全国の難聴児のための早期支援、聴覚障害教育の情報提供、教材などの紹介を発信します。

Jcossでわかる子どもの読みの方略(1)

前回、J.cossの中で、きこえない子が苦手な文法事項として、「可逆文」「格助詞」「位置詞」「比較表現」「受動文」「複文(主部・述部修飾)」などがあると書きました。では、なぜ、これらの項目が苦手なのでしょうか? それには以下のような5つの理由があります。

1つ目は、助詞が未習得

2つ目は、動詞の活用が未習得

3つ目は、視点の転換が難しい

4つ目は、位置・空間関係用語が未習得(語彙の問題+助詞)

5つ目は、文のしくみがわからない(とくに名詞修飾のしくみ)

 きこえない子が文を読めないという時、語彙(量と質=概念の両方の不足)の問題のほかに文法的な課題があり、その躓きの有無を明らかにしてくれるのがJ.cossです。今回は、助詞、動詞の活用、視点の転換の3つについてみてみます。

 

(1)助詞がわからない時の子どもの文理解の仕方~J.cossNO7「置換可能文」

助詞がわからない時、子どもは文をどう読んでいるのでしょうか? 当然、助詞抜きで、わかる単語だけを手掛かりにして読みます。そうすると、どのように読むでしょう? 前回書きましたが、「たろう、ラーメン 食べる」でしたら、助詞わからなくても頭の中にイメージを浮かべることができます(J.cossNO63要素結合文(非可逆文)」の問題パターン)。なぜなら「ラーメンが太郎を食べる」ということはあり得ないことなのでそのようなイメージは子どもの頭の中には浮かばないから)

しかし、「太郎、(助詞?)、花子、(助詞?)、叩く」の場合は、助詞がわからないと、どちらがどちらを叩いているのかイメージできません(J.cossNO7「置換可能文」の問題パターン)。両方あり得るからです。

そこで子どものとる方略は、どちらに助詞「が」がついているかではなく、「花子、叩く」と、述部に近いほうを述部の主語(動作主)と理解することが多いです。

 

 J.cossNO15「比較表現」で使う方略

比較表現の指導法.jpgこの方略は「比較文」でも使われます。例えば「赤鉛筆は 青鉛筆より 長い」(JcossNO15「比較表現」)という文の場合、助詞(は、より)がわからないので「赤鉛筆(?)青鉛筆(?)長い」という単語の並びから、「長い」に近い「青鉛筆」を選択し、「青鉛筆=長い」と解釈します。

したがって指導方法としては、述部の主語となるのは、「が」や「は」がついていることば(文末のことばと仲良しになれるのは「が・は」のくっついたことば)だと教えます(線で結ぶ)。この文で言いたいことは「赤鉛筆は長い」ということであって、そのために青鉛筆が引き合いに出されているだけなのです。(注:江副文法では「より」は助詞というより数量や比較を表す「時数詞」と同じ性質をもつ語=「時数詞構成語」として扱います。これについてはこのカテゴリーの下の方をご覧ください。(⇒J.coss~「比較表現」の指導)

 

(2)動詞の活用がわからない時の読み方~J.cossNO5「否定文」

 動詞の活用の否定形(「~ません」)がわからないと否定の意味が肯定の意味になってしまいます。ここで子どものとる方略は、否定形も肯定形として読むという方略です。つまり肯定形しか知らないから肯定形として読んでいるのであって、否定形がわかればこの誤りはなくなります。この指導については、⇒TOP>日本語文法指導>文法指導の順序>動詞形容詞の指導をご覧ください。


J.cossNO14「受動文」で使う方略

 

受動文の指導法①.pptx.jpg否定を肯定形として読む方略は、JcossNO14「受動文」でも使われます。例えば「太郎は 花子に 追いかけれられている」は、「太郎(助詞?)花子(助詞?)追いかける。」です。添付したファイルは、ある聾学校高学年児童の「受動文」誤答児童10名の回答番号一覧です。この表からわかることは、間違いのパターンに二通りあることです。一つはADEF4名の誤答パターンで、受動文を能動文として読んでいる子どもたちです。

もう一つは、BCHI4名の誤答パターンで、この子たちは、動詞「追いかける」「押す」を知らない子どもたちです。つまり動詞の語彙不足です。動詞語彙の拡充の指導については以下を参照してください⇒TOP頁>論文・資料・教材>絵でわかる動詞の学習

〇視点転換の難しさ

受動文の指導②.pptx.jpgのサムネール画像受動文の難しさは、動詞の活用だけではありません。助詞も変わります。能動文では「太郎 花子 叩く」でしたが、受動文では、「花子 太郎 叩かれる」となります。

また、もう一つかわるものがあります。それは視点の転換です。能動文では、主語は太郎にあったのですが、受動文での主語は花子です。誰について言っている文なのかが違うのです。きこえない子は自分のことは語れるが、自分以外の他者のことを語るのは苦手とよく言われます。なかなか他者の立場に立って物事を考えることができないのです。そこで、まず自分以外の他者の立場に立った言い

受動文の指導③.pptx.jpg方から練習をするのもよいと思います。右の問題は「牛乳」の立場に立って考え、表現できるための練習問題です(『絵でわかる動詞の学習』本会発行より)。

 それから、動詞の活用を学習するためには、表のような動詞活用表と例文作りの学習が不可欠です。参照⇒TOP>日本語文法指導>文法指導の順序>動詞形容詞の指導



動詞活用表の指導.pptx.jpg

 

┃難聴児支援教材研究会
 代表 木島照夫

〒145‐0063
東京都大田区南千束2-10-14-505 木島方
TEL / FAX:03-6421-9735

mail:nanchosien@yahoo.co.jp