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イメージ・言語・概念を広げる体験や会話の膨らませ方

ある聾学校の乳幼児相談では、さまざまな生き物を飼っています。ちょうど今は、おたまじゃくしとかたつむりが子どもたちに大人気で、おたまじゃくしにパンをあげたり、かたつむりにキャベツをあげたり、子ども達はえさやりに夢中です。そして、カタツムリのウンチを探したり、土を湿らすために水をかけたり、お世話することも楽しいようです。

4月から育てたおたまじゃくしは、4匹がカエルになり、そのうち1匹は放す前に死んでしまいましたが、残り3匹は元気に自然界へと巣立っていきました。大きなカエルに育って戻っておいで~という感じです。死んでしまったカエルは、子ども達といっしょに埋める時間もなかったので、やむなく大人がお墓を作りましたが、死んだカエルの写真が貼られたお墓を見ながら、なんとなく子ども達は理解してくれたようです。

乳幼児教育相談は、毎日通ってくる生活の場所ではないので、こうしたおたまじゃくしからカエルに成長していく過程を見届けてもらえないのが少し残念です。「おたまじゃくしは、カエルになる」とことばで説明するのは簡単ですが、子ども達にとって、体が変化していく過程を見ながら、おたまじゃくしがカエルになることを見ることが何よりの経験です。そして、一つひとつの驚きを親子で共有することが大事で、それが「カエル」や「生き物」についての生きた概念を獲得することにつながります。だからこそ、「家庭で生き物を飼いましょう!」と言っているのですが、ママたちの「結構です!!」にあきらめるしかなく、ちょっと残念です(都会のマンションでは仕方ないかも・・)。

 

〇「今、ここで」の子どもの興味・目線に立って関わることがスタート!

 これまで、乳幼児相談や幼稚部のお母さん方に話してきたことの一つに「子どもの興味と目線に添ってかかわりましょう。」ということがありました。今回のおたまじゃくしやカタツムリ体験では、まさにそこに子どもが飛びつけば、いっしょに見て、会話して、関わるお母さん達の姿が見られました。こうした子どもが自らかかわろうとする場面を親子で共有することがスタートです。それは、興味のあることを誰かと共感したい、一緒に楽しみたいという思いを子どもたちが持っているからです。ですから、そばにいれば、子どもが「ねえ、ママ、見て!パン食べたよ!」と、身振り手振りでママに伝えたいと思って目を向けた時に、ママがそばにいて、「ほんとだね!すごいね!」と共感してあげることが何より大切になるわけです。その時、子どもが感じた事をことばにして応答してあげる・・「そうだね。おたまじゃくしがパンを食べているね。アムアム、おいしいって、食べているよ。おなかすいていたのかなあ?」等々、今、見ていることについて、子どもはこんなことを伝えたかったんじゃないかなあと思って応答してあげる、その子どもの興味に添ってかけられたことばが、子どもにはとても意味あるものとしてインプットされる。こうしたことから、子どもの興味関心に添う、目線に添う対応を繰り返していくと、子どもはいつも受けとめられる安心感とともに情緒が安定し、ママは、子どもにとって大好きな存在、コミュニケーションの大切な相手として認めてもらえるようになります。コミュニケーションの相手として認められれば、子どもからのママへの発信は増え、やり取りが親子で盛んにおこなわれるようになるのは当然ですね。やりとりの中でママが上手に豊かにことばを使ってお話してあげれば、子どもの獲得することばとものごとの概念が豊かになる。こうした意味から、子どもの気持ちに寄り添う対応は何よりも重視される必要があります。

 

〇「あのとき、あそこで・・」

 さて、この「今、ここ」での体験の共有から次のステップ、「過去の経験をもとに会話する」ことです。手話からスタートした子どもたちは、2歳位になると自分の体験の記憶がイメージとして浮かぶようになります。

 

・体験カードをつくる

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例えば、今回の生き物の例ですと、まず、ママは、子どもが学校でカタツムリを喜んで見ていたなあと、その体験をしっかり覚えていることが大事です。その体験を、絵に描いたり、写真を撮って貼ったりしながら、体験カードを作成し、その体験を視覚的に確認し、一緒に思い出して会話することが、体験を言語化する一つの方法です(これがやがて絵日記やことば絵じてんに発展していくわけですね)

 

・再現あそびをする

また、ママがかたつむりになって、子どもからキャベツをもらう遊びを繰り返すといったカタツムリごっこをする(再現遊び)というように、親子で遊びながら体験の言語化をする方法もあります。これも体験を発展させる有効な方法です。

 

・体験をさらにことばで膨らませる

そして、さらに、大事なのは、体験を発展させる対応を通してやりとりをふくらませる対応。例えば、「そうだ、カタツムリに餌を持っていこうよ。冷蔵庫に、キャベツはあるかなあ。・・・ないね。他に何を食べるんだろう。ニンジンは食べるかな。パンは食べるかなあ。」と学校に行く前日に、こうしたやりとりをすることが一つです。

年中・年長児であれば、「カタツムリは何を食べるのか調べてみよう」「おうちの本には載ってないねえ。図書館に行って、図鑑を見て調べよう。」というように、「本で調べるとわかる」こうしたことをママは子どもに伝えていかれるといいのではないでしょうか。そして、調べる面白さを通して、本への興味を培うこともできるでしょう。図書館を知らない子どもであれば、こうした機会に図書館に行ってみることで、「本がいっぱいある所!」「図書館の本は買えないけれども、借りることができる。でも、また返さなければならない。」「この面白い本を何日まで借りられるのか、何日おうちにおいていいのか、何月何日に返さなければならないのか」、図書館を利用しながら、「貸す」「借りる」「返す」、日にちや数等、大きめの月カレンダーなどを見ながら学べることがたくさんありますね。すぐに答えを教えるのではなく、子どもが自ら発見する方向に導いてあげるという意味で、「調べる」ことを楽しんではどうでしょう。

 

また、「学校のカエルは死んじゃったね。先生がお墓を作ってくれたねえ。明日学校に行く時に、お花をお供えしようか。カエルさんに、お花どうぞしようか。そして、ナムナムお参りしようね。なんて、お参りしようかな。カエルさん、元気に生まれてきてねって、お話しようかなあ」等、死んだカエル体験もお墓を1回見て終わりではなく、興味を持ったことであれば、つなげていくことが、体験を発展させる対応も大事です。

先日、2歳児のMちゃんが、おたまじゃくしを見ながら、突然「カエルは死んじゃったね。」と悲しそうにお墓の方を指さしました。そして、お墓に行きたいと。再度お墓を見て、「カエル、死んじゃったね。」とMちゃん。悲しそうな顔をして手を合わせていました。埋める所は見せてあげられなかったのですが、お墓を見せて説明をしたことをよく覚えていたのだなあと感心させられました。今回のお墓経験を機に、おうちで身近な方のお墓参りをした経験を思い出すなどして、話題を広げていかれるといいですね。カエルの死を経験した子ども達は、今度どんなに小さな生き物が亡くなった時にも、死んじゃったからお墓を作ってあげよう、埋めてあげようというように、子どもから発想できるようになっていくのではないでしょうか。こうした体験、会話を通して、『お墓』が亡くなった人(生き物)が眠る所、と子どもは理解をしていくことでしょう。死んだら土に帰る、天国に行くのかなあ等、年齢に応じて色々な話ができるようにもなっていくのではないでしょうか。生き物は、上手に飼えなくて、死なせてしまうことがあっても、それも子どもが育つ上で貴重な経験。体験を親子で共有し、言語化する、そして、体験したことを通して、さらに発展的なかかわり、会話を重視することを心がけていきましょう。


子どもの成長に合わせて、体験カードのようなものも活用しながら、会話を豊かにして行くことを心がけてほしいと思います。生きたことば~実感、イメージを持ったことばの獲得は、まさにこうした一連の活動を親子で共有しながら何を語り合えるのか、その会話の豊かさにかかっています。

ただ、たくさん出かけて色々な事を経験させて終わり~ではもったいない。お金をかけなくても、日々のささいな経験を通して、親子で会話することはいくらでもできます。体験したことを親子で、どうそれを消化するか、それが豊かな言葉とものごとの概念を広げていくのだと思います。                       

┃難聴児支援教材研究会
 代表 木島照夫

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