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「したこと」を書けるようになってきた児童の日記指導

 「~をしました。~をしました。」と、日記に、したことをつなげて書けるようになってきましたが、詳しく書かせるようにするには、どのような手立てをとったらよいでしょうか?

 このような質問を聾学校の先生にいただきました。そこで、何年か前の聾学校2年生の日記を例に、どのように指導すればよいかを書いてみたいと思います。(本HP>日記・絵本・手話>小学生の日記指導参照)

 

 その前に、基本的に大切なことを再確認しておきます。

まず、子どもが書いてきた日記のよいところをみつけて褒めることです。これが何よりも大事です。その励ましによって、子どもたちは文を書こうとする意欲をもちます。

二つ目、子どもの文には直したいことが沢山あるはずです。でも、よくばらないことです。間違いのなおしは一つか二つにします。

 できれば、子どもと直接、対話しながら指導をします。それが難しい場合はコメントを書きます。

 

さて、下の事例は、沢山の語彙と文法の誤りを訂正したあとの日記です。「~をしました。~をしました。」としたことを順番に書けるようになった子どもです。便宜上、ここでは文に番号を入れ、漢字を使用します。

 

 1.誕生会をしました。2.ケーキを作りました。3.いちごとみかんで作りました。 

 

4.はじめに歌を歌いました。5.私は話しました。6.「何がやりたいですか?」7.ころがしドッジとかくれんぼをやりたかった。8.でも、道具がありませんでした。9.だから、転がしドッジはできませんでした。 10.悔しかったです。 

 

11.そのあと、ケーキを食べました。12.ケーキはおいしかったです。13.プレゼントをあげました。

 

14.おわりの話をしました。 15.楽しかったです。

 

〇基本文型もいろいろ使って

 さて上の日記の文の一つ一つを読んでいくと、ほとんどの文が「~しました。」「~をしました。」ばかりでできていることがわかります。日本語には必須成分をもった基本の文型が5つありますが、その基本文型の1と2だけが15の全ての文に使われています。基本文型できちんと文が書けるようになることは、初歩の段階の指導としてはとても大切ですが、1,2の文型だけでなく、他の文型3~5(「~が~に+動詞」「~が~と+動詞」「~が~に~を+動詞)も使えるように指導する必要があります。

 例えば、5の「私は 話しました。」は、「私は みんなに 言いました。」(文型3)に変えられます。また、13「プレゼントをあげました。」は、誰にプレゼントを上げたのかがわかりません。「あげる」の場合は、基本文型5を使って「〇〇さんに(誕生)プレゼントをあげました。」とするのがよいでしょう。

 

〇助詞「で」も使う

また、助詞「で」も使われていません。助詞「で」は、文を詳しくするときに使う助詞ですから、最初に書くべき「いつ」「どこ」「だれ」のところで使えそうです。例えば「クラス誕生会をしました。いちごとみかんケーキを作りました。」とすることで、文をまとめることもできます。

 

〇4段落構成で

それから、この日記は、起承転結の4つの段落になっています。順番に書いていく中で自然にそうなったのだろうと思いますが、4つの段落で書くのが文章としては一番まとまりのよいかたちなのです。

4つに書く方法として「はじめに、次に、そして、終わりに」ということばで意識させますが、この日記でも、「はじめに、そのあと」などを後で入れて段落を意識させています。   また、最初の「起」の段落では、「いつ」「どこで」「だれが」「なにを」したかがわかるよう、必要な情報を入れるとよいと思います。

最後の「結」の部分は、子どもは「楽しかったです。」と書きたがりますが、紋切り型のことばではなく、「〇〇さんにプレゼントをあげました。」の次の文として、「○○さんは、『ありがとう!』と、大きな声で言ってくれました。」とか「次の〇〇さんの誕生会が楽しみです」などの周りの人の様子や自分の思いなどを書くように指導します。 

 

〇名詞修飾や複文(~て形)を使って

あとは、一つ一つ短文を羅列すると、単調な文になってしまうので、少しずつ文をまとめて書く練習をさせます。例えば、1~3は、「いちごとみかんでケーキを作って、クラスみんなで、〇〇さんの誕生会をしました。」4~6は、「歌を歌ったあと、(司会の)私は、みんなに『何がやりたいですか?』と尋ねました。」などです。

 

〇字数、題名などについて

字数は、学年×100+100字を目安にします。また、題名をつけると書く内容が絞れます。上の日記なら「〇〇さんの誕生会」とか、「盛りあがった誕生会」とか。さらに、「誕生会全体」ではなく、その中の一番書きたかったことだけに絞るとか(時間的には10分以内)して、観察する力を伸ばす練習をしますが、そこまで行くには、やはりじっくりと指導する時間が必要です。

日記を書くためには、語彙力、文法力をつけなければなりません。語彙が少ないとワンパターンの文になってしまいます。文法力がないと書きたいことを適切に表現できません。さらに、生活や自分自身を深くみつめる力を育てるには、日記の題材を選ぶ観点の指導や書かれた内容について子どもに問いかけることが大切です。そのためには、国語の時間を削ってでも日記指導の時間を確保することが大切だと思いますが、教科書の指導に時間を割かれているのが聾学校の現状です。

 

┃難聴児支援教材研究会
 代表 木島照夫

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