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通常学級で学ぶ子への支援とは・・ 投稿者:きいじい(掲示板管理人) 投稿日:2016/02/13(Sat) 21:54 No.359

 今、メインストリーミングは世界的な潮流となりつつあります。こうした流れを受けで、我が国でもきこえない子たちが地域の小学校で、きこえる子らに混じって授業を受けることも多くなってきました。
 しかし、きこえない子が共通の言語・コミュニケーション手段である音声言語を駆使して、きこえる子と対等に関わっていくことはなかなか大変なことであるのも事実です。
 
 私たち人間は、ことばを介して人と関わり、互いの関係を深め、そこに自分の存在意義を実感します。人との関係性が断ち切られ、孤立した環境の中では、生きていけない存在だといってもよいと思います。他者とのコミュニケーションが阻害される聴覚障害は、人間にとって最も本質的な問題に起因する生きづらさと言ってもよいかもしれません。
 例えば、周りが全て音声言語という通常学級において、きこえない子が、どうすれば周りにあふれている情報を摂取し、周りとコミュニケーションが可能かを考えてみます。
 
 まず、授業において他児の発言を含めてその内容がリアルタイムにわかるためには、視覚的な方法・支援が担当の教師によって講じられる必要があります。仮に聴力50〜60デシベルの音声言語で会話できる「難聴児」であったとして、教室で前のほうにいれば、大きめの声の教師の話はかなりききとれるでしょう。しかし、教師はいつもその子に向いて話しているわけではありません。時には黒板に向かって板書しつつ話すこともあれば、教室の中を歩きながら話すこともあるでしょう。ですから、その子は、先生の話をひと言も聞き漏らすまいと耳を傾け、周りの子たちが今何をしているのかを盛んに目配りしながら、今、何が話されているのか、自分は何をしなければならないのか、パズルの全体像を知るために、必死になって情報のかけらを拾い集めなければなりません。これがきこえない子の現実なのです。
 
 もし、教師がそのような状況に気づかず、その子への配慮を何もしなければ、その子はわからないことばかりが続き、そのうち自分だけの努力では限界があることを感じ、わかろうとする努力をあきらめ、ただ、毎日机に座っているだけになってしまうかもしれません。
 
 また、授業以外の場面ではどうでしょうか? 休憩時間の3〜4人の友達の会話の中に、その子は入って、丁々発止のやりとりはできるでしょうか? 教室に流れてくる校内放送の内容はその子は聞き取れるでしょうか? 体育館や校庭での朝礼の校長先生の話は、その子は聞き取れるでしょうか? もし分からなかったとき、友達や先生は教えてくれるでしょうか? 突然、後ろから名前を呼ばれて気づかなかったとき、「無視された」と友達とトラブルになることはないのでしょうか? 一見、きこえて話せる難聴児であっても、学校という集団の場では、多くの困難さが待ち受けているのです。

 しかし、もしきこえない子なのだということをクラスで受けとめられ、必要な情報が、先生や周囲の誰かから自然に伝えられる配慮がなされれば、その子の「情報・コミュニケーションの障害」は、著しく軽減されるでしょう。そして、そのとき、そのきこえない子は、自分がこのクラスで受けとめられていることを実感し、自分はこの場にいてもよいのだと、心底感じるのではないでしょうか。
 この感覚こそが人が生きていくうえでの、最も基本的に重要な感覚なのだと思います。「安心してください。ここが君の居場所です」と言える、優しさと適切な配慮に満ちた教室・学校環境を作ること、それが担任教師や支援にあたる難聴学級教師に任された大事な仕事なのだと思います。 
 
 

きこえない子のための教室環境 投稿者:きいじい(掲示板管理人) 投稿日:2016/02/07(Sun) 01:58 No.356

一般の幼稚園・保育園はともかく、聾学校幼稚部の教室環境はもっときこえない子に配慮した「可視化した教材」が必要だと思います。

教室の掲示物をみると、そこでどんな活動が日々行われているのかイメージできるものです。
今日は、ある聾学校の幼稚部年長組の教室を参考に、どのようなものがそこに掲示されているのかみてみたいと思います。

まずはこの教室正面の黒板です。新年を迎えたところで干支(12支)の話題やお正月のことで盛り上がったことがわかります。正月の飾りの絵、鏡餅の模型、獅子舞の絵、絵本などが置かれ、真ん中には干支の教材が貼られています。餅つきのためにクラスでお米屋さんに行き、もち米を買ってきたことも板書からわかります。幼児にとって時間の認識は、時間が目に見えないこともあって意外と難しいので、こうした機会に話題にしていくことはとても大事です。

黒板の左側は、最近使った名詞や動詞が色分けしたカードになって貼られています。
教室の窓側をみると、針金を通して、これまでに使ったことばを概念カテゴリーごとに分けて色画用紙に貼ってつるしてあります。「野菜」「果物」「海の生き物」なかには「日本のおばけ」まで。ことばは単独にバラバラに存在しているのではなく、このようなカテゴリーをもっています。そのような構造が視覚的にわかるようにしてあるわけです。また、下のほうには、助数詞の一覧表も貼ってあります。日本語には「枚、匹、冊、頭、台、個・・」など数え方のことばがたくさんあって、しかも、「ぴき、びき、ひき」と言い方も変わるのできこえない子にとって苦手なところです。

 廊下側の壁面はどうでしょう。
前のほうには、ホワイトボードにはり付けた1月のカレンダー。書き込み式になっており、週には「先週、今週、来週」などのことばと変わり方がわかるように色分けした移動式帯テープが貼ってあります。「おととい、昨日、今日、明日・・」なども同様です。
壁には、この3年間の学校での活動がすべてわかるように、行事などのときに撮った写真が月別に貼ってあります。例えば、「年少のときの9月の誕生会はどんなことをした?」「年中のときの運動会のダンスは?」など、過去の思い出をたどると同時にこの3年間の成長ぶりもわかるようになっています。そして、本棚、赤ちゃんを入れておくベッドまで。弟妹を連れてきたお母さんのためには保護者控室はもちろん、教室内にベッドも用意されています。  
きこえない子にとって、視覚的にわかる、ということはとても大事なことです。やったこと、話したことが目で見て確認できることは、ことばや知識の定着に役立ちます。

 このくらいの教室環境は準備したいものですし、それぞれのお子さんの家でも、スペースの問題はあるでしょうが、できるだけ視覚に配慮した掲示(例えば書き込み式の月カレンダーとか連絡版とか)があるとよいと思います。

きこえない子のための教室環境 - きいじい(掲示板管理人)   2016/02/07(Sun) 02:03 No.357
窓側。ロッカーで仕切られ、その上にはカテゴリーに分けられたモノの写真・絵がつるされています。
きこえない子のための教室環境 - きいじい(掲示板管理人)   2016/02/07(Sun) 02:07 No.358
廊下側には3年間の活動が一目でわかるような絵カードが、月ごとにまとめられて貼ってあります。「去年の今頃、なにやっていたかなあ? おととしは?」など、これを見るとわかります。
動詞活用の指導方法 投稿者:きいじい(掲示板管理人) 投稿日:2016/01/23(Sat) 11:15 No.353

 今回は、動詞の活用の指導について、書いてみます。これと関連する記事を過去にいくつか書いていますので、どうぞそちらもごらんください。
掲示板NO225「動詞の活用を絵日記で教えるには?」
   同307「動詞の習得はなぜ難しいか?」
   同312「文法指導で国文法を使わない理由」
 
 さて、動詞の活用は国文法では、5つに分けていますね。でも、子どもに教える時にはこんなに細かくする必要はありません。日本語指導では3つに分けます。
 1グループ・・・国文法五段活用
 2グループ・・・国文法上一段活用、下一段活用
 3グループ・・・国文法か行変格活用、さ行変格活用

 日本語指導では、動詞の活用部分は、ファイル1の表の下のほうを見ていただければわかるように、「ない形」とか「丁寧形」とか「仮定形」「命令形」・・・といったように実際に使われるときの使い方に即して分類しています。
 実際にこの活用の指導の仕方ですが、この3つのグループの中で、「食べる」「着る」といった2グループ動詞は活用は単純なのでここでは省略します。また、3グループ動詞の「来る」「する」は、特別な活用で、そのまま覚えるしかないのでここでは扱いません。
 ここでは、1グループ動詞(以下1G)を例に指導方法について書いてみます。3Gは2つしかないので、残りの動詞は1Gか2Gのどちらかですね。
動詞が1Gか2Gかの見分け方は以下のようにします。

a.基本形が「〜る」以外のウ段で終わる動詞は全て1Gです(「洗う」「歩く」「飲む」)
 
b.基本形が「〜る」となる動詞のうち、「-iru」「-eru」になる動詞は2G、それ以外は1Gです(例えば「着る、起きる、食べる」は2Gです。「謝る」「作る」「掘る」などは1Gです。1Gは「-aru」「-uru」「-oru」になります。

c.「-iru」「-eru」となる動詞のうちいくつか例外があり、それらは「切る、走る、知る、入る、帰る」などです。これらを見分けるには「〜ない」の形にしたときに、「〜らない」となります(「切らない」「走らない」・・)。1G動詞は全て「〜らない」です。
 
 以上のことより「歩く」は、見分け方aで1Gであることがわかります。1G動詞はファイル1の表を使います。

1.まず、この表の上のほうの欄に「あるく」と書きます。「く」はカ行なので、下の五十音表をみて、表の右の欄に縦に「か、き、く、け、こ」と書きます(ファイル1)

2.表のそれぞれの欄に、それぞれの色の字と同じになるように、「あるか」「あるき」「あるく」・・と順に書いていきます。(ファイル2)

3.空欄(白色欄)のところは、右下の表を見ながら書きます。「あるく」の場合は、「〜く」なので、「く」で終わる動詞は「〜いて」になることから、「あるいて」に変わることがわかります。

 以上が1G動詞活用の指導方法です。あとは例文作りをやることです。表に書き込めただけでは使えるようにはなりません。使えるようになるためには実際に文を作ってみること、また練習問題を沢山やることです。

書き方1 - きいじい(掲示板管理人)   2016/01/23(Sat) 11:20 No.354
上に横書きで「あるく」、右に縦書きで「か、き、く、け、こ」と書きます。
書き方2 - きいじい(掲示板管理人)   2016/01/23(Sat) 13:31 No.355
 右の「か、き、く、け、こ」と同じ色になるように、表の欄を埋めていきます。
また、白色欄は、右下の表をみて、入れます。
質問に答えて 投稿者:きいじい(掲示板管理人) 投稿日:2016/01/12(Tue) 20:28 No.350

「きこえない子のための日本語チャレンジ」を購入されている方から、以下のような質問をいただきました。読者の方からのこのような質問は大変ありがたいです。以下、回答させていただきます。ただ、動詞の活用については回を改めて書きたいと思います。

「テキストのどのページが、どの学年に対応しているのでしょうか? 対応している学年毎のページを示してください。また、動詞の活用の指導が難しいです。どのように教えればよいでしょうか?」

 このテキストは、日本語がまだ十分に身についていない子に基礎的な文法事項とくに動詞の活用や助詞を身につけてもらうために作ったものです。こうした基礎的な内容は、小学校または聾学校小学部1〜2年生(低学年)の段階で、「自立活動」(場合によっては「国語」なども含めて)などの時間を使って指導していくべき内容のもので、とくにどのページがどの学年に対応しているというわけではありません。こうした内容を小学校(部)入学までにすでに身につけていれば(つまり動詞や助詞をほぼ誤りなく使えれば)とくに指導する必要はありませんし、小学校高学年とか中学・高校生になってもまだ身についていないのであれば、再度、この段階から学ぶ必要があります。
 ですから、ここで取り上げている内容は、小学校1年国語教科書が理解できるための基礎的内容といってもよいかと思います。
 誤解のないよう、もう少し説明すると、小1の国語検定教科書は、6歳(つまり就学年齢)のきこえる子が自然に身につけている日本語力を前提に作られています。その日本語力とは、例えば語彙数の面では3000語以上はもっていることや、助詞は間違いなく使えるといったことです(助詞は3〜4歳になればだいたい間違いなく使えるようになります。)。しかし、きこえない子たちの多くは、実際にはそこまで到達していないので、教科書を読んですぐに理解できるわけではありません。そこで、まず、日本語の文を理解するための基本(文法)を学習しようというのがこのテキストの主旨です。

 実際にはどのように指導していくのでしょうか?例えば、文法指導を週1時間の「自立活動」のなかで取り上げている、ある聾学校を例にお話ししますと、小1の1学期5月あたりに、まず、「品詞分類」から学習を始めます。いきなり品詞分類かと驚かれると思いますが、小1の段階ではまだ十分に理解できなくとも、ここは避けて通れないので、必ずやります。日本語の文は、単語というパーツがあって、そのパーツを組み合わせて文が作られているということを知って貰うためです。ただ、国文法でやるような詳細な品詞分類ではなく、「名詞」「動詞」「形容詞」「時数詞」そして「助詞」というだいたいこの5つくらいです。この5つを知っていれば、日本語の基本構造は学習できるからです。因みに「副詞」とか「なにで名詞」(いわゆる形容動詞)はその後に学びます(ファイル1,2参照)。

 そして、品詞分類をやったあとに、これらの単語(テキスト「品詞カード」)を実際に並べて、文を作る練習をします。そのならべ方のルールが文法になるわけですが、最初は、助詞の不要な「時数詞」と「動詞」だけを使った文をつくることから始めます(ファイル3)。これは2語文ですから、横に2枚のカードを並べればよいわけですが、文が長くなれば当然日本語の構造は複雑になります。そこで、単語を一直線上にならべるのではなく、構造図の中にこの単語のカードを配置するようにします(テキスト11頁の図)。そのほうが日本語の構造が視覚的・一握的にわかるからです。これについては、掲示板NO340,NO347の図をごらん下さい。

次回は、動詞の活用の指導についてお話しします。

品詞カードの種類 - きいじい(掲示板管理人)   2016/01/12(Tue) 20:33 No.351
 ここでは、ある聾学校の教室に掲示されていた「時数詞」(ピンク長方形)、「名詞」(黄色長方形)、「形容詞」(水色ベース型)の例を紹介します。「動詞」はここにはありませんが、「緑色ベース型」を使います。
品詞カードを使った文作り - きいじい(掲示板管理人)   2016/01/12(Tue) 20:43 No.352
品詞分類を学習したあと、実際に「品詞カード」を使って文を作ってみます。ただ、助詞が入ると少し難しくなるので、助詞を使わないで作れる文から始めます。
 その方法は、「時数詞」と「動詞」だけを使って二語文を作るという学習です。
保護者の質問に応えてー助詞 投稿者:きいじい(掲示板管理人) 投稿日:2016/01/05(Tue) 16:22 No.347

 新年おめでとうございます。
年末26日のNHKEテレ「ろうを生きる難聴を生きる」で「日本語獲得の実践」をご覧になり、そこで紹介された『きこえない子の日本語チャレンジ』について問い合わせを沢山いただきました(ご覧になれなかった方は、1月8日午後12時45分から再放送がありますのでぜひごらん下さい)。
 そのなかで、きこえない子お子さんをお持ちの保護者数名の方から、「助詞がなかなか身につかないので困っている。どうすればよいか?」という質問をいただきました。

 この掲示板では、すでに何回もお伝えしていますが、まず、きこえない子にとって難しい助詞とは、「が(は)、を、に、で、と、の」という一文字の格助詞です(「より」「から」「まで」といった助詞は比較的わかりやすく、「東京から大阪まで」といった使い方の中で身につきます)。
 
 まず、そこで提案したいのは、日本語の基本的な文型にそって助詞と動詞の組み合わせて助詞の使い方を身につけるということです。
 助詞が身についていない子というのは、助詞だけでなく語彙の数も少ない傾向がありますが、それでも「食べる」「飲む」「行く」「作る」といった基本的な動詞は30とか40は知っていると思います。その知っている動詞を使って助詞を身につけるわけです。

 例えば「食べる」「飲む」といった動詞には、必ずその動詞とセットになって使う助詞があります。それはなんでしょうか? 「を」ですね。「食べる」「飲む」という動詞は、必ず「を」が必要なわけです。それを確かめるためには、誰かに「飲むよ!」とか「飲もう」とか言ってみればわかります。そのことばを言われた人は「なにを?」ときいてくるはずです。つまり「飲む」という動詞は「〜を飲む」とセットで使う動詞なのです。

 では「行く」はどうでしょう? もしあなたが誰かに「行くよ」と言えば、相手は「どこに?」ときいてくるでしょう。「行く」は「〜に行く」と「に」とセットで使う動詞なのです。
 
 「作る」はどうでしょうか? もうおわかりかと思いますがこれは「〜を作る」ですから「を」とセットに使う動詞ですね。
 
 それでは「会う」はどうでしょうか? これは「だれに」か「だれと」ですから、「に」もしくは「と」とセットになる動詞です。
 
 このような動詞と助詞のセットの文型を基本文型と言います。その基本文型は添付したファイルのように5つあります。どのような日本語もだいたいこの基本文型で作られています(但し主語を省略したり、助詞を省略したりは、会話では常にあります)。
 
 ですから、まずはこの基本文型で動詞と助詞を組み合わせて文が作れるようになればよいわけです。
 
 その次の段階として、私たちが開発した「助詞手話記号」を使って、助詞の使い方を学習します。こうした方法で基本的な格助詞は身につきます。あとは、実際に文を沢山作ることです。それは日記・作文指導のなかで行うわけです。

助詞しゅわきごう - きいじい(掲示板管理人)   2016/01/05(Tue) 16:26 No.348
助詞手話記号
助詞「で」の意味・用法 - きいじい(掲示板管理人)   2016/01/06(Wed) 14:01 No.349
 助詞「で」には4つの意味と用法があります。
この写真は、ある聾学校の教室掲示で、4つの手話記号を使った用法と例が載っています。
子どもの日記は直すべきか? 投稿者:きいじい(掲示板管理人) 投稿日:2015/12/18(Fri) 20:52 No.345

日記の指導方法として、2つの考え方があります。
 一つは、日記の文や、語、漢字の間違いを直さないからいつまでも間違いが直らない。だからちゃんと直したほうがよい。
 もう一つは、直してばかりいると、子どもは苦手感だけが強くなり、だんだんと書くのがいやになる。だから、間違ってもいいからとにかく書かせる。
 どちらも一理あります。しかし、これは両立しないことではないと思います。直してばかりいる先生の中には、正しい文とはこういう文だ、とばかりに赤字で直し、身も蓋もないほどに書き改めてしまう人がいます。 確かに、これでは子どもは意欲をなくすでしょう。本当に書きたかったこととはまるで違う文になってしまっていますから。
 といって、思いつくままにだらだらと書いている子どもの文を全くと言って良いほどに直さない人もいます。直すのは漢字や語の間違い程度。これも困ります。作文の力はこれでは伸びません。
 
 では、どうすればよいのでしょうか? まず、子どもが書いてきたことに対して、褒めることが大事です。一文でも書いてきたら、そのことを褒めることが大事です。その上で、次にどうすればもっとよくなるかを伝えます。できれば直接、対面で伝えるのがよいですが、忙しい時にはそれがいつもできるとは限りません。そういうときにはノートに書いて伝えることになります。これは必ず毎日やります。書く時間がなければ、日記帳を2册つくり、交換でやれば済むことです。
 ここでは、実際の日記(聾学校小学部2年生原文のまま。固有名詞は変更)を例に、私ならこうする、ということを書いてみます。

 「今日は、昼休みにいろいろなことをしてあそびました。まず、はみがきをしました。つぎにAくんといろいろなことばあそびをしました。それから、トランプをしました。そして、ウノをしました。さい後に、かたづけをしました。ウノが楽しかったです。」

 さて、この文はどこがよくて、どこが課題なのでしょうか?
 この児童は、まず、文を書く基本の型ができています。文を書く基本とは、時間的順序にそって、やったことが書けていることです。そして、この児童の書いた短い文のなかには、ちゃんと起承転結があります。そのことを褒めるべきです。

「○○ちゃん、よく書けているね。やったことが順番に書けているし、だれとやったのかもわかる。そして、なにがいちばん楽しかったかもちゃんと書いてあるね。」

 しかし、そこで終わってはならないと思います。ここでのテーマは、「昼休みに遊んだこと」ですから、そのテーマにそって書くように促します。

「○○ちゃんは、ここで書きたかったことは、遊びのことだよね。そして、いちばん楽しかったのはウノなんだよね。遊びのことだけを書くともっと自分の書きたかったことがはっきりするよ。例えば、歯磨きしたことは遊びとは関係ないよね。だから要らないんじゃないかな。それから遊びを3つやっているよね。例えばことば遊びって書いてあるけど、どんな遊びかな? もうちょっと説明してほしいな。それからトランプはどんな遊びをしたのかな? ウノは、どんなところが楽しかったの?」等々。

 ただ、ここでなにをどこまで要求するかは、その子の日本語力の問題や、今、なにをその子に課題とするかは違います。例えば、起承転結の基本パターンをもうちょっと指導したければ、以下のような順序で書かせる方法もよいと思います。(  )のことばはこちらがあらかじめ提示してその続きを書かせると書きやすいでしょう。

「今日は、昼休みにいろいろなことをしてあそびました。(起)

 まず、Aくんといろいろなことばあそびをしました。(承)
(どんなことばあそびかというと・・・・)

 それから、トランプをしました。(転)
(どんなトランプあそびかというと・・・)

(そして、三つ目に)ウノをしました。(転)
(ウノでは・・・ここでは詳しく)

(今日やった遊びの中で)ウノがいちばん楽しかったです。(結)」

 こういう基本パターンで書けるようになったら、次は、一つのことを詳しく書くように指導します。

「今日やった遊びの中で楽しかったのはウノだよね。じゃあ、ウノのことだけを思い出して、詳しく書いてみて。誰がウノをやろうと言ったの?そしたらなんて言ったの?何回やったの?○○ちゃんが勝ったの?ウノのいちばん面白いところはどこ?」等々。

また、書いたあとに「題名(タイトル)」を書かせるのもよいと思います。書きたかったことがはっきりします。「ウノってたのしい!」「昼休みでいちばん楽しかった遊び」など。
 日記とは、単に日本語の指導だけではありません。子どもが自分のことや自分の生活に思いをめぐらせ、ものごとを見つめる力を深めていくために書くものです。そこに目を向けさせていくと、子どもは書くことがだんだんとおもしろくなっていきます。

盲ろう児のための校内環境 投稿者:きいじい(掲示板管理人) 投稿日:2015/12/11(Fri) 22:29 No.343

 盲学校や聾学校には、盲・弱視とろう・難聴の重複した子が少数ですが通っています。そうした子たちの教育は、これまでに蓄積された実践的知識があまり一般化されていないために(もしかしたらどこかにあるのかもしれませんが)、たまたま担当した教師が、その学校、その教室の中で試行錯誤しているのが現状です。いまは、インターネットの普及している時代ですから、そうしたものを使って、もっと実践の交流などが行われるといいなと思っています。
 ここで紹介するのは、校内環境の設備です。徳島聴覚支援学校は、新しい校舎が盲学校と共有されており、掲示板や階段なども、盲児が見やすいように工夫されています。
 ファイル「教室の案内」は、地が黒、図が白になっており、点字でさわれるようになっています。

 
 

階段の工夫 - きいじい(掲示板管理人)   2015/12/11(Fri) 22:35 No.344
 校内の階段は、盲児がつまづかないように、最初の段に、赤い横線に沿ってLEDが点滅しています。
NHKEテレ2015アンコール再放送決定! 投稿者:きいじい(掲示板管理人) 投稿日:2015/11/27(Fri) 21:33 No.342

今年の1月NHKEテレの「ろうを生きる難聴を生きる」で、「きこえない子のための日本語チャレンジ!」を使用した、香川聾学校での日本語文法指導の実践が紹介されました。その反響は大きく、2015年のアンコール再放送に選ばれました。関心のある方はぜひご覧下さい。

以下は、NHKホームページのURL
http://www.nhk.or.jp/heart-net/rounan/backnumber/2015/01/0111.html#contents
 
 「どう育む?日本語力 ―文の仕組みを知る―」
<アンコール放送> 2015年12月26日(土) [Eテレ] 午後8時45分〜9時
[再放送] 2015年1月1日(金) [Eテレ] 午後0時45分〜

 聞こえない子どもの多くが、日本語力に課題を抱えている。教育現場では様々な取り組みが行われているが、生徒のためにはどんな学習法が必要なのだろうか。そこで今回は 最近注目を集めている文法の学習法を取材する。カラフルな品詞カードや助詞手話記号を使って、日本語の仕組みをわかりやすく教えるというものだ。外国人向けに開発された手法を、聞こえない生徒むけに応用したもので、2013年夏にテキストが発行された。難しい文法がわかりやすく説明されていると人気で、授業に取り入れる動きが全国に広がっている。
 番組では、昨年度にこの指導法を導入した香川県立聾学校の授業を紹介。またこの指導法を開発し、テキストを発行したろう学校の教師にも話をうかがう。

日本語に基本文型はあるか? 投稿者:きいじい(掲示板管理人) 投稿日:2015/11/27(Fri) 10:18 No.340

 私達が日々、目にしている文は、決まった文の形でできているのでしょうか? もしそうだとしたら、その文型はどのようなものでしょうか? 
 前回NO338で、日本語がきちんと作れないのは基本の文型がまだ身についていないからだと書きました。きこえる人は幼い頃からの自然な会話の中で、また、本などを読む中で、その基本の文型を自然に身につけていきますが、きこえないハンディをもっていると、なかなか自然に身につけるということが難しくなります。

 では、その文型はどのようなものでしょうか? それは、以下のほぼ5つになります(添付ファイル参照)。ここでは、最も使用頻度の多い、最後に動詞がくる文(文の最後にくる品詞は名詞、形容詞もあります)について説明します。
 日本語の基本の文型は以下の5つです。
 
1.「〜が+動詞・名詞・形容詞」例「雨が降る」  「空が 青い」「これがレモンです」
2.「〜が〜を+動詞」例「私が窓をあけました」
3.「〜が〜に+動詞」例「弟が幼稚園に行った」
4.「〜が〜と+動詞」例「兄が同級生と結婚した」

5.「〜が〜に〜を+動詞」
    例「父が母におみやげを渡した」
 
(各基本文型は、そのパーツなしには、文がうまく伝わるか伝わらないかということでわかります。例えば、文型2の例文「私が窓を開けました」で、もし「私が開けました」だけの文だとしたら、何を開けたのかが相手にわかりません。この文では、「〜を」にあたるパーツがどうしても欠かせないのです。これを文の必須成分といっています。)

 では、実際に使われている文はどのようになっているでしょうか? 以下は、国語教科書4年上(光村図書、学校図書)に出てくる「白いぼうし」(あまんきみこ作)の最初の部分です。修飾語句が沢山使われているので一見複雑ですが、基本的な骨組みは、上の5つから成っていることがわかります。(漢字使用、数字は私がうったもの)

1.「これは、レモンのにおいですか?」
2.堀ばたで乗せたお客の紳士が、話しかけました。
3.「いいえ、夏みかんですよ。」
4.信号が赤なので、ブレーキをかけてから、運転手の松井さんは、にこにこして答えました。
5.今日は、6月の始め。
6.夏がいきなり始まったような暑い日です。
7.松井さんもお客も、白いワイシャツのそでを、腕までたくし上げていました。・・・

1は、「これは、レモンのにおいですか?」= 文型1(文末は名詞+ですか?) 

2は (堀ばたで乗せた)お客の紳士が、話しかけました。=文型1

3は、「(いいえ)、夏みかんですよ。」=文型1(文末は名詞)

4は、(信号が赤なので)、(ブレーキをかけてから)、運転手の松井さんは、(にこにこして)答えました。=文型1(「松井さんは答えました」が、文の土台です)

5.今日は、6月の始め。=文型1(文末は名詞)

6.(夏がいきなり始まったような)暑い日です。=文型1(文末は名詞)

7.松井さんもお客も、(白い)ワイシャツのそでを、(腕まで)たくし上げていました。
 =文型2

 どうでしょうか? 全て上の5つの文型におさまっていますね。そして、この文型はちゃんと「主語」(だれ・なにが)、「目的語」(なにを)、「述語」(どうした・どうだ)、という文の主要なパーツから成り立っています。そして、これらのパーツに「修飾語句」が沢山掛かっていて、文が詳しく、そのぶん複雑になっています。しかし、私たちは文を読むときに、自然にそのパーツを頭のなかでほとんど無意識に読みとり、文の構造を読みとって解釈しています。

 しかし、きこえない子は、それは自然には難しい。ですから、基本の文型を意識的・意図的に指導する必要があるわけです。成人の人たちが文を読めない書けないというのは、そうした指導を聾学校時代に受けてこなかったからです。ですから、成人の人の文の書けなさは、明らかに聾学校で受けた教育の問題であり、聾学校にその責任があると思います。
 いまからでも学ぶことに遅いということはないと思います。文を書くことににいまひとつ自信がない子どもや大人の人たちは、ぜひ基本の文型を学びなおしてほしいと思います。

 下のファイルは、文型とその文型に使われる動詞の例です。どの文型になるかは、動詞によってほぼ決まっています。例えば「降る」という動詞は、「雨(雪)が降る」の文型1に使われる動詞で、「〜を」とか「〜に」にあたるパーツは要りません。これだけで通じる文だからです(「北海道に」という「〜に」が必要では?と思われるかもしれませんが、これは文に必須のパーツではありません。文を詳しくするためのパーツだからです。これを随意成分といいます)

教科書での実践例 - きいじい(掲示板管理人)   2015/11/27(Fri) 10:27 No.341
 これは小4国語教科書「ごんぎつね」の文を子どもにわかりやすくするために、基本文型に分解して、文の骨格だけを示したものです。
 香川聾学校などで実践されています。
聾文のなおし方 投稿者:きいじい(掲示板管理人) 投稿日:2015/11/21(Sat) 12:12 No.338

 聾文というのは、聾児が書く特徴的な文章のことで、基本的な日本語の使い方が理解できていないために起こります。日記指導や文法指導をちゃんとやっている学校では、最近こうした文を書く子は少なくなりなりましたが(掲示板NO327、NO328)、以前はけっこういたものです。
 では、こうした聾文を書く子どもをどう指導すればよいでしょうか? 今日は、聾文のなおし方について考えてみたいと思います。以下の例文は、ある聾学校小学部2年生の日記です。誕生会で司会を担当し、その日に書いたものです。

 たん生かいをしました。 ゲーキをつくりました。
いちごとみかんをつくりました。
たん生かいはめじました。うたのました。
わたしははなしました。 何すき。
ケームはころがドッジとかくれぽであそびました。
どうぐがいきましたでもはやるむり見つけました。くやしかった。
ゲーキでたべました。おいしかったです。
プレゼントがもらいました。
おわりを話をました。たのしかったです。

 誕生会の様子を最初から終わりまで順番に書いています。言いたいこともだいたいわかります。問題はまず、文の基本的なかたちが理解できていないことです。
 文には、いくつかの基本的なかたちがあり、私たちが書く文は、ほぼ、どのような文もその基本のかたちにのっとって書いています。その基本のかたちの指導が、このような児童には必要なのです。
 その基本のかたちとは、ほぼ別紙ファイルのようなかたちです(ここでは、文末が動詞になる5つの基本文型のうち3つを表示)。
 日記指導にあたっては、この基本文型の指導をまずしっかり行うことです。この基本文型に必要な助詞(格助詞)は、「が、に、を、と」の4つです。つまりこの4つの助詞さえ使えれば、だれでも正しい日本語の文が書けるということです。

 では、例文の最初の文は下のどの文型に当てはまるでしょうか?
「たん生会をしました。」ですから、「〜が〜を する」つまり、基本文型2の形で、必ず「〜を」という目的語が必要になる動詞です。ですから、ただ「しました」だけを書いてもなにをしたのかがわかりません。
 この児童は、ちゃんと「たん生会を しました」と書いていますから正しい文です。詳しくは、「ぼくたちは」などの主語が必要ですが、わかっていることは省略するのが日本語ですから、主語は省略されています。これも問題はありません。
 
 つぎの「ケーキをつくりました。」も基本文型2で、間違いはありません。

 そのつぎの「いちごとみかんを つくりました。」は、これは残念ながら間違い。これは「〜が〜を〜する」という基本文型2が十分に理解できていないために起こる間違いですから、基本文型2の使い方を徹底することがまず大事です。ここは助詞「で」の使い方の間違いです。助詞「で」は基本文型とは関係のない助詞で、文の内容を詳しくするために使う助詞で、意外と子どもに間違いが多いです。
 つくったのは「ケーキ」で、「いちごとみかん」を作ったのではありません。「いちごとみかん」を使って「ケーキ」を作ったのですから、「〜を使って」という意味・用法である、手段・方法の「で」になります(格助詞「で」の用法は4つだけです)。ですから、ここで間違いを指摘してもすぐにはなおらないので、格助詞「で」の使い方の指導は、別にやる必要があります。その過程で使い方がわかってきます(NO336「助詞手話記号」参照)。

 以下、まだまだたくさんの基本的な間違いがありますが、基本の文型を身につけることと、助詞の使い方の指導を半年〜1年くらい続けることで、このような聾文はなおってきます。それが日本語文法指導で、この指導の方法については、下のファイルのテキスト(「きこえない子のための日本語チャレンジ」に書かれています。

日本語チャレンジ! - きいじい(掲示板管理人)   2015/11/21(Sat) 12:40 No.339
 このテキストを使います。基本の文型や助詞の指導の児童用テキストです(1600円)。別にCDもあり、たくさんの練習問題が載っています(1000円)。両方セットで2,200円です。
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