全国の難聴児のための早期支援、聴覚障害教育の情報提供、教材などの紹介を発信します。

進路,研修・講演案内,書籍案内、その他

 現在、手話通訳者の養成は、一部の専門学校と地方自治体が主催する講座がメ手話通訳養成(群馬大)1.jpgインですが、どこも昼間の開講・通学なので一般社会人は働きながら通うことが難しいのが現状です。このような状況があるため、なかなか若手の手話通訳者が育たず、通訳者の高齢化が進行しているのが現実です。

 こうした状況を改善することも含めて、群馬大学では、令和5年度より手話通訳者を養成する夜間でのオンライン講座を開講します。
 
授業は前半1年間がベーシックコースで週2回程度の夜間授業(年間120時間)、後半1年半がアドバンスコースで週1回程度の授業(120時間)。だいたい2年半で手話通訳レベルまでの実技と理論を学ぶコースです。
 手話通訳士をめざしたいけれど、仕事もしないと生活が・・・という方には朗報かもしれません。大学の授業として行われるので費用がかかりますが、なるべく安く済むよう、大学としても費用減免の申請も行っているようです。
 
詳細は、以下のURLをご覧ください。

NPOこめっこでは、下記の予定で2022年度の手話言語条例シンポジウムを開催します。関心のある方の参加をお待ちしています。


【テーマ】
手話言語を獲得・習得する子どもの力研究プロジェクト
~保護者の体験と思いに学ぶ~

【開催日時】

第Ⅰ部
〈事前配信(オンデマンド配信)〉
2022年12月26日(月)~2022年1月28日(土)12:00まで
こめっこシンポ2022.jpg
◯こめっこ研究の進捗報告
◯こめっこ参加ご家族の声
◯こめっこ紹介動画(再配信)

第Ⅱ部
〈シンポジウム(Zoomによるオンライン開催)
2023年1月28日(土)13:00~16:30
◯話題提供 ~3家族それぞれの体験と思いを語る~
◯パネルディスカッション
指定討論
  木村晴美氏
こめっこシンポ2022②.jpg
  前川和美氏

参加費】無料
【情報保障】手話通訳・字幕あり

【申込締切】2023年1月21日(土)

【申込方法】以下のGoogleフォームよりお申込みください


▼NPOこめっこHP

〇‟子どもも仕事も"~両立をめざすのが時代の要請

これまで聾学校とくに幼稚部では、学校の授業などへの保護者の付き添いを求めてきました。「仕事を辞めて子どもに付き添ってね」と、多くの聾学校が(主に)母親に要求してきました。その結果、保護者の就労とくにフルタイムでの就労は極めて困難というという状況が続いてきました。「子どもをとるか仕事をとるか」という二者択一の選択を迫られ、「子どもをとるのが当たり前」といった暗黙のプレッシャーがあったのは否定できないと思います(例えば「聴覚障害児を育てたお母さんをたたえる会」などはその価値観を背後から支えてきたと言えます。今はお父さんも可ということらしいですが)。

しかし、今、社会のあり方は大きく変わってきています。もっと女性の社会参加を促進し、母親も仕事をしながら子育てができるようにしようという方向に社会は動き始めています。

共働きでの子育てが当たり前になり、福祉にも教育にもお金を使っている欧米諸国並みに(因みに日本の教育予算はOECDの中でほぼ最下位クラス)、もっと女性の社会進出を進めようということが時代の要請としてあります。また、現実的な理由として、20年以上に渡って私たちの所得は増えていない、つまり経済的に一向に豊かになってはいないというわが国の現実(これも先進国の中では最下位クラス)と、さらにコロナ禍なども加わり、夫婦共働きでないととても生活していけないという家庭の経済事情もあります。

 

‟子どもも仕事も"~両方を実現する難しさ

聾学校も社会のあり方と無関係というわけにはいきません。これまでのあり方に固執すれば聾学校に通う子どもたちは減少していくだけでしょう。と言うと、「別に聾学校の人数が減ってもいいよ。インテグレーションすればいいだけ。」という声がきこえてきそうですが、問題は、インテグレーション(幼児期においては地域の保育園・幼稚園、就学以降においては地域の小・中学校など)することで、どう、その子のことばの力、考える力、人と関わる力、自己肯定感など将来生きていく上での大事な力を伸ばせるのか、ということが子どもにとって大事な問題ですから、仮にインテグレーションするとしても専門的な教育を受ける機会はどの程度保障されるのか、そして、それは子どものことばの力を伸ば

うえで十分な機会・時間となっているのかということだと思います。保護者が家にいて、子どもと関わる時間が十分にあればそれはそれでよいのですが、今、問題になっているの

ワーキングママの悩み2.jpg

は、こどもの発達保障と保護者の就労保障を同時に実現するにはどうすればよいのかということですから、「インテすりゃいいよ」というだけの話ではないのです。

右のSNSへの投稿のように、聴児の親子の場合ではあまり問題にならないような「難聴児のことばの発達」を、どう働きながら実現できるかという問題なのです。このSNSのお母さんもそれなりに生活の中で工夫され、がんばっているのですが、母親のがんばりだけに任せて、それれでほんとにいいの? ということなのです。

どのような「ことば」も(手話も日本語も)、人とのコミュニケーションの中で育つものですから、ことばの力を伸ばすためには、①きこえない子どもと関わる大人と、②共通の言語・コミュニケーション手段をもった子ども集団の存在が欠かせないのは事実です。  しかし、一般の地域の保育園や学童保育では手話は使いませんし、子どもたちみんなに話しかけられた音声日本語をリアルタイムに的確にききとることは、集団の中では難しい。かといって11で先生が難聴児に話しかけてくれたとしても、せいぜい「〇〇ちゃん、自分の××を取っておいで」といった指示程度の声掛け。それで子どもが行動できたら「ちゃんと話したらわかったね」となる。周りの子どもの行動にワンテンポ遅れて見よう見まねで判断して動いたとしても、最終的に行動出来たら「〇〇ちゃんはちゃんと適応できてますよ」となる。これで、その子のことばの力や考える力は伸びるのでしょうか?

「〇〇ちゃんはどうしてそう思ったの? 先生はね、~かなと思ったよ。」「じゃあ次はどうなるんだろうね。予想してみようか?」などといった、ある話題についての考えやイメージを膨らませる大人との個別的で丁寧な関わり・やりとり11で望むのは、難しいのが現実です。結局、地域の保育園や幼稚園では、①言語やコミュニケーション手段の問題、②施設側の人的なゆとりの問題、③支援・指導する側(先生)の専門性や指導力量の問題など、きこえない子がことばや思考力を育む環境という点で、限界があるのは事実です。

ろう学校に通わせたいか?.jpg

このような難しさを考えると、聾学校に通える条件が満たせるのならぜひ通わせたいという保護者は多く、最近実施した、ある聾学校でのアンケート調査(大都市にある乳相~小学部の公立聾学校,2022年実施)でも、聾学校で教育を受けることへの期待が右のグラフにも示されています。

とはいっても、聾学校は、ほぼ一日中というのは少ないとしても、「普段は来なくてもいいけど行事とか必要な時には学校に来てね」という聾学校は多いです。「全く付き添い要りません」という聾学校でも9時の登校と14時の下校だけは送迎が必要で、フルタイムで働く場合は、送迎支援のパートやアルバイトの方を別にさがさねばなりません。しかし、それもなかなか難しい(送迎だけでは仕事として金額的に見合わないなど)。そのため、送迎が大きなネックとなってパートタイムでの仕事にしかつけないというのが現状ですし、フルタイムで働いていれば、朝と午後に送迎をしてくれる方を探さねばなりません。さらに午後、迎えに行ったあとはどうするのかといった問題もあります。

 そのような課題を抱えつつ、それでも子どもを聾学校に通わせながらパートやフルタイ

就労したいか?.jpg

ムで働きたいという希望は圧倒的で、このアンケート調査でも、乳幼児相談・幼稚部・小学部在籍の家庭の実に99が「聾学校も就労も」という両立を希望しています。

(ただ、現状では保護者は様々な悩みを抱えています。上記アンケートの記述から一部抜粋しておきます。こうした悩みを解決するためには、「それぞれ自分で解決してね」と

今、困っていることは?.jpg

自己責任にしてしまうのではなく、皆で知恵を絞って、難聴児のことばの発達と保護者の就労の保障を社会の力で実現していくことが必要でしょう。では、具体的にどのような方法が可能なのでしょうか?

 


〇「専門的な教育・支援」と「就労」をどのように実現するか?

まず私たちは「子どもをとるのか就労をとるのか」といった二者択一の価値観から抜け出すことが前提です。また、聾学校は「母親は仕事をやめて子どもに付き添うのが当然」といった考え方を改めることも必要です。ただ、すでに書いたように、難聴児のことばの力を伸ばすためには、その成長発達を支える(専門的な力量をもった)大人の存在と共通の言語・コミュニケーション手段を使って自由に言いたいことを言い合い、互いに切磋琢磨し合える子どもの集団(とくに小学部以降)が必要です。少なくとも聾学校に通い、子どもが学校にいる時間帯(学校の時間)はそうした保障が可能でしょうし、小学校へのインテグレーションで難聴学級が校内にある場合も、ある程度上記のことは満たせるのではないでしょうか。

問題は、放課後(下校後)と長期休暇中などの時間帯です。子どもと11で関われるこの時間帯とくに幼児期においては、親(大人)は子どもと一緒に遊び、買物をし、料理をし、絵日記を書き、絵本を読み、おしゃべりすることを通して、子どものことばの力(とくに日本語)を育んできたのは事実ですし、就学前にあたる幼児期でのこの時間帯の意味は非常に大きいと言えます。しかし、就労とくにフルタイムで仕事をしている家庭の場合は、こうした親子での関わりの時間を、毎日、日中にもつことはまず不可能です。親に代わって支援できる大人の存在がやはり必要です。では、どうすれば放課後(含長期休暇)の時間帯にそれが出来るのでしょうか?

 

〇児童発達支援事業という枠組みのなかで

 今、厚労省と文科省が連携して、難聴児の切れ目のない支援を実現するために、添付した図のように、各自治体ごとで医療・療育・聾学校・行政など関係機関が連携して連絡協

中核機能モデル.jpg

議会を作ったり、難聴児の保護者が困らないようにいつでも相談できる機関を作ったり、難聴児の支援・指導ができる発達支援事業所を整備したりなど、さまざまな支援事業が自治体ごとに計画立案されています。そして、この図の中の「中核機能イメージ」というところに、難聴児の支援ができる児童発達支援事業所・センターというのがあり、3つのタイプの事業所が挙げられています。児童発達支援事業所(以下、児発)というのは、厚労省管轄の施設で、相談・支援だけをやっているところもあれば、放課後デイサービスなどもあわせて実施しているところもあります。  これらの児発のうち図の左の「一体型」というタイプの児発は、聾学校の「空き教室等の利用を想定」とあります。聾学校の空き教室を利用して児発を立ち上げ、この児発の事業の中に、外部からの個別の相談・支援だけでなく、幼児の放課後預かり(=児童発達支援事業)と児童・生徒の放課後預かり(=放課後等デイサービス)を含めて実施することも可というタイプのものです。実際に、このタイプの事業所は、久留米聴覚特別支援学校(福岡県)と熊本聾学校にあります。

これらの児発(一体型)は、①聾学校の空き教室を利用、②幼児・児童・生徒が一定数在籍(1020名程度)、③保育所や学童保育のような放課後預かりを難聴児に特化して実施という点で共通しています。こうした施設を立ち上げることで、子どものことばの力を伸ばすことと保護者の就労を同時に保障することが可能になると考えられます。

 また、図の真ん中にあるのは「連携型」というタイプの児発です。これは従来型の「難聴児通園施設(現在は児発で統一)」もあれば、東京にある「あーとん塾」のような難聴児に特化した児発もあります(定員の関係で毎日利用は難しいようですが)。ほかにもこのタイプの事業所はあるかもしれません。

 

〇「一体型」か「連携型」か?

 それぞれの地域・聾学校にはそれぞれの事情があるので一概に言えませんが、聾学校に一定の人数が在籍しており、空き教室があるのなら「一体型」の事業所を立ち上げ、そこで幼児・児童・生徒の放課後の預かりが可能ですし、移動の負担がない分、安心です。とくに東京のような都会にある聾学校では、簡単に土地・施設の入手が出来ないので、「一体型」にはメリットがあります。一方で子どもの数が限られていたり空き教室がない聾学校では、比較的近い所にある児発との「連携型」が可能かもしれません。

 また、通常学級や難聴学級等に通っている小学校の子どもたちも、難聴児を受け入れている児発で小集団の活動など可能になるかもしれません。

いずれにせよ、これからの時代は、女性の社会進出、保護者の就労を保障すると同時に、子どもの成長・発達を保障する難聴児に特化した放課後預かりタイプの児童発達支援事業所がもっと必要になってくるのではないかと思います。

国が進める「切れ目のない難聴児支援」を真に有効なものにしていくためにも、週1~2回でも毎日でも利用でき、幼児・小学生だけでなく中・高校生も含めて、それぞれの子どもや家庭のニーズに合わせて利用できる発達支援事業所や放課後等デイサービスを作りたいと、思っています。

ぜひ、全国での児発の情報など教えてください。 木島照夫記

nanchosien@yahoo.co.jp


〇大学に進学するということの意味

 ある難聴幼児(重度)のママさんより、上のタイトルのような質問をいただきました。話しをきいてみると、ある病院の耳鼻科の先生に「聾学校に行ってちゃ、将来、大学とか行けないし、インテしたほうがいいのでは?」と言われたということでした。最近はここまではっきりと(露骨に?)おっしゃるドクターはむしろ少なく、「手話をやりたいなら聾学校へどうぞ。音声言語でやりたいなら別の療育機関を紹介しますよ」という言い方で人工内耳やインテグレーションを勧める方が多いのですが、いずれにせよ学校教育は、将来、大学に行くためにあるわけではありませんし、公立聾学校は音声言語を否定したことははっきり言ってないと思います。「あれかこれか」という二者択一ではなく、「あれもこれも」という選択もあってよいと思います。

そのうえで考えてみると、大学に行くということは、抽象的・論理的思考ができるレベルの学習言語を身につけ、将来、社会で活躍するために必要な高度な思考や知識技術を学ぶ世界に入っていくことだと思います。そして、その子どもの到達した思考力や日本語力がそれが可能になるレベルに達したということですから、いわゆる『9歳の壁』を越えたというひとつの目安になると思います。そして、これまで聴覚障害者のおかれていた社会的地位の低さを考えると、大学に行く人が増えるということは、きこえない人たちの社会的地位の向上にもつながることだと思います。


〇障害認識の視点を忘れずに

もう一つ大切なことがあります。それは、子どもたちが、差別や偏見が厳然としてある現実の社会で生きていかざるを得ないということを考えた時、不当な差別や偏見に対してきちんと異議申し立ての出来る論理的思考力と書記日本語力をもつことがとても大切だということです。自己肯定感がもてる子ども、しっかりとした障害観・言語観、自己認識をもった子どもたちを育てていくこと、それが特別支援教育における聾学校や難聴学級の大切な意味であり役割だと思います。論理的思考力、言語力(書記日本語力)、自己肯定感、障害認識をしっかりと育てていきたいものです。

 

〇そのうえで考えてみたいこと

乳相の活動②.jpgのサムネール画像

こうした力をつけられることを前提にした上で、あえて「聾学校から大学に行けます

か?」という問いに応えるとすれば、私は「もちろん、行けますよ!」と応えたいと思います。ただ、日本にある聾学校は国立1校、私立2校、それ以外は公立(都道府県または市立など約100校)聾学校で、それぞれの聾学校の教育方針も指導力も子どもの数もまちまちで、金太郎飴のようにどこを切っても同じということはありません。そういう意

乳相の活動③.pptx.jpgのサムネール画像

味で、私が「行けます」という意味は、実際にこの10数年関わってきた、ある公立聾学校での実践を前提として考えています。

乳幼児教育相談で保護者の障害認識のあり方を支援し、子どもの自己肯定感を育て、手話という早期に獲得できる「言語」を使って認知・思考の力を伸ばし、日本語対応の手話や文字・指文字・音声をトータルに使って基礎的な日本語力・思考力を就学前の幼稚部段階でつけ、さらに小学部においては日本語文法指導や日記・作文指導等によって教科書を自分で読める力をつける。ざっと言えばこのような方法になると思います。そしてその結果として、書記日本語力や学力を確かにつけてきた。

乳相修了児学力テスト国語.jpg

右の図は、そのろう学校での小6児童の文科省学力調査結果(コロナ前の2019年)の国語と算数の結果ですが、このろう学校に乳幼児相談からずっと通い続けた子どもたちは、しっかりと学力をつけていることがこのグラフからもわかります。

そしてその下の図は、その子どもたちが最終的に高等部を卒業し、大学(含短大)に進学している比率と実際に進んだ大学です。大学名まで出すことにためらいがないわけではありませんが、

乳相修了児学力テスト算数.jpgのサムネール画像「聾学校から大学には行けない」と言い切る医療関係の方々の認識を変えていただくために、単に人数だけでなく少しでも信憑性の高いデータとして出すこととしました。グラフからわかるように、この公立ろう学校の大学・短大進学率は7年間平均で58%。この数値は、直近のデータである平成3年度学校基本調査報告(文科省)のわが国の高校生の大学・短大進学率58.9%とほぼ同じです。は、どこでも聾学校ならこうした進学率なのかと大学進学率最新版.pptx.jpgえば、現状ではもちろん違います。しかし、このろう学校が取り組んできた教育方針・方法で、保護者支援から子どもたちへの支援・指導を行えば、「そうなる」だろうと私は思います。それは、いろいろな地域の聾学校の子どもたちをみてきた、あるいはいろいろな検査をしてきたその結果から実感をもって言えることですし、それを証明するデータが下のグラフです。これはJcoss(ジェイコス・日本語理解テスト)という日本語の理解度(読み)を調べるテストの結果です。このテストでは、検査に含まれJcossとは?.jpg

る文法項目20項目のうち何項目が「通過」できているかを調べることで、その子どもがどこを苦手としているのかとか、何歳・何年生レベルの力が今、あるのかといったことがわかります。このグラフでは、横軸を各学年、縦軸をJcoss通過項目数として、各学年ごとの平均通過項目数を表示しています。

例えば、聞こえる子(聴児)の各学年平均の通過項目数は白点線で表示されており、1年生10.9項目、2年生14.8項目、3年生15.5項目・・ということがわかります。 また、聾学校児童の値は黄色の直線で表示されています。例えば、小学校1年生では、聴児は10.9項目通過しているのに対して、聾児では5.3項目。ほぼ

Jcoss通過項目数.jpg

聴児の半分しか通過できていないことがわかります。聾児はまだまだ教科書を自分で読んでわかるレベルにないことが、この図から読み取れます。人数的に多くないので多少ばらつきはありますが、いずれにしても聾児は聴児のレベルまで追いつくことはなく、6年生でも13.7項目通過で低学年のレベルで終わっていることがわかります(中川,2009)。これが「9歳の壁」といわれる現象の一端です。

その聾児の線(黄色の直線)の近くにある赤い点線は、実は私が関わってきたろう学校の2008年(平成20年)の各学年平均の通過項目数です。他の聾学校(中川,2009)とそれほど差がありません。というか聾学校平均をやや下回っているレベルです。この時まで、このろう学校は一般のどこにでもある聾学校のひとつでした。しかし、12年前のこの頃が思考力・日本語力改善に向けてのスタートの年でもありました。まず、小学部で取り組んだのは日本語文法指導。これには聾教育研究者はじめ教育関係者の方々からいろいろと批判(時代遅れ、聾児には理解困難等)もありましたが、しかし、着実に成果を挙げてきました。その方法についてはこのHPにも紹介していますし、テキストを作成したりYouTube動画も作成してきました。

次に取り組んだのは幼児期の子どもたちの日本語力・思考力アップ。これは、まず幼稚

WISCⅢ結果.pptx.jpg

部幼児全員のJcossの実施、年長児のWISCの実施から始めました。右のグラフは、当時の幼稚部年長児のWISC検査の結果です。これによって幼児の認知・言語面での実態が明確になり、何に取り組むべきかもわかってきました。右のグラフを見ると「類似」という項目が最も落ちていることがわかります。これは、ものごとの概念が十分に作られていないこと、ものごとの概念間の比較や共通概念の抽出なども難しい子どもが多いこと、さらにはものごとの上位・下位概念といった

概念カテゴリー.pptx.jpg概念カテゴリーが構造化されていないことがわかりました。そして取り組んだのが乳幼児相談段階での「ことば絵じてんづくり」の実践でした。語彙はまとめて整理することで記憶することもできるし語彙を増やすこともできます。聴児のように「自然に」頭の中に語彙のファイルが作れないのであれば、絵や写真、文字を使って視覚的にわかるように同じもの・ことをさまざまな観点からまとめる。それによって頭の中に整理された語彙のファイルが作られれば、そのファイルを使ってさらに新しいことばについて考えることができます。ことば絵じてんづくり.pptx.jpg

これによって帰納的推論と言われる重要な思考方法も身につけることができます。この取り組みは時間もかかり手間暇がかかりますから、乳幼児相談1,2歳児の保護者の負担も相当だったと思いますが、確かに子どもの語彙力・思考力は伸びました。そしてそれが年長時に実施するWISCの言語性の検査結果にも反映されました。それが下のグラフのWISCの結果の比較です。「類似」の結果が大きく伸びていることがわかります。他の項目も伸びています。

WISCの変化.pptx.jpg

また、それはJcossの結果にもあらわれました。この「ことば絵じてん」の実践とその効果についても、このホームページに紹介していますし、ワークも作りました(『ことばのネットワークづくり』)。

 このような取り組みの積み重ねの結果として今あるのが、Jcossのグラフの中の赤い直線です。これは20221月(平成3年度末)に実施されたJcossの学年平均の通過項目数です。聴児の白い点線をやや下回っていますが、高学年ではほぼ同等まで伸びています。2008年頃の子どもたちの値とは別次元の値といっても言い過ぎではないと思います。また、青い直線で示したデータは直近7年間の大学進学者29名の在籍当時のJcoss通過項目数平均値です。赤い直線とあまり違わないことがわかります。このような結果からも大学進学率58%が根拠のないことではないと理解していただけると思いますし、どこの聾学校でも、その気になって取り組めば子どもたちは伸びるのだということのひとつの証明だと思います。

 数年前、ある医療系大学の招きで米国ロチェスター工科大学教授(当時)のマーク・マーシャーク博士(Dr. Marc Marchark)が来日され、このろう学校体育館で記念講演が行われたことがあります。講演に先立ってろう学校を見学され、その後の講演の冒頭で「このような聾学校を私は知らない。米国はじめ欧州その他世界中の聾学校を見てきたが、この聾学校は特別な聾学校だ・・」と話されました。その時、私はマーシャーク博士の話をききながら、私たちの実践は決して間違っていなかったと確信しました。

 

〇子どもはどこにいても伸びるし伸ばせます!

聾学校だから伸びたわけではありません。どこにいても子どもは伸びるし伸ばせます。ただ、それができるかどうかは、支援・指導に携わる教師・ST・医師といったそれぞれの専門家の見識と支援・指導の力量、また、保護者の考え方や子どもへの関わり方ではないかと思います。否定より肯定、ありのままの子どもの尊重、早期に言語を持つこと、工夫し楽しく日々一緒に遊ぶこと、ものごとの概念やイメージが豊かにもてるようたすけること、論理的な思考の力の基礎を育てること、書記日本語の力を伸ばすこと、そのために絵本の読み聞かせや絵日記に取り組むこと、日本語文法の指導に取り組み教科書が自分で読める力を育てること、きちんとした障害認識の力をもち自己肯定感をもった子どもたちに育てること、そして、その結果が、「9歳の壁」を越える力につながるということだと思います。どこにいても関係なくこうした力を育てることはできます。そのことを間違わないようにしたいものだと思います。

 

 

上農ゼミ.jpgのサムネール画像
2022年度の上農ゼミが始まります。

参加ご希望の方は、右記にお申込み下さい。3月10日締め切り


ある県の聾学校と難聴学級の先生方を対象としたZoomによるオンラインの講演会を開催しました。その講演会での前半は、主に象徴機能の発達と概念形成という視点から、その発達過程の見方について話しました。それについては下記をご覧ください。

http://nanchosien.com/cat67/2022zoom.html


今回は、日本語文法の指導とくに助詞と動詞の活用の指導がなぜ大切なのかという点について話したことを、その講演で使ったパワーポイント資料と共に掲載したいと思います。

 前回、「9歳の壁」を越えるために、赤ちゃんのときからもっている象徴機能(シンボ

生活言語から学習言語へ.jpg

ル)の発達が欠かせないということを話しました。とくに、自分中心の世界である幼児期=生活言語の世界、自分中心の世界から抜け出て、物事を少し客観的に見る目が育ってくることが、学習言語=教科学習の世界に入るために不可欠だということです。

 例えば教科書に出てくる学習内容は、自分のこととは関係ないこと、自分が経験したことのない知らない世界のこともあるわけですが、そうしたことが学習できるためには、他者視点で物事をみつめれらることが必要です。そして、他者視点で物事を見つめられるためには、自分の頭の中で、他人の考えていることを想像できることが大切です。「ママはどう考えているのだろうか?」という他者視点、「自分はママにどう思われているのだろうか?」という自己対象化の発達です。頭の中で動いているママのイメージも、2,3歳頃にやっていた「ママがお化粧するふり」「ママになりきってままごとをする」といったイメージ(象徴機能)も随分と複雑になってくる段階です。また同時に、この時期は、ことばそのものについても、頭の中にそのことばを思い浮かべて、ことば自体を対象化して操作できるようになってくる時期です。「ア」のつく言葉探し、しりとり、さかさことば遊びといったことばあそびはその典型です。また、かずについても頭の中にモノのイメージを浮かべて足したり引いたりできるようになってきます。こうした象徴機能の発達の上に、教科学習が可能になるつまり学習言語が習得できるわけです。

 

〇助詞や動詞の活用は、思考力の発達につながる

 さて今回は、思考の発達にとって日本語の文法の習得が欠かせないということ、とくに助詞と動詞の活用がわからないと論理的な思考ができないということについて話したいと思います。

日常会話の中では、ことば以外にいろいろと手掛かりとなる非言語情報、例えば、具体物、話題の文脈、相手の声色とか表情、しぐさなど沢山の情報があって相手の言いたいことを理解していますから文法的に正しくなくともつまり論理性があまりなくても十分に伝え合うことができます。しかし、その場に居合わせない相手にその場で起こっていたことを伝えるとなると、非言語情報は使えませんから、すべて、言語情報だけを使ってその場にいなかった人に伝わるようにしなければなりません。その時に例えば、助詞の使い方を間違えたらどうでしょう?

 ファイルの絵の下にあるように、「太郎花子叩いた」と「太郎花子叩いた」で

「が」と「を」の指導.pptx.jpg

は、まったく意味が逆になってしまいます。このように、11の「今、ここ」という場面でコミュニケーションするときに使うことば(生活言語)では助詞がなくてもあるいは間違っていても通じますが、第三者(他人)に伝えるときのことばは論理性が明確でないと相手に正しく伝えることができません。ということは、自分の頭の中に動いていることばも助詞を正しく使えていないといけないということになります。つまり、助詞が使えないと論理的思考ができないわけです。このことは、きこえない子が「9歳の壁」を越えて論理的・抽象的な思考をするためには絶対に欠かせないことだということになります。

 

動詞の活用のしくみ.pptx.jpg

  また、動詞の活用はどうでしょう? 例にもあげたように、動詞では、伝えたいことが多様にかたちを変えてそこに表現されます。例えば例文の中の「①させー②られー③ていー④たー⑤らしい」というのが動詞の活用になるわけですが、①「させ」②「られ」では、太郎がだれか他人に強いられているということがわかりますし、③「てい」では、一定の時間継続してることがわかります。また、④「た」では、過去のことだということがわかりますし、⑤「らしい」ということからは、自分が見たわけではないけれど、という意味が含まれていることがわかります。

 このように一つの動詞にはさまざまな意味が含まれ表現されているので、このそれぞれの要素を正しく理解できないと、正しく伝わらない、正しく理解できないということになります。

 以上のことから、ことばの文法的側面を正しく理解し使えるようになるということは、論理的な思考ができるということに直結しているということがわかっていただけたのではないでしょうか。そして、助詞と動詞の活用の苦手なきこえない子への文法指導の大切さが理解していただけるのではないでしょうか。

 以下、日本語文法指導について話した内容のPDFから一部抜粋して掲載しますので参考にしていただけたら幸いです。

 文法力の把握と指導.pdf

 上記のようなタイトルで、ある県の聾学校と難聴学級の先生方を対象としたZoomによるオンラインの講演会を開催しました。その講演で使ったパワーポイント資料を掲載します。

〇認知発達~象徴機能(シンボル)をみることの大切さ
「9歳の壁」について.jpg

  

 今回のタイトルは標記のようなものですが、「言語」だけでなくわざわざ「認知」の力を、といっているのは理由があります。

  これまで、聴覚障害教育では、音声日本語の獲得(生活言語)⇒書記日本語の獲得(学習言語)をどう伸ばすかということに力を注いできたと思います。しかし、その結果はどうだったのでしょうか?

 右の図のように「読み」の力において、グラフの横軸の各学年に対して、縦軸の読書学年は4~6年の高学年でも読書学年は4年生を越えていない、これがこの半世紀におよぶ聴覚障害児教育の現実と言えます。これがいわゆる「9歳の壁」といわれる現象です。

 ことばを変えて言えば、コミュニケーションのためのことば(生活言語=話しことば)のレベルから、学ぶためのことば(学習言語=読み書きと思考のためのことば)のレベルに到達できていないということです。

  なぜこのような現象が起きてくるのでしょうか? 

 

卒業生進路.pptx.jpg

私は、一言で言えば「教育の仕方がどこか違っていたから」だと考えています。その証拠に下の表のようにある公立聾学校(私立・国立ではありません。念のため)の小学部を卒業した子ども(この聾学校は小学部までしかありません)たちは、その後、半数以上が大学に進学しているからです。もちろん大学進学が全てというつもりは毛頭ありませんが、一応こうした事実からも「9歳の壁」は半数以上の子が超えていると考えてよいと思います。またのことは別の検査や文科省が行う学力テストの結果からも証明できます。

  では、この学校ではどういう教育をしているのでしょうか?  こうした要因として「人工内耳の子が増えたからでは?」と考える人もいますが、学習言語は聴力のよしあしやきこえて話せるかどうかといったこととは全く関係ありません。

 その要因の一つは、0歳から手話を積極的に使っているということです(手話の種類は問いません)。手話を取り入れるメリットの一つは、よい親子関係が早い時期につくれることです。この学校では子どもがきこえない子だということを否定しません(もちろんきこえを改善すること=補聴器をつけることも否定しません)。子どもは基本的に生まれて自分のありのままをまるごと認められるわけですから結果的に自己肯定感が育ちます。自己肯定感は子どもを積極的・意欲的にします。それが言語も認知も人と関わる力も結果的に伸ばします。

 もう一つ手話のよいところは、手話は言語であるということです。言語はだれにも通じる公共性をもった最高レベルの象徴機能(=表象・シンボル)です。言語を持つことで他者(赤ちゃんの頃はママ、パパ)と通じ合うことができます。通じ合えるということはいっしょに同じものを見、同じ体験をし、それらについて自分の言いたいことや自分の思い・考えを互いに伝え合えるということです。互いに伝え合えるから考える力も育つのです。手話ならきこえない子も1歳からスタートできますが、音声言語だけの場合はもっと初語の発生時期は遅くなります。補聴器をつけても人工内耳をしてもだいたい2歳頃。つまり1年の差が生じる。たかが1年くらいの差と言ってはいけません。赤ちゃんの時の1年間の差は、大人になってからの1年間の差とは意味が違います。言語の力と認知の力を早い時期から並行して伸ばすことができるのが手話という言語です。

 いま、認知の力と言いましたが、認知の力のコアは象徴機能です。象徴機能とは、実物の代理物・機能と考えていただけたらよいでしょう。赤ちゃんは生後6か月を過ぎると頭に

象徴機能の発達.pptx.jpg

中にいろいろなことを記憶することができるようになります。どうやって? まだ言語はもたないわけですから、それは非言語的な映像・イメージと考えられます。ですからこの頃から「写真カード」が使えるようになるわけです。自分の体験したこと例えば新幹線に乗って楽しかった体験は、新幹線の写真をみれば思い出せる。このとき、写真や自分の頭の中に浮かぶ映像は、実物の代理である「象徴(シンボル)」です。また、こうした楽しかった新幹線の体験は、積木を新幹線に見立てたり、ママと一緒に紐を新幹線に見立てて「ピー、シューッ」などと再現して遊んだりもします。この時、積木やひもは新幹線の代理物ですから「象徴」です。そして、こうした象徴が発達し、やがて「しんかんせん」という日本語や手話という言語に替わっていきます。積木やひもは自分の中での象徴ですから他の人には通じないかもしれませんが、言語であればだれにも通じます。この誰にも通じるということがとても大きな意味があるわけです。1歳頃、きこえない子は音声言語はまだ持てない。それは入力される音の情報はまだ音の塊に過ぎないからです。例えば「イヌ」も「イス」も「いく」も子どもの頭の中では「イウ」レベル。音韻が100%区別できないと言語は獲得できませんから、まだまだ時間がかかるわけです(非言語的映像による象徴機能の時期がしばらく続く)。それに対して手話は視覚言語で、手話にも音韻(というのも変ですが)があり、手話の音韻(手の形、手の位置、手の動きの方向性の3つ)はちゃんと見て区別できるので、言語として獲得できるわけです。ですから子どもはその言語を使って親子でコミュニケーションしながらことばもあたまも発達させていくことができるのです。これが早期に言語をもつことのメリットの2つ目の意味です。

 このようにきこえない子も手話を使って認知能力を発達させることができますから、2歳頃には聴児と同じように本格的な概念形成の段階に入っていくことができるのです。こうした認知発達の段階を比較的簡単に把握できるのが「太田ステージ」や「質問応答関係検査」です。ちゃんと認知発達や生活言語段階から学習言語段階にステップアップするときに必要な象徴機能の発達のポイントが抑えられています。順番に書くと以下のようになります。

 

〇生活言語段階(乳児~幼児期前半)での象徴機能の発達をとらえるには?

  ①モノに名前があることがわかる(2歳前後)・・・モノ(ことば)はカテゴリー

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(概念)をもっていることがわかる。これが最初に抑えるべきポイントです。太田ステージではStage2です。2歳での言語獲得のポイントを押さえておき、3歳以降になったら「質問応答関係検査」の「類概念」によってこの力が順調に伸びて、ちゃんとモノの類概念が形成されているかどうかをチェックします。ここで躓いていると語彙を増やすことができなくなるので、ちゃんとチェックし、不十分なら「ことば絵じてん」作りをするとよいです。また、このモノ(ことば)のカテゴ

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ーが作られていてそれらのモノ同士の共通概念を取り出すことができるかどうかは、5歳以降のWISCで確認します。「類似」は「質問応答」の「類概念」よりレベルが高いです。頭の中にモノの概念が豊かに形成されていないと共通概念を言葉で取り出すことができないからです。これができない難聴児は、『ことばのネットワークづくり』(本会発行・2022年文科省特別支援教育一般図書指定)などによって再学習します。ここ(5~6歳)がことばのカテゴリーに関する最終チ

WISC類似.pptx.jpgのサムネール画像

ェックポイントになるので見逃さないようにします。ここを見逃すと上位・下位概念が

成されないために将来的に抽象概念が習得できなくなることと語彙の拡充が困難になります。

 

  ②目の前の丸の大きさの大小がわかる(比較概念・概念形成の芽生え・3歳半頃~)・・・比べることの意味がわからない難

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聴児も時々います。できない子には、生活の中でのモノの比較(大小・長短など)を「大きいね、小さいね。どっちが長いかな?比べてみよう」など楽しくやることが大事です。

 

  ③目の前にないモノの大小が頭の中にイメージして比べることができる(4歳頃~)。・・・頭の中でモノの大きさ(たとえはスマホと冷蔵庫)が比べられるのは、頭の中にそのモノの映像(象徴)が浮かび、大小がわかるのは比較することの意味がわかり、そのモノの概念がしっかりと記憶されていないとできない。ここで躓く難聴幼児も少なくないです。

 

  ④生活言語段階から学習言語段階への渉りのチェック

 

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質問応答関係検査の中の「日常的質問」は生活言語レベルでのやりとりができるかどうかをみる問題です。自分に関する実際のことなので通常は応答できる子が多いですが、音声のみだと聞き取り自体が困難なために「できない」こともあるので要注意です。

 また、その後に続く「なぞなぞ」「仮定」「類概念」「語義説明」「理由」などは、自分の経験を離れて、ことばそのものの意味を理解し説明できる段階すなわち「学習言語」段階に入りつつあるかどうかをみる問題です。ここをしっかりチェックしておくことが就学前にやることです。課題がある場合は、言葉自体を取り出してそのことばを操作したり考えたりできるよう、「なぞなぞ」「連想ゲーム」「クイズ」「しりとり」「反対ことば」「さかさことば」などのことばあそびの類をしっかりやります。また、考える力を伸ばすためには単なるルーティンなやりとりに終始するのではなく、子どもの思考を耕すようなやりとりをたくさんすることです。

 

 幼児期の発達の様子をしっかりチェックし課題がある場合は、それに応じたさまざまな活動を楽しくやって課題をクリアしていきます。もし発達段階的に下の課題が積み残されているのであれば必ずそこからやり直します。発達は基本的に順番にしか進まないので下のことができていないとその上の発達は積みあがらないので要注意です。

 今回、このオンライン研究会では難聴学級のある先生の実践を事例として紹介しましたが、ことばのカテゴリーの再構築からやり直し、ことばのネットワークづくりや日本語文法指導をその上に積み重ね、子どもが飛躍的に伸びた実践を紹介しました。短期間のうちに「絵画語彙検査」は47カ月から97か月の5年分の伸び、「Jcoss(日本語理解検査)」は、8項目(年長レベル)から19項目(小高レベル)まで伸びています。子どももとても自信が出てきて、通常学級の中でも積極的になり活き活きと学校生活を送っているようです。


最後に今回のオンライン講演で使ったパワーポイント資料のPDFを下記に掲載しておきます。見ていただけたら幸いです。


2021年度 大阪府手話言語条例シンポジウム

手話言語を獲得・習得する子どもの力研究プロジェクト

~生涯発達を見据えて ZERO to THREE に大切なこと~

 

【開催日時】

第Ⅰ部 〈事前配信(オンデマンド配信)〉

20211220日(月)12:002022122日(土)1200まで

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NPOこめっこ活動の紹介

 ~ひだまり・MOEBABYこめっこ,こめっこ,もあこめ~ 



◯話題提供

・脳科学/学習能力  

酒井邦嘉氏(東京大学大学院総合文化研究科 教授)

・言語獲得      

武居渡氏(金沢大学 人間社会研究域学校教育系 教授)

・心理発達     

 河﨑佳子氏(神戸大学大学院人間発達環境学研究科 教授)

 

 

第Ⅱ部 〈シンポジウム(Zoomによるオンライン開催)〉

2022年1月22日(土)13001530

◯パネルディスカッション

指定討論

「耳鼻咽喉科医」の視点から

  南修司郎氏(独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 耳鼻咽喉科 科長)

「言語学・バイリンガル教育」の視点から

  古石篤子氏(慶應義塾大学 名誉教授)

「手話言語教育」の視点から 

  前川和美氏(関西学院大学手話言語研究センター 研究特別任期制助教)

 

【参加費】無料

【情報保障】手話通訳・字幕あり

 

【申込締切】2022115日(土)

【申込方法】以下のGoogleフォームよりお申込みください

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScaKcsOd2CZLqnSL-ywNJvEXkaTy-FxPnLsChpy0ZWPLWyt1g/viewform?usp=sf_link

 

全国早期支援研究協議会編,ごま書房新社刊,1,800円(+税)

     *本会では消費税分はいただいておりません。

『わかる!できる!おやこ手話じてん』が出版されてから十数年経ちました。この手話辞典は使いやすいことで読者の皆様方より高い評価をいただき、掲載語彙数を増やしつつ、これまでに何度か改訂を重ねてきました。

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この間、手話に対する社会的認知も広がり、テレビのニュースに手話通訳がつくようになり、手話言語条例が400を超える自治体で制定され、全国すべての自治体から「手話言語法」制定の要望が提出されるようにもなりました。

また、聴覚障害教育の分野では、発達の早期から手話を用いる実践も広がってきて、手話が認知や言語面だけでなく、子どもたちの自己肯定感や情緒・社会性、意欲・積極性といった非認知面でも、大きな効果があることがわかってきました。

 このような動きに押されるかたちで、旧『おやこ手話じてん』は、『伝わる!つながる!親子の手話じてん』(略「おやこの手話じてん」)として、この度、ごま書房新社より装いを新たに、一層充実した辞典として従来の定価はそのままに出版されました。今後ともぜひこの辞典をご愛用いただけますようよろしくお願いいたします。ご購入は、下記のA,Bどちらかの方法でお願いします。


出版物購入方法


A.下記の出版申込用紙をダウンロードして下記あて先にFAXかメールに添付して送る

☆出版申込用紙(ダウンロード)book_fax22.pdf.pdf 


B.直接、メールまたはFAXに ①送り先、②冊数、③連絡先、④郵便振込希望(振替用紙同封)または銀行口座振込希望(150円割引)のどちらかを書き、下記あて先に送る


⇒A.Bの送り先(申込先)

★FAX 03-6421-9735(木島)または048-916-6250(江原)

★メール nanchosien@yahoo.co.jp  soukisien@yahoo.co.jp


・消費税分はサービス致します。

・送料は別途必要です。但し、10,000円以上ご購入で送料無料となります。

1,500円以上ご購入の場合は、郵便振替用紙赤(振込代金は本会負担)を、1,500円未満の場合は郵便振替用紙青(振込代金は送金者負担)となります。

1,500円以上ご購入の場合で、銀行口座振込をご利用される場合、150円割引致します。


郵便振替口座 00100-9-718706 難聴児支援教材研究会

★銀行振込口座 

ゆうちょ銀行・店名038(ゼロサンハチ)普通8396021 難聴児支援教材研究 

 


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聞こえない子どもの子育てについては基礎的な知識とは別に、日本語の習得、就学前の準備、絵日記、絵本への対応、文字の導入等、具体的に考えなければならない個別の問題があります。本コースではそれらの個別テーマについて、どう考えて、どう対応すればいいのをわかりやすく解説します

 主催:江副学園言語教育研究所ろう教育部門

講師:江副学園言語教育研究所ろう教育部門室長 上農正剛(元九州保健福祉大学教授)

実施方法:ZOOMミーティング利用のオンライン講義


■日本語習得-現実の中での意味                                                                        

実施日時: 1回 912日(日)午前10時~1130

2回 926日(日)午前10時~1130

     第3回 103日(日)午前10時~1130

◆内容

1回 日本語の習得とは何か

1)「日本語」という場合、何を指しているのか―音声言語と書記言語と手話言語/自然言語

2)言語獲得の仕組みから見た場合の「日本語」習得の意味/獲得と習得

3)ろう教育における言語教育の歴史と問題点―日本語はどのように教えられてきたか

2回 教科学習における読み書き能力(書記日本語)の意味

1)教科学習とは何か-その実際の状況

2)教科学習の前提条件―何が求められているか/就学"前"の日本語力(文法と語彙)

3)教科学習における「生活言語」と「学習言語」の関係

4)教科学習の「積み残し」問題の深刻な実状/聾学校による違い/インテの状況

3回 読み書きの力(書記日本語力)をどうやって育てるか

1書記日本語力の構成要素

2)書記日本語力の習得過程―学習の段階的スケジュール/「九歳の壁」の意味

3)聞こえない子どもはどこで行き詰まるか-助詞の理解と運用

 

■絵日記(※対象は「日本語習得」受講修了者限定)

実施日時: 1回 912日(日)午後1時~230

2回 926日(日)午後1時~230

     第3回 103日(日)午後1時~230

◆内容

1回 絵日記の目的-ことばは生活の中で育まれる

1)子どもがことばの「意味」を理解するとはどういうことか-「ことばの饅頭」

2)乳幼児期にこどもがことばと出会っていくプロセス(言語発達の過程)

3)絵日記の目的-文字と書記日本語                                                               

2回 絵日記の書き方-段階的実践方法

1)絵日記を書く上で一番大事なこと-継続性

2)絵日記の段階的書き方

3回 絵日記の活用-深く、豊に展開させるには

1)絵日記の展開の意味-ことばの定着

2)共感と評価-意欲の醸成

3)質問と応答の意味(役割転換)-思考のしくみ

4)絵辞典との連携-転用のさせ方

 

■絵本の読み聞かせ(※対象は「日本語習得」受講修了者限定)←新プログラム

実施日時: 1回 911日(土)午後1時~230

2回 925日(土)午後1時~230

     第3回 102日(土)午後1時~230

◆内容

1回 「絵本の読み聞かせ」の目的-考えてみなければならないこと

1)目的と実際の結果

2)絵本の種類

3)子どもたちは何を受け取っているのか?                                                      

2回 聞こえない子どもにとっての「絵本の読み聞かせ」の意味

1)手話による絵本の読み聞かせ

2)聞こえない子どもと絵本のコミュニケーション構造

3)考えなければならないことは何か?-文字の介在をどう考えるか

3回 実践への助言

1)「物語」を「理解」するとはどういうことか?

2)「読み聞かせ」の目的-「問いかけ」と「応答」

3)「読み聞かせ」から「一人読み」への展開に必要なもの

4)絵本ガイド

 

申込み方法

 受講料:1コース全3回分一括納入 計4,950円(消費税込み)

支払い方法:指定銀行口座への振り込み(「申込書」を受理した後、振込先口座をお知らせします)

申し込み方法

 ①下記メールアドレスに保護者ご氏名と「聞こえない子どもを持つ保護者のためのセミナー」「基礎

コース」「はじめの基礎知識」受講希望と書いたメールを送信してください。

          送信先メールアドレス kazuma65kazumagmail.com →●を@に書き換えてください

②こちらから「申込書」のフォームをメールで返送します。

③「申込書」の必要事項を記入し、添付ファイルにしてメールで提出してください。

④「申込書」を提出された後、受理連絡と同時に振込先銀行口座をお知らせしますので、受講料を

納入して下さい。

⑤振り込みが確認できた方にはセミナー前日にZOOMミーティングに参加するためのIDとパスコードの通知メールを送信します。

 

上記第5期セミナー申し込み受付(受講料振込)締切日 99日(木)

┃難聴児支援教材研究会
 代表 木島照夫

〒145‐0063
東京都大田区南千束2-10-14-505 木島方
TEL / FAX:03-6421-9735

mail:nanchosien@yahoo.co.jp