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ことば絵じてんづくり楽しんでます!

 先日、このHPをご覧になった方から上のようなメールをいただきました。また、お子さんと一緒に作った「絵じてん」のページをいくつか送っていただきました。そこで、今回は承諾をいただいて、メールと絵辞典のページを紹介させていただくことにしました。
以下、メール本文と辞典の中身から。

「わが子は、新生児スクリーニングで重度難聴がわかり、その後、手話を使い始め、1歳4か月で初めての手話「おいしい」が出ました。2歳0か月で人工内耳を片耳して、年中になった今は、声と手話と指文字でコミュニケーションをとっています。
 言葉が上手になると、つい「聞こえている」と思ってしまい、安心してしまいました。
 先日、このホームページの『ことば絵じてん』づくりのところを見てことばのカテゴリーのことを知り、子どもに『上位概念』を質問してみると、果物と野菜の名前はたくさん知っているのに 、分類もできていないし言葉で説明もできない。単語を知っているから、特に説明はしたことはないけれど、自然に分かっているものと思い込んでいたことに気がつきました。子どもの頭の中では、単語があちこちに散らかってるんだなと思いました。

 そこで、ことば絵じてんで頭の中に引き出しを作り、整理しようと考えました。変化は早く、すぐに上位概念を理解して、みるみる頭の中に引き出しができていくのを感じました。誰かに何かを説明するときには、ことば絵じてんのページを頭の中で見ながら話していることが、一緒に作った私にはわかりました。ものにはカテゴリーがあること、色々な見方ができることを教えられたと思います。

 ことば絵じてんの効果は予想以上でした。こどもと一緒に私も学んでいて、大変なこともあるけれど、素敵な時間を過ごせています。
 一番最近作ったのは『秋』に関するページです。体験した事、食べ物、服装など秋にまつわることを集めました。作っていると、ワクワクしてきます。親が楽しいと、こどもも楽しんでいて、どんどんページが増えていきます。こどもも、自分だけの辞典が大好きになって、分からない時は自作の辞典を持ってくるようになりました。

 いまは、子どもと二人で『冬』のページを制作中です。冬に使うもの、クリスマスの料理、虫や動物の冬眠などを作っています。夏のページと比較して違いを学んだりしています。」 秋の味覚.jpg

 秋の服装.jpg

 

 

 

 

 

 

 以上です。お子さんと一緒にほんとに楽しみながら、世界にひとつしかない"myことば絵じてん"が編纂されていく様子が浮かんできます。そう、これは、子どもの頭の中に「辞典」を作っていく作業を、紙の上で行っている"語彙辞典を編む"作業なのです。
 きこえる子はとくにこのような作業をしなくても、耳に次々と入ってくることば(新情報)を整理していけばよいのですが(きこえる子は1語につき約800回その語をきいて、その語の概念を旧情報と照合・整理し、新たに語の概念を書き換えているのだそうです)、きこえない・きこえにくい子どもたちは、それだけの情報を「耳から」きくことは、いくら補聴器や人工内耳をしていてもまず不可能です。
 ですから、「みかん、りんご、バナナ・・・」と単語はいくつも知っているのに「果物」「食物」「農産物」「植物」「栽培」「農業」「貿易」といった上位概念や抽象語を知らないということが起こってきます。語は様々な切り口で仲間にまとめ、カテゴリー化でき、それらがそれぞれに関係しあって語のネットワークを構成して膨大な構造を構成しているのが特徴です。
 頭の中にある語を全て視覚化・カテゴリー化することはもちろんできませんが、語のもっているこのような"しくみ"を学習することは十分可能です。「ことば絵じてん」を編纂することは、このような語と語の関係性、そのしくみを学ぶことです。この原理が理解できれば、あとは子ども自身が自分の頭の中で、新しい語に出会った時にそれを整理しながら蓄え増やしていくことができます。
 
 きこえない子が語彙を増やし、抽象語を身につけていくために、語の概念カテゴリーとそのしくみが学べる「ことば絵じてん」づくりをぜひ、お子さんと一緒にやってみることをお勧めします。