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No.729文字への興味を引き出すには? 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2016/09/22(Thu) 16:28

「2歳の高度難聴幼児で手話を使っていますが、文字への興味を持たせるためにどのような配慮が必要でしょうか?」という質問をいただきました。

 家庭での文字環境は、その子がまだ文字や指文字がわからない1歳の頃から、いつでも文字や指文字への興味が引き出せるように準備をしておく必要があります。
 そのためにやっておくことは沢山ありますが、ここではとくに文字について1〜2歳から準備をしておくとよいことを、3回に分けて書いてみたいと思います。今回はその1回目です。

 まず、ファイル1のように、手話が日本語の音声、指文字、文字などで表せることがわかり、手話と日本語が単語レベルで互換性がもてることが必要です。

そして、これまでの聴覚障害教育の中で用いられてきた伝統的な方法として、まず「体験カード」を作る方法から紹介します(ファイル2)。

まず、「体験カード」から(ファイル2) - きいじい(掲示板管理者)   2016/09/22(Thu) 16:34 No.730
これは、親子で体験したことをその場で絵にする方法で、絵日記の前段階に位置するものです。絵に単語や2語文程度の文を添えていきます。子ども自身が体験したことであれば、その絵をあとで一緒に見ながらいろいろ会話ができますし、再現あそびなどに結びつけることもできるでしょう。また、その時に使った物などがあれば一緒に貼り付けておくなどもよいと思います。

絵日記へ(ファイル3) - きいじい(掲示板管理者)   2016/09/22(Thu) 16:38 No.731
 ファイル3は、絵日記です。スケッチブックを1冊準備し、その子だけの絵本のようにして作ります。しかし、学校で子どもがやったことで、親は知らないことなどもあるでしょう。そのようなことを子どもは親に伝えたがります。それをていねいにききとって絵にし、文を添えて作ります。最初は2〜語文で、年齢が進むにしたがって文も長くし、文法的なことも扱っていきます。また、助詞や動詞の活用を空欄で書き込み式にしたり、名詞修飾句を使ったり複文を用いたりなどだんだんと中身をレベルアップしていきます(全国早期支援研究協議会「どうすればことばが育つか?」900円参照)。

効果的なことば絵じてん作り(ファイル4) - きいじい(掲示板管理者)   2016/09/22(Thu) 16:44 No.732
 ファイル4は、「ことば絵じてん」です。これは絵日記とは違い、ことばをあるカテゴリーによってまとめて整理していくもので、絵日記が「物語」とすれば、これは「辞典」にあたるものでしょう。ことばやモノ同士の関係を整理したり、より大きな概念カテゴリーで括っていくことで抽象概念の習得につなげていくことができます。

 比較的最近になって私たちが開発してきた方法で、ことばの概念やことばの数を増やす効果があると、いろいろなところでよく耳にするようになりました。ぜひ取り組んでみていただきたい活動です。ただ、絵日記と並行して毎日やるのは時間的に無理。組合せ方の工夫が必要です。また、子どもと一緒に作るのが大事です。親だけで作って子どもに与えても何の意味もありません。(作り方は「どうすればことばが育つか?」参照)

絵本の読み聞かせ(ファイル5) - きいじい(掲示板管理者)   2016/09/22(Thu) 16:49 No.733
 ファイル5は、絵本の読み聞かせです。これも絵日記とならんで伝統的に取り組まれてきた方法です。文字への興味はもちろん、子どもの想像力や推理する力、因果関係を理解する力、登場人物の気持ちの理解などいろいろな力を伸ばすためにも大事な活動です。

 物語絵本は、事例のように再現あそびと絡めてやると子どもはさらに絵本が好きになり、結果として文字や文への興味が増します。
 
 子どもが文字に興味をもって自分でも読みたがるようになったらしめたもの。そのためにも絵本は毎日1册は必ず読んであげる習慣にしたいものです(掲示板NO717参照)。物語だけでなく、辞典や科学絵本などもよいと思います。読めるようになってきたら「○読み」「段落読み」など読み手を交代しながら読むのもよいでしょう。(「どうすればことばが育つか?」参照)

 以上がまずぜひ取り組んでいただきたい文字の世界へ子どもを導くオーソドックスな方法です。次回は、これらに加えて、それぞれの家庭で取り組むとさらに効果的な方法や配慮について紹介します。

No.717語彙力をつけるために 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2016/09/16(Fri) 21:43

きこえない子のことばのつまずきの大きな要因は、日本語の語彙数が少ないこととそれぞれの語の概念の中身が薄いことでしょう。語彙数の問題で言えば、例えば6歳のきこえる子のもっている表出語彙は3,000語以上、理解語彙はその2倍以上と言われており、それだけの語彙数をきこえる子は持っているという前提で小学校1年の教科書は作られています。
しかし、きこえの程度にもよりますが、きこえない子たちの語彙数は、日常会話に必要とされる1,500語より少ない子のほうが多いのではないでしょうか。
 
では、語彙力をつけていくよい方法はあるのでしょうか? 幼児期においては、日々の暮らしの中で使われる語をききとり(読みとり)、その語を自分で使うこと(表出する)によって身につけていくわけですから、周りの人との日本語(音声・文字・指文字)を使ったやりとりの中で習得していくことは確かです。

 それでは、きこえる子はどのように周囲との関わりの中から語を増やしていくのでしょうか? ある調査(内田伸子2008)ですが、3,000人を対象に調べた結果(ファイル参照)、子どもの語彙力は親の育児スタイルと密接な関係があったということです。
 その調査研究で見出された親の育児スタイルとは、「共有型」「子負担型」「強制型」の3つのスタイルで、その中で子どもの語彙力が最も高かったのは「共有型」だったというのです。その「共有型」の育児スタイルには、以下の特徴がみられたとも報告されています。

1.子どもと一緒に経験を共有することを楽しんでいる。
2.子どもに考えさせ、判断させている。
3.子どもと一緒に本を読んでいる。
4.勝ち負けのことばを使わない。

 つまり、手っ取り早く言えば、これが子どもの「語彙力」を高めるコツなのです。以下、きこえない子の例を保護者の育児記録から引用してみましょう(事例は私が知っているものからの選択。親は口話併用手話。子は手話で会話している)。

1「子どもと一緒に経験を共有することを楽しむ」(事例A、2歳半、高度難聴)

「さあ干すぞ!」とベランダでTシャツをパンパンすると粉々ティッシュが舞う。「あ〜あ、やっちゃった」と愕然としていると、それを見ていたAが「雪!」と手話。私はそのAのことばにはっとして、「本当ね。Aちゃん、雪みたいだ〜」。がっかりモードだったけれどAのこのことばに、「え〜い!掃除は後回し!」。ベランダ中に洗濯物の雪を降らせ、二人で楽しみました。
 
 よくある生活の一コマですが、くさらないで子どもの発言に共感し、一緒に楽しんでしまう母親の関わりは、子どもとの共感関係を築き、世界に目を向け、いろいろなことに立ち向かっていく子どもの意欲や興味・関心を育てるだろうと思います。そして、親子で交わされる会話の中で、ものごとに対する豊かな概念や語彙が身についていくと思います。


2.子どもに考えさせ、判断させる(事例B、3歳1ヵ月、高度難聴)

 部屋の片隅に洗濯物を干す四角いハンガーを持って座り、それをドアに見立てて出たり入ったりして遊びました。最初はドアをたたいて、「ただいまー」「いってきまーす」を繰り返していました。そこで私が「どなたですか」と尋ねると、キョトンとしていたので「Bさんですか?Cさんですか?」と言うと、「Bでーす」。母「いらっしゃい。何を持ってきたの?」B「○○持ってきたー。どうぞ」と私に渡して、B「いってきまーす」と出て行き、他のおもちゃを持ってまたドアをトントン・・かなりの時間、その遊びを繰り返しました。持ってきたおもちゃについても母「どうやって遊ぶの?これ、小さいね。もっと大きいのはないかしら?」など色々とお話ができました。
 
 Bちゃんの始めた遊びに付き合い、やりとりを上手に発展させていっています。B君に考えさせるような質問もしながら、会話を発展させています。

3.子どもと一緒に本を読む(事例C、2歳半、高度難聴)
 今日の絵本は0〜2歳児の絵本『だれかしら』。本を読む前にベッドで、動物指人形でうさぎさんねんね、ぞうさんねんね…などやっていました。本もちょうど動物がいろんな物陰から隠れてからだの一部を覗かせて何の動物だろうと考える繰り返し。表紙から始まります。「C、これ誰?」ときくと、んー〜と考えているのか、考えていないのか。なので、動物指人形を本の後ろに隠し、うさぎさんの耳、象さんの鼻、しまうまの大きな鼻などを本から覗かせ、「C、これ誰?」ときくと「うさぎ」「しまうま」と体全体で答えてくれました。最後は…ママ、ママが本で顔を隠し「C、私はだれ?」ときくと、ケタケタ笑い出しました。これでようやく本のポイントがつかめたようで、1ページ1ページずつ丁寧に、「これ何だろう?」「うさぎさんかな?」とか、「わにさんだね〜」「これはうさぎじゃないね」と楽しく読むことができました。

 絵本を読み聞かせている時に、Cちゃんが尋ねられている意図の理解が曖昧かなと感じた母は、絵本から離れて遊びに切り替えました。指人形を使って「だれかな?」と、からだの部分から類推する遊びにつなげてみました。目の前で繰り広げられた当てっこ遊びがとても楽しかったCちゃん、今度は絵本の中で当てっこ遊び。母との遊びが基本にあるので、一緒に考えながら親子で絵本を楽しむことができています。母の上手な絵本の読み聞かせが素晴らしいです。

4.勝ち負けのことばは使わない
 これは「ほ〜ら、だからお母さんが言ったでしょ」など、子どもの行動を結果的になじったりけなしたりするようなことを言わないということでしょう。また、正解不正解を必要以上に評価しないことです。間違うことを恐れるようになり、ことば遊びを楽しめない子が時々いますが、そのような子には答が決まっていない、一つではないクイズ、例えば「まるいものな〜んだ?」などから始めるとよいでしょう。(事例省略)

 子どもの語彙力の基本には、家庭での親子関係のあり方、子どもと関わる上で何を大事にするかという家庭の育児スタイルが密接に関わっているということが研究結果から示されています。とくに0歳から3歳頃までの乳幼児相談(早期教育)の時期に、この親子関係の土台をしっかりと築くということが子どもの語彙力を高めることにつながっているということだと思います。

No.716絵日記の指導について 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2016/09/12(Mon) 14:41

 難聴学級や聾学校では、日記を子どもたちに書かせ、担任の先生がそれを読んでコメントを書き入れるといった指導が行われています。
 しかし、教育課程の中で特別に日記を指導する時間が通常は設けられておらず、休憩時間や授業の空き時間を使ってササッと読んで一通りの指導事項(語句や文法の間違いの訂正、書かれていることへの簡単なコメント)を書いてまた子どもに返す、といったことが中心になっています。また、中には「訂正の赤ばかりになると子どもが嫌になって日記を書かなくなるので、訂正は基本的にしない」という先生方もおられます。

 いずれにしても結局はていねいに時間を割いて指導するという機会にはなっておらず、結果的に子どもの誤りがあまりなおらず(とくに助詞はただ赤を入れて訂正させただけでは直りません)、書き方も「今日は・・・楽しかったです」といったワンパターンの書き方が延々と続くといったことになっていることが多いように見受けられます。
これは非常にもったいないことだと私は思います。
 日記こそ、その子の「書く力」と「考える力」を高める最も大事な機会で、例え週1時間でもよいので特設の時間を設けてその書き方を指導することと、できるだけ毎日、一人一人の子どもと日記を前にして対話しその日の日記の内容について指導する時間を設けるのがよいと思います。
 また、「クラス便り」などで毎週、誰かの日記を紹介し、それについて保護者を含めたクラス全体でそのよさやこうするとよくなるといった点を共有していくとよいと思います。

 さて、私自身は、日記指導を以下の2つの点を目的にして指導してきました。

(1)文を正しく書き、豊かに表現する力を育てる(書記日本語力・表現力)
(2)自分や自分の生活をみつめる力、考える力を育てる(自己認識・思考力)

 日記指導はただ日本語の間違いを直すことだけでなく、上の(2)の点が非常に大切です。そこが聾学校の日記指導には欠けていることが多いのではないかと思います。子どもは自分で自分のことや自分の生活を振り返り、自分で考える力が深まってこそ、日記を書く意味が実感できるからです。
 
 また、先生方の日記の指導のコメントをみると、子どもの書いていることに対して「褒める」といったことが少ないように見受けられます。どんなにつたない文章でも必ず褒める中身があります。そこをしっかり褒めることです。先生方から見ると「書けて当たり前」のことかもしれませんが、そうではないと思います。指導のねらいにそって、そのねらいが達成されていれば「褒める」ことです。その上で、「ここをこうすればもっとよくなるよ」と返すことです。それが日記を子どが書きたくなるコツです。
 
低学年の日記指導で言えば、指導のねらいとは以下のことです。1年生前半では、下の1から3までができればよいでしょう。後半頃からは、4,5なども書けるようにしていきます。また、字数は1年前半は100字かければ十分です。終わりごろには200字程度書けるようになるとよいと思います。2年生では、さらにその倍の400字+100字くらい。

○低学年児童の日記指導の目標
1.身のまわりのことから、書きたいと思ったことを書ける。
2.したことを順序立てて書ける。
3.「いつ」「どこ」「だれ」「なに」「どのように」したかわかるように書ける。
4.だれかが言ったこと、自分の言ったことを「  」をつけて書ける。
5.そのとき自分が思ったことを(  )をつけて書ける。

 添付ファイルは子どもの日記の例です。
 埼玉県の東松山市にある森林公園は中はとても広く、それで自転車を借りたかったのだけれど、お金がかかるのでお父さんが「だめだめ」と言ったのだろうと思います。そのときの少し残念だった気持ちを書いています。
 兄弟もたくさんいる児童の家庭ですから、都内から森林公園まで行くまでですでに電車賃もかかっているのだろうと思います。そのうえに、自転車を何台も借りるのは経済的に厳しいに違いありません。
 この日記では、「だめだめ」とお父さんが言ったことだけで終わっていますが、それに対して自分はどう思ったのか、また、その時、自分はどうお父さんに言ったのかなど書けるようになると、自分の生活をみつめる力を育てることにつながっていくのではと思います。そこに日記指導の大切な意味があると私は思っています。

No.710覚えるのが苦手な子の指導 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2016/09/07(Wed) 21:36

 子どもたちの中には、単語を覚えるのがとても苦手な子たちがいます。とくに、聴力的に厳しい高度難聴の子に多いです。知的に遅れているわけではありません。
 初めて出会ったことばを一文字ずつ読めるのは読めるのですが、なかなかその文字を順番に正確に覚えることができず、覚えてもすぐに忘れてしまうといったタイプの子どもです。

 このような子たちは幼いときから覚えるのが苦手なので、日本語の単語がなかなか増えません。そして小学部までそれがずっと続くと、小学生になる頃には他の子どもたちとかなり差がついてしまいます。

 ここでとりあげる例は小1児童の例で、『はたらく自動車』の単元に出てくる自動車の名前を覚えられないということで、その指導をしたものです。因みにこの児童の年長時のWISCのワーキングメモリーの結果は、「数唱」検査では、順唱で3数字、逆唱は2数字しかできていませんでした。つまりなんとか3つの記号なら順番に覚えて言えるのですが、頭の中でその数字や記号の順番を入れかえて再生するということは2つが限界で、3つになるとできないという結果でした。

 指導の順は以下の通りです。会話は音声+手話を用いています。
1.まず4つの自動車を描いたワークシートを見せて、授業でやったことを思い出させながら自動車の名前とどんな仕事をするのかというその役割について話し合います(ファイル1)。そして、児童と一緒に音声と指文字を使って読みます。「トラック」「クレーン車」・・・

2.同じワークシートを使って、今、学習したことばを子どもに確認します。(ファイル2)
 T「荷物を運ぶ車はどれ?」
 C(指さし)
 T「(そうだね)トラック」と音声と指文字を使って読みます。
(もし、バスをさしたときは、「お客さんを運ぶ車だね」と説明し、「荷物を運ぶ車はどれかな?」
と再質問します)


3.教師が車の名前を言います。
 T「先生が自動車の名前を言うから当ててくださいね。パトカー(音声+指文字)」
 C(指さし)
 T当たったら「そうだね」とほめながら「パトカー」と再度言う。
 はずれたら、「いくつ字があるかな?」「ウ〜ウ〜ってサイレンならして走るよ」などとヒントを出しながら再質問する。(ファイル3)

4.絵と語頭のヒントをみながら名前を言う。
 T「なんだろう?」
 C語頭の文字を見て、名前を思い出して言う(音声+指文字)。
 T(Cがわからなかったら一緒に言う)

 このような方法で、子どもに記憶の負荷が大きすぎないように配慮しながら学習します。(ファイル4)

5.宿題
 家に帰って左側に子どもが答えを書きます。但し、
真ん中で折って左側だけ見えるようにして書きます。
 忘れて思い出せないときは、答えを見てもよいとするか、最後まで自分でやってみて、あとで答えを見るようにするかは子どもと相談して決めます。(ファイル5)

2.学習したことばの確認 - きいじい(掲示板管理者)   2016/09/07(Wed) 21:40 No.711
 上記2のワークシート

3.音声・指文字・文字の確認 - きいじい(掲示板管理者)   2016/09/07(Wed) 21:47 No.712
上記3のワークシート

4.絵と語頭をヒントに思い出す - きいじい(掲示板管理者)   2016/09/07(Wed) 21:55 No.714
上記4のワークシート

5.宿題 - きいじい(掲示板管理者)   2016/09/07(Wed) 22:00 No.715
上記5のワークシート

No.709なぜ、0歳から手話を使うのがよいか? 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2016/08/28(Sun) 23:09

 このような質問をある方から受けました。0歳から手話を使うのは、それにはいくつかの理由があります。

 まず、早い段階から言語(手話)が獲得できることで親子でのコミュニケーションがとれるようになることです。デフファミリーは別として、通常、聴者の親がきこえない子を授かることはまさに「想定外」のことであり、「障害」あるわが子を授かったことに大きな不安を抱き、罪責感に陥ります。そのような心理的不安から立ち直るためには、相談担当者などの専門家の援助が必要ですが、もうひとつ、「子どもとコミュニケーションがとれる」という自信や安心感をなるべく早く持っていただくために手話を早期から導入することが効果的です。
 
 赤ちゃんの手の運動発達は、構音の発達より早く、きこえる子の初語の出る時期よりも一般的には早いので、親御さんに「わが子と通じあえる!」という安心感を与えます。悲嘆にくれていた時期から立ち直り、子育ての楽しさを少しずつ味わうことができるようになります。このことは、当然、子どもにもよい影響を与えます。「自分はお母さんに愛されている!」という喜びと自分は愛されるに値する人間なんだという自分への自信、確信です。そしてこのことは、やがて自分が外の世界に目を向けていくことを可能にします。「きこえない自分」であっても自分は周りから認められ受けいれられているという信頼があるからこそ、安心して外界にかかわっていけるからです。
 
 こうして、早くから言語を介したコミュニケーションが可能になり、周囲への探索行動が積極的に行われて、子どもは言語も認知も発達します。つまり、子どもの全体的な発達が促進されるという効果がみられます。

 添付ファイルは、生後半年を過ぎたあたりから親が手話を使った子どもの1歳2〜3か月頃の言語発達の様子です(二人とも生後10ヵ月で初語。Aちゃんの初語は「パイパイ(おっぱい)」、Bちゃんは「クック(くつ)」でした。)
この表から、例えばAちゃんは1歳2か月で「赤い」という色を弁別し表出していますから、きこえる子の音声言語の発達よりも早いといえるでしょう(参考に示したように「色」がわかるのは通常2歳前後です)。獲得語彙数も二人とも100語以上ですから、言語獲得のスピードもきこえる子より早いことがわかります。

 また、手話を使うことは自己肯定感をもてる子に育つことにもつながります。「きこえない自分が使う手話という言語」が周りから認められ、使ってくれているということは、自分はこれでいいんだ、という肯定的な自己概念を育てるからです。

 「世の中の人は手話を使わない。音声言語の社会で生きていくためには音声言語が必要」という言い方がなされます。これは「世の中の人は点字を使わない。世の中の人は車いすは使わない。だから社会に合わせて・・・」というのとおなじことです。障害ある人が自分らしく生きていくためには、できないことをできないこととして認め、社会の側が少数の側に合わせるという発想が不可欠です(だから「手話言語条例」は大きな意義があります)。もちろん音声言語の獲得はできる子もいますからそのこと自体を否定する必要はありません。 しかし、「自分の言語」として手話をもっているということは、それがない状態できこえない人が音声言語を使えるということとは、自分の「アイデンティティー(自己同一性)」をどこにもっているのかという問題につながってきます。自分の「アイデンティティー(自己同一性)」が「きこえない側」にあるのか「きこえる側」にあるのかということは、その人の存在感や所属感を左右する大きな問題になることがあり、思春期や青年期以降に心理的不適応としてあらわれることが少なくありません。きこえない自分という「存在」を支えるものとして、手話は大きな意味があるわけです。
 

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