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『きこえない子のための新・日本語チャレンジ』(小学生向きテキスト)

ある方から質問をいただきました。

 「きこえない子も日本語は自然に会話する中で身につくものだと思います。なぜ、わざわざ文法を取り出して、子どもに指導をしなければならないのでしょうか?」 

 

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とても大事な質問なので今日はこの問題について考えてみたいと思います。

まず、これまで(そして今も)日本の聾教育がとってきた「自然法」(きこえる子が日常会話の中で自然に日本語を獲得していくのと同じように、きこえない子も日常会話の中で"自然に"日本語を身に付けることをめざす方法)が果たしてどこまで有効であったのかということから考えてみたいと思います。 

 

1.要素法(構成法)から自然法へ 

 きこえる子は自然に音声日本語を聞き取り、話し、そして日々のやりとりの中で日本語の音韻・語彙・文法を身につけます。そしてさらに、言葉には本来の言葉の意味を越えて、別の意味があるといったこと(例・慣用句・諺・冗談・場の空気を読む等々)までも身につけ、日本語を高度に「運用」できるようになります。とりわけ、助詞とか、何十種類もの変化をする動詞の活用といった文法は、日常会話の中で、特別に誰かに教えられるわけでもなくまさに"自然に"身につけ、無意識のうちに日本語を使いこなせるようになります。もし「この時は『で』を使うのかな、いや『に』だったかな?」などといちいち用法を意識しないといけないようでは、とても毎日の生活やコミュニケーション(以下コミ)をスムーズに営めないでしょう。

 このように私たち聴者が日本語を日常のコミの中で身につけていくのであれば、同じようにきこえない子も日本語の語彙や文法を日常のコミの中で身につけられるのではないかという発想で、補聴器の進歩→聴覚学習の進化と共に始まったのが聴覚口話での「自然法」といわれる方法です。この方法はそれまでの口話法教育の主流であった「要素法(日本語を語彙・文法・発音・聴能・読話といった要素に分解しその要素を学ぶことで日本語の言語体系を習得させるというボトムアップの方法)」が効果を上げてこなかったことの反省に立ち、普通の生活の中でのやりとり・コミを通してトップダウンで、日本語を聞き取り、日本語を話すことを身につけさせようという、実践的でまさに自然な方法であったと言えます。

しかし、家庭での両親の話だけでなく、居酒屋での飲み会でも誰かの噂話を「聞き耳を立て」て「聞きかじる」ことのできる聴者のきこえとは根本的な違いがあることを、あまりに軽視しすぎていたのではないかと思います。自然というのは私たち聴者にとっては自然であっても、どんなに補聴器や人工内耳をしても結局は曖昧にしか音が入って来ないきこえない・きこえにくい子どもたちのきこえは、常に何十パーセントかは推測に頼らざるを得ない曖昧なコミ方法で、それはとても子どもにとって「自然」とは言えない方法であったと思います。そのために、「話しているのに書かせてみるとわかっていない」といった

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問題が日常的に起こってくるわけです。

こうした聴覚口話による自然法は、どこまでいってもきこえない・きこえにくい子どもたちには100%わかるというコミにはなりえず、その結果として、日常会話程度のコミは聴者と口話でできても、読み書きの力は未だに『9歳の壁』を越えられないという現実を何十年にもわたって私たちは突きつけられてきたわけです。右のグラフは、澤隆史(2016)による聾児のリーディングテストの結果を示したものです。およそ10年ごとの聾学校児童の読書年齢が諸文献から拾っていますが、澤は「この40年間の聾学校児童の書記日本語能力はほとんど変わっていない」と指摘しています。


2.自然法は、特定の子どもにしか成立しない

 この問題は、実はすでに20年前に当時の「聴覚口話法=自然法」の総本家、筑波大附属聾学校の馬場顕教頭によってその限界が指摘されていました。馬場は「聴覚口話法の一番の大きな弱点は、すべての聾児がこの方法で成功した訳ではないと言うことである」(「聴覚口話法」,『聴覚障害』,2001vol.5617頁)と述べ、続けて成功するための条件として、「①子どもの聴力損失が軽いこと、②子どもの能力が優れていること、③親の教育力、④親の経済力、⑤教師の資質」を挙げています。この条件が満たせる家庭と子どもが、当時も今もいったいどれだけいるのでしょう? ①の条件はその後人工内耳の普及によって110dBを越える子どもでもクリアできるようになりましたが、②から⑤までの条件を満たせる家庭の子どもはそう多くはいないでしょう。結局、聴覚口話による自然法とは、知的にも経済的にも恵まれた家庭の子どもに限定された方法だったということになります(それを補完するキュード法や(音声対応)指文字法が全国の聾学校で考案されてきましたが、それとて結果として『9歳の壁』が越えられるようになったという話は未だききません)。

 

2.人工内耳の登場で「自然法」は再び表舞台へ

では、人工内耳が登場して、聴力の問題がクリアされた現在、重度難聴児たちも軽中度難聴児たちと同じように日本語の獲得ができるようになったのでしょうか? 確かに、軽中度難聴児・CI児含めて平均的には、生活言語レベルでの音声言語が身につくようになったと言ってよいだろうと思います。「きこえてぺらぺらしゃべれる子」は確かに増えました。といって、ではしゃべっている子はどの子も読み書きの力をもっているのかと言えばそうではありません。「きこえ」が改善され、日々の会話の積み重ねの中で日常会話レベルの日本語は獲得できるようになった。ここまでは「聴覚活用」と「自然法」で出来るようになったと言ってあながち間違いではないだろうと思います(但し、人工内耳を両耳に装用しても、②~④の問題によって「生活言語」レベルの音声日本語が獲得できない子どもも現実にはいます)。しかしそこまでは到達できたといっても、さらに、問題はそのあとにあります。「生活言語」レベルの音声日本語の獲得が、必ずしも「学習言語」レベルの書記日本語の獲得につながらないという問題です。それはなぜでしょうか?

 

3.生活言語から学習言語への問題は残っている

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ここで生活言語と学習言語という日本語獲得における最も重要な問題について考えてみたいと思います。まず「生活言語」ですが、これは日常会話(対面コミ)で使用されるコミのための言語(いわゆる話し言葉)で、多くは「今、ここ」という場で直接向き合って伝え合うために、文法的な誤りが多少あってもモノ、動作、視線、表情などの非言語情報で文脈を補うために十分通じ合うことができます。とくに日本語は単語だけで会話が成り立ち、主語や助詞が省略される「開放文法の言語」であるために(英語は省略のできない閉鎖文法)、生活言語は比較的容易に身につ

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くが、しかし単語だけで通じ合えるがためにそのことが逆に書記言語へのステップアップを難しくしている面を否定できません。ところがそこは非常に見えにくい。ペラペラしゃべっているがゆえに私たち聴者はごまかされてしまうのです。

一方で、話題や文脈を共有していない第三者に何かを伝えるときに使用される書記言語(日記・作文・レポート・教科書の文章など)は、正確な語彙・文法的知識(主述、修飾・被修飾関係、助詞、動詞、接続詞等)が不可欠で、相手に伝えるためにはどのように表せばよいかといったことまで含めて、全てことばによって非言語情報を補う作業が必要になります。これが「学習言語」としての書記言語の特徴です。また、私たちは「今、ここ」にないことを文字や数字、記号等を使って表し操作すること(象徴機能)で抽象的な思考を進めていきます。これが「学習言語」です。こうした言語の本質的な違いを理解していないと「話せれば書けるはず」→「自然なコミ(=自然法)で話し言葉を身につければ書きことばも身につくはず」というとんでもない誤解が生じることになります。


2.再び、要素法(構成法)の見直しへ

 自然法だけで確かな日本語は身に付かないことを私たちはしっかりと知っておく必要があります。早い話が子どもたちは毎日、教科書を通して日本語の文を読み、何百回となく文の中で同じ助詞を見ているはずです。声にも出して読んでもいるはずです。それなのになぜ、助詞が使えないのか?ということです。過去の私もそうでしたが聾学校の教師は国語や自立活動の授業をいったい何時間やってきたのでしょうか? 1年生だけでも週10時間として年間350時間。それを小学部から中学部、高等部と12年間積み重ねてきています。これほど膨大な時間を使ってなぜ助詞が身につかない子どもがいるのでしょうか? 助詞や動詞の活用がわからなければ決して教科書を自分では読むことはできません。教科書が自分で読めなければ学力をつけるなど夢の話です。ではどうやってここをクリアさせればよいでしょうか? その指導を私たちはどこまで真剣に考えてきたでしょうか? 私がそう気づいたのは10数年前でした。

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 きこえない子はやはり「目の子」です。見て考えることで理解が進む子どもたちです。また、手話という見てわかる言語を使って育ってきた子どもたちです。そうした観点からも「目で見てわかる日本語」をめざすことが大切ではないか? そう考えて教材を考え、実際に授業の中で実践し、その結果を確かめてきました。右のグラフは、ある聾学校で文法指導を始めた時の小2児童6名がその後、Jcossがどう伸びていったかを示したものです。文法指導開始期の小2の時、聾学校の平均的なJcoss通過項目数と変わりませんでした(聾学校小2平均7.8項目、B校小2年6名平均7.2項目)。しかし週1時間の文法指導を4年間継続した結果、Jcossの通過項目数は徐々

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に伸び、最終的には聴児平均にまで追いつきました(右の図は当時、開発した「助詞手話記号」と「動詞活用の指導」)。文法力がついた結果としてこの子たちは教科書を自分で読んでわかるようになった。そしてその結果として学力が伸び、最終的にこの6名は全員大学に入学しました。もちろん、文法指導だけでそうなったのではありません。馬場の言う「教師の資質」すなわち指導力のある先生方に担任していただいたことも大きかったのかもしれません。しかし、それを考慮に入れたとしても、やはり教科書が読める力をつけるために文法指導は、必要だったと思います。

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 その後、この子どもたちの一人が大学に入った年、たまたまその大学で講師をしていた私はその学生にきいてみました。「小学部の頃、文法の指導をしていたこと覚えてる?」子どもの返答は意外なものでした。「ああ、文法やってたなあってことは覚えていますが、どんなことをやったのか内容は忘れました。」それを聞いてこういうことなのかなと考えました。例えば助詞の用法について学習しているときは、「こういう時はこの助詞を使うんだ」と意識しながら使っている。しかしいったん身についてしまえばもういちいち考えないで自動的に使えるようになる。だから学んだこと自体は忘れてしまっている。それはそれでかまわないわけです。

 

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日記指導の中で子どもが助詞を間違えた時、私たちは赤ペンで訂正し書き直させます。習うより慣れろ。繰り返せば自然に学ぶはずと思ってきた。これが自然法の原理です。しかしこれが通用するのは80%以上助詞が理解できている子どもです。「が」も「を」もわかっていない子には通用しません。意味がわかっていないのですから何度も同じ間違いを繰り返します。苦手感ばかりが増していき勉強嫌いになります。こうした子どもには、助詞がどのようなときにどう使われるかという原理を"わかるように"教える必要があるのです。これが自然獲得した言語=手話を使って可

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視化した助詞の指導法です。まさに要素法です。そのあとに例文作りとドリルという習熟のための繰り返しの学習が必要です。そこまではどうしても必要な過程なのです。

 

のような要素法的な指導の継続によって文法力は確実に向上します。その結果を示したのが右のグラフです。J.cossの項目ごとの平均通過率は、4年ごとにみてみると確かに年を経るごとに向上しています。また、文法力の

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向上は読みの力の向上につながります。その結果を示したのがその下のグラフです。乳幼児相談からスタートした子たちは幼稚部を経て小学部に入り、さらに中・高の聾学校へと進みます。そして大学生や社会人となっていきます。しっかりとした日本語力を身につけた結果として、基礎的な文法の用法はもう空気を吸うように自然なことになっていて、学習したことすら覚えていない、それでいいのだと思います。そのためには一度、「要素法」による指導が必要な子どもたちがいるの

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です。そしてそれをしないで「自然法」だけにこだわっているといつまでも日本語力がつかないままになる危険性が高いのです。そのことをぜひ知っていただきたいと思います。

どうすればきこえない人・きこえない子の読み書きの力を伸ばすことができるのか? 

ある地域で成人聴覚障害者の日本語の学習を担当されている言語聴覚士の方から、大きなヒントになるようなメールをいただきましたので紹介したいと思います。

 

〇成人聴覚障害者の日本語の学びなおし

「私が行っている施設では、成人聴覚障害者を対象として、現在、30代から50代の方が日本語を学ばれています。聾学校を卒業していても、日本語の獲得語も生活言語や自分の興味の範囲などに偏りがちです。そのため、使用するテキストにも解説が必要です。子どものときに習得する語彙が未習得であっても、実社会では字幕やメール、ラインなどで使用する文字言語が溢れており、わからない言葉に出会った時に誰かに詳しく説明してもらえる機会はあまりないため、語の意味に関する質問がとても多いです。

 

文の読み書きに助詞は避けて通れませんが、手話に交えて助詞を指文字で提示しても認識されません。(筆者注:その助詞がどのような意味をもち、どのような時に使用するのかわからないからです)そこで、「助詞手話記号・助詞記号」などを使って意味・用法を説明すると、そこで初めて視覚的に、その助詞の使い方について意識することができます。また、 「品詞カード」も、自分でそのカードに言葉を記入し、自分で操作することを通して、言葉そのものに注意が向くようになります。(傍線筆者)

 

時間の経過とともに消えてしまう音声や手話では、言葉そのものに注意が向かず、気づきのないまま進んでしまっているようです。「助詞手話記号・助詞記号」や「品詞カード」など、視覚的に提示し続けられると、そこでじっくり思考でき、理解や疑問に結びつき、更に理解が深まっているように感じます。(同上)

 

通常使う文は動詞文が多く、名詞文・形容詞文は馴染みが薄いようなので、一緒に例文を作りながら増やしたいと思っています。主語述語、5W1Hなどは会話レベルでも脱落が多く、他の教材を合わせながら学習しています。成人の方は、このようなテキストを使用して、日本語にはルールがあるという事が少しずつわかっていくようです。」(某県・言語聴覚士)

 

以上がいただいたメールですが、聾学校を出ていても日本語の読み書きが十分にできない という成人の方は少なくありません。聾教育の根本的な問題がそこにあるわけですが、その問題は横においておくとして、成人の方の学びのプロセスがきこえない子どもたちの日本語を身につけていくプロセスときわめて似ていることに驚かされます。上の言語聴覚士の方も言っておられるように、消えてしまう指文字や音声ではなく(頭の中に長い単語や文を覚えていることは難しい)、消えることのない文字や記号・カードを使って、その人のペース 使用教材2.JPGで、それらのカードを実際に動かしながら、手と目を使って操作しつつ、基礎的な文のしくみを学ぶのがいちばんよいということです。短い文の中で、自分で「見て(読んで)」「意識して」「動かして」「理解して」「書いて」覚えていきます。その時に大事なことは意味が「わかる」ということです。意味が「わかる」ためには、わかるための具体的な教材・教具、手立てが必要です。それが「助詞手話記号・助詞記号」「品詞カード」です。このようなツール(道具)を使って視覚化することで、文がどのようなしくみ(構造)をもって成り立っているのかがとてもわかりやすくなります。

 

〇 発達障害のある子に・・

使用教材.JPG実は今年、ある聾学校で、①発達障害のある小3の児童二人に、動詞の活用や文のしくみの基本を、上記のような視覚教材を使いながら1年間指導したところ、一人の児童はそれまでJcoss(日本語理解テスト)で名詞だけ1項目通過でしたが、一挙に5項目まで通過。もう一人の児童もJcoss2年間、通過はゼロでしたが6項目まで通過しました。二人とも「厳しい児童」と先生方から思われている子たちですが、課題を明確にして「わかる!」という経験を積み重ねることで、どの子も伸びるということを証明した事例だと思います。(写真は使われた文法指導教材)

 

 

〇幼児にも教材を使うことで・・ 

以下は、ある年長幼児に1年間にわたってこのような家庭学習を積んでこられた保護者から、年長修了にあたって送って下さったメールです。このお子さんは、このホームページでも紹介しているお子さんです。以下のURLをご覧ください。

http://nanchosien.com/papers/04-4/

 

「・・・年中の途中に、ジェイコス7項目通過を目指した日を思い出します。諦めそうになった時、このHPを何度読み返したか分かりません。100%の力を出し切って子どもと向き合いました。とても濃い時間をすごせました。わが子の現状を受け入れるのが苦しく・・でも、それ以上に成果が出ると嬉しく、もう進めないと泣きながらも、やっぱり少しでも進もうと心に決めて真正面から、こどもと、自分自身と、難聴とはどういうことなのかと、向き合う日々をすごしました。・・・文法なんてどう教えたらよいのか迷ってばかりでした。助詞カードや大きな名詞ゲームなど、私には思いもつかない良い方法を教えていただき、本当に感謝の思いです。先日やったJcoss18項目の通過でした。」

 

 Jcoss18項目通過という数値は聴児の小3~4年レベルです。幼児でもこのような教材を使って指導すればそこまで伸びる可能性があるということです。「可能性は空の極みまで」(日本聾話学校長・故大島功先生)。ほんとにそうだなと思います。

『日本語チャレンジ』を使っていただいている聾学校の先生方から、時々、テキストを使用していただいた感想をいただくことがあります。今回は2人の先生からの感想を紹介します。

 

「日本語チャレンジ」で指導してみました!

自立活動の指導で日本語チャレンジをもとに文法の勉強を少しずつ進めています。

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文法力には個人差がありますが、ほとんどの子が時間ぎりぎりまで「もう1枚プリントやる!」と言ってくれています。すごいです。子どもと取り組みながら、こんな風に考えるのか、こんな風に理解していくのか、と私自身にも毎回発見があります。(聾学校小学部自立活動担当教員)

 

 「レディネステスト(助詞)」のあとに

レディネステストを使って助詞の理解を調べたあと、その結果をもとに個別指導をしました。

助詞のテストでは、ひとりひとりの苦手ポイントが気持ちよいほどはっきりしました。

70~80%の正答率の子もいますが、その子たちにも使い方があいまいな助詞があり、ほとんどの子が混乱していたのは「に」「を」「で」の使い方でした。その程度の間違いは、手話記号を使って整理したあと練習プリントに取り組むと、「ああ」という感じであっという間に苦手をクリアしていきました。手話記号はとても有効でした。

 

受動文の指導

その他に多かったのは「れる」「られる」の受動文の文型と助詞の使い分けの混乱でした。これはウサギとカメが走っている絵カードを動かしながら「追いかける」「追いかけられる」を確認したあと、文を読んで文の表している通りにカードを置く練習をしてから、助詞の確認をすると、理解がスムーズになりました。

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まだまだ試行錯誤をしながらの取り組みですが、効果を実感したので、言語通級教室の先生方にも紹介したところ、発達障害の子たちにも助詞があいまいな子が多いので使ってみたい、言われました。いろいろな子に役に立ちそうです。(ろう学校小学部2年教員)


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教科書の文章を、「品詞カード」を使って品詞分解することができます。そうすることによって、文の構造を視覚的に把握できます。ここでは、「国語」小1上(学校図書)の最初に出てくる物語文を使って品詞分解をしてみたいと思います。以下が教科書の文です。

 

         いいもの みつけた(題) 

もりの なかに、いえが あります。 りすの おやこが います。

わたし、たねを みつけたの。 ぼく、どんぐりを ひろったよ。

いい ものを みつけたわね。 かあさんりすが いいました。

ふたりは、たねと どんぐりを、つちの なかに うめました。

あたたかく なると にわに、ちいさな めと おおきな めが でました。

みんなは、うれしそうに、 みどりの めを みました。

 

1.タイトル「いいもの みつけた」

この単元は全体が会話調になっているので、助詞がしばしば省略されています。タイトルからして、すでに「を」が省略されています。また、「いいもの」は一括りで名詞として表示してもよいと思いますが、ここでは、「いい」(形容詞)+「もの」(名詞)とに分け、さらに一括り(名詞句)にしました。形容詞とか動詞は名詞を修飾するときにも使われ、小1下あたりから複文構造になって沢山出てくるので、それに慣れる必要があるので、そのように表示してみました。また、このくくり方は、この単元では、ほかに「ちいさなめ」「大きなめ」でも使われています。 文法指導.jpg

 

2.次に、助詞「の」ですが、これは、前の名詞と後ろの名詞を繋いでいろいろな関係をあらわします。これは「名詞」+の+「名詞」として分けて、さらに大きな括りにしました。この単元では、「もりのなか」「りすのおやこ」「つちのなか」「みどりのめ」などがあります。

 

3.文章全体を品詞分解してみるとわかるように、まだ複雑な文型は使われていませんし、それぞれの文末は全て動詞です。途中1カ所だけ形容詞につながって「あたたかくなる」+「と」という箇所 文法指導_0001.jpgがありますが、この「と」は、接続助詞「と」で、その前の「あたたかくなる」という時間的変化の結果として、「にわに ・・・が出ました」に繋がっています。読み方としては、この「と」のところで一呼吸入れるとよいと思います。

 

4.「ちいさなめ」「と」「おおきなめ」の「と」は格助詞の「と」で、二つの芽を並列に繋ぐ「と」です(「東京と大阪で開かれる」などの使い方と同じ)。上記3の「と」とは意味が違います。江副文法では「情報内の助詞」と言います。

 

5.「ふたり」「みんな」は時数詞(江副文法)といい 文法指導_0003.jpg、ピンクで表示しています。時間や数量をあらわす名詞です。「みんな、うれしそうに」のように、「みんな」のあとの助詞を省略する使い方ができます。

 

6.「うれしそうに」の「~そう」は、「高そう」「嬉しそう」「苦しそう」など形容詞に「そう」がついて、そのあとに「~そうな」「~そうに」「~そうで」となって形容動詞的な使い方が可能です。これを江副文法では「なにで名詞構成語」といって、はたらきはなにで名詞と同じです。

 

7.動詞では、「いえが あります」と「りすのおやこが います」の、「あります」「います」の使い方に、指導が必要でしょう。物(無生物)は、「あります」ですし、人や動物(生物)には「います」を使います。これは例文を作って指導するとよいと思います。

 

8.動詞で難しいのは、「みつける」(他動詞)と「みつかる」(自動詞)の違い。「みつける」は、「わたし(が) たねを みつけた」「(あなたが) いいものを みつけた」などのように「だれが」「なにを」が必要な動詞ですが、「みつかる」は、「わたしがみつかる」「さいふがみつかる」などのように、「なにを」を必要としません。

また、「うめる」(他動詞)と「うまる」(自動詞)も同様です。また、「うめる」には「お湯を水でうめる」などの別の意味もあるので、この際、指導しておくこともできます。

 

9.その他として、「ひろう」の反対の「すてる」。「ある」の反対語「ない」、「いる」の反対語「いない」なども、この機会に指導できるでしょう。ことばを増やすためにはこのような機会を逃さないことです。

 

10.最後に、構文ですが、冒頭の文は、「もりのなかに いえが あります」と、通常の文とは逆の語順になっています。物語の冒頭は、「昔、ある所に、おじいさんと・・・」などのように時間→場所→何・だれの順になることが多いですが、この単元でも、場所→何の順に場面の設定をしています。

 

このように、一見、簡単な文章のようにみえますが、文法的に注意が必要なことは沢山あります。これを全部指導する必要はありませんが、知っておきつつ、今、この単元で何をどう指導するかが大事なのだと思いますし、日本語を指導する上では、このくらいの文法的知識をもっておく必要があります。 教科書品詞分解例.jpg

最後に、ここでは教科書の上でそのまま品詞分解してみましたが、「情報」「助詞」「述部」の構造図の中で、横書きにして、ひとつひとつの文を模造紙等に書き出すほうがずっとわかりやすいことは言うまでもありません。(右図例参照)

ここでは、「品詞カード」の作り方について説明します。品詞カードは、黒板上にはって

提示する文の構造を視覚化してわかりやすくすることができます。まずは、色方眼紙で品詞カードを作成する方法について。

「品詞カード」の作成.jpgのサムネール画像

 

1.準備するもの

 まず、準備するものは、色方眼紙(黄色=名詞、ピンク色=時数詞、黄緑色または薄緑=動詞、水色=形容詞、ペール色=なにで名詞・形容動詞)です。

色方眼紙はネット販売も利用できますが、まとまった枚数でないとなかなか買えないので、厚紙に色画用紙を貼るのでもかまいませんが、凹凸ができやすいのでできるだけ色方眼紙を使うのがよいと思います。

それから、図書館の本などに貼り付ける時に使う透明のカバーフィルム(ブックカバー)。わたしはニチバンの粘着剤付きロールタイプ(2m×35cm)を使っています。アマゾンで461円(送料なし)で購入できます。

 マグネットシート、カッターナイフまたははさみ、セロテープ

 

品詞カードの種類(例).jpgのサムネール画像

2.作り方

(1)色方眼紙の黄色(名詞)、ピンク色(時数詞)、ペール色(なにで名詞)は、長方形に切ります。サイズは通常の教室の黒板で使用するのであれば、9cm×21cmくらいに切ります(個別指導など小黒板で使うのであればその3分の2くらいの大きさ)。

(2)色画用紙の黄緑色(動詞)、水色(形容詞)は、まず名詞などと同じ長方形に切った後、長い辺の端から5cmくらいのところに印をつけ、短い辺の真ん中から切って、横長ベース型にします。

名詞と動詞は多く使うので10枚くらいあるとベストです。形容詞、時数詞、なにで名詞は5枚くらいあれば足りるのではと思います。足りなければまた作ればよいでしょう。

(3)それぞれの色方眼紙の色面全面を覆うようにカバーを掛け、内側に1cmくらい織り込みます。その時にしわがよらないように気を付けます(携帯の画面に保護フィルムを貼り付ける要領で)。粘着剤は付いていますが、端っこは、必要に応じてセロテープ等で補強しておくとよいでしょう。

品詞カード使用例.jpgのサムネール画像

(4)カードの裏面にマグネットシートを適当な大きさに切ってはりつけ、黒板等に貼っても落ちないようにします。これで完成です。

あと、「情報」「助詞」「述部」といったカードも作っておきます。これは普通の厚紙にマグネットを貼り付けたものでよいです。

 

文の構造図.jpgのサムネール画像

以上で完成です。ホワイトボードマーカーなら何度でも文字を書き、消して使えますが、油性マジックは消えないので注意が必要です。

 また、模造紙上で使用するには、色画用紙を同様に切って品詞カードを作ります。ただ、これは、マジック等で書いて使うので(上図「ごんぎつね」例)何度も使用することはできません。

さらに、児童用としては付箋紙をカットして品詞カードを作成すると、児童が机上の紙面上またはホワイトボード上で、カードを操作しながら文の構造を学ぶことができます。

 

 

*なお、品詞カードを使った日本語文法の指導方法については、このHPの「日本語文法指導」の各カテゴリーを参照してください。

 

┃難聴児支援教材研究会
 代表 木島照夫

〒145‐0063
東京都大田区南千束2-10-14-505 木島方
TEL / FAX:03-6421-9735

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