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No.1090考える力を育てる幼児期の工夫 投稿者:きいじい(掲示板管理人) ...2017/09/29(Fri) 14:47

きこえない子たちは、日本語の読み書きの力が弱いだけでなく、ことばを使って考える力すなわち抽象的な思考力とか論理的な思考力が弱いということが言われてきました。
 例えば、これは以前にも紹介しましたが、以下のような3つの問題があり、この問題の3番目の問題は、聾学校高等部で正解できる子は4割程度という実態があるということです。この3番目の問題は、聴児では4年生でできる問題と言われている問題です(岸本裕史1982)。

問 1「太郎君はみかんより飴が好きです。飴よりチョコが好きです。太郎君の好きなものの順は?」 

問2「もし、ねずみが犬より大きく、犬が虎より大きいとしたら、大きい順番はどうなるか?」

問3「A町、B町、C町、D町、4つの町がある。A町はC町より大きく、C町はB町より小さい。B町はA町より大きく、D町はA町の次に大きい。大きい順番を書きなさい。」

 このような、3つ目の問題も解けるような抽象的な思考力を育てるために、私たちはどうすればよいのかということになるわけですが、これは、幼児期から生活や遊びの中で少しずつ積み重ねていく力だと思います。要するに子どもに「考える」経験をさせていくという当たり前のことなのですが、きこえない子には、意外とこのような「自分で考える」経験をさせていないのではないかと思うことが時々あります。

 どういうことかと言うと、手話を使うと日常生活の中で通じないという経験が少なくなり、生活の忙しさということもあると、生活の用が足りればそれでコミュニケーション終了! となっているのではないかということです。聞こえる子どもは、耳からの情報が沢山入ってくるのでそれでいいのですが、きこえない子はそれだけでは十分ではなく、情報入力の不足→自分の頭で考える経験の不足→思考力の不足ということが起こってくるわけです。

 では、そのためにどんなことをすればよいのでしょうか? それは、日常会話を「ご飯食べたの? 風呂に入ったの? もうテレビはおしまいにしなさい。九時だから寝なさい・・・」といったルーチンな会話で終わらせず、もうひとつ子どもとのやりとりを深め、子どもに「考えさせる」会話をするということです。

メモ帳を使った工夫 - きいじい(掲示板管理人)   2017/09/29(Fri) 15:01 No.1091
2 つ目の添付ファイルは、ある年中児の保護者のメモ帳です。
「カーテンを開けてちょうだい」といった何気ない生活の中での一コマですが、そのちょっとした機会を逃さずに、「どうしてカーテンをあけるのか?」ということをわざわざ文字化して文で確認しながら子どもに考えさせ、会話しています。忙しい日々を送っている保護者も多いことかと思いますが、1日1回でもこうした手間を掛けることの積み重ねが子どもの考える力を育てることにつながるというのも確かだと思います。

No.1087日記指導と文法指導は車の両輪 投稿者:きいじい(掲示板管理人) ...2017/09/24(Sun) 21:28

 前回、「見たこと」を日記に書くことの大切さについて書きましたが、今回も日記指導の方法について書きたいと思います。
 前回、日記を書いて送ってくれた小1の女の子(A子ちゃんとしておきます)から、また、日記がFAXで送られてきました。それに対してどのように返事をしたのかその返信の内容についても紹介したいと思います。

◎A子ちゃんの日記(原文のまま、92字)
「おとといあさがおのたねをきりました。
なかがはっぱみたいなものがありました。
わたしはすごいなとおもいました。
つぎの日たねをみたら、しろいのたねがくろいにかわっていたから びっくりしました。」

◎私からの返信(漢字にはフリガナあり)
 朝顔の種を切ってみたのですね。そうしたら、種の中に葉っぱみたいなものがあったのですね。それは、なんだと思いますか? そう、それが大きくなると、朝顔になるのですね。今はまだ、種の中にあるけれど・・。
 
 A子ちゃんも「わたしは すごいなと おもいました。」と書いているけれど、びっくりしたでしょう? 
それが 朝顔のいのちなんだよ。人間でいえば、お母さんのおなかの中にはいっている赤ちゃんみたいなものかな? だから、大事にとっておいて、来年の春、土の中に返してあげてね。

 それから、もう一つよい発見をしましたね。「つぎの日、たねをみたら しろいのたねがくろいにかわっていたからびっくりしました。」というところですね。
 白い種の中は、黒い種と少し様子がちがうかもしれませんね。

 あと、なにかの様子をあらわすことばで、最後が「い」で終わるとばがあるでしょう? 例えば、A子ちゃんが使っている「白い」「黒い」など。これを形容詞(けいようし)といいます。
 ほかにも「大きい」とか「小さい」、「長い」とか「短い」、「高い」とか「低い」などもそうですね。
このようなことばは、表のような変わり方をします。「白い」と「黒い」だったら、どうなるかな? お母さんとそうだんしながら表に書いてみて下さい。そうすると、
1.「しろいのたね」は、どうなればいいかな? ⇒?
2.「くろいにかわっていたから」は、どうなればいいかな? ⇒?

 実は、この日記の前にA子はもう一つ、「朝顔」についての日記を送ってくれていました。その日記は、朝顔の種をとったこと、かずを数えたら1つから6つまでいろいろだったこと、種には白いのや黒いのがあったこと、つるはすでに切れていて葉っぱは茶色になって死んでしまったことなどを書いていました。
 それに対して私からは「黒い種をとって、2,3日水につけてから、縦に切ってみるといい」ことなどを書いて返信していました。
 
 そして今回、それを実際にやってみて、その感想の日記だったわけです。朝顔は小1の生活科でとりあげる教材で、たいていは種をとるだけで終わります。しかしもう一歩踏み込んで、種を切って、その中をみることで「いのち」が育まれていることを発見できます。つるや葉は死んでも、ちゃんと種の中に命を宿しています。そして、翌年、その種を蒔くことで再び「いのち」が芽生えること、すなわち生命の循環について実感させることができます。

 このような思考と認識を育てることと同時に、もう一つ、聾学校で欠かせないのが日本語指導です。
 ただ、日本語の誤りは一つの日記で一つだけ取り上げることです。ここでは、形容詞の活用だけを取り上げています。
 しかし、FAXで文法指導まですることは難しいので、ここでは、形容詞活用の表だけを送り(添付ファイル)、とりあえずこの活用表を「白い」と「黒い」を使って埋めてみるように言っています。
 そしてあとは学校の文法指導に任せることになります。動詞や形容詞、助詞の間違いなどは、作文の中で赤を入れて直させただけでは、そこにある文法ルールがわからず、また同じ間違いを繰り返します。形容詞のルールは小1でも理解できますし、一度指導すれば間違いはしなくなります。その意味で日記・作文指導と文法指導は、日本語指導の車の両輪だとも言えると思います。

*形容詞の活用については「きこえない子のための日本語チャレンジ33〜34頁参照)

No.1085「見たこと」を書く日記の大切さ 投稿者:きいじい(掲示板管理人) ...2017/09/19(Tue) 13:02

 子どもが書く日記のタイプには二つあります。一つは「したこと(やったこと)」を書くタイプの日記、もう一つは「見たこと」を書くタイプの日記です。とはいっても、子どもたちが書く日記は、「今日は〜をしました」という前者のタイプが圧倒的です。
 後者の「見たこと」を書くタイプは、それこそめったに「見たこと」がありません。今日、紹介するのは、この「見たこと」タイプの日記です。聾学校の小学部1年生の女の子が書いたものです。

8月18日
「わたしは あしたのあさ あさがおが いくつさくか わかります。いくつさいたは はじめて 9さきました(筆者注;いくつ咲いたか数えてみたら、今日初めて9個も咲いたという意味だと思われます)
 ゆうがた つぼみを かぞえると あしたのさいたはなのかずが わかります。あしたは 2こ さくと おもいます。たのしみです。」(原文のまま)

8月19日
「きょうは こたえは 2こ さきました。『えっ。』やった。きのういったのは あたり! 『やった。』
 あしたは さくは わかります。あした4こさくと おもいます。」(原文のまま)
  
 この作文のよさは、毎日朝顔を細かく“観察”して、何度も観察した結果、自分で、次の日に咲く花の数が“予想”できることを“発見”し、それを日記に“記録”し、そして次の日に、自分の“予想”を“検証”し、さらにその結果を確かめるために、さらに観察を継続していることです。これはまさに「科学者の目」ですよね。

 そして、この日記が「見たこと」タイプの典型的なものです。もちろん、その中に「したこと」が含まれていないわけではありませんが、あくまで書く中心になるのは、「見た」対象そのものについてのことです。
 この日記では、朝顔という対象そのものに焦点化し、朝顔を深く観察し、そこから“仮説”を立てて検証する“仮説―検証”型の思考があるのがわかります。

 この女の子は聴者家庭の子どもですが、聴力も厳しく日常会話は手話中心です。書いている文にはまだまだ文法的な誤りも多いのも事実です。しかし、ものごとをみる力はとてもよく育っていて、科学的な思考の芽が育っていることがわかります。

 このように「見たこと」に焦点化して書くことによって、対象への、そして世界への認識をさらに深いものにしていくことができます。ただ、このようなタイプの日記は、ある程度、大人の側の指導も必要です。例えば、「今日は、タンポポを取って帰って、タンポポについて書いてきてごらん」「『秋になった』という書き出しで始まる日記の続きを家で書いてきてごらん」などとテーマを与えてクラスで一斉に書かせ、それを皆で発表する中で、さらに認識を深めていくといったやり方です。
 このような作文指導の時間が「自立活動」とか「国語」といった時間の中で週1時間は、聾学校では必要だと思います。

 そして、このような活動の中で培った思考の力と日本語の読み書きの力が備わったとき、いわゆる「9歳の壁」が超えられます。自分の言いたいことを論理的に、正確で、そして他者を納得させられる日本語の文章表現ができる、その表現力こそ、障害者に対する偏見や差別、理不尽な対応の残る世の中を生き抜いていくための大切な力なのだと思います。

No.1083苦手な「比較表現」の指導 投稿者:きいじい(掲示板管理人) ...2017/09/09(Sat) 22:17

 Jcoss(ジェイコス・日本語理解検査)という検査の中に「比較表現」という文法項目があります。
 例えば「犬は ねこより 小さい」「えんぴつは ものさしより ながい」といった同様なパターンの問題文が4つあり、その4つとも正解のとき、「比較問題」は「通過」という評価をします。子どもが「通過」する割合(通過率)を聴児と聴覚障害児で比べると、聴児の場合は低学年(1・2年生)で70%の子が通過しますが、聴覚障害児では10%程度に過ぎません。
 このような何かと何かを比べる、何かと何かの関係を考えるといった思考は、聴覚障害児が最も苦手とするところで、「受動文」(する、される)とか「授受文」(あげる・もらう・くれる)なども苦手なもののひとつです。
 
 子どもの回答パターンで非常に多いのは、例えば「犬は 猫より 小さい」であれば、「小さい」に近いほうの単語すなわち「猫」が「小さい」と結びつけて理解するパターンです。
 このような子どもは、まだ助詞がわからない子たちなので、「犬 猫 小さい」と単語だけで頭の中にイメージを描き、「猫 小さい」と理解してしまうのです。
 では、この比較表現をどう指導すればよいでしょうか?

 「より」は、国文法では格助詞に分類され、一つは「正門より入る」といった起点「〜から」と同じ意味があります。もう一つは、比較するときに使います。
 添付ファイルにある例文「犬は猫より大きい」は、述部が形容詞で終わる「形容詞文」です。『日本語チャレンジ!』(51頁)にも書いたように、文の最後が形容詞で終わる「形容詞文」には、基本の文型は2つあり、「Bが大きい」「太郎が正しい」「水が冷たい」などのいわゆる「主語+述部(形容詞)」の第1文型と、もう一つは「太郎はパソコンに詳しい」「次郎はゲームに熱心だ」「花子は地理に疎い」など「〜に」を必要とする「主語+〜に+述部」の第3文型の二つです(「太郎は詳しい」だけでは何に詳しいのかがわからないので「詳しい」という形容詞には、「〜に」にあたる情報がもう一つ必要です)。

 さて例文「犬は 猫より 小さい」の基本文型は、「犬は 小さい」でほかに情報を必要とせずこれだけで意味的に成り立つので第1文型(主語+形容詞)です(「犬は 〜に 小さい」とはなりません)。つまり、この例文で最も言いたいことは「犬は小さい」ということであり、「猫」は、あくまで「犬は小さい」ということを言いたいがために、その比較の対象として持ち出された文を詳しくする「情報」と考えればよいわけです。

 そこで、この比較表現を扱う前に、まずこの形容詞文をしっかりと練習することです。

「お湯は 熱い」「水は 冷たい」「りんごは 赤い」「馬は 速い」「熊は 強い」等々。

 そのうえで、「犬は 小さい」に「〜より」という情報を加えます。(添付ファイル)
この基本がわかれば難しい構文ではありません。

 因みに江副文法では、「より」を『時数詞構成語』とよんでいます。時数詞とは、期間や範囲をあらわす名詞で、「明日」「来年」「3時」「春」「夕方」などがあり、これらは「明日、行きます」「夕方、雨が降った」のように助詞を省略した使い方が可能です。

 『時数詞構成語』とは、時数詞と同様な性質をもったことばで「〜より」(3時より開始)、「〜だけ」(一つだけちょうだい)、「〜から」「〜まで」(朝から晩まで)、「〜くらい」(3分くらいしたら開けて)、「〜ずつ」(一つずつ配る)、「〜ながら」(食べながら飲む)、「〜ばかり」(5分ばかり行くと)、「〜きり」(一つきりしかない)などがあり(ほかにもあるが省略)、これらの「時数詞構成語」は、「時数詞」と同様に期間・期限・数量・範囲などをあらわします。

 また、「時数詞構成語」のカードの空欄に入る語は、名詞だけでなく、動詞も可能です。例えば「食べるより 飲む方が いい」など。またついでですが、例文「およぐの」は、『名詞構成語』で、動詞に「の」がつくと一つの名詞として扱うことができます。

教科書の中の「比較表現」の指導 - きいじい(掲示板管理人)   2017/09/09(Sat) 22:21 No.1084
 比較表現は教科書の中でもしばしば出てきます。最も多いのはもちろん算数です(3より2大きいかずは?」など)が、国語でも出てきます。
 例えば「スイミー」(小2学校図書・光村図書など)の中には「〜より」が使われています。このような時に指導するのも一つの方法です。

No.1070教科書の難解語彙の指導 投稿者:きいじい(掲示板管理人) ...2017/08/29(Tue) 23:11

きこえない子たちは、きこえる子と比べて知らないことばが沢山あります。そのため教科書を進めるときに、知らないことばをどう教えるか、という問題が常に起こってきます。

例えば、光村図書の小1国語(上)には「くちばし」という説明文があって、その中にはいくつかの「難しいことば」が出てきます。その中から「さきが するどく とがった 口ばしです」の文をとりあげ、どのような方法で「難しいことば」を指導するのか、いくつかの方法を示してみたいと思います。
 
1.まず、「さき」ということばが出てきますが、「さき」ということばと同じようなことばをさがしてみるという方法があります。例えば、「さきっちょ」「つまさき(爪先)」「みさき(岬)」「へさき(舳先)」など。一緒に思い出させながら探しますが、「さきっちょ」とか「つまさき」は知っている子もいるでしょうが、「みさき」とか「へさき」を知らない子どもは少なくないでしょう。このような子には、添付ファイル2の写真なども示して、「さき」ということばがどのような意味・イメージをもつことばかを探させます。

2.また、経験を思い出させ、例文を作るという方法もあります。例えば真冬の寒い朝、「指先が冷たかった」という経験はないでしょうか? 雪に触って「指先がいたくなった」という経験はないでしょうか? このような経験を思い出させて実際に例文を作ってみるということもできます。

 3.次に出てくる「するどく とがった」はどうでしょうか? 実際に動作化してみるという方法がとれるかもしれません。例えば目の前で鉛筆を削って見せ、「するどく 先がとがった」えんぴつのしんと、「ふとくて先がまるい」えんぴつのしんを示して、どちらがそのイメージをもつことばなのかを考えさせます。 

 4.最後の「くちばし」。知っている「口」と今覚えた「はし」ということばと、教科書に出ているくちばしの写真や図鑑の写真などから「くちばし」が鳥のどこのことか、あるいは犬や猫、馬や牛には「くちばし」があるのかを考えさせることもできます。

 5.添付ファイル2には、教師が作成した「ことばノート」の例が示してありますが、難しいことばをワークシート式のノートにするという方法もありますし、学習したことばを自分で「例文ノート」を作って書き溜めていくという方法もあります。そこに絵などを描いていくのもよいと思います」。このような「例文ノート」を作っていく方法は、自分で作った辞典でもあるので、子どもにとっても楽しいノートになります。
 
6.また、抽象的なことばなどはなかなか授業の中で教えることが難しい場合もあります。そのようなことばは、単元に入る前に学級通信などで事前に紹介しておき、日々の生活の中で、家庭で実際にそのことばを使う場面をみつけてもらい、使ってもらうとよい場合があります。

 7.ことばを指導する方法はほかにも考えられますが、一つ一つを全てのことばを取り上げていくわけにもいきませんから、どのような方法でそのことばを教えるのか取捨選択しながら効率的に進めていくことが必要になります。もちろんそれ以上に大事なことは、いちいちこうした方法をとらないでも済むように、幼児期から日本語の語彙をたくさん身につけておく、という当たり前のことになってしまいます。

難解語彙のノートづくり - きいじい(掲示板管理人)   2017/08/29(Tue) 23:17 No.1071
 学習したことばをノートにしていくことはとても有効です。自分で「例文ノート」とか「ことばじてん」を作るのもよいでしょう。

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