11-4YouTube日本語講座(解説)第21回~第30回
今回は複文の作り方について学びます。複文とは、ひとつの文の中に、主語・述語の関係が二つ以上ある文のことで、国語教科書の中にも比較的早く出現します。例えば、光村図書・国語小1上には、「くちばし」という説明文の単元がありますが、そのなかに「・・・きつつきは、とがったくちばしで、木にあなをあけます。そして、木の中にいる虫を食べます」という文があります。ここには、「木の中にいる虫」と用い方で名詞句が使われていて、虫もたくさんいるけれどそのうちの「木の中にいる虫」と限定する、「名詞句(修飾)の限定的用法」が使われています。ここに主述の関係がひとつあり、さらに、「きつつきは(=文脈からわかるので省略されている)」という主語、「食べます」という述語があり、こちらがこの文の本来の主語と述語になっています。つまり複文です。

いま、名詞句の「限定的用法」と言いましたが、もう一つ「名詞句の非限定的用法」という使い方もあります。それを、以下の日記の宿題の中でみてみたいと思います。小4の日記で「複文を使って日記を書いてくる」という宿題が出され、ある児童が以下のような文を書きました。
「私は帰って手を洗っておやつはみかんでした。」
なるほど、「私は帰って」「(私は)手を洗って」「おやつはみかんでした。」で主述の関係が3つ含まれています。この文をまず構文図

(情報・助詞・述部の図)を使って表してみると、右図の左側のような構造になっていることがわかります。文は、各段の文節が最後の述部にかかっている構造になっていれば正しい文です。そこで各文節を最後の述部「みかんでした」に繋がっているか調べてみると、最後の「おやつは」―「みかんでした」だけが正しいことがわかります。つまり文がねじれていることがわかります。ではどうやってなおすか? まず、この文で一番いいたいことは、「私が みかんを食べた」ことでしょう。ですから、「私は(主語)・・・食べました
(述語)」というかたちなるようになおします。それが図の右の構造図の「わたし」と「食べました」です。また、食べたのは「みかん」(目的語)です。ですから、基本の構造は、「私は・・みかんを・・食べました」という基本文型Ⅱになることもわかります。
あと、「(家に)帰ったこと」とか「手を洗ったこと」は、さらに文を詳しくする部分です。これを文の中に入れます。ここで「家に帰った」という部分は「私」自身の様子をさらに詳しく説明する部分ですから、名詞句をつくり「帰った私」とします。でも「帰った私」では意味がよくわからないので「家に帰った私」と詳しくします。ここで、いろいろな私がいてその中の「私」ではありませんから、「限定的用法」ではなく、「名詞句の非限定的用法」ということになります。この使い方は、場面の背景的な部分を詳しくしているだけなので、あとのほうに出てくる部分のほうが言いたいことです。つまり大事なのは「私はみかんを食べた」ことです。
次に「手を洗って」の「テ形」は時間的な順序をあらわし、このまま残してもよいですが、
「家に 帰って 手を 洗った私」と、ひとつの名詞句にして括ってもよいでしょう。
そして「おやつ」である「みかん」を食べたので、ここも「おやつのみかん」として、名詞と名詞をつなぐ「の」を使った「名詞句」を作ります。
このように「名詞句」や「テ形」を使って、複文で日記が書けるようになるのは高学年の課題ですが、その前に、複文の構造を理解し、複文そのものを作れることが大事なので、まずは、YouTubeを通して「複文の作り方」を練習したいと思います。以下、
学習で使う無料プリント(テキスト・問題)は、下記からダウンロードして下さい。
〇「テキスト・問題」ダウンロード
また、YouTube動画は、下記からご覧になれます。
〇学習内容
1.「名詞句」を使って複文を作ろう!

2つの文(単文=主語・述語が一つ)を一つの長い文(複文)にまとめる練習をします。その時に、どちらかの単文をまず名詞句にします。テキスト1では、「きのう、私が 作った チョコレート」という名詞句を作っていますが、「きのう、チョコレートを 作った 私」という名詞句を作ることもできます(これは自分でぜひ作ってみてください)。そして、作った名詞句をもう一つの文の中に入れて一つの文にします。
2.動詞を「テ形」にして複文を作ろう!

二つ目の課題は、動詞の「テ形」を使って、文を一つにまとめる方法です。一つ目の文の述部の動詞は「作った」ですが、これを「作って」としてつなぐ形にして、うしろの文をそこにつなげるだけです。ただ、前の文と重複する言葉があり、また繰り返すとしつこい文になってしまうので省略します。
以上、複文作りの方法を紹介しましたが、ぜひ、日記・作文を書く中で実際にや


ってみるとよいでしょう。上の資料は、左が幼児期に名詞句づくりの練習をしたあ
る保護者の記録から、右がろう学校小学部での複文を使った日記からの引用です。
前回は、形容詞の「短い形」を一つ、二つ名詞の前に出して、「大きな名詞(名詞句・名詞修飾)」を作る方法について学習しました。日本語では、名詞を詳しく説明するとき、名詞の前に修飾フレーズをもってくるのが特徴です。そして、形容詞だけでなく、名詞の前に動詞をもってきたり、文をもってきたりもできます。今回は、動詞や文を名詞の前に出して「大きな名詞」をつくる練習をします。
学習で使う無料プリント(テキスト・問題)は、下記からダウンロードして下さい。
〇「テキスト・問題」ダウンロード
29. 「大きな名詞」にして、長い文を作ろう(テキスト).pdfまた、YouTube動画(17分)は、下記からご覧になれます。
〇学習内容

まず、述部にある動詞を名詞の前にもってきて名詞句を作り、そこに続けて文を作ってみましょう。
【テキスト例文】「男の子が ジュースを 買った」
この文の述部動詞を名詞の前に出して、「大きな名詞」を作るには二通りの方法が考えられます。一つは「買った」を「男の子」の前にもってきて「大きな名詞」を作る、もう一つは、ジュースの前にもってくるかです。「男の子」の前にもってくれば、下の①のようになりますし、「ジュース」の前にもってくれば②のようになります。こうして作った「おおきな名詞」に続けてさらに文を作ることになります。
①「買った男の子」⇒(何を買ったのかわからないので)⇒「ジュースを買った男の子」まで括って「大きな名詞」を作ります。
②「買ったジュース」⇒「男の子が 買ったジュース」・・・。
ここでは、②のほうで文を作ってみました。そうすると以下のような文になります。
「男の子が買ったジュースを捨てた」
ところが、名詞句は、どこからどこまでがそのうしろの名詞にかかっているのか、日本語ではそれを示す文法マーカーがありません(英語の場合は関係代名詞があります)。そのため、テキストの図のように、二通りの解釈が成り立つわけです。
ア.男の子が(主語)+「買ったジュース」(目的語・名詞句)を+捨てた(述部)
イ.だれかが(主語省略)+「男の子が買ったジュース」(目的語・名詞句)を+捨てた(述部)
という二通りの解釈です。どちらの解釈が正しいのかは、この文だけでは判断できず、前後の文を読んで判断するしかないのが日本語です。
しかし、解釈した文をどう可視化するのかは、品詞カードと構文図(情報・助詞・述部の図)を使って表すことが可能です。もし、アの解釈であるなら、図の左の図になりますし、イの解釈であるなら右の図になります。
次に、イの文をふつうのかたちで文にして書くと以下のようになります。
「ママが男の子が買ったジュースを捨てた」
「ママが男の子が」と「が」が二つ続いてしまうので、ちょっとわかりくい不自然な文になります。このような場合は、長い名詞句のほうを先にもってきて、主語が述部のすぐ前にくるようにすると、わかりやすい文になります。
「男の子が買ったジュースをママが捨てた」
〇「大きな名詞」を作って、二つの文を一つの文にまとめる方法
次に、二つの文を一つにまとめる方法について学習します。

右図では、「服」についての文が二つ提示されています。
「①男の子が 服を ぬぎました。
②ママが 服を 洗いました。」
ここでママが洗っている服は男の子の服です。「大きな名詞」は、①の文を「大きな名詞」にすることでも出来ますし、②の文を「大きな名詞」にすることが出来ます。
①の文で名詞句を作ると「男の子が脱いだ服」になります。これを右の②の文の「服」のところにもってきます。そうすると「ママが、男の子が脱いだ服を 洗った」になります。あとは、「が」が続いてしまうので長いフレーズを前にもってくれば完成です。

②の文で「大きな名詞」を作ると、「ママが洗った服」になります。これを左の文の「服」のところに入れると「男の子が ママが洗った服を 脱ぎました」になります。これを整えると、「ママが洗った服を 男の子が 脱ぎました」となります。
「大きな名詞」の作り方は、いろいろな文で作ってみることが大切です。以下、テキストにある問題は自分でやってみてください。

また、教科書の中には「大きな名詞」を使った文は沢山出てきます。教科書の文章の中から、どこに名詞句があるかさがして、大きな名詞として四角で囲んでみるとよいでしょう。品詞分類して構文図にしてみると、名詞句も発見しやすくなります。また、、教科書の文章の多くが名詞句を含んだ文であることもよくわかります。

日本語の特徴として、名詞を詳しく説明するとき、名詞の前に修飾フレーズをもってきます。動詞や形容詞といった単語だけでなく、文も名詞にかかって「名詞句」を構成します。このようにすることで、いくつも文を並べて説明しないでも一つの文にまとめて使うことができます。
ところが、この「名詞句」とか「名詞修飾」といわれる文の使い方は、意外と難聴児には難しいのです。例えば、右のファイルはJcossという文法力を調べる検査の中の問題です。

問題文「四角は 青い 星形の 中にあります」という文が、4つの図のどれなのかを答える問題(「述部修飾」)ですが、ある聾学校小学部の児童の半数近くが②③と答えています。どうして間違えるのでしょうか? 助詞がわかり、文の仕組みがわかれば正解できるのですが、では、助詞や文の仕組みをどうやって教えればよいでしょう? 国語の教科書には書いてあるのでしょうか? ありません。国語の教科書のどこを探してもこのような文法を教えるところはありません。「そんなこと教えなくても小学生ならだれでも自然に知っていること」というのが教科書の前提にあるので、このような基本的なことを教える箇所もなければ教える方法も書いてないのです。にもかかわらず、きこえない子どもたちは、こうした文を読んで自分で理解することを求められているわけです(先生自身、そんなところで子どもが躓いていることも知らなければ、教え方もわからないのが実態でしょう)。
さて、こうした子たちは、助詞がわからないので、「四角 青い 星がた 中 あります」と助詞を抜いて単語だけで理解します。そのときに、半数の子(9名)は、「四角 青い」とまず区切り、これを「四角(が) 青い」と理解したわけです。さらにその9名のうちの3分の2(6名)は、後半部分の「星がた 中 あります」を「(その四角は)星がた(が) 中(に)あります」と理解し、3分の1(3名)の子は、「(その四角は)星形(の)中(に) あります」と理解したことになります。
つまり、二重に間違いをしています。最初に、一つの文を途中で区切った間違いが構文理解の上での間違いで、「青い 星形」という「名詞句」になっていることを知らないので、「四角は 青い」と考えて区切ってしまったわけです。さらにこれに加えての間違いは「助詞の使い方」がわからないための間違いです。
そこで今回は、「名詞句=名詞の修飾のしくみ」について、形容詞を例に学びます。
学習で使う無料プリント(テキスト・問題)は、下記からダウンロードして下さい。
〇「テキスト・問題」ダウンロード
また、YouTube動画(13分)は、下記からご覧になれます。
〇今回の学習内容
まず、テキスト1で、形容詞を使った文を提示します。例文は「荷物が 重い」。

名詞句を作るには、「述部」の形容詞を「情報」の名詞の前にもってくるだけです。ただ、名詞の前にもってこれるのは、「短い形(普通の言い方)=重い」だけ。「長い形(ていねいな言い方)=重いです」の形容詞はもってくることはできません。短い形の「重い」を前にもってきます。
そうすると「重い 荷物」という名詞句になります。「荷物」という名詞を詳しくしたわけです。これをわかりやすいことばで「大きな名詞」と言ってもよいです。そして、空白になった「述部」にまた動詞や形容詞を入れれば新しい文が作れますが、ここでは、次に、二つの形容詞を並べて使う方法について学習します。
テキスト2の例文では、「ボールが まるい」と「ボールが 赤い」の二つの文を作っています。これらは同じボールにつ

いて述べた二つの文です。これを一つの文にするには、「ボール」の前に「まるい」も「赤い」ももってくるだけです。ただ「まる 赤い ボール」とはならず、前の形容詞は「テ形」を使うのがルール。そうすると「まるくて赤い ボール」となります。そして、空白になった「述部」に単語を入れてひとつの文として完成してみましょう。「まるくて赤いボールが・・・」。これで完成です。
今回は形容詞を使った名詞句の作り方について学習しました。次回は、動詞や文を使って名詞句を作る方法を学習します。
この動画シリーズ第8~11回「動詞の活用」の学習で、動詞を3つのグループに分けてそれぞれの活用の仕方を学びました。しかし、これらの活用の中で、3グループの「来る」と「する」を除くそれ以外の動詞の活用、例えば「食べる」はどちらのグループに入るのか、「飲む」はどちらのグループに入るのかなどについてはまだ学習していませんでした。
そこで今回は、それぞれの動詞がいったいどちらの活用グループに入るのか、その見分け方について学習したいと思います。
ユーチューブは以下のところを開いて下さい。なお、今回は字幕ソフトの不具合により字幕がつけられませんでした。どうぞご理解のほどよろしくお願いいたします。
☆YouTube動画(11分)
また、学習で使う無料プリント(テキスト・問題)は、下記からダウンロードして下さい。
★テキスト・問題プリント」ダウンロード
〇今回の学習内容
まず、1グループに分類されている動詞(4つ)と2グループに分類されている動詞(4つ)を見て、それぞれの動詞活用練習表(「第8回動詞の活用」参照)を参考にしながら、

それぞれのグループにどのような活用ルールがあるのか考えてみましょう。
今回は、動詞「マス形」を使った動詞活用の見分け方を紹介します。「ナイ形」を使う方法もありますが、きこえない子には「マス形」のほうがわかりやすいので、基本形の動詞をまず「マス形」にしてみましょう。
○1グループ動詞の場合・・・
そうすると1グループ動詞「たたむ」「あらう」「乗る」「切る」はそれぞれ「たたみます」「あらいます」「のります」「切ります」と、どれも「ます」の前が「イ段」になることがわかります。
○2グループ動詞の場合・・・
2グループはどうでしょうか?「きがえる」「出る」「食べる」「寝る」は、「きがえま

す」「出ます」「食べます」「寝ます」で、すべて「ます」の前は「エ段」になることがわかります。これがルールです。
つまり、動詞を「マス形」にして「ます」の前が、イ段であれば1グループの活用、エ段であれば2グループの活用をすることがわかります。これが動詞活用の見分け方です。
○2グループ活用の例外~特別な2グループ動詞

動詞活用の見分け方の基本ルールは、これでわかりました。しかし、文法規則にはしばしば例外が伴います。このルールにも例外があります。「ます」の前がイ段でも、以下の9つの動詞は1グループではありません。これは「特別な2グループ」なので、「例外」として覚えておきましょう。
「着る」(*「切る」ではありません)「できる」「浴びる」「起きる」「借りる」
「見る」「降りる」「足りる」「いる」
このYouTube日本語講座では、文のかたちをいろいろと学んできました。


でも身についていないこともあるので、小学生低学年くらいの時に、助詞を意図的に取り上げ繰り返し学習する必要があります。
〇文の「述部」と「情報」
まず、文は文末の「述部」(=述語)が土台になっています。その土台の上に、必要な「情報」が加わり、「情報」と「述部」の関係を明示するために「(格)助詞」がつきます。そして「述部」のことばには、欠くことのできない「情報」があり、それを「必須成

分」と言っています。例えば、「私は 食べる」というだけでは、なにを食べているのかがわかりません。そこに、例えば「ケーキを」といった「情報」と「助詞」が必要になり、この「ケーキ」ということばが「食べる」という動詞の必須成分ということなのです。同様に「行く」という動詞には、「だれが」と「どこに」という「情報」が必須成分として必要です。このような述部と必須成分の組み合わせを「文型」と呼んでいます。こ

の「文型」には5つの種類があり、それらを5つの「基本文型」と呼んでいます。
〇基本文型
右上のファイルを見ていただければわかるように、「述部」には、名詞、動詞、形容詞を入れることができます。それぞれ「名詞文」「動詞文」「形容詞文」と言います。この中でいちばん多く使われるのは動詞です。日本語は、この「述部」のことばを土台にして、その上に必須成分を加えてまず骨組みが出来

上がります。さらにその上に、「いつ」をあらわす時数詞とか、「原因・理由」をあらわす助詞「~で」を使ったことば(これを「随意成分」と言います)とか、副詞、接続詞などいろいろなことばが加わって複雑な文になっていくという構造になっています。
①文型Ⅰ・・・「~が」+動詞・形容詞・名詞
情報を1つしかとらない自動詞が多い。名詞が使える唯一の文型です。名詞は「今日は、雨です」などです。

②文型Ⅱ・・・「~が」+「~を」+動詞
「~を」を必要とする他動詞はこの文型です。述部に来るのは動詞だけです。自動詞の中の「通過」(「バスが橋を渡る」)および「出発点」(「飛行機が 羽田を 飛び立った」)の自動詞はこの文型です。
③文型Ⅲ・・・「~が」+「~に」+動詞・形容詞
文型Ⅰとならんで形容詞が使える文型です。

また、まだ学習してませんが、「なにで名詞」(=形容動詞)が使える文型です。
④文型Ⅳ・・・「~が」+「~と」+動詞
相手を必要とする文のかたちです。
⑤文型Ⅴ・・・「~が」+「~に」+「~を」+動詞
これは「あげる」「もらう」「貸す」「借りる」「贈る」「届ける」「見せる」など、複数の人の間で物などをやりとりするときに使う動詞です。このような動詞には「情報」が3つ必要になります(添付ファイルの一番下)。
以下、YouTube動画は下記のURLからご覧になれます。
第26回「文のかたち~5つの基本文型」(14分・字幕付き)
無料テキスト・問題は、下記のPDFをダウンロードしてください。
26.文のかたち(テキスト1・問題2).pdf
このYouTube日本語講座では、これまでに、助詞「が、に、で、を、と」を一つ一つ取

り上げて、その使い方について学習してきました。それぞれの助詞はどのような使い方(意味・用法)があったのか、一覧表にして整理したものが右の表です。この表をみると、それぞれの助詞の用法をいくつかの共通のテーマのもとで括ることができます。
例えば、「場所」(どこ)というテーマで括った助詞の使い方が「に・で・を」の3つの助詞に5つの使い方がありますし、「対象」というテーマで括ってみると「に・を・と」の3つの助詞に4つの使い方があることがわかります。そこで今回は、使い方が最も多い、「場所」に関わる「に・で・を」の5つの用法を取り上げてみたいと思います。一度、学習した使い方なので復習もかねて整理してみましょう。
以下、YouTube動画は下記のURLを開いて下さい。
第25回「場所の「に・で」を」を使って文を作ろう!」(14分・字幕付)
また、①今回のYouTube動画の無料テキスト・問題は、以下のURLからダウンロードできます。さらに、②助詞の意味と使い方一覧表(おたすけカード)PDFと、③助詞手話記号(写真カード)PDFもダウンロードできます。
①テキスト・問題
25.場所の「に・で・を」~文を作ろう.pdf②助詞の意味と使い方(おたすけカード)
助詞の意味と使い方(おたすけカード).pdf

〇学習内容
場所に関わる助詞の使い方には、以下の5つのパターンがあります(右図参照)。
①助詞「に」
(ア)行先(目的地)・・・(例)「風呂に 入る」「学校に 行く」
(イ)存在・・・(例)「風呂に ある」「学校に いる」

②助詞「で」
場所・・・(例)「風呂で 洗う」「学校で あそぶ」
③助詞「を」
(ア)出発点・・・「風呂を 出る」「学校を 出発する」
(イ)通過・・・「風呂を 通る」「学校を 通り過ぎる」
このような使い方で、場所を一つ決めて、助詞「に・で・を」を使って文を作ってみましょう。

添付した図は、聾学校での場所の「に・で・を」の授業で使用されていた教材です。町の地図を使ったり、トンネルを使ったり、子どもが楽しく学べるようにそれぞれに工夫されているのがわかります。
その下は、ある難聴幼児の家庭で使われていた教材です。教材を工夫することで、年長さんくらいになるとこのような指導も可能で、このお子さんは、それまでよくわかっていなかった助詞が理解できるようになり、年長の頃にはJcoss(日本語理解テスト)で14項目通過(小2~3年レベル)できるまでに文法力がつきました。


このYouTube日本語講座では、これまでに、①「が」のみを使う文、②「が」と「を」を使う文、③「が」と「に」を使う文、④「が」と「と」を使う文の4つのパターンについて学んできました。これらのパターンで使う動詞は、どんな助詞を必要とするのかがほぼ決まります。例えば「ぼくは食べる」という文の動詞は、「~を」という目的語が必要であり「ぼくはラーメンを食べる」というかたちになるのが基本的なかたちです。また、「ぼくは行く」という文の動詞は、「~に」という目的語が必要であり、「ぼくは学校に行く」というかたちが基本的な形です。
しかし、「で」はどうでしょうか? 「ぼくは食堂で食べる」とか「ぼくはバスで行く」という文を見た時、前者ではやはり「なにを?」食べるのかという肝心な部分が欠けてると感じますし、後者は「どこに?」行くのかという大切な部分が欠けていると感じるはずです。つまり、「で」は基本のかたちを構成することはできず、上に述べた①~④の基本の文型とともに使う助詞です。でも、文の内容を相手にさらに詳しく伝えるために必要でかつ便利な助詞です。以下、助詞「で」の使い方について学習します。
○学習内容~助詞の「で」について

今回は、低学年児童の日記(右資料・左側)から、助詞「で」の使い方を考えてみます。この日記に使われている助詞を数えると、以下のようになります。
「は」・・・7回 「が」・・・2回 「を」・・・1回
「に」・・・4回 「と」・・・5回 「で」・・・0回
とはいっても、「で」を使うことで、いくつも文を並べることなく、端的にまとめて言い表すことができます。例えば、①「イオンに行きました。パパとママとぼくと弟です。」は、全員をいちいち言う必要性がないところでは、「家族みんなで」とか「家族4人で」とまとめることができます。また、「年末でした。道が混んでいました。バスに乗って行きました。」は、一つの文にまとめて「年末で、道が混んでいたので、バスで行きました。」とすっきりさせることができます。
このように、「で」は、基本的な文のかたちに絶対に必要な助詞ではありませんが、文をまとめたり、中身をさらに詳しくするために欠かせない助詞です。そこで、日記の文を、「で」を使った文に書き換えてみました。それが同添付図・テキスト1の右側の文章です。このなかでは「で」が8箇所使ってあります。では、これらはどのようなときに使っているのでしょうか?
○助詞「で」の4つの使い方

助詞「で」が使われるときは、図のような4つの場合です。
①ある場所で何かをするとき(例「学校で勉強する」「公園で遊ぶ」など、場所の名前+「で」となります)
②時間や数量の期限・範囲をあらわす(例「5時で終わる」「全部で100円」など、時数詞+「で」となります)
③道具・手段・材料・方法をあらわす(例「はさみで切る」「手話で話す」「木で作る」などです)
④原因・理由をあらわす(例「風邪で休む」「誕生日でもらう」など)

この4つの使い方について、子どもの書き直し日記(添付図テキスト1・右側)の「で」が使われているところをチェックしてみると、上記①場所の「で」が2回、②範囲(時数詞)の「で」が2回、③手段・方法の「で」が2回、④原因・理由の「で」が2回と4つすべてそれぞれ2回ずつ使われていることがわかります。
助詞「で」がうまく使えるようになるに

は、経験と習熟が必要です。文を作るうえで必須の助詞である「が、を、に、と」を身につけるのは、時間的にも比較的早いのですが(使う頻度が多いので)、「で」は文に必須でない分、使い慣れていくことが必要です。しかし、使われ方が他の助詞よりもはっきりしているので学習はしやすいです。ぜひ、「で」の使い方をしっかりと身につけて日記や作文の中で使ってほしいと思います。
以下、YouTube動画は下記のURLを開いて下さい。
第24回「助詞「で」の4つの使い方?」(14分・字幕付)
また、今回のYouTube動画の無料テキスト・問題は、以下のURLからダウンロードできます。
24.助詞「で」の4つの使い方(テキスト2・問題2).pdfきこえない子は助詞が苦手、ということを以前にお話ししました(第20回『きこえない子は、なぜ助詞が苦手か?』)。いろいろとその理由はありますがひと言でいえば「きこえな

いから」です。これは補聴器をしても人工内耳をしてもやはり聴児と同じレベルには、自然にはいきません。そこでいろいろと工夫をするわけですが、だれにも効果的なのは、やはり日本語を「見える」ようにすることです。このYouTube学習動画では、そのための指導内容・方法について紹介していますが、実際の授業場面ではないため、もう一つ実感がわきにくいと思います。そこで、今回は、NHK『ろうを生きる難聴を生きる』で、2012年と2015年の2度にわたって紹介された二つの聾学校での文法指導の授業場面を紹介します。
このような指導を週1回継続することで、児童の文法力は年々向上していきます。右上のグラフはJcossの項目別通過率です。文法指導を始めた2007年頃は小低(1・2年)児童の平均通過率は24%。聴児の63%に比べてかなり低いことがわかります。しかし、8年後の2015年には平均通過率は61%まで向上。ほぼ聴児の水準まで伸びたことがわかります。
☆動画内容
①大塚ろう学校小学部(2012)・・・児童の助詞の誤り、授受文の指導授業場面より(6分)
②香川聾学校小学部(2015)・・・品詞カードを使った文の作り方、動詞の活用、助詞手話記号を使った助詞の指導等の授業場面(15分)
★YouTube動画は下記URLをクリックしてください
このYouTube日本語講座では、これまでに、
①「が」のみを使う文 ②「が」と「を」を使う文 ③「が」と「に」を使う文
について学んできましたが、今回は、④「が」と「と」を使う文について学びます。
助詞「と」には、いわゆる格助詞(江副文法では「関係助詞」と「情報助詞」に分けています)と接続助詞の二つの種類があります。

接続助詞というのは、「春が来ると、花が咲く」などのように、単文と単文をつなぐときに使われ、「~が来ると」のように動詞基本形+「と」のかたちで使われます。この接続助詞はまた別の機会に譲り、今回は、「関係助詞」と「情報助詞」の使い方について学びます。
右のファイルを見ていただければわかりますが、二つの「と」の位置と、使っている手話記号・手話助詞記号のかたちが異なります。意味・用法が違うからです。
○関係助詞の「と」・・・「相手」の「と」
まず、「を」「に」などの助詞と同じ位置にある「と」は、手話記号はひし形の中に「と」の記号を使っています。また、手話助詞記号は「人差し指を立てて向かい合わせた記号」です。この意味は、相手を必要とする動詞(述部)に使う「と」という意味です。例えば、以下のような動詞は、相手を必要とする動詞で、一人だけでは意味的に十分に成り立ちません。
意味的に相手を必要とする動詞・・「けんかする」「たたかう」「競う」「けっこんする」「付き合う」「話し合う」「ぶつかる」など
-thumb-200x150-2769-thumb-250x187-2770.jpg)
このような動詞に使う「と」を「相手の『と』」と言います。また、助詞「を」や「に」と同じ「関係助詞」です。関係助詞というのは、情報と述部との関係をあらわした助詞ですから、必ず情報と述部をつないで読んでみた時に、意味的にすんなりつながります(つながらない時に使い方が間違っています。例えば、テキストの例文「一郎が二郎とけんかする」では、「一郎がけんかする」「二郎とけんかする」と結んでみて正しくつながっていれば使い方は正しいことになります)
○情報助詞の「と」・・・「一緒に」の「と」
これに対して、情報と述部の間ではなく、情報(名詞)と情報(名詞)のあいだをつなぐ「と」というのがあります。テキスト例文の「ママが りんごとバナナを 買った」がそうです。
この文では、動詞「買う」に必要な助詞は「を」ですから、かたちの上では、「ママが~を買う」になります。しかし、買ったものが複数あるためこのまま買ったものを入れると「ママが りんご、バナナを買った」となります。必ずしも間違いではないのですが、一般的には、複数のモノを「と」でつなぎ、「りんごとバナナ」とします。この時の「と」は、情報と助詞の関係を言っているのではなく、情報間の関係を言っているので「情報助詞」と呼んでいます。
そしてこの「りんごとバナナ」をまとめて一つの大きな名詞としてくくると「ママが~を買う」という「が・を」を使った文型になることがわかります。
-thumb-250x187-2771-thumb-250x187-2772.jpg)
以下、YouTube動画は下記のURLを開いて下さい。
第22回「助詞「と」の二つの使い方?」( 分・字幕付)
また、今回のYouTube動画の無料テキスト・問題は、以下のURLからダウンロードできます。
☆助詞と動詞の組み合わせを知ろう~日本語にも基本文型がある
動詞の中には、「~が+動詞」(例;雨が降る)「~が~を+動詞」(例;「ママがケーキを作った」)のかたちで使う動詞があることを学びました。今回は「~が~に+動詞」のかたちで助詞「に」を使う動詞について学びます。聴者は「ぼくは ケーキを・・」という文を見た時(きいた時)、「その次は『食べる』という語が来るのでは?」と頭の中で予想することが多いと思います。それは「食べる」という動詞には「~を」(目的語・対象)という言葉が来るという文のパターン(文型)を知っており、「ケーキを・・」ということばをきいたときには、「食べる」ということばが続くのでは?と予想することが多いからです。
もちろん、「台所で、ぼくは ケーキを・・」という、冒頭に「台所で」という文言がある文であれば、それらの語のならびから「『作った』のかな?」という予想をたてたりもできます。同じように、「ぼくは 学校に・・」であれば「『行く』がくるのかな?」とか「ぼくは 家に・・」であれば「『帰る』がくるのかな?」と予想をしたりします。このように、私たち大人は、どのような動詞がどのような助詞をとるのかということを知識として、文型として自然に身につけているわけで、そうした文型を無意識のうちに使って文を理解しています。
しかし、きこえない子は、このような言語知識が十分に身についていないので、まだ動詞をみただけで(きいただけで)このような予想ができません。そこで、このYouTube日本語講座では、これまでに①助詞「が」のみを使う動詞、②助詞「が」と「を」を使う動詞について学びましたが、今回はその続きで③助詞「が」と「に」を使う動詞について学びます。
☆助詞「に」を使う動詞はどんな動詞?
さて、助詞「に」を使う動詞にはどんな動画あるのでしょうか?いくつかあげてみます。

あたる、あやまる、ある、行く、いる、帰る、隠れる、かみつく、来る、賛成する、住む、座る、付く、着く、勤める、泊まる、乗る、入る、向かう・・・などいろいろあります。
これらの「に」をとる動詞を意味・用法で分類するとどうなるのでしょう? ここでは、右の「に」の4つの使い方から、時間(時点・ポイント)の使い方を除く3つの用法についてとりあげます。
以下、YouTube動画は下記のURLを開いて下さい。
第21回「助詞「に」はどんな時に使うの?」(20分・字幕付)
また、今回のYouTube動画の無料テキスト・問題は、以下のURLからダウンロードできます。
21.助詞「に」はどんな時に使うの?(テキスト2・問題2).pdf
〇学習内容~助詞「に」の3つの用法

まず、以下の4つの例文について、どんな情報が不足しているのか考えてみます。
①「ママが 行きます」
②「ママが います」
③「犬が かみつく」
④「兄が くわしい」
これらの文をきいたとき(見た時)、私たちは何か物足りなさを感じます。①の文なら、どこに行くのか?知りたいと思いますし、②の文なら、ママはどこにいるのだろう?ということでしょう。これらの文に必要な語句を入れてみると、どの文も「どこ・だれ・なに」+「に」という助詞「に」を使う語が不足していることがわかります。そこで文を完成してみます。
①「ママが 行きます」⇒「どこ『に』」という行先・目的地を示す語を補う⇒
【例】「ママが 会社に 行きます」
②「ママが います」⇒「どこ『に』」という存在の場所を示す語を補う⇒
【例】「ママが 台所に います」
③「犬が かみつく」⇒「だれ・どこ『に』」という対象を示す語を補う⇒
【例】「犬が パパに かみつく」
④「兄が くわしい」⇒「だれ・なに・どこ『に』」という対象を示す語を補う⇒
【例】「兄が ゲームに くわしい」

以上のように、助詞「に」が使われるのは、「行先・目的地」「存在」「対象」の3つの場合です。
次に、3つの助詞「に」の用法について、それぞれの用法で使う動詞はどのような動詞か、助詞手話記号を使いながら説明します。そしてそれらの動詞を使って例文を作ってみましょう。YouTube動画では、これらの動詞の例文を助詞手話記号を使って説明しますので、あとはそれらの動詞を使って文を作ってみてください。

【参考図書】
○『きこえない子のための新・日本語チャレンジ』70頁~80頁、96~99頁、107~109頁(*時間・数量に関する「に」の使い方は119~123頁を参照)