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「手話は使わない方がいい? 手話はどうやって覚える?」~0歳児ママのよくある質問から

ときどき、保護者の方からこのように質問されることがあります。複数の支援機関(例えば聾学校と療育施設あるいは医療機関など)に通っていると、聾学校では「手話を積極的に使っていきましょう」と言われ、療育機関や医療機関では「手話は使わないほうがいいですよ」と言われ、ママさんたちは混乱してしまいます。

この時に使っている「手話」ということばがどのような意味で使われているのかは実はとてもあいまいです。公立の聾学校では一般的に「音声も併用しながら手話(口話併用手話)を使っていきましょう」という意味で使っていることが多いですし(日本手話を否定するという意味ではなく)、療育機関や医療機関では「音声を併用する手話も音声を併用しない手話」も区別なく「手話は使わないほうがいい」と言っていることが多いように感じます。その理由は、例えばある療育機関のSTの方によれば「赤ちゃんが手を見て、口を見る習慣がつかないから」だそうですが、本当でしょうか? 少なくともこれまでの私の経験からは、赤ちゃんは「手も見るけれど、ちゃんとママの顔(目や口がついている)も同時に見て」います。私たちが洋画を見るときに字幕を見ながら映像を見ているのと似ています。字幕が「図=手」で、映像は「地=顔」です。人間はちゃんと同時に両方視野に入れて見ることができるようです。

また、聴覚・音声のほうはどうでしょう? これは聴力によってかなり違いが出ます。一般的に聴力90dBを境にして、それより聴力の重い赤ちゃんは、補聴器を通して入ってくる音から情報を得るよりも、手の動きから情報を得ることの方が得意です。

しかし、90dB未満の聴力の軽い子は、音声もかなり情報として取り入れていま

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す(但しまだそれはいわば「音の塊」であり、一つ一つの音韻が区別されている意味のある「ことば」にはなっていません)。このような聴覚・音声の役割のもつ比重は聴力によって違いがありますが、このような聴力が(相対的に)軽い赤ちゃん(例えばあとで出てくるQさんのお子さん)も含めて、きこえない・きこえにくい赤ちゃんは、「(音声の有無に関係なく)手話」を、最初に言語として獲得していくことが圧倒的に多いです。きこえない・きこえにくい赤ちゃんの「初語」は「手話」であることが多いのです。

「いいよ、初語なんて少しくらい遅くったって。いずれ音声で初語が出てくるし、そうなれば、あっという間に言語発達の遅れは取り戻せるから」と、あるSTさんは言

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いますが、果たしてそうでしょうか?  

言語発達は認知発達(象徴機能・思考・記憶など)とも密接に結びついています。また言語の遅れは認知面だけでなく、対人関係や情緒面にも影響を及ぼします。と考えると、やはり、言語はあったほうがいいし、聴児と同じように1歳前後に「初語」が出て、その後の言語獲得もスムーズに進んでいったほうがいいのではないでしょうか? 私は初語表出

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1年の差は大きいと感じています。いろいろな面での可能性がそれだけ広がるからです。例えば、右の1歳と2歳児の難聴児の手話での会話例を見て下さい。ことばがあるから、これだけの通じ合える会話ができ、象徴機能としての比喩(=たとえ)も伸びていることがわかります。

こうした発達初期の手話の発達は筆者が書籍の中で書いていますのでぜひ参考

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にして下さい(「手話と日本語はどのように獲得されるか」『手話で育つ豊かな世界』,全国早期支援研究協議会,2020,900円)。

さらにまた、米国には音声と手話併用の効果を立証した論文も添付した例のようにたくさんありますが、日本では手話の実践はあっても研究論文としてはまだほとんどないのが実情です。このような状況がアプローチの仕方の意見の相違に拍車をかけているという面もあると思います。

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〇どうやって手話を覚えたらいいんでしょうか?

 0歳児ママさんたちの二つ目の質問はこれです。この質問には、今、実際に聾学校乳幼児相談に来ておられる1歳児のママさんたちの体験から、こたえてもらいます。お子さんの聴力はまちまちです。医療機関・療育機関では、軽度・中等度難聴のお子さんには「手話は使う必要ないよ」と言われることが多いようですが、音声だけで80%わかるよりも、音声と手話を併用して100%わかったほうが言語発達や認知発達、お互いストレスのない会話という面でもよいのではないでしょうか? 以下、どうやって手話を覚えたか4人のママさんにきいてみました。

 

Pさん

先輩ママとお子さんとが、手話を介して意思疎通を図っている姿が刺激となり、手話学習にも打ち込みました。自学で学習するならまず単語だろうと、『おやこ手話じてん』(全国早期支援研究協議会,1800円)の単語を丸暗記。単語の次は文法や文章読解だろうと、NHKの『みんなの手話』を見たり、子どもとの会話例が載っている『パパといっしょにハッピーサイン』(同上、1,500円)を読み込んだりしました。1歳を過ぎた頃、子どもから少しずつ手話表現が出てくるようになり、やってよかったととてもほっとしました。ただ、まだまだ成人ろう者の方と会話するには圧倒的に手話力不足ですし、子どもに伝わりやすい表現や言葉のチョイスにも課題ありなので、引き続き先生方や先輩ママさんたちから教わっていけたらと思っています。

 

Qさん

NHK『みんなの手話』を見て覚えました。また、『おやこ手話じてん』やNHK手話CGを見て単語を調べて使うようにしました。子どもが生後3、4か月頃から簡単な手話を使うようにしていたので、子どもは、見ることで情報を得られると自然に理解したと思う。1歳頃には、何か要求があるときはママを見ることが多くなりました。

手話は『学校』など発声では難しい言葉も表現しやすいため、例えばろう学校から帰ってきた時、子どもが『学校』と表現すれば『学校に行ったね、先生と遊んだね、バスで行ったね』と手話で話し、通じ合うことができて楽しかったです。通じ合う体験の積み重ねが、自分のことをわかってもらえるという親子の信頼関係、愛着にも通じていると感じました。

聴力は80dB1歳前は100dBの重度の難聴と言われていた)で、補聴器装用開始は遅く、現在も不安定ですが、ずっと手話で表現していた言葉が1歳半頃より少しずつ音声に置き換わってきました。例えば、今は1歳8カ月ですが、「ぱん」「うーぱー(スーパー)」「あいーす」「さかー(さかな)」「じいじ」「ばあば」等、手話だけから、音声が併用されるようになっています。

 

Rさん

学校の手話教室、『おやこ手話じてん』、NHK「みんなの手話」、子どもとの会話で積極的に使うようにして少しづつ使える手話を増やしています。ちょうど一週間前、娘が40度の高熱を出しました。なかなか熱は下がらず次第に食事量も減っていき、体力もだんだん落ちた様子でした。何とか水分、栄養をを取らせようと、お水飲む?と聞くと娘はのどのあたりで手を動かし「のど乾いた」、と。娘が大好きな「トマト食べる?」と聞くと嬉しそうに「トマト!」と手話をして、ほしいという意志を伝えてくれました。私はこの時手話でのコミュニケーションをとっていてよかったなぁと心から思いました。以前難聴疑似体験をしましたが、耳からの情報が遮断された状況で口を読むためには神経を研ぎすまさなければならず本当に一苦労でした。熱で体力も奪われた状況で、余計に神経を使わすのは酷だし、手話なら両者の意図するところが一目でわかるのでお互いがハッピーだと思います。今後も手話を学び続けようと思った出来事でした。

 

Sさん

NHK「みんなの手話」や、Youtube、書籍などから。一番楽しかった学びの場は手話サークルです。外国語を学ぶときと同じで、ネイティブの方と話すのが、一番モチベーションに繋がりました。手話が分からないので、周りの会話についていけず、疎外感を感じる体験が出来ることも貴重でした。あと『おやこ手話じてん』を見たり、わからない単語などはろう学校の手話講座の日に聞いたり、自分で調べたりしています。

 

 以上です。どのママさんたちも共通に使っているのは、①NHK・Eテレ「みんなの手話」、②「おやこ手話じてん」。あとは、手話サークル、YouTube動画、また、学校で先生や先輩ママさんにきく、手話講座に参加するなどが多いようです。

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大切なことは、お子さんとの日々の生活で使う手話ですから、一日に使ったことばで手話がわからなかったときは必ずメモをとっておき、あとで調べる、たずねるなどして必要な手話を少しずつ増やしていくことでしょう。また、手話がない日本語のことばもあるので、その時は、ホームサイン(家の中でしか通じない自分で作った手話)を作ればよいと思います。大事なことは「通じあう喜び・楽しさ」ですから。

『おやこ手話辞典』は最近、新しくなりました。出版社も東邦出版社からごま書房新社に変わりました。お申し込みは、下記よりできます。ぜひこのホームページからお申込み下さい。

 


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