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大切な約束は必ず文字で~筆談・メモの大切さ

乳幼児相談を修了して幼稚園・保育園を経て小学校難聴学級に通っている子のお母さん達が集まり、小学校での子どもの様子を情報交換する中で、小学校から帰宅した後の友達との約束の話が出ました。あるお母さんから、子ども同士が口約束で「何時に、どこで」待ち合わせをするかという約束をしてくるのだけれど、どう聞き間違えたのか、すれ違い、遊べないまま終わってしまったことが何回かある...というエピソードが複数のお母さんたちから出されました。まだ1年生の話でしたから、そういうことがあるなあと思いながら、是非、音声言語だけでのやりとりで約束するのは気をつけさせた方がいいというアドバイスをしました。


子ども達にとって約束は大切なことです。大切なことは必ず紙に書いて、文字で確認し合うよう子どもに勧める事をお母さん達に話しました。「きこえるからわかるよ。」「きこえているから大丈夫」。難聴児の中には、そのように自信を持って言う子どもたちがいます。確かに、正確に聞けることができる時もあるでしょう。しかし、時刻の約束に出てくる数字の聞き取り...「2時(にじ)」なのか「1時(いちじ)」なのか~といった紛らわしい口形や音を聞き間違える可能性は十分あります。こうした数字の聞き取りに限らず『音声言語を聞き誤ったり、聞き落としたりする事はあるのだから気をつけよう』と日々子どもに言い聞かせて行かなければなりません。

難聴児として育てるということは、こうした「聴く」ことだけに頼ることの危険を周囲の大人が敢えて知らせ、自覚させていかなければならないということです。そのためには、大事なことは書いてもらおう、自分で書いてこれでいいか確認してもらう姿勢を育てていくことが大切ではないでしょうか。聴覚障害児の教育で「読み書きの力を身につける事が大事」と言われるゆえんは、書きことばが、こうした確実なコミュニケーションにおいて大切な手段だからともいえます。書いて伝える、読んで確認する、そんな習慣を肝心なところでは必ずしていかれるよう、子育てで生かしてほしいと思います。

ある子ども達は、電話ができるから電話で約束しているという話もありました。それはそれで、うまくいく時もあったようですが、できれば成人した時に社会の中で「電話ができます」ということをアピールするよりは、大事なことを聞きもらすかもしれないので、「電話ではなく必ずファックスかメールで連絡をお願いします。」といった書きことばでのコミュニケーションを求める事ができる人に育てて行くことが大切だと思います。その意味で、幼児期から家庭にファックスをおくのも大切な環境作りです。最近はメールでのやりとりも多いでしょうが、低学年のうちは文字や文を自分で書く練習もかねて友達の約束はファックスでやりとりするという習慣作りをしていくといいのではないでしょうか。そして必ず、相手の親御さんにも理解を求めて、ファックスが届いたかどうかを、相手のお子さんからも必ず返事を頂けるとありがたいといった内容で関係作りをしていかれるといいですね。文字を使えば、確実なコミュニケーションをとることができるということを小さい時から経験させて行きましょう。こうした意味からも、お母さん達には、子ども達に読み書きの力をしっかり身につけさせていく事の大切さを改めて実感していただきたいと思います。企業に就労する聴覚障害者も、社内ではメールでのやりとりで仕事を遂行していくことが増えていて、ますます読み書き能力が求められています。正しく書き表せる、複雑な長文も読解できる、そんな力を育てていくことはたやすいことではありません。また、聴力が良ければ読解力、巧みな文章表記力が身につけられるとは限りません。親子の豊かな会話や体験を元にして、手話や音声言語で豊かにコミュニケーションができ、そのコミュニケーション力を元にたくさん読む、たくさん書くという大人のかかわりがあって読み書きの力は育っていきます。幼児期からしっかりと心に刻んでおきたいことです。(文責S

┃難聴児支援教材研究会
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