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No.8650歳難聴児はどのように言語を獲得するか? 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/01/08(Sun) 14:26

新年おめでとうございます。このブログを書くのも久しぶりになってしまいました。
 
実は年末に、ある大学の授業の中で、その授業を受けている聴覚障害学生に幼い頃からの体験談を話してもらいました。
 その話の中で、聴覚障害が発見された2歳頃のことをお母さんにきいてもらい、その話をしてくれたのですが、彼は小さい頃からカンもよく日常生活の中で通じなくて困ったという経験はお母さん自身あまりなく、「いつまでもことばが出ないのはちょっと遅いかも?」と思って病院に行き、2歳前にわかったということでした。お母さんはとても冷静で理知的な方だったようで、「ああ、そういうことだったのか。でも、コミュニケーションが通じているし、なんとかなるんじゃないかな」と思われたそうです。正直に、すごい方だなと思いました。

 さて、ここからが今日話したいことなのですが、私が考えたことは、おそらく1歳頃までの言語発達この時期を「前言語期」(=乳幼児期後半から初語獲得あたりまで。6か月〜1歳前後)と言いますが、この段階はきっと順調に育っていたのではないかということです。
 もう少し詳しく言うと、言語が出るまでにはさまざまな感覚機能(聴・視・嗅・触・運動感覚)の発達や人とのかかわりの発達、知的機能の発達などそれまでは独自に発達していた機能が、このあたりでそれぞれの発達が関連しあって乳幼児期後半期(6か月以降)の子どもの生活やあそびといった動作・行動に統合化されて現れてきます。そして、それが、「象徴機能」の発達の結果として「言語」の獲得(初語)に結びつくわけですが、こうした初語表出の前提になる発達はきっと普通にあったのではないかということです。だからお母さんは「子どもと通じている」という感覚をもち、ある意味安心しておられたのだろうということです。

 しかし、聴覚障害乳幼児の前言語期における言語発達の様相を記述した文献資料は残念ながらほとんどありません(調べた限り皆無でした。この時期は聴覚補償がメインテーマなのでしょう)。そこで、ある聾学校乳幼児相談に通っている1〜2歳児5名の育児記録を借用し、その発達の様相を抜き出してみました。そうしたら5名とも前言語期における言語獲得につながる発達的な指標はちゃんと出ていたのです。そして、手話の初語が1歳前後に出ていることもわかりました。ここでは100dB重度難聴の子と50dB中等度難聴の子の例を紹介します(添付ファイル1,2)が、50dBでも初語が手話というのは、家庭で音声と併用して手話を積極的に使っているからで、音声より手話のほうが獲得時期としてはやはり早いということでしょう(音声だけの場合、音声言語での初語は中等度難聴でも1歳後半になることが多く、聴覚からの入力だけで発語まで至るにはそれだけ負荷が大きいということでしょう)。

 添付ファイル(A児・高度難聴)
 聴覚障害児の言語発達で大事なことは、まず、親子でしっかりと関係ができているかどうかです。子どもが母親を好きであれば、親のすることをしっかりと見てくれます。親子でいっしょに生活や遊びを楽しむためには、まず見てくれるということが大前提です(聞こえない子は見ることで人と関わりさまざまなことを学んでいきますが、視覚の特徴は一方向的で暗闇では使えず意図的な注意が必要だからです)。例に示したA児の5か月の記録から、子がよく親に視線を向けているのがよくわかります。そして、親子の関係はやがて親が指さしているモノを見る(8か月)。そして自分でも指さしてそれを親と共有するという様子がみられ(11か月)、子・親・モノとの「三項関係」ができていることがわかります。伝え合う関係です。同じモノを注視すること(共同注視)ができないと言葉を教えることはできませんから、三項関係というのは言語獲得の前提です。
 
 次に、認知・象徴機能ですが、ものごとを記憶し、それがイメージとして残るようになると、例えば「トーマス」という母親がたまたまやった手話(この時点で手話も少しずつ理解するようになっている)から、〈そうだ、ぼくのトーマスどこにあったっけ?〉と思い出し、となりの部屋にとってくる(7か月)などの行動が出てきます。また、写真をみて以前の記憶と照合したりもできるようになります。
 
 さらに、お母さんの手話をよく見て真似(同時模倣)したり(母との関係ができているから見るという側面もあります)、誰かのやったことを記憶し、そのイメージに従って真似をしてみたり(遅延模倣)、手話ではないけれど手話に似たひとりごと(手話喃語かも?)も出るようになり(10か月)、そして10か月での手話の初語に繋がっています。

中等度難聴児の言語獲得は? - きいじい(掲示板管理者)   2017/01/08(Sun) 14:30 No.866
添付ファイル下(中等度難聴)
 B児は中等度難聴です。通常、聴力50dBでは補聴器のみで音声言語中心でいくと思いますが、この家庭では手話も使っています。50dBといってもこの時期は補聴器を装用してやっと音声が入り始めた時期なので、音への反応はあっても、その音がまだことばとして理解できているわけではありません。しかし、音は確実に入っており、B児は9か月で音声による喃語が出ています。この点で、重度難聴児が手話喃語に行くのとは異なり、意味的に通じる手話が先行しながらも音声も並行していることがわかります。
 B児の場合も初語は手話で、犬を見つけて/ イヌ/の手話をしています(1さい1か月)。きこえる子でも初語よりも前に、「バイバイ」とか「いただきます」などの動作による表現が先行しますから、ましてきこえがまだまだ十分でない中等度難聴児に、その動作表現の延長線上に手話という言語の獲得があったとしてもなんら不思議ではありません。B児の場合は、やがて音声での表出も出てくるのではと予想され、手話と口話を併用する手話になっていくのではと予想されます(中等度難聴児の場合はこのような手話・口話併用型が多いです)。
 
 さて、最初の聴覚障害大学生の話に戻りますが、この時代はまだ手話が使われていない時代です。安定的な母子関係が成立し三項関係やイメージの獲得もでき、日常生活でのルーチンなやりとりは身振り動作や具体的な行動としてでできており、お母さんもとくに問題を感じられなかったのだろうと思います。また、ことばはなくても子どもは頭の中にもっているイメージを操作して遅延模倣があったり、見立てあそびなどもそれなりにできていたのだろうとも思います。ですから言語獲得の前提条件はクリアしていたと思います。ただ、当時は手話がなかったために初語にはつながるまでには至らなかった。その時期は1年ほどずれ込むになったわけですが、本人の言葉の覚えもよく、保護者も安定して前向きに対処できたことがその後の言語発達を順調に推し進め、最終的には大学進学に至る日本語力・学力の習得につながったのではないかと思います。

No.849「動詞の活用」楽しんで勉強しています 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2016/12/21(Wed) 20:34

ある地方の聾学校の先生から以下のようなメールをいただきました。このようなメールをいただくと本当にうれしくて、ああ、やっぱり教材(添付ファイル1「絵でわかる動詞の活用」を使用)を作ってよかったなと励まされます。

「私が担任している高学年の子どもは日本語力の厳しい子ですが、2学期後半から動詞の活用の学習に入りました。活用のルールが分かり、楽しそうに学習しています。例文で助詞も一緒に学ぶと、動詞を活用させた短文は、正しく書けることが多いです。日常の日記の中でも使わせていきたいと思っています。間違えてしまうのは、書きたいことが膨らんで、3語文が4語文・・・と増えたときに、名詞や助詞で間違えてしまうことが多いです。スモールステップで取り組んでいきたいと思います。何より、今まで書くことに対して苦手意識のかたまりのようだった子が、楽しそうに宿題を催促してくれているのが、私にとっても夢のようです。」

 日本語で最も重要な品詞が動詞です。なぜなら、文は動詞を「土台」にして、その上に名詞という「柱」や「屋根」があり、その柱や屋根を支えたりつないだりする助詞や接続詞があったり、壁や窓にあたる修飾句や副詞があったりする構造になっているからです。
(添付ファイル2)

 ですが、きこえない子に一番難しいのが実はこの動詞であり、助詞です。動詞の難しさは複雑に活用すること、助詞の難しさは文の中でしか身につけることができないからです。

 成人の人たちの文の基本的な誤りのほとんどは動詞と助詞です。残念なことですが、過去の聴覚障害教育ではここがきちんと指導できていなかったということになります。小中高の自立活動・国語の時間をトータルすると実に2000時間以上。そう考えると聴覚障害教育ってきこえない人たちにとって一体なんだったんだろうと真剣に反省しなければならないと思います(添付ファイル3)
 
 もう一度言い換えると、きこえない子たちの文法指導の柱は“動詞と助詞”であり、動詞と助詞が正しく使えるようになると、文の誤りはかなり少なくなります。ここは、教科書以前の段階の大事な所なので、ぜひ、自立活動や国語の指導の中で小学部のうちにしっかり取り組んでほしいところです。

日本語の文はこういう構造になっている - きいじい(掲示板管理者)   2016/12/21(Wed) 20:39 No.850
このような構造図にすると、全ての名詞・句が最後の文末の動詞にかかっていることがよくわかる。

成人の人たちの文の誤りも動詞と助詞 - きいじい(掲示板管理者)   2016/12/21(Wed) 20:51 No.851
 日本の聾教育100年のうち後半50年は(聴覚)口話法でした。しかし、残念ながらそうした方法では日本語の読み書きの力は育ちませんでした(もちろん西川はま子のような特殊事例も存在します。特殊事例というのは、3歳より徹底した父親による個別指導を受け、就学以降は近江兄弟社社長夫人一柳女史宅に住み、当時の上流階級における個人指導や家庭教師による指導を受けたという意味で、当時の一般庶民が通った集団による口話指導とは比較にならないからです)

西川はま子の手紙 - きいじい(掲示板管理者)   2016/12/21(Wed) 21:13 No.852
 西川はま子について書いたついでにはま子の達筆ぶりがうかがわれる手紙のコピーを掲載しておきます。これは、今では竹細工で世界的に有名になられた杉田静山先生への西川はま子からの手紙のコピーです(昭和20年代)。3年前、杉田先生に西川はま子についてのインタビューに行ったときにいただいたものです。文の誤りどころか字も本当にきれいで、きこえない子の可能性は、幼少期からの教育によってこんなにも変わるのだということの証明のようなものです。

No.843「きれい」と「かわいい」活用のちがいは? 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2016/12/12(Mon) 18:30

ある方からこんな質問をいただきました。
きこえない子の日記の間違いに、以下のような間違いがありますが、これをどのように指導すればよいでしょうかという質問です。

1.「花火がとてもきれいかったです」 →(正)「とてもきれいでした」
2.「うさぎがとてもかわいいでした」 →(正)「とてもかわいかったです」

きこえない子は、「〜い」で終わることばの活用の間違いを時々します。ただ、いわゆる現在形の時は「花火がとてもきれいです」「うさぎがとてもかわいいです」と「です」をつけるだけなのであまり間違えませんが、過去形にすると上記のように変わり方が違うので混乱してしまうわけです。

これらの違いは、国文法でいう形容詞と形容動詞の活用の仕方の違いなので、これらの活用のルールはそれぞれの活用のルールとして指導する必要があります。では、以下の言葉はそれぞれどちらの活用になるでしょうか?

1.きれい  2.かわいい  3.きらい  4.うつくしい  5.とくい
6.すばらしい  7.ゆうめい  8.よい  9.ていねい  10.わるい

答えは、奇数番の言葉は「形容動詞」、偶数は「形容詞」ですね。

形容詞の活用は、動詞と違って一つのパターンだけですのでこのパターンを練習すればよいだけです(添付ファイル1参照。勿論、この「形容詞活用表」を埋めるだけでなく、必ず「例文作り」をさせたり、教科書の中に出てくる形容詞を取り出したり、日記指導の中で実際の使い方を指導します)

 問題は、「形容動詞」のほうです。形容動詞は学者や専門家の間でも議論の多い品詞で(これについては今ここでは取り上げません)、「活用する」と考えるよりも、きこえない子には「後ろに『な、に、で』がくっつく、ある特別な名詞(=「なにで名詞」)として教える方が分かりやすいです(添付ファイル2)。

 そして、「な」の後ろには名詞が、「に」の後ろには動詞が、「で」の後ろには形容詞やなにで名詞が来る、と教えます。また、普通の名詞と同じように後ろには「です・でした・ではありません・・」といった文末表現「です・だ」の活用が来るということも指導します(添付ファイル3)。
 例えば、「きれい」では、
「きれいな 景色(名詞)」「きれいに 片づける(動詞)」「きれいで やさしい(形容詞)先生」「空がとてもきれいです・でした」といったように例文を作らせます。

 このように、形容詞と「なにで名詞」(=形容動詞)の指導をそれぞれ自立活動の時間などで行い、それを国語の時間や日記指導の中で応用・発展させていくとよいと思います。
下の添付ファイル1「形容詞の活用表」は、『きこえない子のための日本語チャレンジ』及び『動詞形容詞活用練習ノートCD』(難聴児支援教材研究会発行セット2200円)をご覧ください。

「なにで名詞」(=形容動詞) - きいじい(掲示板管理者)   2016/12/12(Mon) 18:42 No.844
(添付ファイル2) 
このような、ホワイトボード用のマジックで書き込み可能な「品詞カード」を準備して指導します。また、このような「なにで名詞一覧表」を掲示しておくのもよいでしょう。

「なにで名詞の活用パターン」 - きいじい(掲示板管理者)   2016/12/12(Mon) 18:46 No.845
(添付ファイル3) なにで名詞(形容動詞)は、このような使い方ができます。また、後ろに「です」の活用が来るのは「名詞」と同じです。

形容詞の活用表 - きいじい(掲示板管理者)   2016/12/13(Tue) 08:40 No.846
(添付ファイル1)
 形容詞の活用の練習をこのようなシートを使ってやります。もちろん、表に書き込むだけでは意味がないので、必ずこの表の中からどれかの活用を使って例文作りをさせます。また、今、やっている国語教科書の単元から形容詞を探させ、その形容詞の活用をこの表に書かせたりします。

No.842一歳で言葉で説明する大切さ 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2016/12/05(Mon) 15:19

 子どもを歯医者さんに連れて行くって本当に大変ですよね。とくに、1歳代のきこえない子を歯科検診に連れていくのは至難の業。ちゃんとことばで教えられたらどんなに助かることか、という保護者は少なくありません。
 さて、以下に引用する記録は1歳7か月になったばかりのきこえない子の育児記録です。1歳前から手話を使い、1歳0か月で手話の初語が出て、それ以来、手話で会話の力を伸ばしてきた子です。

 [今日は歯科検診日。出かける前によく手話で説明した。「今日はこれから歯をみてもらうよ。虫さんがいないといいね。」A子(1歳7か月)は口を開けて、『虫』の手話。「そうそう、虫さんいたらいやだね。だから先生にみてもらうんだよ」A子うなずく(最近、話がわかるとうんとうなずくようになった)。
 
 会場に着いて、沢山の子どもたちがいて少し不安そう。そこでもう一度説明する。「あの部屋の椅子にごろんとしてみてもらうよ。大きな口をあけてあ~んって。できる?」C「うん」とうなずく。(中略)
 
 いよいよ呼ばれて部屋へ。診察台を見て泣き出すA子へ「大丈夫。ごろんして、あ〜んして。ママはここにいるよ」 A子がを台へ寝かし泣いているところへ、医師が笑顔で「大丈夫よ。あ〜んして先生に見せて」。言葉はわからなかっただろうが状況を察して口をあける。医師に「はいっ、虫さんいませんよ。おしまい。よくできたね」と褒められて私の顔を見る。私は「終わりだよ。あ〜んできたね。」と手話で話し、抱き上げると涙をぽろっと出しながらもにこっと笑う。

 帰宅後、さっきやったあ〜んをして歯を見せるという再現遊びを私が医師になって一緒にやった。物事を始める前、途中、後で、きちんと経過を見せて話すことがいかに大事か痛感した。]

 大切なことをちゃんとわかっておられる親御さんで、すごいなと感動します。子どもも1歳7か月という年齢と、言葉(音声言語)ではまだまだ理解できない聴覚障害という障害の存在を考えたとき、ここまで母親のいうことを理解して、泣きながらも我慢してやりきれるというのは、普通では考えられません。その育ちの秘密はどこにあるのでしょうか?

 きこえない子は、しばしば「9歳の壁」が越えられないとか、読み書きができないとか、学力がつかないとか言われますが、「日本語が身につかない」という前に、聴児と同じように1歳で言語(Lauguageが大事なのでありSpeechやHearingが大事なのではありません)を獲得し、その言語(Language)を使ってやりとりし、年齢に応じた認知の力や思考力、社会性、対人関係能力、知識などといったトータルな発達をしっかりと伸ばしているのだろうか?と考えてみる必要があるのではないでしょうか。

 この親御さんは、生活の中での出来事(買物、洗濯、外出、食事、入浴などあらゆること)を子どもに見せ、一緒にやり、事細かに子どもにその動作・行為についてその意味を話しきかせています(上の記録でもなぜ歯医者の検診に行くのかを1歳半の子のレベルに合わせて説明しています)。その毎日の繰り返しの中で、子どもは「突然わけもわからず病院に連れていかれる」(日々こういう体験をしている子どもは残念ながら少なくありません)ということはなく、その子どもなりの理解の中で病院に行くことを意味づけています。

 この掲示板(NO839)で1歳前から「絵カード」「写真カード」を使うことを勧めているわけは、実はそこにあります。これからやることを見せる(予想・見通し)、これからやることを話す(写真や言葉で理解する)、今やっていること(体験)をからだで実感し、ことばと結びつける、さっきやったこと(体験)を振り返って再現し、イメージや知識として頭の中に定着させる、こういうことの繰り返しによって、ことばで考える力を伸ばしていると言えます。
 ことばがないとせっかく体験したことも知識としてなかなか定着しません。ではきこえない1歳の子のことばはなんでしょうか? 中等度難聴でも音声言語の獲得は2歳近くになる子が多いですし、人工内耳はもうちょっと遅いでしょう。しかし、手話から始めれば2歳になるまでに様々なやりとりができるようになります。そのやりとりがトータルな発達を促します。
 では、音声言語はどうなるのか? 心配いりません。このお子さん(聴力はまだ未確定ですが80デシベル台?)も手話だけでなく、耳も同時に使い、自分で簡単な発語をし、指文字に意味があることが少しずつわかってきています。日本語は手話の発達より遅れますが、ついてきます。口を酸っぱくして言いますが、手話は決して音声言語の獲得を妨げるものではなく、むしろ促進します(「二重符号化」による効果でしょう)。このお子さんがまさにそうだからです。

No.839写真カードを0歳から使う 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2016/11/23(Wed) 01:30

 写真カードや絵カードなど視覚的な教材のよさは、早い時期から使用することで、まだ手話も音声言語も「ことば」というものを身につけていない段階から、子どもが自分の経験を思い出させるきっかけとなり、自分の経験を他者(多くは母親)と分かち合い、共有しあうことができることです。
 
 では、いつ頃からそうした写真・絵カードは使えるようになるのかというと、写真や絵を意味のあるものとして「みる」ことができるようになる時期、指さしたものを一緒にみることができるようになる時期、1歳前後からではないかと思います。
 このころは写真と実物を見比べて指さしをし、「同じだ」と確認している子どもの様子が記録されています。実物と写真・絵を見比べて「同じ」と認識できることは、実物と実物ではなく、実物とその実物の抽象である写真を「同じ」と認識できる力は、モノや語のカテゴリーの形成の基礎となる力です。
 また、二次元上に表現された写真は、さらに抽象性の高い絵・イラストへと発展し、さらにそれは文字という記号に発展していきます。その最も基礎にあるのが写真カードではないかと思います。
 そこで保護者の育児記録からそうしたカードを使って子どもとコミュニケーションしているというエピソードをいくつか拾ってみました。
 
(1)0歳後半の記録
1「写真カードを見せると、視線が写真・文字に行く」(7か月、Aちゃん、意味のあるものとして認識し始めている)

2「お風呂の写真カードを見せ、『お風呂』の手話をすると喜んだ。」(9か月、Bちゃん、写真から好きなお風呂を思い出している)

3「ベッドとベッドの絵カードを見比べながら、『おんなじだね』と手話をすると、自分でベッドと絵カードを見比べて指差しをした」(9か月、Bちゃん、実物と写真が同じなんだと認識し始めている)

4「靴下についているパンダをみて、私(母)が『パンダだね』と手話すると、子どもは靴下の絵を指さした」(9か月、Bちゃん、靴下の模様と自分の知っている動物園のパンダが同じなんだと理解できている)
 
(2)1歳前半の記録
5「家を出る前に「西友ストアへ買い物だよ。西友ね。」とやり、着くと「西友に着いたよ。西友だよ。」とやると写真を指さし、「ア!」。次に,西友の看板を指差し「ア!」と言う。(1歳2か月、Cちゃん、日々の買い物の場である西友と西友の写真とが同じなんだと気づいた)

6「E病院のA先生の写真をみて、実物のA先生と何度も見比べている。(1歳3か月、Dちゃん、写真のA先生と目の前にいるA先生が同じなんだと気づき始めている)

7「午前中、私がいつもスーパーへ行く時の格好(帽子をかぶって、ジーンズに着替えて)をして、Eに声をかけようとすると、私の方を見たEが「うーうー」とスーパーのカードを指さす。(1歳4か月、Eちゃん、日々の買い物をするスーパーとスーパーの写真とが結びついており、自分も連れて行ってほしいと訴えている)

 以上のように、0歳後半から1歳前後にかけては、写真カードが言語獲得期前後のコミュニケーションの有効な手段として機能していることがわかります。こうした1歳前後の写真カードの使い方(体験カードとして使う)から、やがてそれらを冊子化した『ことば絵じてん』として、あるいは『絵日記』として、多様な教材へ発展していくのだと思います。

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