たものをまず手話という視覚言語で身につけていっており、例えば母親が「バスに乗るよ」という手話をしたら、それを見たB児の頭には、これまで経験したバスに関するイメージが浮かぶということでしょう。そうした頭の中にある単語のファイルが増していくと、単語と単語の間にもいろいろな関連性がついていきます。例えば「バス」のファイルには人が沢山乗っているけれど、「トラック」にはそうではなく荷物が載っているとか。単語と単語の間にネットワークが作られ、荷物を載せる車は「バス」とは言わないこともわかってきて、「バス」しか知らなかったときの「バス」のファイルより「トラック」を知ったあとの「バス」のファイルのほうが概念の豊かさが増しているわけです。語彙が爆発的に増加するとこうした単語と単語とのネットワークもどんどん作られていきます。
 そこに「/バス/」という音声からの情報がもう一つ加わってきて、視覚情報と聴覚情報が結合し、これは同じ「バス」の概念を表しているようだ、ということがわかってきたということではないでしょうか?
 この結合は、すでに知っている(つまり概念としてもっている)「バス」について起こっていて、知らないもの・ことについてはまだできていないというところがポイントではないかと思います。
 
 ちなみに、聴覚・音声の立場からの研究(加我ほか2000)では6か月以前補聴開始した4名(平均聴力100dB)は、規準喃語表出の平均が14か月ということですから、初語の表出はさらにそれ以後ということだと思います。つまり、あいまいな入力の音声ではどうしても音声の初語は遅くなるということだと思います。手話は口話を妨げると考えて音声だけで言語獲得をめざすよりは、手話から入って手話言語やものごとの概念をまず獲得し、それを音声に結び付けていくほうが音声言語獲得にもかえって早いのでないかという気がします。
 今後、検討していきたい問題です。

No.8650歳難聴児はどのように言語を獲得するか? 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/01/08(Sun) 14:26

新年おめでとうございます。このブログを書くのも久しぶりになってしまいました。
 
実は年末に、ある大学の授業の中で、その授業を受けている聴覚障害学生に幼い頃からの体験談を話してもらいました。
 その話の中で、聴覚障害が発見された2歳頃のことをお母さんにきいてもらい、その話をしてくれたのですが、彼は小さい頃からカンもよく日常生活の中で通じなくて困ったという経験はお母さん自身あまりなく、「いつまでもことばが出ないのはちょっと遅いかも?」と思って病院に行き、2歳前にわかったということでした。お母さんはとても冷静で理知的な方だったようで、「ああ、そういうことだったのか。でも、コミュニケーションが通じているし、なんとかなるんじゃないかな」と思われたそうです。正直に、すごい方だなと思いました。

 さて、ここからが今日話したいことなのですが、私が考えたことは、おそらく1歳頃までの言語発達この時期を「前言語期」(=乳幼児期後半から初語獲得あたりまで。6か月〜1歳前後)と言いますが、この段階はきっと順調に育っていたのではないかということです。
 もう少し詳しく言うと、言語が出るまでにはさまざまな感覚機能(聴・視・嗅・触・運動感覚)の発達や人とのかかわりの発達、知的機能の発達などそれまでは独自に発達していた機能が、このあたりでそれぞれの発達が関連しあって乳幼児期後半期(6か月以降)の子どもの生活やあそびといった動作・行動に統合化されて現れてきます。そして、それが、「象徴機能」の発達の結果として「言語」の獲得(初語)に結びつくわけですが、こうした初語表出の前提になる発達はきっと普通にあったのではないかということです。だからお母さんは「子どもと通じている」という感覚をもち、ある意味安心しておられたのだろうということです。

 しかし、聴覚障害乳幼児の前言語期における言語発達の様相を記述した文献資料は残念ながらほとんどありません(調べた限り皆無でした。この時期は聴覚補償がメインテーマなのでしょう)。そこで、ある聾学校乳幼児相談に通っている1〜2歳児5名の育児記録を借用し、その発達の様相を抜き出してみました。そうしたら5名とも前言語期における言語獲得につながる発達的な指標はちゃんと出ていたのです。そして、手話の初語が1歳前後に出ていることもわかりました。ここでは100dB重度難聴の子と50dB中等度難聴の子の例を紹介します(添付ファイル1,2)が、50dBでも初語が手話というのは、家庭で音声と併用して手話を積極的に使っているからで、音声より手話のほうが獲得時期としてはやはり早いということでしょう(音声だけの場合、音声言語での初語は中等度難聴でも1歳後半になることが多く、聴覚からの入力だけで発語まで至るにはそれだけ負荷が大きいということでしょう)。

 添付ファイル(A児・高度難聴)
 聴覚障害児の言語発達で大事なことは、まず、親子でしっかりと関係ができているかどうかです。子どもが母親を好きであれば、親のすることをしっかりと見てくれます。親子でいっしょに生活や遊びを楽しむためには、まず見てくれるということが大前提です(聞こえない子は見ることで人と関わりさまざまなことを学んでいきますが、視覚の特徴は一方向的で暗闇では使えず意図的な注意が必要だからです)。例に示したA児の5か月の記録から、子がよく親に視線を向けているのがよくわかります。そして、親子の関係はやがて親が指さしているモノを見る(8か月)。そして自分でも指さしてそれを親と共有するという様子がみられ(11か月)、子・親・モノとの「三項関係」ができていることがわかります。伝え合う関係です。同じモノを注視すること(共同注視)ができないと言葉を教えることはできませんから、三項関係というのは言語獲得の前提です。
 
 次に、認知・象徴機能ですが、ものごとを記憶し、それがイメージとして残るようになると、例えば「トーマス」という母親がたまたまやった手話(この時点で手話も少しずつ理解するようになっている)から、〈そうだ、ぼくのトーマスどこにあったっけ?〉と思い出し、となりの部屋にとってくる(7か月)などの行動が出てきます。また、写真をみて以前の記憶と照合したりもできるようになります。
 
 さらに、お母さんの手話をよく見て真似(同時模倣)したり(母との関係ができているから見るという側面もあります)、誰かのやったことを記憶し、そのイメージに従って真似をしてみたり(遅延模倣)、手話ではないけれど手話に似たひとりごと(手話喃語かも?)も出るようになり(10か月)、そして10か月での手話の初語に繋がっています。

中等度難聴児の言語獲得は? - きいじい(掲示板管理者)   2017/01/08(Sun) 14:30 No.866
添付ファイル下(中等度難聴)
 B児は中等度難聴です。通常、聴力50dBでは補聴器のみで音声言語中心でいくと思いますが、この家庭では手話も使っています。50dBといってもこの時期は補聴器を装用してやっと音声が入り始めた時期なので、音への反応はあっても、その音がまだことばとして理解できているわけではありません。しかし、音は確実に入っており、B児は9か月で音声による喃語が出ています。この点で、重度難聴児が手話喃語に行くのとは異なり、意味的に通じる手話が先行しながらも音声も並行していることがわかります。
 B児の場合も初語は手話で、犬を見つけて/ イヌ/の手話をしています(1さい1か月)。きこえる子でも初語よりも前に、「バイバイ」とか「いただきます」などの動作による表現が先行しますから、ましてきこえがまだまだ十分でない中等度難聴児に、その動作表現の延長線上に手話という言語の獲得があったとしてもなんら不思議ではありません。B児の場合は、やがて音声での表出も出てくるのではと予想され、手話と口話を併用する手話になっていくのではと予想されます(中等度難聴児の場合はこのような手話・口話併用型が多いです)。
 
 さて、最初の聴覚障害大学生の話に戻りますが、この時代はまだ手話が使われていない時代です。安定的な母子関係が成立し三項関係やイメージの獲得もでき、日常生活でのルーチンなやりとりは身振り動作や具体的な行動としてでできており、お母さんもとくに問題を感じられなかったのだろうと思います。また、ことばはなくても子どもは頭の中にもっているイメージを操作して遅延模倣があったり、見立てあそびなどもそれなりにできていたのだろうとも思います。ですから言語獲得の前提条件はクリアしていたと思います。ただ、当時は手話がなかったために初語にはつながるまでには至らなかった。その時期は1年ほどずれ込むになったわけですが、本人の言葉の覚えもよく、保護者も安定して前向きに対処できたことがその後の言語発達を順調に推し進め、最終的には大学進学に至る日本語力・学力の習得につながったのではないかと思います。

No.849「動詞の活用」楽しんで勉強しています 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2016/12/21(Wed) 20:34

ある地方の聾学校の先生から以下のようなメールをいただきました。このようなメールをいただくと本当にうれしくて、ああ、やっぱり教材(添付ファイル1「絵でわかる動詞の活用」を使用)を作ってよかったなと励まされます。

「私が担任している高学年の子どもは日本語力の厳しい子ですが、2学期後半から動詞の活用の学習に入りました。活用のルールが分かり、楽しそうに学習しています。例文で助詞も一緒に学ぶと、動詞を活用させた短文は、正しく書けることが多いです。日常の日記の中でも使わせていきたいと思っています。間違えてしまうのは、書きたいことが膨らんで、3語文が4語文・・・と増えたときに、名詞や助詞で間違えてしまうことが多いです。スモールステップで取り組んでいきたいと思います。何より、今まで書くことに対して苦手意識のかたまりのようだった子が、楽しそうに宿題を催促してくれているのが、私にとっても夢のようです。」

 日本語で最も重要な品詞が動詞です。なぜなら、文は動詞を「土台」にして、その上に名詞という「柱」や「屋根」があり、その柱や屋根を支えたりつないだりする助詞や接続詞があったり、壁や窓にあたる修飾句や副詞があったりする構造になっているからです。
(添付ファイル2)

 ですが、きこえない子に一番難しいのが実はこの動詞であり、助詞です。動詞の難しさは複雑に活用すること、助詞の難しさは文の中でしか身につけることができないからです。

 成人の人たちの文の基本的な誤りのほとんどは動詞と助詞です。残念なことですが、過去の聴覚障害教育ではここがきちんと指導できていなかったということになります。小中高の自立活動・国語の時間をトータルすると実に2000時間以上。そう考えると聴覚障害教育ってきこえない人たちにとって一体なんだったんだろうと真剣に反省しなければならないと思います(添付ファイル3)
 
 もう一度言い換えると、きこえない子たちの文法指導の柱は“動詞と助詞”であり、動詞と助詞が正しく使えるようになると、文の誤りはかなり少なくなります。ここは、教科書以前の段階の大事な所なので、ぜひ、自立活動や国語の指導の中で小学部のうちにしっかり取り組んでほしいところです。

日本語の文はこういう構造になっている - きいじい(掲示板管理者)   2016/12/21(Wed) 20:39 No.850
このような構造図にすると、全ての名詞・句が最後の文末の動詞にかかっていることがよくわかる。

成人の人たちの文の誤りも動詞と助詞 - きいじい(掲示板管理者)   2016/12/21(Wed) 20:51 No.851
 日本の聾教育100年のうち後半50年は(聴覚)口話法でした。しかし、残念ながらそうした方法では日本語の読み書きの力は育ちませんでした(もちろん西川はま子のような特殊事例も存在します。特殊事例というのは、3歳より徹底した父親による個別指導を受け、就学以降は近江兄弟社社長夫人一柳女史宅に住み、当時の上流階級における個人指導や家庭教師による指導を受けたという意味で、当時の一般庶民が通った集団による口話指導とは比較にならないからです)

西川はま子の手紙 - きいじい(掲示板管理者)   2016/12/21(Wed) 21:13 No.852
 西川はま子について書いたついでにはま子の達筆ぶりがうかがわれる手紙のコピーを掲載しておきます。これは、今では竹細工で世界的に有名になられた杉田静山先生への西川はま子からの手紙のコピーです(昭和20年代)。3年前、杉田先生に西川はま子についてのインタビューに行ったときにいただいたものです。文の誤りどころか字も本当にきれいで、きこえない子の可能性は、幼少期からの教育によってこんなにも変わるのだということの証明のようなものです。

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