全国の難聴児のための早期支援、聴覚障害教育の情報提供、教材などの紹介を発信します。

通常学級に通う軽・中度難聴児の支援は・・

〇軽・中度難聴児は自分の"困り感"がわかりにくい

もうすぐ新年度が始まりますが、軽度・中等度難聴児の中には、難聴があることに気づかれず、就学前検診などではじめて難聴であることがわかる子どもたちがいます。そのような子たちは、発音が比較的明瞭で、普段の生活で特に困った様子がみられないことが多く、気づきにくいのです。そして、「障害はそれほど重くない」ということで、小学校はそのまま通常学級措置となり、周りに迷惑をかけるといった大きな問題がなければ、うまく適応していると思われてしまうことも多いようです。ですから、話しがききとれなかった時に、その子が教師に何度もきき返しをしたりすると(きき返す子のほうがむしろ少ないですが)、「一生懸命きいていないからだよ!集中していればわかるよ」などと言われてしまいます。

また、友達に「おはよう」と声をかけられたことに気づかずにいたりすると、「なんだよ無視して!」と誤解されてしまうことにもなりかねません。本人にとっても、困る時と困らない時の境目があいまいなので、これらの状況を説明することはなかなかむずかしいのです。普段は特別な配慮を必要としていないのに、突然困る・・・・。そのときに初めて「きこえないから・・・」と言っても「今まできこえていたのに?都合がいいね」などと周囲は思ってしまうわけです。

 

 さらに「自分は学校生活でまったく困っていない。何も不自由していない」と言う軽度・中等度難聴児もいます。自分がどれだけきこえているか・きこえていないかがわからないからです(他人のきこえがわからないので当然ですが)。そして、「自分が難聴であることをあえて言いたくない。言わなければ友達も気をつかわないから関係がスムーズでいられる」と言う子どもも少なくありません。

 しかし、実はさまざまな場面で自分がきこえていないことに気づいていて寂しさを味わっていることも多いのです。先生も親も「わからないときはわからないと言いなさい」と言いますが、難聴児の「わかったふり」には、相手との会話を妨げたくない。何度もきき返したら相手が気分を害してしまうのでは?という不安が根底にあるのです(これはきこえに関わらず少なからず誰にもあるのではないでしょうか)。仲良しの友達との二人きりの会話はまだよいのですが、数人の会話や初対面に近い人との会話になると、後で困るかもしれないとどこか思っていても、全部きけばわかるかもしれないなどと、その時にきき返すことをせず、結局、最後まできいてわからなかったとしても、話を元に戻すことができず「わかったふり」をしてしまうこともよくあります。

 

〇軽中度難聴児をどう支援するか?       

  では、どうすればうまく適応できるのでしょうか? まず難聴児本人が、ありのままの自分でいられるような支援が必要です。そのためには、例えば、朝の会や学級活動の時間に、難聴児本人から「私のきこえ」「難聴学級紹介」「補聴器について」「手話と指文字」など 難聴理解かるた3.JPGのテーマでクラスの友達に話をする機会を設けるなど、きこえにくい自分をオープンにしていく経験を積み重ねさせることです。とは言っても小学校低学年の時は、担任の先生はもちろん、親御さんや難聴学級の先生の協力を得ることが大切です。そうした時に、『難聴理解かるた』(写真・本会出版物)などの教材があると、きいている子どもたちにとってもイメージしやすく便利です。

(*『難聴理解かるた』絵札の表には難聴児がどのようなときに困るのが端的に絵で表現されており、裏は指文字が載っている。読み札 の裏には、その解説が書かれている。1,900円。また、冊子『難聴児はどんなことで困るのか?』には、難聴児の困り感、本人自身の体験の解説、支援の方法などについて書かれている。700円。かるたとこの冊子をセットで購入すると2,200円と約2割引き)

 

 「難聴理解授業」で使用する『難聴理解かるた』の使い方は、下記に紹介している実践(福島朗博氏・難聴者・現松江ろう学校長)を参考にするとよいでしょう。

 http://nanchosien.com/nanchourikai/post_14.html

 

難聴児はどんな表紙.jpgのサムネール画像このような経験を積み重ねる中で、「自分の聴こえなさは隠す必要はない。聴こえない自分は聴こえない自分でいいのだ」と思える気持ちを育てたいものです。

さらに、難聴児を取り巻く環境への働きかけも積極的にやっていきたいものです。子どもが通う学校の先生方には、難聴児が学校生活を送る上でのさまざまな問題について説明し、具体的な支援方法や情報保障などについてもお願いすることが大切です。

今は、『障害者差別解消法』(2016)が施行されており、学校に対しても、①障害ある子どもに対して、②障害の状況に応じて、③他の子どもと同様に教育を受けるために、④障壁になることの解消に向けた配慮を、⑤過度な負担にならない範囲で行うことが、学校に求められています。信頼のおける難聴学級の先生や聾学校の先生、各学校に配置されている特別支援教育コーディネーターの先生などにも相談しながら進めるとよいでしょう。専門的な立場から適切なアドバイスが受けられると思います。また、地域の難聴児の親の会などにも声をかけてみるのも一つの方法です。子育ての先輩からいろいろなアドバイスを受けることができると思います。

  

☆全国難聴児を持つ親の会  http://zennancho.com/

 難聴児を持つ親たちが集まって作った会の全国組織。各地域に分かれて活動しています。

 

☆全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会 http://www.zennangen.com/

 全国の難聴言語障害学級の先生方の組織です。

┃難聴児支援教材研究会
 代表 木島照夫

〒145‐0063
東京都大田区南千束2-10-14-505 木島方
TEL / FAX:03-6421-9735

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