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BOAってなに?

 先日、人工内耳に関する記事を書いたら、それを読んだ方から「BOAってなんですか?」という質問をいただきました。そうでした。説明を忘れていました。これは、聴性行動反応聴力検査といって、Behavior Observation Audiometoryの略です。

乳児は、突然に音や人の声がすると、ハッとなる、目を動かす、振り向く、音源を探す、泣き出すなどいろいろな反応を示します。このような聴性反応を利用して、聴力検査を行う方法で、いろいろな音を直接(あるいは検査室でスピーカーを通じて)乳児に聞かせます。そして反応があったときにその位置での音圧を調べます。この音圧から聴力レベルを測定します。

  無料アプリ.jpgこうした方法を、私が関係している聾学校乳幼児相談では、乳児室や検査室での検査だけでなく、家庭にも出向いて行っています。 以下は、担当者の記録から引用しますが、当時はまだスマホのアプリに騒音計はなかったので、学校にある騒音計を持っていき測定していました。現在はスマホアプリがあり、赤ちゃんがどの音量の時に聞こえているのか家庭でも簡単に測定できますが、保護者の方は、子どもに音をきかせて振り向いてくれたら、なにか楽しいことがあるという工夫をしていただきたいです。音を出して振り返ることだけをやっていると、子どもは、振り向いてもつまらないので、音をきく意味を感じられずだんだんと音に反応しなくなります。以下、引用します。

 

「先日1歳児のA君のお宅に家庭訪問指導で伺いました。A君がいつも遊んでいるおもちゃでいっしょに遊びながら、どんな関わり方をすればいいか話し合ったり、騒音計でA君宅の環境音について調べ、お母さんに音の大きさや高さについて確認してもらったりしました。

 A君宅の環境音を調べてみると、A君の補聴器に入力されている「やっと聞こえるレベルの音」「少し大きめの音」は音が入っているはずでもA君が「聞こえるよ」という反応をすぐには示してくれないことがわかります。しかし、やっと聞こえる音より20dB位大きめの音には気づき、反応を示してくれることがわかります。そして、おもちゃの中にリズムを奏でるものがあり、A君がうれしそうにからだをゆらして聴く姿が見られました。このようにリズムのある音を心地よく聴くことができること、80dB位の大きな音であればゆとりを持って聞くことができることなどをA君は教えてくれました。お母さんとはこうしたA君の様子と環境音の大きさ、高さを確認しながら、テレビの音量を調整したり、これから続けていきたい環境音の聞かせ方について話し合いました。

 

 ひよこ組の子供達の聴力レベルや聴覚障害の種類は様々です。子供達はこの音は聞こえるけれども、この音は聞こえにくい、といった限界と可能性をそれぞれが持っています。お母さん達は、「音のあるなしは気づけるだろうけれども、なんの音かはわかるのは難しいだろう」、「救急車のサイレンや電話の音だったら音源はイメージできるだろう」とわが子の聞こえについてある程度把握しておくことは大切なことです。低音域の聴力だけが活用できる子供に、たとえば4000ヘルツの高い電子レンジの「チン」を聞かせようと毎日お母さんが力を入れるよりは、掃除機のスイッチを一緒に入れ、振動も感じながら聞くことを楽しむ方が子供は聞く楽しさを味わうことができるでしょう。

 しかし、その一方で子供が聞くことが可能な音であれば、数日やって気づかないから「この音は聞こえない」と早急に決めつけるのではなく、お母さんをはじめとする身近な大人が一緒に音に気づき、共感する関わりをある期間重ねることで、ある日子供の気づきを実感できることがあります。例えば、夜お父さんが帰宅する頃にチャイムが鳴ったら、「あっ、お父さんが帰ってきたかな?」とお父さんの写真、お父さんの手話、「お父さんかな?」ということばと合わせて音に気づかせる関わりを毎日重ねてみましょう。ある日、チャイムが鳴った時に、「ハッ!」と玄関を見て、お父さんという手話や自前のサインでお母さんに「お父さんかな?」と伝えてくる子供の様子を見ることができるようになるでしょう。このように、わが子の聞こえの状態と、環境音の特性を知っておくことで、わが子に合った聴覚活用を促していくことができます。

 

聴器をつけ始めた子供は、すぐには「あれは車の走る音」で、「あの音は水が出ている音」、なんてはっきりと意味を理解することはできません。すべてが雑音として耳に入ってくる音の中から、一つ一つ音の意味と結びつけて聴くことができるようになるためには、子供といっしょに共感し、関わってくれる大人の存在が必要です。子供にとって音を聴く楽しさ、聴くことの意義、聞きたくなるような意欲と結びつけながら、大人が上手に関わることでその子どもなりの「聴く」楽しさを育てていくことができます。また、音源確認を始めとする写真、絵、手話、身振りといった視覚的手がかり、振動等の触覚が聴く学習の大きな助けになることも忘れずにおきましょう。」(SS記)