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きこえない子と手話で絵本を楽しむ(0~2歳)

 きこえるきこえないにかかわらず、生後8~9か月頃になると、お母さんと自分、モノと自分といった「二者関係」から、お母さんと自分とモノの「三者関係」が理解できるようになり、自分が興味をもったものを指差して大人に知らせようとしたり、大人が指さしたものを自分も見たりするようになってきます。この頃から、赤ちゃんと大人とで一緒に絵本を楽し 指さしと三項関係の成立.jpgむことができるようになってきます。

 

ただ、きこえる子ときこえない子の絵本の楽しみ方の大きな違いは、きこえる子は絵を見ながら同時に大人の話すことを聞くことができるのに対して(「ながら」ができる)、きこえない子は、絵と大人の語り(手話・口話)を交互にみながら絵本を楽しむという点です。そのために大切なことが3つあります。

 

1.子どもが、絵本も大人も同時に見れる位置どりをとって座る。

絵と大人の顔(表情・口形)と手話が同時に見れる位置どりが大切。また、絵本との距離、話す大人の後ろに目障りな物がないか、子どもの目に強い光が当たっていないかなど、絵本を読むための環境への配慮がまず必要。

 

2.子どもが絵を見る時間をたっぷり確保する。

  子どもが絵を見ているときは、大人は邪魔をしないで待ち(子どもが何に関心を示しているのか観察する)、大人に顔を向けるタイミングを待つ。

 

3.子どもが顔を上げた時、子どもの見ていた絵について話す。

  子どもが興味関心を向け、じっと見ていたものや指差しをして同意を求めたりした時、それについて共感したことばを投げかける。「大きいぞうさんだね!」「コロコロコロって行っちゃったね」など。

 

以上のような基本的なことを理解した上で、読み聞かせをしていくのですが、大人は、絵本に書かれている文をたんたんと読んでしまう傾向があります。絵本の作者メッセージを忠実に伝えるよりも、まずは子どもの興味関心を大切にし、絵本を介して子どもと楽しくコミュニケーションすることを大切にすることです。そのための工夫をいくつか紹介します。

 

1.文章にしばられないで、本の中身をふくらませる

子どもが関心を示したところをふくらませる。読みながら、子どもと話し合ったり問いかけたりする。子どもの経験と結びつけるなど。話の筋からそれてもそれはそれでよい。

 

2.絵本を動かしたり、手(手話)を動かしたりする

例えば次のページで誰かがやってくる場面では、登場人物がやってくる方向から絵本を動かしながら子どもの前に持ってくるとか、「鳥がとんできました」などで手話を空中でひらひらさせながら舞わせて絵本の上までもってくるなど。

 

3.次の場面を予想させる

 「次は誰が来るかな?」「どうなるのかなあ?」など問いかけながら、ページをめくる。

 

4.読みながら身振りで演じたり、声色や表情を変えたりする。

  とくに手話がわからないときはジェスチャーをしたり絵を指すなど。わからなかった手話はあとできけばよい。

 

5.子どもに催促されたらできる限り何度でも読む。

子どもは楽しかったことはまたやりたがる。繰り返すことで、子どもはことば(手話・日本語)も確かなものにしていく。

 

 6.読み終わったら、劇遊びをする。

 適当に道具を工夫したり、何かに見立てて劇遊びをする(再現あそび)。子どもは絵本のストーリーを再現することで、表現力や想像力を豊かにする。また、子どもが自分で考えてストーリーを発展させていくこともできる。

 

 以上のようなきこえない子への読み聞かせ方の基本を理解して読み聞かせをしましょう。

絵本を好きになった子は必ず読み書きや考える力も伸びます。そのことは、このカテゴリーで紹介した内田伸子らの研究の結果からも言えることです。親子でいや家族で絵本の読み聞かせを楽しんでください。

以下に保護者育児記録から拾った絵本の読み聞かせの事例をいくつか紹介します。

 

事例1 010か月「バナナ」

いつもは絵本のバナナの絵と実物を見せて「バナナ」の手話をしてからバナナを食べる。しかし、今日は何もないところから手話だけで「バナナ」をしてみたら、じーっとかたまって何やら考えている。そこで実物のバナナを冷蔵庫から出すと少しニヤリ。M「じゃじゃーん、これだよ!」と実物を見せると大喜び。触ったり、皮ごとかんでいる。食べる前に絵本と実物を何度も見比べる。そして「甘いね」「黄色いね」「バナナだよ」などと話しかけながら一緒に食べた。

 

事例2 010か月「ペープサート」

ノンタンの絵本のペープサートを夫が作ってくれたので、今日はそれを使って絵本を読んでみた。ぶたさんとノンタンが「ごっつんこをして、いたたた」のシーンがお気に入りで、何度が繰り返すとよく見て笑ってくれた。目で見てわかりやすい方法って大事だなと思った。

 

事例3

 010か月「どっちがいい?」

寝る前に絵本を読む習慣もだいぶ定着してきた。今日はCにどちらがいいか選ばせてみた。「ゆめにこにこ」と「じゃあじゃあびりびり」と並べてM[どっちがいい?」ときくと、「じゃあじゃあ・・」を選んだ。この絵本には踏切が出てくるのだが、M「踏切だ~。赤ピカピカだね~」などと言って「踏切」の写真カードを見せるとにやりと笑う。

「じゃあじゃあ・・」と「いないいないばあ」を並べてM[どっちがいい?」と聞くと「いないいないばあ」を選ぶ。犬、猫、怪獣・・と続き、最後のお母さんの場面では絵本がお面になるのだが、お面の中の私の目を見つけると笑う。この絵本のよいところは、Cの目の動きがよくわかること。絵の隅々の絵をよ~く見ている。これからも寝る前のゴールデンタイムを大切にしたい。

 

事例4(2歳6か月)「絵本読み聞かせ」

今日の絵本は0~2歳児の絵本『だれかしら』。本を読む前にベッドで、動物指人形でうさぎさんねんね、ぞうさんねんね...などやっていました。本もちょうど動物がいろんな物陰から隠れてからだの一部を覗かせて何の動物だろうと考える繰り返し。表紙から始まります。「C、これ誰?」ときくと、んー~と考えているのか、考えていないのか。そこで、動物指人形を本の後ろに隠し、うさぎさんの耳、象さんの鼻、しまうまの大きな鼻などを本から覗かせ、「C、これ誰?」ときくと「うさぎ」「しまうま」と体全体で答えてくれました。最後は...ママ、ママが本で顔を隠し「C、私はだれ?」ときくと、ケタケタ笑い出しました。これでようやく面白さがわかったようで、1頁ずつ丁寧に、「これ何だろう?」「うさぎさんかな?」とか、「わにさんだね~」「これはうさぎじゃないね」と楽しく読むことができました。