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No.910卒業シーズン〜年長さんは小学生ですね 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/03/19(Sun) 10:41

 卒業シーズンですね。聾学校幼稚部や幼稚園・保育園などに通っていた年長さんたちはいよいよ小学部や小学校に進級するわけですね。その年長さんという時期は、聾教育の中では「5歳の坂」と言って、生活言語(いわゆる日常会話・コミュニケーションのためのことば)から学習言語(考える・学ぶための言葉)への言葉の発達の面でのレベルアップが望まれる時期と言われてきました。そこで今日は、いくつかの例とチェックリストを紹介してみますので、関わっておられる年長さんがおられましたら、ちょっとチェックしてみていただけるとよいのではないでしょうか。
 以下に、いくつかのことばの発達のチェックポイントと保護者の育児記録から該当する例をあげてみます(例には年中児の例も含まれています)。 

(1)過去の経験を順番を追って話したり「どう思ったか、感じたか」など、感情や印象が話せる。
(*「今、ここ」でのことではなく、出来事を思い出しながら自分の頭で順序立てて話せるということです。この力は作文を書くときなどの前提になる力です)

(例)「学校であったことをこと細かに話してくれる。今日は友達とふざけていてテーブルの上の物が落ち、先生に叱られたことを動作を交えて話す。」

(2)物語など場面を離れた話が理解できる。
(*過去・現在・未来という時間の認識もなんとなくわかり、語られることをきいてイメージできる力です。日本語の語彙・文法力だけでなく、その物語に関連する背景知識(スキーマ)がないと話をきいていても物語の内容を理解できません)

(例)「毎日、絵本を読むのを楽しみにしている。最近は『桃太郎』『浦島太郎』『こぶとりじいさん』などの昔話に凝っている。」

(3)ことばでことばの説明を求める。
(*ことばでことばを説明するとは、要するに学校での授業場面を思い出してみて下さい。先生がことばを使ってその授業の内容をいろいろと説明したり質問したりしますね。先生は「ことばでことばを説明」したはずです。子どもは、4、5歳頃になると「けっこんって何?」とか「今なんて話していたの?」などことばで大人に説明を求める時期が始まります。この力が前提になって、ことばでことばを説明するという思考・学習のための言葉が育っていきます。

(例)「最近、親の話によく割り込んできたり、『フリコメサギってなに?』などと質問をすることが多い。」

(4)ことば遊びができる
(*ことばを頭の中で操作する力です。ことばを説明できる力はこうしたことば遊びの中でも育ちます。例えば「赤くて、丸くて、食べるもので、木になるものは何?」という「クイズ」の問題には、「りんごって何?」という質問に対する答えがちゃんと含まれていますね)

(例)「絵日記に書くことがないとき、しりとりあそびやさかさことば、反対言葉など、ことば遊びをやっている。絵日記より楽しいらしい。」

(6)集団の話し合いに参加し、自分の考えをいう
(*こういう力が育つためにはまずその前提に子ども同士で自由に会話できる言葉が必要です。音声言語だけでやりとりする通常の幼稚園や保育園ではなかなか育ちません。口話法の聾学校でも先生が交通整理しないと難しい。しかし、小さい時から手話で会話していると、子ども同士でやりとりする力が育ちます)

(例)「給食の時、クラスの友達が通常の小学校に行くと聞き、『その学校の校長先生は手話ができるの?手話がなくてもその学校に行くの?』と友達にきいていた。」

(7)絵本を読んで理解し、手話で表現できる
(*手話を自然言語として獲得し、絵本に書かれている日本語の文を理解できるようになっていれば、子どもが自分で文を読んでそれを手話で表すことができるようになります。手話に変換できていれば日本語を理解して読んでいることもわかります。

(例)「今日は私(母)が忙しかったので、きこえない年少の妹に『はじめてのおるすばん』や『3びきのやぎのガラガラドン』などを手話をつけて読みきかせてくれていた。」

 長くなるのでこのくらいにしておきます。添付ファイルに、幼児期後半の頃のことばの発達チェック項目とそれに対してどんなことをすればよいかというリストを載せておきます。詳しくは『どうすればことばが育つか?』(全国早期支援研究協議会発行,900円)を参考にしていただければと思います。

No.900手話はなぜ必要か?〜言語は認識を深める 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/03/02(Thu) 17:22

この問いへの応えはいくつかありますが、ここでは、1歳頃に言語をもつともたないのとでは、ものごとを認識する力が違ってくるという点からその理由を書きたいと思います。
 
 まず、次のような実験があります。周りの大人のことばを少しずつ理解しはじめた頃の10か月の赤ちゃんを対象とした実験です(添付ファイル参照)。
舞台の上を玩具のあひる(赤ちゃんはまだ「あひる」ということばを知りません)が左から右に動いていきます。途中に衝立があって、左から入ったあひるは、衝立の後ろを通って右端から出ていくように見えます(これは実験者が手で動かしているのですが)。次に、同じあひるが右から入って衝立の向こう側を歩いて左端から出ていくように見えます。

 この時、赤ちゃんはあひるが何匹いると思っているでしょうか? 同じように見えるあひるでも似ているだけかもしれないので、2匹という答えもあり得ますが、赤ちゃんは、連続して動いていくものは一つと認識することがわかっているのでこの場合、赤ちゃんは、「あひるは1匹だ」と思います(赤ちゃんは3つくらいまでの数は直感的に理解できるようです)。
 
 次に、隙間のある二つの衝立のある舞台の上を、さきほどと同じように左端からあひるが通っていきます(添付ファイル1参照)。そして、左の衝立から入ったあひるは右の衝立の右端から出てきます。ところが、衝立の隙間からあひるが歩いていく姿は見えなかったのです(同じあひるなら通って行くのが見えるはずです)。
 今度は、右の衝立の右端から同じアヒルがはいっていきます、先ほどと同じように隙間からあひるは見えず、左の衝立の左端からあひるが出てきます。この場合、赤ちゃんはあひるが何匹いると思っているのでしょうか? 衝立の隙間を通っていく姿は見えなかったので、同じあひるのように見えても実は違うあひるだとわかるのです。あひるは2匹いると10か月の赤ちゃんは推論できるのです。
 つまり、赤ちゃんは動きの時間的な連続性と空間的な連続性を手掛かりに、いくつのものがあるのかが理解できるのです。
 さてここまでは、言語は関係ありません。言語があるかないかに関わらずこのような認識は可能です。
 
 さて、次の実験は言語が関係してきます(添付ファイル2参照)。
 今度は2つのもの(あひると犬)が登場します(赤ちゃんは「いぬ」ということばもまだ知りません)。
最初の実験と同じように、左からあひるが入りますが、右から出てくるのは犬です。そして今度は犬が右から入って、左から出てくるのはあひるです。私たち大人は当然、玩具のあひると玩具の犬は別々に動いているはずだと思います。赤ちゃんはどう思うでしょうか? 

この一連の動きを見せた後、衝立を取り払います。そこにはあひると犬のおもちゃがなければならないはずです。もし、そこにあひるか犬のどちらかしかなければ、赤ちゃんは驚くはずです。ところが、1個のおもちゃしかなくても赤ちゃんは驚かないのです(赤ちゃんは自分の予想と違うと驚きをじーっと見つめる反応で表現します)。

これは何を意味しているのでしょうか? ことばを知らない段階の赤ちゃんは、モノがどんなに見かけ上違っていても、それは関係なく、時間・空間上の動きが連続しているか否かによってだけ、モノが同一のモノかどうかを決めているのです。10か月であればあひると犬の見かけ上の違いは赤ちゃんにもわかっています。
しかし、見かけ上の違いではなく、動きの連続性で赤ちゃんはそれが同じモノかどうかを判断しているのです。

そこで、今の実験に「ことば」を加えます。あひるが登場した時は「見て、あひるだね」と、犬が出てきたときは「ほら、犬だよ」などとそのものの名前を言います。そうすると、そのものの名前が初めてきく名前であっても、赤ちゃんはあひると犬がちゃんと別々のモノであると理解し、二つの違ったモノが衝立の後ろで動いているとわかるのです。つまり、見た目ではなく、ことばが同じか違うかを頼りに赤ちゃんは、同一のモノか違うモノかを決めているわけです。
このことから、1歳前の赤ちゃんでも、言葉があるかないかで、ものごとの認識の仕方・深まり方が変わるのだということがわかります。ことばが認識を育てるのです。

これまでの聴覚障害教育の中で、きこえない子は「9歳の壁が越えられない」と言われてきましたが、それは結局、発達の初期から言語をもたなかったことが影響しているのではないかと私は考えています。言語がなければ認識が深まらない。言語は一歳から持つ必要があることはこの赤ちゃんの実験からも明らかです。
聞こえない子にはまだこの実験をしたことはありませんが、手話という言語を使って、一度、「手話(言語)が赤ちゃん(子ども)の認識(思考)を育てる」ということを確かめてみたいと思っています。

あひるは何匹? - きいじい(掲示板管理者)   2017/03/02(Thu) 17:30 No.901
添付ファイル1

次は、隙間のある衝立が2つ。その後ろをあひるが通っていきます。左から右へ。ところが、隙間からあひるは通って行ったようには見えない。にもかかわらず右の衝立から同じかたちのあひるが出てきます。
 同様に右から左へ。さて、あひるは何匹?

あひると犬が登場。さて、赤ちゃんは? - きいじい(掲示板管理者)   2017/03/02(Thu) 17:35 No.902
添付ファイル2

動き方は最初の実験と同じですが、ここではあひると犬が登場します。見た目で違うモノだということは赤ちゃんはわかっています。ところが・・・

No.898手話からスタートして日本語はいつ? 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/02/19(Sun) 22:43

以前に、きこえない子の言語獲得は手話からスタートするほうがメリットが大きいと書きました。では、日本語の獲得はどのような過程をとるのでしょうか? 本当に大丈夫でしょうか?
 
 手話獲得後の日本語獲得は、大きく分けて2つのタイプに分かれます。一つは前にも書きましたが(本掲示板NO828)、聴覚活用と発語を通して音声言語で日本語を獲得するタイプです。これは中等度難聴の子どもや90デシベル台の高度難聴の子たちに多いです。もちろん、100dB台でも口話併用の手話を使い、家庭が音声に意識的であれば、それは可能です。例えば以下のような例です(育児記録より)。

事例1(1歳7か月)100dB
「のどが渇くと、手をグーにして口に当てて飲むサインをするが、その度に『お茶ほしいの?お茶飲むの?ちょうだいなのー?』と問い掛けていたら、『おちゃー』とたまに言うようになった。二階に行きたい時は『うえー』と言うようになった。毎日のように踏切に電車を見に行くが、最近両手の人差し指を使って踏み切りのまねをするようになった。『シュー』と閉まる音つきなのがおもしろい。」

 また、音声で発語することばは、ほとんどが手話ですでに獲得された語ですから、一度、手話で意味・概念を獲得した語を音声日本語でもう一度獲得しなおしているということもできるでしょう(言語の二重符号化)。
 ただ、音声言語が出てくる時期は、1歳代の半ば以降が多いので、まだまだこの時期に「あ」「か」「い」といった日本語の音韻(音節)一つ一つが区別されているわけではありません。音韻意識が出てくるのは、きこえる子でも通常は4歳以降と言われていて、その頃になると『しりとり遊び』(語尾を取り出せる)ができたり『あのつく言葉さがし』(語頭が取り出せる)ができるようになります。こうした音韻意識が持てることは読み書きにはとても大切なことです。

 では、聴力が厳しく、音声言語からではなく、指文字や文字から日本語獲得するタイプの子たちは、いつごろから獲得が始まるのでしょうか? この子たちの聴力は100dBとか110dB以上といった子どもが多いです。こうしたタイプの子たちは、手話を身につけ、人の名前など限定されたものに指文字を「手話的に」使うようになるのが2歳代の前半あたり、さらに、例えば「電車」が自分の知っている手話という言語とは別の言語(指文字や文字で『でんしゃ』と表せる視覚日本語)であらわせることに気づき(メタ言語認知)、そのことに興味・関心をもち、指文字や文字でさかんに尋ねたり、自分で表現しようとする時期が3歳頃にあります。例えば以下のような例です。

 事例2(2歳10か月)100dB
「学校の帰りにYが上を見上げて、『さくら』の指文字をしていた。ちょっと曖昧でしたが・・下の方にあったツツジを見て、『さくら』とやるので『ちがうよ。これはつつじ』と返すと、何度も繰り返して指さして『さくら』『つつじ』の指文字を私にやらせていた。」

 それでは、指文字や文字で音韻が分解できるのはいつ頃でしょうか? 音声での音韻(音節)分解は平均的には4歳なのですが、指文字や文字で視覚的に日本語を習得している子は、意外に早いのではないかと感じています。例えば、以下のような例です。

 事例3(3歳0か月)100dB
「A子が指文字表の「ろ」を指して「ケロのろ」、「め」を指して「ヤメピ(ケロとバムシリーズのキャラクター)のめ」、「こ」を指して「B子、C子のこ」と言っていた。“指文字ブーム到来!」

 日々、指文字や文字で視覚的に日本語の単語を見ているA子は、一つ一つの音韻(音節)の“ならび”によって単語が構成されていることに気づいたのでしょう。音韻分解を自分でやったわけです。濁音や半濁音などどこまでちゃんと音韻分解ができていたのかわかりませんが、もしかしたらこの年齢の頃に文字を紙に書いて『しりとり遊び』をしたり、指文字で『あのつくことばさがし』をしてみたら、意外とできたかもしれません。いつか機会があったら指文字や文字の獲得時期と関連して調べてみたいものです。

No.889語彙力を伸ばす絵本の読み聞かせ方 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/02/12(Sun) 13:25

 親の子どもへの関わり方は、幼児期や小学校になってからの語彙力や学力にどう関係しているのかを調査した研究があります。その中で、絵本を母親に読んでもらい、その読み聞かせ方の違いがどう子どもの語彙力などに反映していくのかということが検討されています。(『しつけスタイルは学力基盤力の形成に影響するか』2012,浜野隆、内田伸子)
 
 今日は、その具体的な事例がについて紹介してみます。取り上げている絵本は『きつねのおきゃくさま』(あまんきみこ)。これは小2国語(教育出版)でも取り上げられています(添付ファイル参照)。
 あらすじは、お腹をすかせて歩いていた一匹のきつねが、痩せたひよこに出会います。きつねはそのひよこをすぐに食べるのではなく、「ふとらせてからたべよう」と決め、家に連れて帰ります。しかし、ひよこの「きつねおにいちゃん」という呼びかけに対して、きつねの心は揺らぎ、ひよこを大切に育てます。同じ様にきつねは、あひるとうさぎも育てることになります。ひよこ、あひる、うさぎが順調に「ふとってきた」頃、くろくも山からおおかみがやってきます。きつねは3匹を守ろうと勇敢に戦い、おおかみを追い払います。しかし、その夜、きつねは恥ずかしそうに笑って死んでいきます。
 
 この話をそれぞれタイプの異なるお母さんに、わが子に読み聞かせてもらいます。
まず最初のタイプの親の読み聞かせは以下のようです。Mは母、Cは子どもです。

タイプ1
 M 読み聞かせ終了後:分かった?(Cを見る)
M きつねさん,ほんとはどうしたかったんだっけ?(Cを見る)
C 食べたかった(Mを見て,小さな声で)
Mだけど,その前に戦って(ページに戻す)死んじゃったんだって。ほら。(Cを見る)
C なんで戦って?(Mを見て,小さな声で)
Mんとね(その前のページに戻す),おおかみって,きつねより全然大きいでしょ。
C うん(絵を見ている)
Mだから強いの。見て(おおかみを指さして),だって,こんな牙だってすごいんだよ,爪だって。
C ちょっと生えてる(きつねの爪を指さす)
Mえ,でも、だってこんなにすごいんだよ(おおかみの爪を指さしてCを見る)
C (黙る)

 もう一つのタイプの親の例は、以下のようです。
タイプ2
M きつねさん、死んじゃった(Cを見る)
C (Mと目を見合わせて悲しそうな顔をする)
M みんなを守るためにね…ゆうきりんりんで戦ったから
C (ページを戻して3ページ前からもう一度見ていく)
Mどうしてどうして? きつねさん、こんなぼろぼろになって死んじゃった
C (Mと一緒にページを持ってめくる)

 これら二つのタイプの違う親の読み聞かせについて研究ではこう解説されています。
「最初の例は、物語の余韻にひたる間もなく、母親がお話に対する理解を問うような質問を投げかける場面である。そして、子どもからの質問に対しては、説得的に説明している様子が見られる。子どもの「ちょっと生えている」というささやかな反論も、母親は自分の考えを押して、子どもを黙らせてしまう様子が見られる。」
 
 これに対して二番目の例ではこう解説されています。
「この事例は、子どもが、主人公のきつねが死んでしまうという、予想もしていなかった出来事に直面した場面のものである。母親が、子どもの驚きや悲しみの気持ちを受け止め、共感していることが窺える。そして、答えを明示してしまうのではなく、子どもが納得して次へ進むまで、十分に考える時間を与え、共感的に待つ様子が見られる。」

 さて、これら二つのタイプですが、最初のタイプの親と後のタイプとでは、子どもの内面に育つものは違ってきます。親が自分に共感してくれ、理解してくれるとき、子どもは自由に考え、頭も働かせます。そして、その結果として知識を広げ思考する力も高めます。このようなよい循環をつくることが結果的に語彙力や学力を高めることにつながると考えられます。
 実際、3000人近い幼児の語彙力、学力の調査の結果は、後者の親のタイプの子どものほうが、豊かな語彙と読み書きの力が高いことが数字の上でも立証されています(この調査は、韓国、中国、ベトナム、モンゴルなどとの国際比較によっても同じ結果が得られました)。

二つのタイプの違い - きいじい(掲示板管理者)   2017/02/12(Sun) 13:32 No.890
 研究の中では、こんな例も紹介されています。例1がタイプ2、例2がタイプ1です。

親のしつけスタイルの違い - きいじい(掲示板管理者)   2017/02/12(Sun) 13:48 No.892
 この研究で明らかになったことは、親の関わり方として「共有型」と「強制型」があり、「共有型」の親に育てられた子のほうが、語彙力が高いという結果でした(ファイル)。
 「絵本の読み聞かせ方」のタイプも、実はこの「共有型」と「強制型」の違いです。「共有型」の親は子どものペースに寄り添い、子どもの言おうとしていることを待ち、そこに共感しています。決して自分の考えを先に押しつけることはしていません。

子どもは楽しいこと、好きなことは自分から進んでやりたがります。子どもにとって遊びとは自発的で頭がいきいきと活動している状態です。無理やりやらされていることには頭も働かない。実際、脳の偏桃体は、「面白い!」「楽しい!」と感じるとワーキングメモリーに情報伝達物質が送られ、海馬が活性化し、情報を記憶貯蔵庫にどんどん蓄えることができると言われています。このようなよい循環をつくることが結果的に語彙力や学力を高めることにつながると考えられます。

No.884口話併用手話の利点は? 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/01/30(Mon) 09:23

 前回、手話から獲得し始めた高度難聴の子どもでも、やや遅れて音声言語の獲得が始まると書きました。その子たちの音声言語での発語状況を保護者に尋ねてみると、異口同音に「手話で身についた言葉が音声を伴って出てきている」ということでした。
 そこで、前回例に挙げたA児の1歳10か月時の発語をきくと、以下のような50語の単語が表出されているということでした。

☆固有名詞(2〜3音節の人の名前)6語
☆挨拶・呼びかけの言葉、一般名詞 26語
「おしまい、バイバイ、どうぞ、ちょうだい、オッケー、いいよ、大丈夫、ごめん、ありがとう、おーい、おめでとう、遊ぼう、おいで、ママ、先生、おっぱい、あいうえお、耳、鼻、目、口、蓋、皮、順番、まる、ばつ」
☆動詞・形容詞 18語
「ほしい、大きい、同じ、違う、ある、ない、痛い、怖い、可愛い、冷たい、待って、青い、赤い、黄色、赤、ピンク、黒、白(色名はモノの状態なのでとりあえず形容詞に分類)」

 A児の場合、まず視覚言語としての手話で単語を獲得し(表出は語彙表チェックで190語なので理解語を含めるとその2倍はあるでしょう)、意味・概念が伴っている単語の中から、固有名詞、あいさつや呼びかけなど日常生活の中で頻度多く使う語が音声に多く変わっているらしいこともわかります。

 一般に二言語習得者は情報を複数の形態に符号化できるため、情報を理解したり記憶したりする認知能力が、単一言語使用者に比べて優れている(井上智義,2016)と言われていますが、口話併用手話の場合は、聴覚からの音声語をききながら、手話(視覚)を同時に見るという特徴があるため、意味・概念をすでに獲得した手話から得ながら、同時に入力される曖昧な音韻情報を音声言語に変換し、一つの単語を手話と音声言語で二重に符号化しているのだろうと思われます。
 そして、こうした二重符号化ができると、単語や文の記憶に両面からアプローチできる利点があるため、文の記憶テストにも好成績を収めることができるのだろうと思います(「聴覚障害者のリハーサル方略」長南浩人・井上智義、1998)。

 以上のことから、最初に手話を獲得して、そののち音声言語獲得に至るという口話併用手話の言語獲得方略のメリットが見えてくるのではないかと思います。

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