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No.1059幼児期に受身表現をどう教えるか? 投稿者:きいじい(掲示板管理人) ...2017/08/03(Thu) 05:46

前回、受動文の難しさとその指導方法について書いたら、「幼児期ではどのように指導すればよいのですか?」という質問をいただきました。そこで今回は幼児期における受動文の指導について書いてみたいと思います。

幼児期は、まだ、「小学生の授業」のような形態ではなく、あそび・生活の中での具体的な場面で、その都度受動文を意識させていくことになります。では、受動文はどのような場面で使うことが多いでしょう? 

学校や園で友だちと遊んでいるときけんかになった、あるいは家で上の兄姉とけんかになった。そして、「追いかけられた」「『バカっ!』て言われた」挙げ句の果てに「叩かれた」などということが起こることがあります。そんな時が受動文を教えるチャンスです。受動文は自分が迷惑を受けたという意味で使うことも多く、そのような迷惑的意味で使うのがいちばん子どもにもわかりやすいので、こうした場面があったら積極的に教えるとよいと思います。

例えば子どもが「○○くんが、叩いた〜」と訴えてきた時に、「そうなの、××ちゃんは、○○くんに 叩かれたんだね」と返してあげる。しかし、そんな興奮している時に、ことばの指導できるかどうかはなんとも言えません。そんなときは、あとで絵日記を書くときに扱います。
 
ある年長児の絵日記には、次のような場面で受動文が使ってありました。姉が熱を出し病院に行くことになり、自分もお母さんと姉について病院に行きます。しかし、自分も注射をされるのではないかと心配になり、何度も何度もお母さんに尋ねているところです。

「・・・病院に行きました。私が、『注射はしない?』ばかり言うので、お母さんに 『しつこいよ!』と言われました。・・・」(12月5日)

これは本人が書いたものではなく、病院に行った時のことを思い出しながらこの子が手話で話したことをお母さんがこのような文にしたものです。このとき、お母さんはこの子の視点に立って「言われました」という受動文を使ったわけです。この子の表現は音声のない手話です。手話ですからこの子は「お母さんが言った」と表現したことになりますが(手話には受動文はありませんから)、お母さんはそれを日本語に直すときに、子どもの視点に立った日本語表現「言われた」という受動文になおして日記に書いたわけです。
 
さて、この子は今、ろう学校の小学部1年生です。高度難聴で日常会話は音声なしの手話。日本語力にはやや心配な面もありましたが、先日、このような日記を自分で書いているのを見つけました。(添付ファイル)

年長さんの時にお母さんが使った受動文表現「言われた」をちゃんと覚えていて、半年後に自分が使ったわけです。この子の記憶力もすごいなと思いますが、生活の中での出来事を日記にし、子どもの言いたいことをききとりながら、子どもに教えたい日本語表現をさりげなく的確に使っているそのお母さんの日本語センスもすごいなと思いました。その子の日記はまだまだ日本語の表現に誤りも多いですが、自分の気持ちやその時誰かが言ったこと(会話)などしっかりと書かれており、さすが手話で育った子だなと思いました。

No.1056受動文は意外と難しい 投稿者:きいじい(掲示板管理人) ...2017/07/30(Sun) 08:24

 日本語理解テスト(通称Jcossジェイコス)という文法力を測る検査があります。その中に受動文という項目があって4つの問題が配置されています。例えば次のような問題で、答を4つの絵から一つ選ぶようになっています。

「ぞうは男の人に押されています」

 絵の中には、1.ぞうが男の人に押されている絵、
2.男の人がぞうに押されている絵、
3.男の人がぞうに餌を与えている絵、
4.男の人が車を押している絵があります。

 正解は1ですが、ある聾学校の小学部1,2年生の結果では、1と2とがどちらもほぼ4割の子どもたち、3と4が1割ずつの子どもが選択。つまり、受動文を正しく理解した児童は4割、能動文として理解した子が4割になりました。能動文として理解した子たちは逆に理解しただけですから、簡単に直せるようにも思いますが、日本語の言い方の問題だけなく、誰について言いたいのかという視点の転換の問題があり、この視点の転換がきこえない子にとっては意外と難しいのです。

 受動文は小1の国語の教科書から出てきます。例えば教育出版の『だれがたべたのでしょう?』という単元では、文頭から以下のような受動文が出てきます。(添付ファイル参照)
 
「まつぼっくりがおちています。まわりだけがたべられたものもあります。」
 
 では、なぜ受動文を用いるのでしょうか? それはここでの主役はまつぼっくりであり、まつぼっくりについてまず注目してほしいからです。まつぼっくりの身になって考えてほしいのです。そして、その次に、これはいったい誰がやったのだ?と疑問を投げかけておき、 そこで頁をめくると、
「りすが まつぼっくりを たべたのです。」と、りすが主語(主役)になった能動文を使っています。
 もし、ここでまつぼっくりにそのまま注目してほしいのであれば、「まつぼっくりは、りすに たべられたのです」となるはずです。でも、ここではりすを主役にしたい。りすに注目してもらいたい。それでりすが主役となる言い方をもってきたわけです。「りすが・・・たべた」ということを強調したいわけです。
 
 このように、能動文と受動文はどちらに視点を向けた言い方をしたいかによって使い分けられます。この視点の変換と日本語の言い方が難しいわけです。
 そこで小学部においては、受動文を意図的にとりあげて指導する必要があるわけですが、受動文はいったいだれについて言いたいのか、だれが主役なのかということが大事なのでまず、「主役になって考えてみる」練習をします。
 
 添付ファイルのような教材(『絵でわかる動詞の活用』本会出版1,700円)を使います。
 このページは、「牛乳」の立場に立った言い方(受動形)でそれぞれの空欄を埋める練習です。このような活用練習をしてから、受動文と能動文の変換の仕方を学習します。
 教科書で言えば、以下の文がどちらでも自由に作れるように練習します。
  
「まつぼっくりが りすに たべられた」(受動文)
「りすが まつぼっくりを たべた」(能動文)

受動文の練習 - きいじい(掲示板管理人)   2017/07/30(Sun) 08:31 No.1057
このようなワークを使って練習します。

絵でわかる動詞の活用ワーク - きいじい(掲示板管理人)   2017/07/30(Sun) 08:49 No.1058
 このような受動文の練習問題がワークやCDに沢山入っています。(『絵でわかる動詞の活用』+『はじめての動詞の活用』CDセット2,200円、申込みはメールnanchosien@yahoo.co.jp またはFAX03-6421-9735木島)

No.1049盲ろう教育について 投稿者:きいじい(掲示板管理人) ...2017/07/18(Tue) 10:06

今年4月TBS報道特集で「盲ろう教育」について放映されました。私はたまたま見たのですが、その放送を見て、自分がやってきたろう教育とはいったいなんだったのかと考えさせられました。これまで盲ろう児の存在は知っていましたが、少なくともろう教育の中で「盲ろう教育」についてとりあげていこうという話は誰からもきいたことがなかったし、正直、私もそう考えたことはありませんでした(そのことを今は深く恥じています)。
どちらかと言えばこれまでの盲ろう教育は、盲学校でやってきたのは事実だし、私も盲学校で行われていればそちらでやってもらえればいいのじゃないかと軽く考えてもいました。

しかし、実態はそう簡単ではないようです。まず、盲ろう教育の専門家が少ない。東京周辺を除いてはほとんどいないといってもよいだろうし、大学でも盲ろう教育について専門にやっている先生はほとんどいないのではないでしょうか?(宮城教育大の菅井裕行先生は数少ない専門の先生のお一人か?)だから、たまたま地方のどこかに盲ろう児が生まれても盲学校でもその対応が難しいし、まして、保護者はどうしていいか悲嘆にくれるばかりではないでしょうか。

 今年度、やっと、盲ろう児の全国実態調査の予算がついたばかり。日本の現状はまだそこからなのです。ですから、欧米諸国のように「盲ろう教育」という「独自の」専門分野が確立するまでにはまだまだ時間がかかるでしょう。しかし、子どもは待ってくれません。
ともかく、手探りでその教育を始めるしかありません。そのためにはまず盲ろう児と関わる盲学校やろう学校の先生方、地域の医療機関、療育機関の先生方、さらには保護者も含めて情報を交換しあえる場が必要でしょうし、そこから「こうすればいいんでは?」といった関わり方・育て方のノウハウを蓄積していく必要があります。
 
そして、年1回の研修会がこの8月5日(土)〜6日(日)に横須賀の国立特別総合研究所で開催されます。私は別の予定が入っていて行かれませんが、関心のある方、盲ろう児をおもちの親御さんも一度問い合わせてみられてはどうでしょうか? 
以下のURLからアクセスできます。

http://www.re-deafblind.net/

No.1040手話の初語は「グー」と「パー」? 投稿者:きいじい(掲示板管理人) ...2017/06/25(Sun) 09:34

早期から手話を使うろう学校2校の乳幼児相談保護者にききとり調査をしているなかで手話の喃語、初語、語彙爆発などについても調べていますが、いろいろなことが明らかになってきました。ききとりに協力してくださった20人のうち、すでに手話が出ている18人の結果から、前言語期の子どもの様子と初語の表出についてまとめてみたいと思います。18人の内訳は聴力90dB未満の軽・中度難聴児が10名、90dB以上の高度・重度難聴児が8名です。

〇前言語期(0歳代後半)の様子
 まず、初語が獲得される前にみられる大切な指標として、三項関係や共同注意がみられるかということと象徴機能がみられるかということがあります。
 前者は、大人と子どもとモノを共有して指さしや身振り・動作でやりとりが成立しているかということです。言葉はまず人と人とがコミュニケーションするために行われるものですから、お母さんが「ほらほら見て見て、きれいな花だね」と言ったときに子どもはその指さした先にある花を一緒に見て体験を共有できるかどうかとか、子どもがお母さんに向かって「ほら、〇〇だよ」と自分から指さして教えるといった行動(具体的な表出としては「アッ」と言って指さすなど)がみられるかどうかということです。
 
 後者は、例えば家族で一緒に乗った新幹線の楽しい記憶がその時にとった写真を見て思い出せるとか、積木を新幹線に見立てて動かすとか、そういう新幹線とは直接関係のないモノを新幹線に見立てる行動がみられるといったことです。このような象徴的な行為の延長線上にことばが発生すると言われています。ことばとは、新幹線という実際のものとは関係のない「し・ん・か・ん・せ・ん」という音のならびで実物を表現している記号または手話であれば添付ファイルのような手指・腕の動きであらわしている記号です。
18人の手話を表出している子どもにはいずれもこの2つの様子が見られたことから、この2つの指標は言語獲得の前段階にあることを示す指標としても使えると思われます。

○手話の初語はどんな手話?
 さて、きこえない子が最初に獲得する手話はどのようなものでしょうか?さらに別に聴取した2名を加えた20人の結果は、添付ファイル2のようになりました。特徴的なのは、「おいしい」という初語が3分の1を占めていることでしょうか。赤ちゃんにとってやっぱり食事場面はいちばんうれしい場面なのでしょう。

そしてもう一つの大きな特徴は、これらの手話の手の形をみてみると、「グー」と「パー」の手の形が圧倒的に多いということでしょう。赤ちゃんにとってこのグーパーがいちばん身体発達的にも容易で、この形が使われる手話表現がことばにつながりやすいということなのでしょう。なかなか面白い結果です。このことから、赤ちゃんにはグーとパーを使った手話表現を沢山使うとよいとも言えると思います。

手話初語について - きいじい(掲示板管理人)   2017/06/25(Sun) 09:40 No.1041
 子どもが表出する手話の初語は、グーとパーのかたちを使った手話が最も多いことがわかります。
 また、手話初語の表出時期は早い子は生後10か月から遅い子は1歳10か月頃までの約1年間のひらきがみられましたが、20人の平均では11.4か月でした。きこえる子が音声言語を獲得する時期とほぼ同じと考えてよいと思います。

No.1034すなおに のびのびと 投稿者:きいじい(掲示板管理人) ...2017/06/11(Sun) 17:54

 文部科学省著作の『わたしたちの道徳』(小学校1・2年用)の教科書を開くと、まるで文部省の役人さんや政治家さんたちが自分たちのために作ったような単元があります。
 それは第1章の「自分を見つめて」の中にある(4)「すなおにのびのびと」(44〜47頁)というところです。以下にその単元を引用してみます。

  うそ ついちゃった。
  本当は ぼくが やぶったのに、
  弟が やぶったって 言っちゃった。
 
  弟が、「フギャー」と ないた。
  ロボットや ぬいぐるみが 
  ぼくを にらんで いるみたい。

  このままじゃ いけない。
  思いきって「ごめんなさい」って 
言ってみた。

  すっきり して 気もちが いいな。
 「もう うそなんか つかないぞ。」

 すがすがしい、いい単元です。子どもに道徳を云々する前に、大人は率先して子どもたちの模範となるよう「うそをつかない」姿をみせなくてはなりません。

 さらにその前の頁(42〜43頁)には、だめ押しのように「しては ならない ことが あるよ」という頁があり、いくつかの徳目が並んでいます。
 
 「うそを ついては いけません。」
 「ともだちを たたいては いけません。」
 「人の ものを とっては いけません。」
 「いじわるを しては いけません。」
 「悪口を 言っては いけません。」
 「人の ものをかくしては、いけません。」

 いやいや、耳が痛いことばかりで自分が恥ずかしくなります。素直にのびのびと生きよう、と自分も残り少ない人生、襟を正して生きようと思います。(なおこの教科書は以下の文科省のホームページから検索することができます)。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/doutoku/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/02/18/1344239_1_2.pdf

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