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読解力をどうやって育てるか?

今、日本の子どもの読解力が落ちていて、OECDが行っている学習到達度調査(PISA)では、どんどん順位が下がり、前々回2012年調査の4位から→2015年8位→そして2018年には15位(約80か国中)まで下がってこれまでの最低を記録しました。

今はSNSの時代。文を読んだり書いたりすることが減っているとは思いませんが、1冊のまとまった本を、時間をかけて読みこなすという経験は少なくなってきていると思います。そこで、今回は、きこえない子の読解力をどうやって高めるかということについて考えてみたいと思います。


〇文が読めても内容がつかめない子どもたち

一概に文が読めても内容がつかめないといっても原因はさまざまです。その原因を大きく分けると、以下の4つに分けられると思います。

①語彙の不足 

②論理的思考力の不足 

③認知機能の弱さ

④一般的知識の不足 

そして③の中には、さらに、(ア)音韻意識の弱さ (イ)記憶力(ワーキングメモリー)の弱さ (ウ)視覚認知の弱さ ()聴覚認知の弱さ があげられると思います。

 

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上記①と②に関しては、幼児期からの積み重ねになるので、さまざまな言語活動の中で取り組むことが必要です。これらに関してはこれまでにも時々触れてきましたが、①語彙の不足と②論理的思考の不足と関連して大事なことのひとつは、上位―下位概念のカテゴリーをしっかりと頭の中に作ることでしょう。私たちは何か初めて見たものに対して「あれ、なんだろう?」と思い、「食べ物? 木の実っぽい? 果物かな?」という類推・予想をします(これは「帰納的推論」といって論理的思考の大切な方法です)。頭の中にもっている「食べ物、木の実、果物・・」といった語彙のファイルを高速で調べ、その知識を使って推測しているわけです。このようなシステムと一定の語彙知識があるからさらに新しい語彙を習得していくわけです。まず、この力がしっかりと作動するために、「ことば絵じてん」を作ったり、「ことばのネットワークづくり」のテキストを使ったりするわけです。

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 「ことば絵じてん」を自分で作るのは大変という方には、ぜひ、たのしい手作り教材がありますので紹介します。これはInstagramのy.riechin さん作成によるもので、今日はいちばん人気の教材「気持ち」で小学生二人と遊んでみました。まず問題を出す子が一枚どれにするか決めてそれに関係する経験を言います。例えば「100点とって・・」と言ったとします。それに続く気持ちがどれなのか当てるわけです。場の人が「はい」と挙手して「『うれしい』でしょ?」と言いますが、「ブーッ」。別の子が「『きもちいい』かな?」と言うと「正解!」。問題を出した子が「100点とったとき、とっても気持ちよかった」と。幼児にはもっと違った遊び方が考えられます。その気持ちに関連する文を別にカードにしておいてマッチングするなどもできるでしょう。またこれも論理的思考に関係しますが、二つの絵たとえば「誕生日プレゼントをもらっている絵」とか「ママに褒められている絵」などを用意して、「原因」と「結果」の関係を学ぶことができます。例えば「ママにほめられている絵」と「うれしい表情の絵」を並べて、「ママに褒められた」「だから」「うれしい」と文が作れますし、逆向きに「うれしい」「どうしてかというと(なぜなら)」「ママに褒められたから」という結果から原因を考えることができます。これも論理的思考の大切な思考方法です。

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そのほか、論理的な思考力を高めるための日常会話の方法を右に整理しておきます。

 

さらに①語彙不足と②論理的思考力に関係するのは、③認知機能の(イ)記憶力の弱さも関係します。文を読んでも、書いてある順番に内容をまとめて言えないなど、書いてあることが整理できないとか、書かれていたことを忘れてしまう子どもたちがいます。この子たちは、一度に長い文章をまとめることは苦手なので、もっと短い3~4語文や、幼児期にやるとしたら年中から年長頃に、絵日記などの短い文の中で文をまとめる練習をします。まとめる観点としては、一つは「はじめに、つぎに、それから、おわりに」といった時間系列でまとめる練習、いわゆる疑問詞(5W1H)でまとめる練習です。「だれ、いつ、どこ、なに、どうして」などの観点ですね。


③の認知機能の中でとくに大事なのは「音韻意識」です。きこえる子は音をきいて文字

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100%変換できますが、きこえない・きこえにくい子は音自体が正しくききとれていないことが多いので、きちんと文字・指文字で音韻を身につけていくことが大事です。例えば「がっこう」が「かこう」であったり、「マジック」が「まじ」であったりします。とくに「でんしゃ」が「てんしや」「キャンプ」が「きやぷ」など拗音の誤りは多いです。これに関する手作り教材を先に紹介したy.riechinさんが、濁音・半濁音・拗音などの「裏五十音表」を作っておられます。以前に

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このHPで「一文字かるたあそび」(右図)を紹介しましたが、「裏五十音表」を使ったかるたあそびも音韻を身に付けるうえで効果的です。「一文字かるた」については下記を参照

http://nanchosien.com/papers/04-4/post_169.html

④の一般的知識の不足。これは小さい時から、いろいろな経験を積むこと、家族の会話が見えること、言語を使って会話し言語で考えさせること、です。ここは100%みてわかる言語である手話がその力を発揮するところです。子ども自身にきちんと認識できないあいまいな言語では確実な知識とはならず、思考力も育ちません。

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あと、読解力とは直接深い関係はありませんが、年齢を越えてみんなで楽しめるのが「妖怪すごろく」です(順番、順序数、すすむ、さがる、もどる、プラス・マイナスなどの概念に関連する)。途中、天狗に「あおがれてスタートに戻る」などもあってガックリすることもありますが、ゴールにピタリと止まらないと上がれないルールにすると、あとから来ても勝てるチャンスがあるのでとても盛り上がります。おススメのゲームです。ぜひ、Instagramから.riechinで検索してみてください。興味ある教材が沢山みつかると思います。

 下の絵じてんは、「体調」シリーズの一部。人気教材のひとつ。

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┃難聴児支援教材研究会
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