だれでもわかる日本語の読み書き第31回~なにで名詞となにで名詞構成語
今回は、「なにで名詞」について学習します。「なにで名詞」とは聞きなれない品詞ですが国文法でいう「形容動詞」のことです。形容動詞は国文法(学校文法)で使われている文法概念です。「美しい花」も「きれいな花」も名詞「花」を修飾していますが、「美しい」は形容詞、「きれいな」は「形容動詞」です。たしかに、両方とも似たような使われ方をしています。似ているので「形容+動詞」と命名された理由のひとつです。もう一つ、後者の「動詞」のほうは、活用が文語文法の動詞「なり」「たり」の活用と同じ活用をしていることから、「形容+動詞」と命名されたのです。

しかし、現在の口語文法では「なり・たり」活用はほとんど使われおらず、活用すると考えるよりは、右の図のように、名詞グループの品詞に助動詞や「な・に・で」などがくっついたものと考える方がわかりやすく、理にかなっているということで、国文法(橋本文法)を支持しない研究者は、形容動詞という品詞は使っていません(例えば新村出「広辞苑」、時枝誠記「名詞+助動詞」、江副隆秀「なにで名詞」など)。ここでは難聴児にとって最もわかりやすい「なにで名詞」という名詞グループの品詞名を用いたいと思います(なお、日本の学校教育では国文法が採用されていますが、この理論が「正しい」から採用されているわけではなく戦前からの歴史的経緯の中で採用されているだけで、現在は、この「形容動詞」だけでなく、「格助詞」や「主語」という概念などについても論争があり、未だその論争に決着はついていません)。以下、「なにで名詞について説明します。
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〇学習内容
1.「なにで名詞」とは?

「なにで名詞」は、形容詞のように、もの、こと、心などの様子を表しますが、名詞グル
プなので活用はしません。例文「しずかな人」「しずかな朝」のように、語幹(しずか)に「な」をつけて、うしろの名詞や時数詞を修飾することができます。 また、語幹(しずか)に「に」をつけて、「しずかにする」「しずかに歩く」など、動詞を修飾することができます。さらに、語幹(しずか)に「で」をつけて、「しずかで美しい人」「し

ずかで地味な 性格」などのように、形容詞やなにで名詞の前にもってくることもできます。ほかにも「しずかなら」(仮定)、「しずかだろう・でしょう」(推量)、「静かだ+から」(接続)などの使い方があります。
〇形容詞と混同しやすい「なにで名詞」
右図に示すように、「大きな」「小さな」などは一見すると「なにで名詞」のようにみえ

ますが、これらは形容詞の特殊な形と考えた方がわかりやすいでしょう(国文法では「連体詞」)。
また、「きれい」「とくい」などは形容詞とよく混同し、子どもの日記にも「きれいかった」などの誤りがよくみられますが、これらは「なにで名詞」ですから、「きれいだった」が正しい使い方です。
2.なにで名詞構成語

名詞、動詞、形容詞、なにで名詞に「~みたい」「~そう」「~よう」「~げ」「~的」をつけると「なにで名詞」と同じ働きをする「なにで名詞構成語」になります。
なお、右ファイルの一番下に似ている「きれいなの」という例文がありますが、これは動詞や形容詞、なにで名詞などに「の」をつけて名詞化させたもの(例:「食べるのはやめて下さい」「大きいのがほしいです」)です。これを「名詞構成語」と言います。働きは名詞と同じです。
ダウンロードできるテキスト・問題の中には「なにで名詞」の反対語の問題がありますので、ぜひ、これはやってみて下さい。また、「なにで名詞」にはどんなことばがあるのか探して、絵入りの一覧表にするのもよいと思います。
