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No.917喃語は音声?それとも手指? 投稿者:きいじい(掲示板管理人) ...2017/04/12(Wed) 05:24

 きこえる子は、生後8か月くらいになると、「ババババ・・」とか「マンマンマン・・」などの喃語(なんご)が出てくるようになります(子音を伴ったこの頃の喃語は「規準喃語」と言われ、生後2〜3か月の「あ~あ〜」「う〜う〜」など母音のみの「過渡期の喃語」とは区別されています。なお過渡期の喃語は聴覚障害児にも観察されるようです)。

 しかし、聴覚障害児においては、「手話言語環境下にある聾児は、身体運動が発展する形で手指喃語に発展する」と言われていて(金沢大学武居渡先生の研究)、音声ではなく、手を胸の前でリズミカルにトントン打ち合わせたり、手のひらをひらひらさせたりする「手指喃語」(しゅしなんご)に発展すると言われています。

 では、聞こえない子はみんな手指喃語が出て、それが手話の初語(しょご)に発展していくのでしょうか? 実は、武居先生の報告は、「手話言語環境下にある聾児」すなわちデフファミリーで育つ高度難聴児の観察の結果ですから、「聴覚障害児」全体に一般化できるかどうかはわかりません。

 それでは音声の喃語は聴覚障害児には出ないのでしょうか? そこで研究論文を探してみたら、2000年に一つ研究報告がされていました(東大医学部加我先生らによるもの)。その報告では、6か月以前に早期発見されて補聴器を装用した高度難聴児4名(平均100dB)を聴覚口話で育てたら、音声の規準喃語が平均1歳2か月で出たという報告です(当時の東大病院加我先生らの報告)。つまり、補聴器を装用して音声言語をきかせはじめ、喃語が出てくるまでにだいたい8か月間かかっていますから、きこえるあ赤ちゃんが生後8か月で喃語が出るというペースとほぼ同じということになります。

 ところで今は、新生児聴覚スクリーニング検査が普及して聴覚障害の発見は早まっています。その結果、補聴開始も生後6カ月までには開始され、聾学校乳幼児相談などに来談する時期も早まっています。そこで、ある聾学校の乳幼児相談に生後6か月までに来談しかつ補聴器も装用している子たち4人の保護者の育児記録と個別の面談から、聴覚障害児の喃語についての意外な事実がわかっていきました。それは、その子どもの聴力によって喃語の出現は音声になることもあるし、手指喃語になることもあるらしい、ということです。

 例えば、50dBと80dBの二人の子は、手指喃語は観察されていませんでしたが、それぞれ9か月と12か月の時に音声の規準喃語が観察されていました。その一方で、90dBと100dBの子たちは、音声喃語が観察されず、手指喃語様の動きが観察されていました。

「手をにぎにぎする動作を繰り返す」(9か月)
「手をパチパチ叩いたり、頬杖をつくようにほっぺを両手で触ったり、『無い』のように手を返してみたり、意味はなさそうだがいろいろな手の動きがみられるようになった」(10か月)
「頭をパーの形でトントンしている」(11か月)

 保護者の育児記録は、「喃語はどのように出ているのか」という観点で書かれているわけではありませんし、実際の場面の映像もないのでまだはっきりとはわかりませんが、どうも子どもの聴力によって出てくる喃語に二つのタイプがあるようなのです。

 「音声喃語型」と「手指喃語型」。前者は軽中度難聴児に多く、後者は高度難聴児に多い。その境目は90dBあたりではないかという仮説です。ということから、前者のタイプは音声言語が初語として出てきて、それが音声言語獲得につながっていく可能性が高く、後者は手話の初語が出てきて、手話言語獲得につながっていく可能性が高いということになるかもしれません。0〜1歳の聞こえない・聞こえにくいお子さんをお持ちの方はぜひ観察してみて下さい。よ〜く見てみないとわかりにくいかもしれません。ただ、手指の形は「グー」と「パー」が多いかもしれません。赤ちゃんにも作りやすいかたちだからです。実際にこのかたちが多いようです。
そして以下のアドレスに情報をお寄せ下さればありがたいです。

nanchosien@yahoo.co.jp(難聴児支援教材研究会・木島照夫)
 

No.916この問題、できますか? 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/04/02(Sun) 23:12

 難聴児がどの程度の日本語の読み書きの力を持ち、また、抽象的・論理的な思考ができるか、その力をみるのによい問題があります。この問題は、日本で最初に100マス計算を思いついた故岸本裕史氏(『見える学力、見えない学力』1982)が考えた問題で、以下の3つの問題です。これを脇中起余子氏(現つくば技術大学准教授)が京都聾学校高等部で実施した結果と共に紹介されています。問題は以下の3つです(小学生用に一部問題文を変えていますが本質は変わりません)。

問1「太郎君はみかんより飴が好きです。飴よりチョコが好きです。太郎君の好きなものの順は?」 

問2「もし、ねずみが犬より大きく、犬が虎より大きいとしたら、大きい順番はどうなるか?」

問3「A町、B町、C町、D町、4つの町がある。A町はC町より大きく、C町はB町より小さい。B町はA町より大きく、D町はA町の次に大きい。大きい順番を書きなさい。」

 問1は、助詞がわからなくても単語から映像を浮かべられれば解答できます。岸本氏はこれが出来たら小2レベルと言っています。問2は、文から映像が浮かんでも文法的に正しく読めなければ解答できません。大きい順は実際とは逆になっているからです。ここでは、日本語を文法的に正しく読めるかどうかが問われているわけです。これが出来れば小3レベルだそうです。ここまでは具体物の3対比較ですが、問3は比較するものが抽象的なものであり、4つのものの比較です。文を読み取り、論理的な思考ができなければ正解できない。これができれば小4レベルであるということです。
 
 さて、この問題を私はいろいろな聾学校の中・高校生にもやってもらうことがあります。それらの結果と脇中氏の京都聾学校高等部の結果、さらに平成26〜28年度の、ある聾学校小学部高学年56名の結果(全員4〜6年生)を比較表示してみます(添付ファイル)。

 この図からわかることは、まず、問題別の正答者の割合が、学部が変わってもあまり変わらないことです。言い方を変えると、「学年進行による進歩があまりみられない」ということです。つまり、小学部の時に「躓いてしまう」(=4〜6年という高学年までに基本的な日本語の読みの力を身につけられない)と、中・高、いやおそらく聾学校を卒業して社会に出るまでそのままの状態が続いてしまうということではないかと思います。論理的な思考を必要とする問3は置いておくとしても、問2までの日本語の読みは、基本的な語彙の習得と、日本語の文法指導(例えば文中の「〜より」という助詞の指導)を丁寧にやることで躓きの解消が可能なレベルであると思います。ただ「関係性」の理解という、きこえない子に困難を感ずる問題がもう一つありますが高学年なら指導できると思いますし、問1が正解している子たちには十分可能です。ということは80%の子たちは問2まではできるはずです)。
 
 しかし、小学部高学年の正答率と中・高校生の正答率には差がないというのが現実です。なぜでしょうか? ここに、私は、聾学校の日本語指導の大きな問題があるように思います。聾学校には国語だけでなく自立活動という教科があります。これら国語や自立活動の総授業時間数は小・中・高で2000時間を超えます。こんなに勉強して、問2の問題を半分の子たちがクリアできないということになるからです。かたちだけ普通学校の教科に準じていればよいということでも、自立活動があるから大丈夫ということでもないのです。指導の中身を見直さなければ解決しないし、子どもの持っている可能性を十分に開花させられないままに子どもは社会に出ていくことになってしまうということを聾学校教師は肝に銘じなければならないと思っています。

No.910卒業シーズン〜年長さんは小学生ですね 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/03/19(Sun) 10:41

 卒業シーズンですね。聾学校幼稚部や幼稚園・保育園などに通っていた年長さんたちはいよいよ小学部や小学校に進級するわけですね。その年長さんという時期は、聾教育の中では「5歳の坂」と言って、生活言語(いわゆる日常会話・コミュニケーションのためのことば)から学習言語(考える・学ぶための言葉)への言葉の発達の面でのレベルアップが望まれる時期と言われてきました。そこで今日は、いくつかの例とチェックリストを紹介してみますので、関わっておられる年長さんがおられましたら、ちょっとチェックしてみていただけるとよいのではないでしょうか。
 以下に、いくつかのことばの発達のチェックポイントと保護者の育児記録から該当する例をあげてみます(例には年中児の例も含まれています)。 

(1)過去の経験を順番を追って話したり「どう思ったか、感じたか」など、感情や印象が話せる。
(*「今、ここ」でのことではなく、出来事を思い出しながら自分の頭で順序立てて話せるということです。この力は作文を書くときなどの前提になる力です)

(例)「学校であったことをこと細かに話してくれる。今日は友達とふざけていてテーブルの上の物が落ち、先生に叱られたことを動作を交えて話す。」

(2)物語など場面を離れた話が理解できる。
(*過去・現在・未来という時間の認識もなんとなくわかり、語られることをきいてイメージできる力です。日本語の語彙・文法力だけでなく、その物語に関連する背景知識(スキーマ)がないと話をきいていても物語の内容を理解できません)

(例)「毎日、絵本を読むのを楽しみにしている。最近は『桃太郎』『浦島太郎』『こぶとりじいさん』などの昔話に凝っている。」

(3)ことばでことばの説明を求める。
(*ことばでことばを説明するとは、要するに学校での授業場面を思い出してみて下さい。先生がことばを使ってその授業の内容をいろいろと説明したり質問したりしますね。先生は「ことばでことばを説明」したはずです。子どもは、4、5歳頃になると「けっこんって何?」とか「今なんて話していたの?」などことばで大人に説明を求める時期が始まります。この力が前提になって、ことばでことばを説明するという思考・学習のための言葉が育っていきます。

(例)「最近、親の話によく割り込んできたり、『フリコメサギってなに?』などと質問をすることが多い。」

(4)ことば遊びができる
(*ことばを頭の中で操作する力です。ことばを説明できる力はこうしたことば遊びの中でも育ちます。例えば「赤くて、丸くて、食べるもので、木になるものは何?」という「クイズ」の問題には、「りんごって何?」という質問に対する答えがちゃんと含まれていますね)

(例)「絵日記に書くことがないとき、しりとりあそびやさかさことば、反対言葉など、ことば遊びをやっている。絵日記より楽しいらしい。」

(6)集団の話し合いに参加し、自分の考えをいう
(*こういう力が育つためにはまずその前提に子ども同士で自由に会話できる言葉が必要です。音声言語だけでやりとりする通常の幼稚園や保育園ではなかなか育ちません。口話法の聾学校でも先生が交通整理しないと難しい。しかし、小さい時から手話で会話していると、子ども同士でやりとりする力が育ちます)

(例)「給食の時、クラスの友達が通常の小学校に行くと聞き、『その学校の校長先生は手話ができるの?手話がなくてもその学校に行くの?』と友達にきいていた。」

(7)絵本を読んで理解し、手話で表現できる
(*手話を自然言語として獲得し、絵本に書かれている日本語の文を理解できるようになっていれば、子どもが自分で文を読んでそれを手話で表すことができるようになります。手話に変換できていれば日本語を理解して読んでいることもわかります。

(例)「今日は私(母)が忙しかったので、きこえない年少の妹に『はじめてのおるすばん』や『3びきのやぎのガラガラドン』などを手話をつけて読みきかせてくれていた。」

 長くなるのでこのくらいにしておきます。添付ファイルに、幼児期後半の頃のことばの発達チェック項目とそれに対してどんなことをすればよいかというリストを載せておきます。詳しくは『どうすればことばが育つか?』(全国早期支援研究協議会発行,900円)を参考にしていただければと思います。

No.900手話はなぜ必要か?〜言語は認識を深める 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/03/02(Thu) 17:22

この問いへの応えはいくつかありますが、ここでは、1歳頃に言語をもつともたないのとでは、ものごとを認識する力が違ってくるという点からその理由を書きたいと思います。
 
 まず、次のような実験があります。周りの大人のことばを少しずつ理解しはじめた頃の10か月の赤ちゃんを対象とした実験です(添付ファイル参照)。
舞台の上を玩具のあひる(赤ちゃんはまだ「あひる」ということばを知りません)が左から右に動いていきます。途中に衝立があって、左から入ったあひるは、衝立の後ろを通って右端から出ていくように見えます(これは実験者が手で動かしているのですが)。次に、同じあひるが右から入って衝立の向こう側を歩いて左端から出ていくように見えます。

 この時、赤ちゃんはあひるが何匹いると思っているでしょうか? 同じように見えるあひるでも似ているだけかもしれないので、2匹という答えもあり得ますが、赤ちゃんは、連続して動いていくものは一つと認識することがわかっているのでこの場合、赤ちゃんは、「あひるは1匹だ」と思います(赤ちゃんは3つくらいまでの数は直感的に理解できるようです)。
 
 次に、隙間のある二つの衝立のある舞台の上を、さきほどと同じように左端からあひるが通っていきます(添付ファイル1参照)。そして、左の衝立から入ったあひるは右の衝立の右端から出てきます。ところが、衝立の隙間からあひるが歩いていく姿は見えなかったのです(同じあひるなら通って行くのが見えるはずです)。
 今度は、右の衝立の右端から同じアヒルがはいっていきます、先ほどと同じように隙間からあひるは見えず、左の衝立の左端からあひるが出てきます。この場合、赤ちゃんはあひるが何匹いると思っているのでしょうか? 衝立の隙間を通っていく姿は見えなかったので、同じあひるのように見えても実は違うあひるだとわかるのです。あひるは2匹いると10か月の赤ちゃんは推論できるのです。
 つまり、赤ちゃんは動きの時間的な連続性と空間的な連続性を手掛かりに、いくつのものがあるのかが理解できるのです。
 さてここまでは、言語は関係ありません。言語があるかないかに関わらずこのような認識は可能です。
 
 さて、次の実験は言語が関係してきます(添付ファイル2参照)。
 今度は2つのもの(あひると犬)が登場します(赤ちゃんは「いぬ」ということばもまだ知りません)。
最初の実験と同じように、左からあひるが入りますが、右から出てくるのは犬です。そして今度は犬が右から入って、左から出てくるのはあひるです。私たち大人は当然、玩具のあひると玩具の犬は別々に動いているはずだと思います。赤ちゃんはどう思うでしょうか? 

この一連の動きを見せた後、衝立を取り払います。そこにはあひると犬のおもちゃがなければならないはずです。もし、そこにあひるか犬のどちらかしかなければ、赤ちゃんは驚くはずです。ところが、1個のおもちゃしかなくても赤ちゃんは驚かないのです(赤ちゃんは自分の予想と違うと驚きをじーっと見つめる反応で表現します)。

これは何を意味しているのでしょうか? ことばを知らない段階の赤ちゃんは、モノがどんなに見かけ上違っていても、それは関係なく、時間・空間上の動きが連続しているか否かによってだけ、モノが同一のモノかどうかを決めているのです。10か月であればあひると犬の見かけ上の違いは赤ちゃんにもわかっています。
しかし、見かけ上の違いではなく、動きの連続性で赤ちゃんはそれが同じモノかどうかを判断しているのです。

そこで、今の実験に「ことば」を加えます。あひるが登場した時は「見て、あひるだね」と、犬が出てきたときは「ほら、犬だよ」などとそのものの名前を言います。そうすると、そのものの名前が初めてきく名前であっても、赤ちゃんはあひると犬がちゃんと別々のモノであると理解し、二つの違ったモノが衝立の後ろで動いているとわかるのです。つまり、見た目ではなく、ことばが同じか違うかを頼りに赤ちゃんは、同一のモノか違うモノかを決めているわけです。
このことから、1歳前の赤ちゃんでも、言葉があるかないかで、ものごとの認識の仕方・深まり方が変わるのだということがわかります。ことばが認識を育てるのです。

これまでの聴覚障害教育の中で、きこえない子は「9歳の壁が越えられない」と言われてきましたが、それは結局、発達の初期から言語をもたなかったことが影響しているのではないかと私は考えています。言語がなければ認識が深まらない。言語は一歳から持つ必要があることはこの赤ちゃんの実験からも明らかです。
聞こえない子にはまだこの実験をしたことはありませんが、手話という言語を使って、一度、「手話(言語)が赤ちゃん(子ども)の認識(思考)を育てる」ということを確かめてみたいと思っています。

あひるは何匹? - きいじい(掲示板管理者)   2017/03/02(Thu) 17:30 No.901
添付ファイル1

次は、隙間のある衝立が2つ。その後ろをあひるが通っていきます。左から右へ。ところが、隙間からあひるは通って行ったようには見えない。にもかかわらず右の衝立から同じかたちのあひるが出てきます。
 同様に右から左へ。さて、あひるは何匹?

あひると犬が登場。さて、赤ちゃんは? - きいじい(掲示板管理者)   2017/03/02(Thu) 17:35 No.902
添付ファイル2

動き方は最初の実験と同じですが、ここではあひると犬が登場します。見た目で違うモノだということは赤ちゃんはわかっています。ところが・・・

No.898手話からスタートして日本語はいつ? 投稿者:きいじい(掲示板管理者) ...2017/02/19(Sun) 22:43

以前に、きこえない子の言語獲得は手話からスタートするほうがメリットが大きいと書きました。では、日本語の獲得はどのような過程をとるのでしょうか? 本当に大丈夫でしょうか?
 
 手話獲得後の日本語獲得は、大きく分けて2つのタイプに分かれます。一つは前にも書きましたが(本掲示板NO828)、聴覚活用と発語を通して音声言語で日本語を獲得するタイプです。これは中等度難聴の子どもや90デシベル台の高度難聴の子たちに多いです。もちろん、100dB台でも口話併用の手話を使い、家庭が音声に意識的であれば、それは可能です。例えば以下のような例です(育児記録より)。

事例1(1歳7か月)100dB
「のどが渇くと、手をグーにして口に当てて飲むサインをするが、その度に『お茶ほしいの?お茶飲むの?ちょうだいなのー?』と問い掛けていたら、『おちゃー』とたまに言うようになった。二階に行きたい時は『うえー』と言うようになった。毎日のように踏切に電車を見に行くが、最近両手の人差し指を使って踏み切りのまねをするようになった。『シュー』と閉まる音つきなのがおもしろい。」

 また、音声で発語することばは、ほとんどが手話ですでに獲得された語ですから、一度、手話で意味・概念を獲得した語を音声日本語でもう一度獲得しなおしているということもできるでしょう(言語の二重符号化)。
 ただ、音声言語が出てくる時期は、1歳代の半ば以降が多いので、まだまだこの時期に「あ」「か」「い」といった日本語の音韻(音節)一つ一つが区別されているわけではありません。音韻意識が出てくるのは、きこえる子でも通常は4歳以降と言われていて、その頃になると『しりとり遊び』(語尾を取り出せる)ができたり『あのつく言葉さがし』(語頭が取り出せる)ができるようになります。こうした音韻意識が持てることは読み書きにはとても大切なことです。

 では、聴力が厳しく、音声言語からではなく、指文字や文字から日本語獲得するタイプの子たちは、いつごろから獲得が始まるのでしょうか? この子たちの聴力は100dBとか110dB以上といった子どもが多いです。こうしたタイプの子たちは、手話を身につけ、人の名前など限定されたものに指文字を「手話的に」使うようになるのが2歳代の前半あたり、さらに、例えば「電車」が自分の知っている手話という言語とは別の言語(指文字や文字で『でんしゃ』と表せる視覚日本語)であらわせることに気づき(メタ言語認知)、そのことに興味・関心をもち、指文字や文字でさかんに尋ねたり、自分で表現しようとする時期が3歳頃にあります。例えば以下のような例です。

 事例2(2歳10か月)100dB
「学校の帰りにYが上を見上げて、『さくら』の指文字をしていた。ちょっと曖昧でしたが・・下の方にあったツツジを見て、『さくら』とやるので『ちがうよ。これはつつじ』と返すと、何度も繰り返して指さして『さくら』『つつじ』の指文字を私にやらせていた。」

 それでは、指文字や文字で音韻が分解できるのはいつ頃でしょうか? 音声での音韻(音節)分解は平均的には4歳なのですが、指文字や文字で視覚的に日本語を習得している子は、意外に早いのではないかと感じています。例えば、以下のような例です。

 事例3(3歳0か月)100dB
「A子が指文字表の「ろ」を指して「ケロのろ」、「め」を指して「ヤメピ(ケロとバムシリーズのキャラクター)のめ」、「こ」を指して「B子、C子のこ」と言っていた。“指文字ブーム到来!」

 日々、指文字や文字で視覚的に日本語の単語を見ているA子は、一つ一つの音韻(音節)の“ならび”によって単語が構成されていることに気づいたのでしょう。音韻分解を自分でやったわけです。濁音や半濁音などどこまでちゃんと音韻分解ができていたのかわかりませんが、もしかしたらこの年齢の頃に文字を紙に書いて『しりとり遊び』をしたり、指文字で『あのつくことばさがし』をしてみたら、意外とできたかもしれません。いつか機会があったら指文字や文字の獲得時期と関連して調べてみたいものです。

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