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大学授業(PDF資料)

補聴器と人工内耳について

ここでは、補聴器の基本的な知識とくにアナログ補聴器とデジタル補聴器のしくみ。また、補聴器の種類などについてです。

人工内耳については、補聴器とのしくみのちがいと、人工内耳のベネフィットとリスクについてです。また、
全国の人工内耳装用者へのアンケート調査を踏まえ、なぜ人工内耳を選択したのかしなかったのか、どのような長所があるのか、その一方でどのような問題点があるのかについて学びます。
 短所に関して意外と知られていないのは人工内耳の装用後の費用負担の大きさです。手術そのものは高額医療費還付制度などにより、収入にもよりますが2台同時装用で800万円近くかかってもその負担は数千円で収まることもあります。ただしその後の維持費用は別です。補聴器は福祉機器ですから基本1割負担です。人工耳は医療機器ですからモデルチェンジなどによる買い替えは自己負担です。現在は2台装用がふつうになってきていますから、一生装用することを考えると相当の負担になることは確かです。


聴覚障害について学ぶにあたって、まず動物やひとの耳の機能について、このようなクイズ形式で導入の授業をやります。

以下、10の問題を紹介します。毎年40~50人受講している学生がいましたが、全問正解する学生は、年に一人いるかいないかです。○か×か、あなたはどのくらいできるでしょう? ぜひ、やってみてください。(答は添付した各ファイルをご覧下さい)

Q1. 魚は耳の働きをする器官がないので、音をきくことはできない。

Q2.かえるにはからだの表面に鼓膜があるが、おたまじゃくしにはない。

Q3.鳥には、人間と同じように目のうしろに耳がついている。

Q4.うさぎの耳が長いのは、体を少しでも大きく見せ外敵から身を守るためである。

Q5.アフリカぞうの耳が大きいのは、耳をばたばたさせて、体を冷やすためである。

Q6.犬や猫は、人間がききとれない高い音を聞き取ることができる。

Q7.動物に耳が二つあるのは、体のバランスを保つためである。

Q8.動物の三半規管は、回転運動を感知するためにある。

Q9.音の伝わる速さは、水中より空気中のほうが速い。

Q10.音の三要素とは、高さ、強さ、大きさの3つである。


〇解答と解説

Q1.魚は耳の働きをする器官がないので、音をきくことはできない。

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魚には耳がないように見えます。しかし、魚の頭の中には、耳と同じ働きをする内耳があり、この内耳を使って音を聞くことができます。また、魚には、両わきのまん中あたりに、えらから尾の方にかけて点々でできた、側線(平衡感覚器官)とよばれるところがあります。これはおもに水の流れを感じるところですが、この側線を使って音の一部も聞いています。つまり魚は体のいろいろな場所で音を聞いているといえます。

さらに魚の種類によっては、うきぶくろに音をひびかせて、それを内耳につたえているものもいます。これは、人間よりもずっとよく音が聞こえると言われています。鯉や鮒の浮き袋は、水中を伝わる音波をとらえます。ここにはウエーバー小骨があって、音波の振動を内耳に伝える働きをしています。人間の中耳にある3つの耳小骨は、このウエーバ小骨と似ているといわれています。水中の音波を骨の振動に変えているのです。 

 

Q2.かえるにはからだの表面に鼓膜があるが、おたまじゃくしにはない。

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 魚が陸にあがって両生類になり、陸上で生活するようになると、空気中を伝わる音波を感じる器官が必要になります。それを最初にとらえるのが鼓膜です。おたまじゃくしにはまだ鼓膜はありませんが、かえるには鼓膜が体表にあるのです。水の中にいるカエルは、鼓膜で水の振動を受け止めているため、鼓膜が表面に出ている方が都合が良いわけです。もし穴の奥に鼓膜があると、空気が入ったりして水の振動が伝わりにくいことがあるからではないかと考えられています。かえるの鼓膜は体表にありますが、鳥類では外耳道ができてその奧にあります。

 

Q3.鳥には、人間と同じように目のうしろに耳がついている。

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人間には外耳道があり、その奧に鼓膜があります。鳥には耳がないようにみえますが、鳥にもやはり音を聞くための耳はあるのです。ただ、人間や、イヌ、ネコ、ゾウなどの、ほ乳類のような体の外側にでっぱっている耳は、鳥にはありません。なぜないのかというと、耳のでっぱりがあると、速く飛ぶときに風の抵抗が大きく、じゃまだからと考えられています。ふつう、でっぱった耳をもっているほ乳類でも、水の中を速く泳ぐクジラやイルカには、でっぱった耳がありませんが、鳥もこれと同じ理由なのです。鳥の耳は、わたしたち人間と同じように目の後ろにあります。

 

Q4.うさぎの耳が長いのは、体を少しでも大きく見せ、外敵から身を守るためである。

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 耳は、大きいほど、たくさんの音を集めることができます。ウサギの耳が長いのは、これと同じです。広々とした草原にすみ、草を食べるウサギは、自分をねらって近づいてくる敵をいち早く知るために、長い耳のアンテナを使い、かすかな物音も聞きのがさないようにしているわけです。

 また、長い耳にはそのほかにもうひとつ、大事な役割があります。それは、長い耳の表面から熱を外ににがすことです。人間は、体が熱くなったときには、あせをかいて熱をさましています。ところがウサギは、ほとんどあせをかかない動物です。ですから、あせをかくかわりに、耳を使って熱をにがしているのです。ウサギの大きな耳には血液の流れる血管が、あみの目のようにはりめぐらされています。ウサギは、この血管に風を当てて中の血液を冷やして、体が熱くなりすぎるのをふせいでいるのです。

 

Q5.アフリカぞうの耳が大きいのは、耳をばたばたさせて、体を冷やすためである。

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ゾウの耳が大きいのは、体温を調節するためです。テレビなどで、ゾウが耳をバタバタさせているのを見ることがありますが、あれは、体が熱いために、耳を動かして体の熱をにがしているところなのです。たとえば、アフリカゾウは、気温が27度をこえると耳を立てて、動かし始めます。32度をこえると、耳をしょっちゅう動かすようになります。ふつう、体の温度を整えるには、あせをかいたり、イヌのようにハアハアと息をしたりしますが、ゾウは、このどちらともちがっています。

 まず、あせをかく方法ですが、これは、あせをかいた後、その分たくさん水を飲んで補給しなければなりません。しかし、ゾウが生活しているところはそんなに水はありませんから、補給)もできず、死んでしまいます。また、ハアハアと息をする方法も、ゾウは鼻が長すぎるために、空気を鼻からすって口からだすことができません。そのために、耳をバタバタさせる方法になったのだと考えられています。ゾウの耳には、細い血管が、あみの目のようにはりめぐらされていて、体から流れてきた血液を、空気にあてて冷やすしくみになっています。自動車のラジエーターと同じしくみです。そして、あの大きな体の体温をにがすためには、やはりそれだけ大きな耳の方がつごうがいいというわけです。 この耳の大きさは、すんでいるところによって少しちがいます。たとえば、日がカンカンてりつける草原にすんでいるアフリカゾウは大きな耳をもっていますし、反対に、日かげが多い森にすんでいるマルミミゾウは、これより少し小さい耳をもっています。


Q6.犬や猫は人間がききとれない高い音をききとることができる。 

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人間は20Hz20,000Hzまで聞き取ることができます。それに対し犬は、40Hz5万~6HZ、猫は10HZまで聞き取ることができると言われている。犬が高周波(超音波)の音を聞き取れる能力を利用したものに、犬笛があります。では、皆さんはどの音からどの音までききとれるか実験してみましょう。(ユーチューブに公開されている周波数ごとの音の映像を用いて、どこからどこまできこえるか実験してみます)

 

 Q7.動物に耳が二つあるのは、体のバランスを保つためである。

耳は何のためにあるのか?⑦.pptx.jpgのサムネール画像

が二つあるのは音の方向を知るためです。耳の間に距離があるために音が届くのに時間差が生じます。その差によって方向を感知することができます。空気中の音の伝わる速さは340mで1秒。ミリ秒に直すと1000ミリ秒。340mをcmになおすと34,000cm。耳と耳の間の距離を17cmと仮定すると、両耳に届く音の時間差は、1000ミリ秒で34000cmなので、17cmでは0.5ミリ秒の差です。人間の耳は0.002ミリ秒の差があれば時間差を感知できるので、この差から十分に音の方向を感知できます。

 

Q8.動物の三半規管は、回転運動を感知するためにある。

 

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耳には蝸牛と三半規管の二つの器官があり、このうち上下、左右、前後の傾きを感知する器官が三半規管です。この中にはリンパ液が入っており、体の動きと共に三半規管が動くと、中のリンパ液が乗り残されるため、リンパ液が三半規管の中を流れることと同じになります。このリンパ液が流れて有毛細胞を刺激し、それが脳に伝えられて、体の傾きを感知することができます。回転運動が続くと、急に体を止めても中のリンパ液は急には止まれず、誤った信号を脳に送ることで目がぐるぐる回る現象が起きるわけです。


Q9.音の伝わる速さは水中より空気中のほうが速い。

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  空気中での音の伝わる速さは毎秒340メートル。それに対して水中では1200メートル。水中のほうがはるかに速く音は伝わります。

 

 


Q10.音の三要素とは、高さ、強さ、大きさの3つである。

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音の強さと大きさは同じです。音を視覚化するにはオシロスコープを使います。音の高さは振動数(波の間隔=波長)でわかります。低い音は波長が長く、高い音は短くなります。

強さは、波の上下の幅でわかります。大きい音は上下の振幅の幅が大きく、小さい音は幅が小さくなります

音色は、波の形でわかります。純音はきれいな波ですが、合成音は複雑な形になります。それではオシロスコープで音を視覚化してみましょう。(ユーチューブ等で公開されている映像を使います)

 

さて、10問中何問できましたか? 魚、鳥、動物、それぞれに特徴をもった耳とその機能があることがわかりました。次回は人間の耳やきこえのしくみについて考えてみます。

 

 

このカテゴリーでは、かつて大学で講義したものからいくつか選んで掲載したいと思います。

第1回目は「障害をどのように考えるか?」です。

 まず、新生児聴覚スクリーニングのおける保護者の反応として、きこえる親御さんの一般的な反応を紹介したあと、きこえない親御さん(いわゆるデフ・ファミリー)のとらえ方を、何例か紹介し、聴覚障害を否定的にはとらえていないことを紹介しました。
そして、障害についての考え方として、二つの考え方があることを紹介しました。
次に、自分の障害を否定的に考えていた本人の事例を何例か紹介し、このようにとらえるようになった経過とそこから回復していくきっかけになったことについて考えました。
そして、最後に、そのきっかけになったことこそ、新生児聴覚スクリーニング後に親御さんたちが最初に出会いたかったことであり、それが早期支援での大事なことだろうとまとめました。

┃難聴児支援教材研究会
 代表 木島照夫

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