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きこえない子にとっての絵本の意味は?

 今日は、きこえない子にとっての絵本の読み聞かせについて考えてみたいと思います。
 昔から絵本と絵日記は、きこえない子のことばを育てる重要な教材と考えられ、聾学校や療育機関では、絵日記を書くことと絵本を読みきかせることが、親の"宿題"として課されてきました。絵日記のほうは、書いた翌日などに先生にみてもらい、子どもがその内容について話さねばならないという課題があるのでなかなかサボるわけにいきません。
 しかし、絵本の読み聞かせは家庭でやることであり、学校で「発表」するという課題もないので、ついついおろそかになってしまっている家庭も少なくありません。
 確かに、きこえない子に絵本を読むときの難しさに、そのまま絵本の文を読んでも、ことば(日本語)がわからないので子どもに内容が伝わらないという難しさがあるのは確かです。
 また、本を読むという習慣が親ごさん自身にないとか、自分が小さい頃にも読んでもらった経験がなく、絵本の楽しさがわからないという人もいます。
 さらに、最近ではテレビやビデオだけでなく、外出時などにスマホやタブレットを子どもに持たせて、動画を見せている親御さんも少なくありません。こうした機器が一概にダメとは言えませんが、スマホやタブレットの映像は親子で共に楽しむというよりも、色彩も動きも子どもには強烈な刺激なので、子どもはそれにひきつけられて「一人で」黙々と見入っていることが多く、それを「見せて」いる間に、親は別の用事をしたりメールをしている、といった姿もよく見かけるようになりました。 勿論、絵本もただ絵本を持たせて子どもに絵を「見せて」おくことや字が読めるようになった子に文字を自分で「読ませて」おくこともできるでしょう。しかし、これではせっかくの絵本も十分にその意味が活かされているとは言えないように思います。

 では、絵本とは何でしょうか? 絵本は、大人が子どもに読んであげるものだと思います。それを私たちは絵本の読み聞かせと言っていますが、絵本の読み聞かせとはただ文字づらを読むことではなく、大人自身がそこに語られている物語の内容を読み取り、理解し、それを自分の「ことば」(=音声・手話・指文字・身振りなど)で伝えることだと思います。大人が自分で絵本の中身を読み取り、その楽しさやよさを実感すれば、絵本のことばは本当に生き生きとした「ことば」となり、温かい、豊かなイメージをもった「ことば」として子どもの心に伝えることができます。
 
 こうした「ことば」の伝わり方や気持ちの伝わり方は、子どもが一人で読んでいるだけでは決して味わうことができません。大人が自分の「ことば」で心をこめて読んであげたときにこそ伝わることであり、そのためには、大人自身がその絵本の中身を深く理解し、作品に共感できることが大切ですし、それを子どもに伝えることができたときに、子どもはその絵本の中へ深く入ることができ、その体験が子どもの心を成長させる糧になるのだと思います。
 それが絵本を読み聞かせる大切な意味です。決してきこえない子の日本語の読み書きのことば向上のために読むのではありません。絵本は大人と子どもが絵本という作品を通して心と心を通い合わせる場です。その場をぜひ、日々、作ってあげて欲しいと思います。1日1回の読み聞かせの時間を作るというのが理想ですが、それが難しい家庭は1日おきでも3日に1回でもよいと思います。継続は力なり。親子で触れ合うその経験こそが、子どもの人生の豊かさにつながる、それが絵本の読み聞かせの本当の意味なのだと思います。