全国の難聴児のための早期支援、聴覚障害教育の情報提供、教材などの紹介を発信します。

写真カードを使うということは・・

乳幼児相談にやってくる1歳児さん。成人ろう者の魅力的な絵本の読み聞かせ、みんなで作ったクッキー、楽しいお弁当の時間・・もっと遊びたい、学校から帰りたくない子どもたちに「おうちに かえろう。」「おねえちゃん まってるよ。」とママが手話や音声語でいくらお話しても子どもは帰ろうとしません・・・そこでとり出したのが子どもの大好きな「おねえちゃん」と「おうち(家)」の写真。「おうちに かえろう。おねえちゃんが、待ってるよ~」と話すと、たちまちスタスタと教室を出て行く・・そんな子どもの姿を見ることがあります。写真を使うことで、何が違ってくるのでしょうか。

写真カード②.jpg

一つは、ことば(手話・音声語) の意味がわからない、伝えられたことばだけでは、まだ「おうち」「おねえちゃん」といったイメージが浮かばない・・・そのような時期の子どもにとって「写真」を見ることがイメージの助けとなり、理解、納得に結びついた、ということです。大人は、「おうち」は手話でわかっているはずだけど・・・と思っていても、1歳児さんではまだまだそのイメージが曖昧で、しっかりとわかっているわけではないことばがたくさんあります。写真で確認することで、自分の頭の中にある記憶のイメージと結びつき、ことばと併せて理解が確実になったから、「おうちへ帰ろう」という気になったのでしょう。そして、もう一つの写真効果は、「これが目に入らぬかー!」といった一目で相手の意図が伝えられる水戸黄門の印籠効果。ことばで理解されている子どもでも、ハッとして行動を切り替えるきっかけにすることができるようです。

 そのような効果があるとされている写真カードですが、いちいち出して使うのはめんどうだったり、まあ、使わなくてもその内にわかってくるだろうと思ったりして、作りはしたけれど、あまり使っていないおうちが実際には多いのではないでしょうか。というわけで、なぜ使うといいのかをこの機会にしっかりと見直してみたいと思います。

 

さて、考えてみましょう。きこえない、きこえにくい子どもたちは、例えばお出かけの時、どのような気持ちでいるでしょうか。「さあ、お買い物に行くわよ。」「〇〇ストアに行くよ~」音声語で子ども達に呼びかけるお母さん。聞こえるお姉ちゃんは隣の部屋にいながら、了解。きこえない、きこえにくい子どもは、お母さんがせわしなくお出かけの用意をし始める様子を見て、毎度のことながら自分も・・.・とあわててくつを履き始めます。あくまでも今までの経験から状況判断して出かけることを察しただけ。子どもの気持ちは、「どこに行くんだろう???ぼく、わからないよ・・・」きっと、行き先がわからない不安だらけのはずです。では、ちゃんとお話しなきゃ、とお母さん。「お買い物にいくよ。」「〇〇ストアに行くよ。」と手話、音声語でしっかりと伝えても、さて、〇〇ストアのイメージはわくでしょうか。確かに、積み重ねていけばいつかわかると思います。しかし、できればそのわかるまでの間の不安をできるだけ取り除いてあげたいものです。「うん、〇〇ストア、あそこね。ぼくわかったよ!」とわかる喜びを味わわせたいと思った時に、写真カードが生きてくるわけですよね。写真カードを使いながら、お話してあげると、一目瞭然、「〇〇ストアって、ここね・・」ことばと結びつけながら、確かなイメージを持って、子どもはお出かけできるわけです。

子どもにとって、生活の中で「わかる」「イメージが持てる」ような機会をたくさん準備してあげることは、子どもの安心感やわかる喜び、人ともっと関わりたいというコミュニケーション意欲につながります。写真がなくても手話や音声語で場所や人、モノがイメージできるようになると、写真カードを使う必要もなくなります。それをいちいち出してくる手間をかけたコミュニケーションもいつか卒業しますから、今、うちの子にはコレがあった方がよくわかって安心するだろうなあ、という発想で、必要な写真カードを用意してあげてほしいと思います。

 

先生が作るように言ったから・・・がスタートではありません。わが子とよりよく伝え合うために、わが子がわかる安心感が持てるようにするためには、何があるといいんだろう?そんな風に考えてください。というわけで、AちゃんのおうちとBちゃんのおうちでは、用意する写真カードの種類や量が違ってきてあたりまえですし、その写真カードを使ったコミュニケーションをいつの時期に始めたらいいかも色々で良いわけです。うちの子は、よく児童館に行って遊ぶけど、「児童館」をことばで説明してもイメージがもちにくいだろうなあ、よし、写真を撮って、カードにして出かける時に必ず見せてお話しよう。うちの子は、毎日のようにおばあちゃんのうちに行くけれど、同居しているおばあちゃん、おじいちゃん、いとこの○○ちゃん、△△おばちゃん・・・の写真を撮って、出かける前に「○○ちゃん、いるかなあ」と毎回、必ずお話してから出かけようかな、今は写真を見てもなめてばかり・・・じっと写真を見るようになったら始めようかな、というように、それぞれが違って良いのですから、我が家に合わせて、進めていかれるといいと思います。

「わかる」安心感に満たされている子どもの姿は、親にとって何よりうれしい姿であるはずです。そんな子どもの安心のために、一手間をかけてみてはどうでしょう? (S記)

 

以下は、写真カードを使った実際の例から。0歳後半から始まって3歳くらいでも使えることがわかります。

①「写真カードを見せると、視線が写真・文字に行く」(0歳7か月、意味のあるものとして認識し始めている)

 

 ②「病院のA先生の写真をみて、実物のA先生と何度も見比べている。」(13か月、Dちゃん、写真のA先生と目の前にいるA先生が同じなんだと気づき始めている)


③「午前中、私がいつもスーパーへ行く時の格好(帽子をかぶって、ジーンズに着替えて)をして、Yに声をかけようとすると、私の方を見たYが「うーうー」とスーパーのカードを指さす。」(14か月、Yちゃん、日々の買い物をするスーパーとスーパーの写真とが結びついており、自分も連れて行ってほしいと訴えている)


④「家族で遊園地に行く前日...Eが乗れる乗り物を選び出し、それぞれの写真をコピーして写真カードを作りました。Eにそれを渡し、「明日、ここ、遊園地にみんな一緒に行くよ。」「楽しみだね。」「今日じゃないよ。」「明日、寝て起きてからだよ。」と説明した。するとEはカードをジーッと見て、「遊園地」「エーン、エーン、赤ちゃん。」とやりました。きっと、前回遊園地に行った時にジェットコースターに乗れず、泣いたことを思い出したんだなあと思いました。「赤ちゃん」は、きっと私がEにジェットコースターに乗れない理由を「Eはまだ赤ちゃんだからお兄さんになったら乗れるよ。」と言った時の「赤ちゃん」のことで「エーンエーン赤ちゃんと」やっていたんだなと思い、よく覚えていたと感心しました。Eには「お兄さんになったから、これ全部乗れるよ。」と説明。ニコニコしながら「遊園地」と何回も言いながら写真カードを見ていました。

当日の朝、お兄ちゃん達に起こされ、すぐに写真カードを見せられたEは、寝起きなのにものすごい勢いでリビングまで走ってきて、私の顔を見てすぐに「お着替え」とやりました。遊園地に行くことを理解しているためか、普段ではありえない位の速さで洋服に着替えていました。遊園地に着くと、カードにある乗り物が早速あったので、「同じだね。」とやると「あ~っ」と嬉しそうな顔をして、すぐに走って行き、乗り物に乗りました。その後も写真カードを見せながらたくさん乗り物に乗って、とても楽しそうでした。」(3歳1か月)

┃難聴児支援教材研究会
 代表 木島照夫

〒145‐0063
東京都大田区南千束2-10-14-505 木島方
TEL / FAX:03-6421-9735

mail:nanchosien@yahoo.co.jp