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絵本の好きな子どもに育てたい!

〇「きんぎょがにげた」(右ファイル参照)

以下の文章は、1歳半になった難聴のお子さんのお母さんの育児記録から引用したもので

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す。絵本になかなか興味を持ってくれないお子さんにどうやったら絵本が好きになってくれるのか、一生懸命考えておられる気持ちが伝わってきます。

「先日、本屋さんで『きんぎょがにげた』という本を買ったので、それをAと一緒に読んでみると、いつもよりくいつきがよく感じた。今まではあまりにも絵本に興味を持たなかったので、うれしかった。もしかしたら、絵本の選び方があまり良くなかったのかと思い、これから少しやり方を変えていこうかと思う。今までの本は、

    図鑑のような本(ストーリー性がない、ページの関連性がない)

    文章がAの歳には長すぎる本(すぐあきる、意味をつかみにくい)

    私の好みの本(Aの感性には合わせていない)ばかりだった。

これからはこの点を改善して、ページの関連性があり、なおかつ短い文章で、わかりやすい内容、シンプルな絵のものを中心に選んでいこうと思う。」

 

「絵本に興味を持たない困ったAちゃん」ではなく、こちらの絵本の与え方に理由があるのではないか、どうやったら興味を引き出せるのか? と考えておられるところがAちゃんのお母さんのとてもいいところです。以下、お母さんの「反省」について一緒に考えてみたいと思います。

 

    ストーリー性のない図鑑的な絵

これは、決して悪くはありません。どの年齢の子どもにとっても、ストーリー性のある絵本と併せて与えてあげてほしい絵本です。例えば、012歳児が楽しめる動物や乗り物、食べ物が載っているだけの絵本は、子ども達がよく目にする、身近で親しみやすいものが絵や写真で取り上げられています。1歳~2歳の子ども達にとっては、とにかく「同じ!」「おんなじね!」とマッチングすることが楽しい時期。こうした絵本を見ながら、テーブルにあるバナナを持ってきて「同じ!おもちゃ箱の電車のおもちゃを持ってきて、「同じ!」。子どもにとってこれほど楽しいことはありません。読み聞かせてもらうための絵本というよりは、親子でこうした同じもの探しをしながら遊べる、おもちゃとしての役割を果たしてくれるのではないでしょうか。

また、3歳以上の幼児にとっては、虫図鑑、海の生き物図鑑といったものを通して見たことのない生き物を絵で確認しながら、未知の世界を想像し、文字を通して名前を覚えたり、説明書きを一緒に読んだりしながら知識を広げていくことでしょう。例えば、「虫の名前を30個覚えましょう」という指導を耳にしますが、子どもの興味関心とそれたところでいくらやっても子どもの能動的な学習は望めません。子どもが好きであれば、自分でこうした図鑑を利用して自然と覚えて行くのですから、親は、子どもが好きなことにとことんつきあい、一緒に絵本を楽しみながら、知識を広げる手助けをしてほしいと思います。

 

    文章がAの年齢では長すぎる

これは、話の内容理解がAちゃんに難しすぎる、ということでしょう。子どもが興味を持ったり、最後まで楽しんだりすることを妨げる要因になっていたようです。1歳なりに、3歳なりに...と年齢や子どもの発達で、楽しんだり、理解しやすかったりする内容は、当然変わってきます。とはいっても、2歳だから2歳向けの本を与えても、必ずしもそれが当たるというわけでもないところが難しいところです。わが子が絵本に食いついてくる様子や、最後まで目を離さずに見ている姿をよく観察しながら、適切な絵本選びをすることが大事です。特に、これから絵本に親しませていきたい時期の子どもには、繰り返しがあり、背景が複雑でなく、絵がシンプルでわかりやすく、短いお話を選んであげるとよいでしょう。極端にいえば、絵だけ見ていれば展開がわかる...そんな絵本が望ましいと言えるでしょう。

 

    私の好みの本(Aの感性には合わせていない)

お母さんはこれはまずかったのではと感じていらっしゃいますが、年齢や発達に合った絵本の中で、是非お母さんの好みの本も与えてあげればいいのではないかと思います。絵本を買ったり、借りたりして与えるのは親です。わが子に親しんでほしい絵本をママの好みで選ぶという観点も是非大事にしてほしいと思います。

 

 それから、絵本を読み聞かせる時には、親子で絵本をはさんで、対面して見ることを配慮して下さい。絵本を置く台(ブックエンドもいいですね)が、絵本を読む大人の顔と同じくらいの高さになるようにして、子どもが絵とお母さんの顔や口形、手話が見比べしながら楽しめるように用意してあげるといいでしょう。きこえない子の場合は、絵本の絵を見ている子どもの頭の上から、読み聞かせの大人の声がふってくるような状況では、お話や絵の理解が難しいことを知っておいてほしいと思います。

 

〇「でんしゃで いこう」(右ファイル参照)

B君のママは、2ヶ月間も毎日繰り返し同じ絵本を読み続けてきたようでした。きっ

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と、B君にとって、寝る前にこのお話を聞いて安心して眠れる~そんな安定剤の様な役割になっていたのではないでしょうか。ある日突然B君が自分から、『トンネルを行くと~』と話し始めた姿には、繰り返し、同じようにお母さんが絵本を読み聞かせてきたことの成果が表れています。この前読んでもらったように、またお母さんが同じように読んでくれることを期待しているようです。毎回違ったことばや、読み方をするよりは、この場面ではこのことばを使って同じように読む、その読み聞かせ方が子ども達の期待に添うようです。期待どおりに読んであげた満足感は、子ども達の表情からわかるでしょう。期待に添った読み方をしてあげることで、子ども達は絵本を「また読んで!」と持ってくるようになります。

そして、0~2歳児の頃の絵本の読み聞かせでは、絵本の文字を追いかけていく内に、子どもが逃げてしまった~ということのないように、必ずしも絵本通りの文を読まなくても、お母さんがわが子に伝わるようなことばで、読んであげればいいと思います。とはいっても、大人の手話力に合わせた簡便化された読み聞かせでなく、B君のママが言うように大人が手話力を磨いて、子どもの理解力に合わせて手話を使って読んであげられたらいいと思います。ただ、絵本に添えられている文字は、実は非常に吟味されて作られた文です。幼児期には、できるだけ絵本に添えられた文の通りに読んであげることも少しずつ大切にしていってください。きちんと絵本の文を読んでみると、子ども達がおそらく日常で触れる事がないような日本語がたくさん使われていることにも気付かされると思います。きこえる子ども達も、その一つ一つのことばがわかって聞いているわけではなく、繰り返し読み聞かせてもらっている内に、絵や文脈を手がかりにしながら、文の言い回しや新しい語彙を理解していきます。きこえない子ども達にとっては、耳からだけで理解していくことは難しいので、手話で表現するだけでなくキーワードは指文字で表すといった配慮をしながら読み聞かせることも大切にしていってほしいです。そのようにして普段使われない言い回しや語彙の意味を、文字を通してつかんでいってもらいたいと思います。そのためにも、まずは読み聞かせで内容を楽しむことをたっぷり経験し、自分でもう一度読んでみたいなあ~そんな絵本を読む意欲につなげていきたいものです。

 

   「おつきさま こんばんは」(右ファイル参照)

おつきさまこんばんは」の絵本はとても絵がわかりやすく、シンプルながら展開があり、

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月の表情が子ども達をひきつけます。そんな絵本で親しんだ月が見える所までCちゃんを連れ出すパパの温かい気持ちと行動力に感動です。絵本を読んでから、このように絵本に出てくる絵と実物を結び付ける関わりはとてもいいと思います。小さい時期には、こうした実物に限らず、絵本に出てくる絵と同じ模型やおもちゃなど見せてあげると、楽しみが倍増します。小さい子ども達の絵本の読み聞かせで、是非参考にしていただきたいと思います。

 

〇絵本が大好きになったD君

「いつの間にか寝る前には本を読むことが習慣となりました。お風呂から上がってパジャマを着ると「絵本、絵本」と手話をして本棚に行って「今日は何にしようかなー」と少し悩んでいます。でも大体選べなくて、大量の本を抱えています。ママには「お休みー、バイバイ」とし、パパと手をつないで寝室へ!」

 

どれにしようかなと迷いながら、選びきれず大量の絵本を抱えているD君。ほほえましいですね。D君の生活の中に、寝る前にはママやパパに絵本を読んでもらう、そして電気が消されておやすみなさいのルールができました。これは、自然にできてきたのではなく、大人がこうした生活習慣を作ったということです。是非、寝る前の読み聞かせの習慣を、三度食事をとるのと同じように生活の中に組み入れていっていただきたいと思います。絵本は、ことばの力をつけるだけでなく、親子で一冊の絵本をはさんで、親子の心の交流を図り、子どもの感性を揺さぶり、想像力を高め、情緒の安定を図る...そんな心の栄養剤として大切なものなのです。子どもは、ママやパパに読んでもらった本を、ず~っ大人になっても覚えているものです。 (SS記)

 

┃難聴児支援教材研究会
 代表 木島照夫

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