全国の難聴児のための早期支援、聴覚障害教育の情報提供、教材などの紹介を発信します。

難聴児が通常学級で安心して生活できるために大事なこと

 今、メインストリーミングは世界的な潮流となりつつあります。こうした流れを受けで、我が国でもきこえない子たちが地域の小学校で、きこえる子らに混じって授業を受けることも多くなってきました。
 しかし、きこえない・きこえにくい子が共通の言語・コミュニケーション手段である音声言語を駆使して、きこえる子と対等に関わっていくことは、まわりの配慮なしにやれるかというと、それはとても大変なことであるのも事実です。
 
 私たち人間は、ことばを介して人と関わり、互いの関係を深め、そこに自分の存在意義を実感します。人との関係性が断ち切られ、孤立した環境の中では、生きていけない存在だといってもよいと思います。他者とのコミュニケーションが阻害される聴覚障害は、人間にとって最も本質的な問題に起因する生きづらさと言ってもよいかもしれません。
 例えば、周りが全て音声言語という通常学級において、きこえない子が、どうすれば周りにあふれている情報を摂取し、周りとコミュニケーションが可能かを考えてみます。
 
 まず、授業において他児の発言を含めてその内容がリアルタイムにわかるためには、FMシステム等の補聴援助機器の援けだけではなく、視覚的な方法・支援が担当の教師によって講じられる必要があります。仮に聴力50~60デシベル(補聴器教室で情報が欠ける現実.pptx.jpg装用閾値30~35dB)の音声言語で会話できる「難聴児」であったとして、教室で前のほうにいれば、大きめの声の教師の話はかなりききとれるでしょう。しかし、教師はいつもその子に向いて話しているわけではありません。時には黒板に向かって板書しつつ話すこともあれば、教室の中を歩きながら話すこともあるでしょう。このような状況下で、きこえない子は、先生の話をひと言も聞き漏らすまいと耳を傾け、周りの子たちが今何をしているのかを盛んに目配りしながら、今、何が話されているのか、自分は何をしなければならないのか、パズルの全体像を知るために、必死になって情報のかけらを拾い集めなければなりません。これがきこえない子の現実です。
 もし、教師がそのような状況に気づかず、その子への配慮を怠ると、その子はわからないことばかりが続き、そのうち自分だけの努力では限界があることを感じ、わかろうとする努力をあきらめ、ただ、毎日机に座っているだけになってしまう可能性があります。
 
 また、授業以外の場面ではどうでしょうか? 休憩時間の3~4人の友達の会話の中に、その子は入って、丁々発止のやりとりはできるでしょうか? 教室に流れてくる校内放送の内容はその子は聞き取れるでしょうか? 体育館や校庭での朝礼の校長先生の話は、その子は聞き取れるでしょうか? もし分からなかったとき、友達や先生は教えてくれるでしょうか? 突然、後ろから名前を呼ばれて気づかなかったとき、「無視された」と友達とトラブルになることはないのでしょうか? 一見、きこえて話せる難聴児であっても、学校という集団の場では、多くの困難さ
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が待ち受けているのです。

 しかし、もしきこえない子なのだということをクラスで受けとめられ、必要な情報が、先生や周囲の誰かから自然に伝えられる配慮がなされれば、その子の「情報・コミュニケーションの障害」は、著しく軽減されるでしょう。

 そして、そのとき、そのきこえない子は、自分がこのクラスで受けとめられていることを実感し、自分はこの場にいてもよいのだと、心底感じるのではないでしょうか。
 この感覚こそが人が生きていくうえでの、最も基本的に重要な感覚なのだと思
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います。「安心してください。ここが君の居場所です」と言える、優しさと適切な配慮に満ちた教室・学校環境を作ること、それが担任教師や支援にあたる難聴学級教師に任された大事な仕事なのだと思います。 

 右の「難聴理解紙芝居」の例は、ある難聴児が通常学級に通うにあたって、難聴理解授業を保護者と担任とで行ったときに、保護者と難聴児とで作ったものです。このような具体的な手立てを考え、行うことでクラスの子どもたちの理解がより深まります。専門家は「インテがいいよ」と無責任に勧めるのではなく、その子どもが通常学級で学校生活を送るためにはどのような手立てが必要なのかをしっかりと保護者と話し合い、実際に学校に足を運び、自分の目で現状を確かめたり、場合によっては積極的に難聴理解授業を保護者や担任と進めるくらいの気持ちが必要だと思います。

┃難聴児支援教材研究会
 代表 木島照夫

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