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中・高学年児童の日記指導

これまで低学年の日記指導の方法について書きました。今回は、ある程度文が書けるようになった中・高学年児童の日記指導について具体的な事例をあげて書いてみたいと思います。

まず、中・高学年の日記指導の目標は以下の2つです。

 

 (1)書きたいと思ったことを、さらに絞り、ひとつのことを詳しく書く。

  ・色、形、数、量、具体名

  ・五感を使って(味・におい・色・感触・音)

(2)相手の心に響く「書き方」を工夫する。

  ・クライマックスから書く。

  ・具体的な風景の描写を入れる。

  ・具体的な自分の心の動きを入れる。

  ・臨場感の出る書き方を工夫する。

 

 事例1(小学部3年) 250字

今日は、家で、ナノブロックで遊びました。ナノブロックはとても小さいので、オラフを作るのが難しいです。

作る前、「早く作りたいからドキドキしちゃう。どのぐらい小さいのかな」と思っていました。

作っている時、「これってけっこうむずかしいからひとくろうするな。でも、むずかしいからたのしいな。」と思いました。

でも、まだ完成していないので、「まだまだだな。」と思いました。かんせいするのが楽しみです。

 

字数はやや少なめですが(3年生なら3×100+100=400字くらい書けるのを目標にします)、3年生としてはよく書けていると思います。低学年時の指導の目標であった、「身の回りのことから書きたいことを書く」ことができていますし、「したことを順序立てて書く」という点でも起承転結の4つに分け、すっきりとまとまっています。また、「自分の思ったことを(  )をつけて書く」こともできています。

 

こうした日記を本人の了解も得て「学級だより」などで紹介し、評価すべきところ(必ず書きます)、もうちょっとこうするとさらによくなる点などをコメントして掲載すると、本人や級友の家族の方などとも作品を共有することができますし、こういうふうに書くといいんだなと参考にもなります。

 

さて、この日記をさらに一工夫するにはどうすればよいでしょうか?

上記の中・高学年の日記指導目標の(1)の点ですが、とくにどれほど小さいのかをもう少し具体的に書くとよいと思います。

例えば「ナノブロックの大きさは一つ4ミリ。指先でつまんでもすぐにポロッと落としてしまう」などと具体的に書くとよいと思います。

また、(2)の相手の心に響く書き方を工夫する、という点では、楽しみで気持ちが高ぶっている様子を最初にもってくるのもひとつの工夫です。例えば以下のような書き方をしてみるのもよいでしょう。

 

「早く作りたいからドキドキしちゃう。どのくらい小さいのかな?」

頼んでおいたナノブロックが今日、やっと来ました。箱を開けると、赤、青、水色、黄色・・・。小さなナノブロックがぎっしりと詰まっています。ナノブロックの大きさは一つ4ミリ。指先でつまんでもすぐにポロッと落としてしまいます。・・・

 

 このように、最初にナノブロックを手にした感動を「具体的な描写によって」、また、現在形の動詞を交えて使うことで「臨場感の出る書き方」を工夫すると、活き活きとした日記になります。

 聾学校でも難聴学級でも最近、日記・作文指導をしている実践が少なくなりました。しかし、日本語の読み書きの力をつける方法として日記・作文指導は捨てがたいものがあります(というかそれが子どもの現実に即してできる最も効果的な日本語指導法)。ぜひ、日本語文法指導と日記・作文指導とを組み合わせて、しっかりと日本語の力をつけてほしいと思います。

 

┃難聴児支援教材研究会
 代表 木島照夫

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