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掲示板過去ログ抜粋ーⅠ.絵日記のかきかたー


Ⅰ.絵日記特集

1.日記、なに書きゃいいのさ~?

 「日記、書くことないです」「毎日同じ生活してるし・・・」。

親御さんたちから、よくきくことばです。話をきいてみると、「明日までに書かないといけない!→ねえ、何、書こうか?→子どもは知らんぷり→困った、書くのが宿題だし。何書こう?・・・」と、お母さんが孤軍奮闘?している姿が見えてきます。

「宿題なの?」と尋ねると、「いやあ、そうとは決まっていないけど、でも、みんな書いてるし、私だけ書かないのは・・・」

「それって、おつきあいで書いてるの? 誰におつきあいしているの?」ってききたくなりますが、そ  ういういやみは言わないで、こうきいてみました。

「日記は子どもが書くんですよね? 本当は?」

「そうですよ。でも、書けないでしょ、子どもは」

「そうですよね。だから、お母さんが書くわけですね。でも、お母さんは子ども本人じゃないから書けない」

「そうですよ。だから困っているんですよ」

「でも、子どもは毎日いろんなことに興味をもっているんじゃない? なんにも興味ない子っていないですよね」 

「そうですよ~。うちの子、すぐなんでも駆け寄って、手を出してさわるからこまっちゃうんですよ」

「じゃあ、それを書けばいいんじゃない? 題材いっぱいありすぎるくらいあるんじゃない?」

「えっ? ああ、そう言われればそうですけど。でも、それでいいんですか?」

「いいんですよ。日記のかたちなんか決まっていませんよ。内容だって自由ですよ。大事なのは、子どもが何に興味をもち、自分の興味関心がお母さんとのやりとりの中でかたちになって書き留められることですよね。それが書きことばのはじまりですよね。」

 

そんな会話をしてから、その親御さんは、一緒にいるとき、子どもが何に興味をもったか、よく見るようになりました。さて、以下の日記は、あるデフファミリーのお母さんのお子さんが年中組のときの日記です。なにげないことをササッと書いてあげるのだそうです。時には電車の中で立ったまま書くときもあるとか。子どもは、自分の興味関心をもったことが、あまり時間をおかないで絵日記になるので、楽しくなって、いろんなことに興味をもつようになったそうです。以下は、そのデフママの絵日記。やりとり含めて15分くらいで書くそうです。


例1は、登校途上でカラスが電柱に止まっていた。「フン落とされたらいやだなあ~」と子どもと会話したこと。よくある日常の一コマですね。~

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例2

子どもが雪にさわってみた。固かった。「石みたい」と言った。あんなにふわふわとして柔らかかったのに、次の日はカチンカチン。子どもの発見ですね。













例3 

ダンゴムシを見つけた。ころころしようと思ってつかまえたら、卵を持っていた。「卵をもっているね」と言ったら子どもが「お母さん虫なんだね」と言った。

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例4

毎日、地下鉄に乗ってお母さんと通学しています。ある日、地下鉄が外に出ている時には線路に砂利が敷いてあるのに、トンネルの中を走る時は、線路に砂利が敷いてないことを発見した。不思議だった。どうしてだろう?


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2.日記で品詞分解する方法


  日記を書くときに「が、を、に、で」などの助詞に○をつける方法はよく知られています。では、文の構造はどう示せばよいのでしょうか? これはあまり行われていませんが、前にも書いたように、子どもは文の構造(主述関係、修飾・被修飾関係など)がわからないために、切ってはいけないところで文を切って理解してしまうなどのことが起こります。

 きこえる子は、聴覚的情報を沢山取り入れて自然にこうした文のつながり方を理解していくのですが、きこえない子は、聴覚だけに頼るのではなく、視覚的にも理解できる方法をトータルに組み合わせてやったほうが効果的です。

その方法のひとつとして、ある聾学校幼稚部の保護者(とくに高度難聴児の親)は、江副文法の品詞カードに合わせて、文を品詞分解する方法をとりいれています。これは、子どもと対話して日記を書く時に、文の中の品詞の色分けをしていく方法です。ただ、その品詞が動詞だと名詞だのとはいちいち説明するわけではありません。子どもが尋ねたときは話すとしてもあらかじめ説明したりはしません。幼児期においてはそれでよいと思います。毎回、見慣れているあいだに、文の中にはいろんなことばがあり、それは色によって分けることができるらしいということがわかればよいわけです。その色がどんな意味をもっているのかは、小学生になってから勉強すればよいわけで、それが日本語文法のとりたて指導です。

 下の日記の写真は、ある年長児の保護者の日記です。とくに動詞や形容詞の使い方や表示の仕方をみてください。「わたげに なった たんぽぽ」と名詞を修飾する節は大きな黄色い四角で囲ってあり、ここまではひとまとまりの文節だよ、ということがよくわかります。


また、ここで使われている「なった」は、最初に出てくる「はるに なった ので」という「なった」とは、違う使い方であることもよくわかります。

さらに、最後のほうの「ちいさな わたげ」は形容詞+名詞で、この形容詞は後ろの名詞を修飾しているという同じ用法だということがわかります(大きな黄色い四角では囲ってありませんが)。

ほかにも、「それを とって(「て形」)、いきを ふきかけました(ふく+かけるの複合動詞)」とか、「ぶわーっと(副詞・擬態語)とんでいきました(「て形+補助動詞いく」)など、子どもに教えたいことばの使い方がちゃんと盛り込まれています。


こうした取り組みを年中とか年長の時期に1~2年やっていくと、子どもは、文のまとまりが自然にわかるようになり、読む速度も早くなってきます。また、保護者にとっての利点として、色分けをすることで、自分がどんな種類の品詞を使っているのかとか、接続詞はどうか、名詞修飾はどうか、副詞は・・・などと日本語を意識するようになるという点でもよいと、親御さん達は話していました。

難聴幼児をおもちの親御さん、ぜひ、やってみてはどうでしょうか? 


例1

上の日記の絵(スケッチブックの右に文が、左に絵が描かれている)。ちゃんと起承転結の4コマまんがになっている 


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例2

精米の仕組みがわかるように、絵が描かれています。こうしたいろいろなことを子どもに教え、知識を豊かにすることは、文の読解力を高める上で大切です。文は語彙や文法力だけでなく、幅広い知識があってこそ、その内容をよりよく理解できるからです。

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3.幼児期に動詞の活用を教えるには?


 読者の方から、「幼児期にどうやって動詞の活用(語尾変化)を教えたらよいか?」という質問をいただきました。聴力は100dB以上とのことでした(人工内耳非装用)。
 たしかに、動詞の活用形はたくさんあって、聴力の厳しいお子さんにとって、なかなかその獲得は大変です。 軽中度難聴や人工内耳装用のお子さんなど、聴覚活用ができる子は、基本的な活用(例「食べる。食べた。食べない。食べなかった。食べたい。食べよう。食べられる。食べて~。・・・」)は日常会話の中で比較的よく身についていきますが、聴力の厳しい高度難聴のお子さんたちは、実際の生活場面・会話の中で使っていくだけでなく、文字も使って「目から学ぶ」ことも考えるのがよいと思います。 
そこで活用したいのが絵日記です。下の例1は、マスの中に一つだけ動詞を書くようになっています。例2は、「書き□□□」「書き始め□□」と動詞文末の「ました」「ます」を入れるようになっています。こうした、比較的簡単なレベルから始めるとよいと思います。

例1

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例2

動詞文末の「ます」「ました」を入れるようになっています。

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4.ふたたび、品詞分解式絵日記について


 これまで、いろいろな絵日記の書き方を紹介してきました。その書き方は本当に個性に満ちていて、決まった方法があるわけではなく、一つ一つがお子さんと親御さんとの共同作品そのものなんだと強く感じました。

 それらの中で、絵日記の中身ではなく、表示方法として、この方法はたしかに文の読みとりの力につながっているなと感じる方法があります。それが下の写真のような「品詞分解式絵日記」です。

 これは、江副文法で採用している「品詞カード」の枠組み、例えば、単語の名詞は黄色い四角、動詞は緑のベース型(四角の表示の人もいます)、形容詞は水色のベース型(同)に縁取りするだけのことです。

 では、それがなぜ文の読み=理解の力につながるのか?ということですが、これはまだ仮説に過ぎませんが、文の構造が感覚的にわかるようになるということです。例えば、私達は、文を読むときに、その文が漢字を使わないひらがなばかりの文であったとしたら、単語がどこで区切られているのか判別するのに時間を費やし、その内容を読みとるのに相当の負担を強いられます。そういう点で漢字は本当にありがたいものなのですが、小学校1年生の教科書では、まだ、ひらがながその多くを占めます。ひらがなばかりが切れ目なく続くと、小学1年生では、どこで単語が切れているのか区別ができなくなるので、分かち書きをするわけです。こうすることによって、単語の切れ目がわかり、文の構造がつかみやすくなります。しかし、分かち書きで単語の切れ目はわかっても、その品詞が何であるかまでは表示することはできません。

 そこで、下の絵日記のように文中の主な単語を色枠で囲います。全ての単語をやるのではなく、一般的には、名詞、時数詞、動詞、形容詞程度なのですが、この表示だけでも、日本語の文がどのような構造をもっているのかその特徴をだいたいあらわすことができます。

 例えば、①一つの文の最後(文末)は必ず一つで、句点(○)がつくこと、②その単語はたいていは動詞で、その終わり方は、かたちが違うこと(「食べよう」「食べた」「食べなかった」など。もちろん形容詞・名詞もありますが最後は活用する形)。③また、動詞は文の途中にも来て、その使い方は、「食べて」や「食べたので」など接続助詞を伴ったりするときもあるし、④名詞を修飾する形で使われるとき(「たくさん食べたチョコレート」など)もある、ということがいちいち文で説明しなくても(子どもに説明しても難しいでしょう)、みているうちに感覚的・視覚的にそのルールが「なんとなく」わかるようになるということです。

 では、それが本当に意味あるのか、ということですが、これはまだ客観的に立証できているわけではありませんが、こうした表示を絵日記の中で1年くらい継続した子どもの

 文法テスト(JCOSS日本語理解テスト)の成績が、前年よりも大幅にアップしているということが、検査をしてわかりました。もちろん、この方法だけが文法力アップの要因になっているのかはわかりません。ただ、私が検査者として子どもたちの検査を担当した印象として「問題文を自分ですらすらと読み、読み取りが早くなった」ということです。

 今後、この方法の有効性を検証していきたいと思っていますが、だめもとで(多分それが害になることはないと思うので)やってみてはどうでしょうか? というのが、私の提案です。因みに、これをやった保護者の感想をきくと、「ずっと継続していると読んで理解する力がはやくなったように感じた」「色分けすると、ああ、こんなことばを使っていないな、とことばの使い方が意識的になってよかった」「子どもは自分では使えないけど、読んで理解する上ではよかったと思う」などでした。


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5.日記って負担・・・はぁ~

「毎日、そんなに書くことないですよ~」。こんな保護者のことばを時々耳にします。
 この掲示板で日記のことを取り上げたら、同じような反応を何人かの方からいただきました。
そうですよね。何を書こうかとこっちも思い浮かばないこともあれば、子どもだってそんな気分になれないときだってありますよね。そんな時は、日記なんか書かないで、ほかに楽しいことをしてあそびましょう。
 外でボール投げ、縄跳び、ケンケンパ・・・、雨の日だったら家で折り紙、紙ひこーき、すごろく、トランプ、おやつ作り・・・なんだってありますよね。
 親が忙しいなら、一人でパズル、迷路、お絵かき、塗り絵・・・。こういう遊びも子どものいろんな力を育てるものです。
 遊びに熱中してひとしきり遊んで、なお時間があったら、今やった遊びを題材にして取り上げてみてはどうでしょう? 親御さんが自分で一緒にやったのなら、今、やったことについて会話もはずむでしょうが、お子さんが一人でやって親御さんが見ていなかったことなら、会話をどれだけ引き出せるかにかかってきます。
 それも難しそうなら「今日の給食はなんだったの?教えて」とか「給食のお料理、お母さんが当てるからね。それはニンジンが入っていますか?」とクイズ形式でやるとか、「今日は、○○先生はどんな絵本を読んでくれたの?ママも知りたいから教えて」とかきいてみましょう。
 それでも面倒くさそうなら、思いきって日記はやめて、日記帳に連想ゲームでもさいころゲームでも書いて遊んだらどうでしょう。時間は15分くらい。あっという間に過ぎる時間です。
 さて、日記に書く文ですが、これはお子さんの今の日本語の力の現状から、少しレベルアップさせたいところを考えて文を書いていくわけですが、一般的に言えば、年少さんなら絵を中心に、2~3語文を添える程度。
 年中さんなら、書きたいテーマについてもっと会話して話の中身を深めますが、ただ、文としてはあまり欲張って長くしないほうがよいと思います。
 そして年長に近づくにつれて書く文の数も増やしていきます。年長さんになったら、文も単文だけでなく、接続助詞や接続詞を使って複文にしたり、助詞や動詞の活用などにも気を配って書くようにします。また、部分的に子どもに書かせるのもよいと思います。
 こうした例を、ある聾学校の保護者さんたちの日記から、以下に紹介してみます。
例1は、年少の頃の絵日記。まだまだ手話での語りが中心の頃です。

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例2

年中の中頃の日記です。吹き出しなども入って、書く内容を増やしていきます。

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例3

年長の秋頃の日記。文も増えてきています。また、必要なところに子どもが文字を書き込むようになっています。このように少しずつ、子ども自身が書けるようにしていきます。

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