全国の難聴児のための早期支援、聴覚障害教育の情報提供、教材などの紹介を発信します。

難聴幼児を持つ家庭の悩み~指導・訓練時間が不足している!

  新型コロナの影響で聾学校や医療機関、発達デイなどに通う時間が削減され、補聴器や人工内耳の指導が受けられない、言語指導や発音指導が受けられない・・と、保護者の方々の嘆きの声がきこえてきます。確かに、専門的な指導を受けられない親御さんの不安はとても大きいと想像します。そのことを理解しつつ、では、家庭でやれることはないのだろうか?と考えてみると、毎日の生活の中で、親子で日々の暮らしの中での会話を丁寧にやっていくことが実はもっとも効果的な「指導」であり「訓練」なのではないかということに気づかされます。

聴覚障害児教育では、その長い歴史の中で、口話訓練、聴能訓練、発音発語訓練、読話訓練・・と様々な訓練という名の下に、専門的な指導が行われてきました。しかし、その長い歴史の中で考え方が見直されてきたのも事実です。

 例えば、聴能訓練。もう20年以上前になるでしょうか。「聴能訓練」ということばが見直されて、「聴覚学習」ということばが使われるようになりました。どのように変わったのかというと、限られた訓練の時間で「聴く」学習が進められるものではなく、子どもが日々の生活全体の中で、主体的に「聴こうとする」姿勢を育てることで、聴覚を活用できるようにするという考え方に変わりました。そして、子どもたちの「聴きたい」という気持ちに添って聴覚を活用していかれるようにすることが大事であり、子どもの「聴きたい」気持ちを無視したところに聴覚活用はありえないという、当たり前の考え方に立ち返ったともいえます。

音をきくことへの共感.jpg例えば右の事例のように、大好きなパパの帰宅を待ち望む気持ちがあるからこそ、パパの押す「ピンポーン」という玄関のチャイム音が聴きたいとか、「電子レンジから早く暖かい牛乳を取り出したい」と思うから「チーン!」というレンジの音を聴きたいとか、体を動かして踊ることが好きだから「テレビやCDの音楽ききたい」など、子どもにとって意味のある音を取り上げながら、周囲も一緒に関わり、聴覚活用の力を育むことこそが聴覚学習なのです。

また、音声言語の使い方も、聞こえにくい子どもたちにとってよくわかるように、目と目を合わせ、声の大きさやリズム、スピード、話しかける文の長さなどに気をつけるからこそ、子どもの「聴こう」という気持ちを引き出すことができます。子どもが幼ければ幼いほど、生活全般の中で、このように「聴きたい」気持ちを育てることが大事であるわけです。

 ですから、「指導」とか「訓練」という特別な時間があるかどうかではなく、家庭生活の中で、お母さんやお父さんをはじめとする家族の人たちが、どれだけこうした配慮を丁寧にしながら子どもに関わることができるかが大事なわけですね。このことは、聴覚の訓練だけでなく発音や言語の訓練ということについても同様に考えることができます。昔はよく「ことばの風呂につけろ」という考え方があり、とにかくたくさん話しかければことばが育つ、とよく言われていました。そして、大人が選んだことばについて、発音したり、読話したりできるよう、特別な時間を設けて練習することが、訓練や指導の時間で扱われたこともありました。しかし、今は「たくさんことばをかけたかどうか」とか「言わせたいことばをいかに上手に話させるか」ということよりも、「いかに子どもの気持ちに合った(添った)ことばをかけることができたか」ということが問われるようになりました。なぜなら、その時が最も子ども自身のあらゆる可能性がひらかれるときだからです。子どもの気持ちが向いていない事柄に対して、いくら話しかけても子どもは見ない、聴かない、つまり情報が入らなかったり、すぐに忘れてしまうのは、日々お母さん方も実感されていることではないでしょうか。その意味で、子どもの気持ちを無視してはことばもよ

楽しい家庭でことばは育つ①.jpgりよく育つものではないということがわかります。家庭生活の中で、子どもの興味、関心のあること、子どもが好きなことにたっぷり付き合うこと、聴きたい、話したい、伝えたい気持ちをかきたてながら、実物も写真も絵も、身振りも表情も、手話も音声言語もいろいろなわかる手段を使い、ことばを育てることを心がけてほしいと思います。このような姿勢で子どもを育てるとき、大人も子どもも楽しく、自然な形で、効率的に聴覚活用の力や言語の力や思考の力が育まれます。「学校や施設で訓練・指導してもらう」ことも子どもの発達の現状を把握し課題を明確にした楽しい家庭でことばは育つ②.jpgり、ある時期専門性の必要な指導というのは確かにありますが、今は「家庭生活全体の中で楽しく関わり配慮する」コツをしっかりとつかんでいかれるのが、この憂鬱な時期・時間を積極的な時間に変える方法ではないかと思います。

右の調査は、前お茶の水女子大学の内田伸子先生らがおやりになった海外も含む調査研究の結果です。この中で見出されたことは、一言でいえば「楽しい家庭でことばは育つ」と楽しい家庭でことばは育つ③.jpgいうことでした。「共有型のしつけ」(=子どもと一緒に経験を共有することを楽しむ家庭)をしている家庭で育った子ともは、「強制型しつけ」(=指示・命令・禁止・叱責の多い家庭)の子どもより、幼児期の語彙能力と小1の時の読み書き能力において、有意に高いという結果でした。そしてそうした結果からまとめた提言「子育て十か条」が最後のファイルです。味わい深い内容です。

┃難聴児支援教材研究会
 代表 木島照夫

〒145‐0063
東京都大田区南千束2-10-14-505 木島方
TEL / FAX:03-6421-9735

mail:nanchosien@yahoo.co.jp