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「写真カード」「コミ・カード」「絵日記」はどう違う?

「写真カード」「コミ・カード」「絵日記」。

  この3つはどのように違うのでしょうか? まず、そこから考えてみたいと思います。 

 

1.「写真カード」

 

 赤ちゃんは0歳の後半期になるとだんだんと、経験したことを頭の中にイメージ(映像)として記憶できるようになってきます。そうすると、例えば新幹線に乗った経験などもその時に撮った写真をあとで見て、その時の楽しかった経験を思い出すことができるようになります。 写真カードの使用.jpg

写真をみて様々なことを思い出せれば、まだことばがわからなくとも(といっても言語の表出はまだでも理解はある程度できてきます)、写真をみて、親子でコミすることができるようになってきます。「Cちゃん、これから買い物に行こう。ほら、ここだよ」と言いつつ、いつも行くスーパーの写真を見せながら語り掛けると、子どもはスーパーの写真を見て「アッ」と指さしをしてスーパーでの買い物を思い出したりすることができます。この段階では「写真カード」にはまだ文字はあまり書かれていません(書いても差し支えありませんが)。

 

2.「コミュニケーションカード」(コミ・カード)

 

  さらに年齢が進むと、子どもが喜んだり興味を示したことに対して、ささっと絵を描いたり写真にとって記録として残しておき、あとで子どもと一緒に「楽しかったね~」と振り返ったりできるようになります。もちろん楽しかったことだけでなく、転んでひざをすりむき泣いたことなどもよいでしょう。 体験カードから絵日記へ.jpg

このように、子どもが印象付けられたことをその場で絵や写真に残し、子どもと経験を共有したり、あとで(なるべくその日に)、子どもと一緒にもう一度印象深かった経験を振り返ってみたりするのが「コミュニケーションカード(コミ・カード)」で、これはもう「絵日記」とほとんど変わりません。あえて言えば、カードに書いてその場での会話に使ったり、持ち帰ってスケッチブックに貼りつけるといった点が違うかもしれません。

 

3.「絵日記」

 

 聾学校の幼稚部や療育機関では、「絵日記」をかくことを保護者に課していることが多いと思います。しかし、なんのために絵日記をかくのかといったねらいが保護者に伝えられていないことも多く、保護者の負担になっていることも少なくありません。

 私は、絵日記には、以下のような大切な意味があると考えています。

 

(1)絵日記は子ども本人が主人公の(絵)物語。 絵日記の始まり.jpg

 本人の経験したこと(やったこと、見たこと、思ったこと、感じたことなど)を綴った自伝的記録ですから、子どもにとっては世界で一冊しかない貴重な本です。子ども本人が将来、自分でこの記録が書けるように、今は親が手伝って一緒に書いているわけです。

 

(2)文を書く中で、その表現方法(技術)を伝える。 

 単語から2語文へ、そして3語文へ多語文へと、日記に綴る文は、子どもの成長と共にだんだんと長くなっていきます。と同時に、いろいろな表現の仕方、例えば「オノマトペ」を使ったり、例えや比喩を使ったり、会話文を入れたり、受動文や使役文、接続詞、複文などの表現方法などを、子どもの表現力の成長と共に意図的に使うことで、子どもが将来自分で使えるようにウォーミングアップをします。

 

(3)絵日記の中身を人に伝える力を育てる

 聾学校などでは、親子で書いた絵日記を、翌日、担任の先生にその内容を伝えたり、クラスの皆の前で発表したりする時間をとっていると思います。これは、書記言語習得への貴重な橋渡しをする機会です。私たちは、将来、手紙やメールを書いたり、会社でプレゼンや報告書など文書を作成したりなど何かを書く機会が必ずあります。その時に必要なことは、「いつ、どこ、だれ、なに、なぜ」などの5W1Hや「はじめに・・それから・・最後に・・まとめると・・」といった順序に沿った文の組み立て方などを、全て自分の頭の中で考えながら、どうすれば相手に伝わるか読み手を想像しつつ、書いていくことが求められます。それが書記言語です。

しかし、その力は一朝一夕につくわけではありません。その前の段階で、自分で伝えたいと思うことをきいてくれる人がいることが必要です。それが「先生、あのね」の段階です。「うんうん、それで?」とか「だれと言ったの?」とか「そりゃ楽しかったね」などと足りないことを質問してくれたり、一緒に共感してくれる人の存在です。そうした練習を経ながら、私たちは自分一人で文が書けるようになっていきます。その大切なプロセスが、絵日記の中身を他者に伝えるという行為の中に含まれています。

 

  以上のような絵日記の意義を踏まえて、ぜひ、お子さんにとって楽しい絵日記を書いて欲しいと思います。もちろん、それぞれの家庭には事情があってなかなか絵日記に取り組む時間がとれないという方もいらっしゃると思いますし、「私は絵が下手で・・」と絵日記に消極的になる方もおられると思います。毎日でなくてもいいですし、写真を使ったり、線画でもかまいません。お子さんに絵を描かせるというのもよいでしょう。その時に使った実物やチケットやレシートを貼り付けるのもよい方法です。週1回でもかまいません。できる範囲でいろいろと工夫しながらお子さんと会話しつつ書く時間は、お子さんにとっても、とても貴重な時間になると思います。