だれでもわかる日本語の読み書き~第32回「品詞カードの並べ方ルール」
日本語が苦手な子どもは、単語の切れ目や文節の切れ目、また文の中に含まれている修飾語句が一体どこからどこまで続いているのか、その修飾語句がどの名詞を修飾しているのか、区別がつかないことが多いです。語彙力や文法力がつき、幅広くいろいろな知識が身に付いてくると、長い文をみてもその意味をくみ取ることができるようになりますが、日本語力の厳しい子どもは、意図的に指導しないとずっとわからないままに時間だけが経

ってしまいます。
例えば、右図は、Jcossという検査の中にある名詞修飾の問題で、ある聾学校の子どもたち(低学年4名、高学年3名)の結果ですが、高学年児童を含めて半数の子どもたちが、問題65で「四角は青い星形の中」名詞修飾節(名詞句)が読み取れず、「四角は青い」で文を切って読んでいることがわかります。こうした子どもたちには、やはり文を正しく理解するための文法ルールを教えていくことが必要です。上記の子どもたちは、日本語の「名詞修飾」の仕組みを学ぶ必要があり、そのためには、文の構造を可視化する「品詞カード」を使うのが効果的です。
これまで、このYouTube学習動画では、文中の品詞をカード化し、本来一列の文を、「情報」「助詞」「述部」からなる二次元の図(「構文図」)の中に配列してわかりやすくしてきました。この配列のルールについて、これまで学んだきたことをここで一度整理しておきたいというのが今回のねらいです。
学習で使う無料プリント(テキスト・問題)は、下記からダウンロードして下さい。
〇「テキスト・問題」ダウンロード
また、YouTube動画は、下記からご覧になれます。
〇学習内容
〇カード配列のルール
まず、カード配列のルールを確認しておきます。
(1)構文図の左側「情報」のスペース・・文を詳しくする。いくつでも可。活用しない品詞または「て形・く形」。情報間の上下の入れ替えも可。
①名詞、時数詞、なにで名詞など活用しない品詞→〇
②動詞、形容詞など活用する品詞→×(そのままでは置けない)
動詞・形容詞+名詞・時数詞・なにで名詞(句をつくる)→〇
③動詞「て形」、形容詞「く形」「くて形」→〇
④助詞「の」(「3時のおやつ」)、助詞「と」→〇(「母と私」)*情報内の助詞

(2)構文図真ん中の「助詞」のスペースへの置き方
①左側(関係助詞)「を」「に」「と」「で」「へ」
②右側(選択助詞)「は」「も」など
③真ん中の線上(情報助詞)「が」
(3)構文図右側「述部」のスペースに置ける品詞・・文の土台。いちばん言いたいこと伝えたいこと。文末に1つだけ。先端が尖った活用形のみ置ける。
①動詞・形容詞→〇(活用する)
②名詞・時数詞・なにで名詞→×(活用しない)
名詞・時数詞・なにで名詞+文末「です」活用→〇(文末「です」が活用する)

(3)カード配列の手順
①情報内の助詞で結ばれた品詞は、あらかじめ囲っておく(例「昨日の朝」)
②文末の動詞・形容詞などを「述部」スペースの右下に置く。(例「食べました」)
③述部の動詞や形容詞から基本の文型を考える(「食べました」→「~が~を食べる」(基本文型Ⅱ)、「きれいです。」→「~がきれいです」(基本文型Ⅰ)。
基本文型から「必須成分」をさがす(「私は」「ハンバーガーを」←「食べました」)
⑤随意成分の名詞などの情報を順番に上から並べる。
⑥それぞれの情報(名詞や名詞句)が、述部とつながって意味的につながるか確かめる。うまくつながらない場合、名詞句の作り方が違っていることが多い。
〇長い名詞句が含まれ、複雑な構造の文の解釈

「今日の午後、自転車で、人がいない公園の木の間をまわる練習を、一時間くらいしました。」
①まず、助詞「の」でつながった名詞はあらかじめくくっておきます。「今日の午後」と「公園の木の間」の二つですね。
②次に、文末の述部は、何でしょうか?「しました」です。動詞「しました」の基本文型は、「~が~をする」という基本文型Ⅱのパターン。そうすると必須成分として、「だれが」「なにを」が必要な文だということがわかります。
③では、「なにを」にあたる部分はどこにあるでしょうか?さがすと「練習を」が見つかります。そして、これは句になっていて「公園の木の間を回る練習」という名詞句ですね。また「人がいない」は、この句をさらに説明している部分であることもわかります。
つまり「人がいない公園の木の間をまわる練習」という長い句であることがわかります。
④次にもう一つの必須成分「~が・は」はどこにあるでしょうか? これは省略されているようです。日記で自分のことを書いているので、「わたしは」は省略されているわけですね。
⑤あとは残りの随意成分である情報を順番に並べます。
「今日の午後」(時数詞の句)、「自転車で」、「一時間くらい」の三つが残されていますので、これを順番に入れていけばいいわけですね。そして、それぞれの情報のカードが「述部」である「しました」にうまくつながっているかを確認します。
〇述部に句がくる場合もある

文には、いつも動詞や形容詞あるいは、名詞+です、といった短い活用の形がくるとは限りません。
問題2のような「畑で育てられた野菜+です」といった名詞句がくる場合もあるので要注意です。
これもとりあえず最初に述部を決めるので、例えば「野菜です」を入れた場合、この述部の句と各情報がうまくつながるかで確かめます。
例えは、「野菜は」→「野菜です」、これはつながりますが「人が食べるために」→「野菜です」はつながりません。また、「畑で育てられた」は、名詞+動詞なので情報に入れることはできません。そう考えていくと「畑で育てられた野菜です」が句になっていて、述部にくることがわかります。このようにすれば「野菜は」→「畑で育てられた野菜です」、「人が食べるために」→「畑で育てられた野菜です」となって、意味も正しくつながることがわかります。