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日記・絵本・写真カード・手話

 今回は、上記3つのことばの教材の作り方についてまとめたパワーポイント(講演資料)をPDFにしてみました。便宜上、①「写真カードの作り方、ことば絵じてんの作り方」、②「絵日記の描き方」に分けました。以下のURLからご覧下さい。また、パワーポイントについて説明した文はないので、詳しく知りたい方は、それぞれ、このホームページの該当の項目をお読みください。

 ①写真カードの作り方、ことば絵じてんの作り方

いまさらきけない①.pptx.jpgのサムネール画像

 いまさらきけない・・写真カード、ことば絵じてんの作り方.pdf

 

☆写真カード(関連記事)

http://nanchosien.com/10/07-6/


☆ことば絵じてん(関連記事)

http://nanchosien.com/10/1/



②絵日記の描き方

いまさらきけない②.pptx.jpg

 いまさらきけない・・絵日記の書き方.pptx.pdf

 

 ★絵日記(関連記事)

http://nanchosien.com/10/cat17/  

乳幼児相談にやってくる1歳児さん。成人ろう者の魅力的な絵本の読み聞かせ、みんなで作ったクッキー、楽しいお弁当の時間・・もっと遊びたい、学校から帰りたくない子どもたちに「おうちに かえろう。」「おねえちゃん まってるよ。」とママが手話や音声語でいくらお話しても子どもは帰ろうとしません・・・そこでとり出したのが子どもの大好きな「おねえちゃん」と「おうち(家)」の写真。「おうちに かえろう。おねえちゃんが、待ってるよ~」と話すと、たちまちスタスタと教室を出て行く・・そんな子どもの姿を見ることがあります。写真を使うことで、何が違ってくるのでしょうか。

写真カード②.jpg

一つは、ことば(手話・音声語) の意味がわからない、伝えられたことばだけでは、まだ「おうち」「おねえちゃん」といったイメージが浮かばない・・・そのような時期の子どもにとって「写真」を見ることがイメージの助けとなり、理解、納得に結びついた、ということです。大人は、「おうち」は手話でわかっているはずだけど・・・と思っていても、1歳児さんではまだまだそのイメージが曖昧で、しっかりとわかっているわけではないことばがたくさんあります。写真で確認することで、自分の頭の中にある記憶のイメージと結びつき、ことばと併せて理解が確実になったから、「おうちへ帰ろう」という気になったのでしょう。そして、もう一つの写真効果は、「これが目に入らぬかー!」といった一目で相手の意図が伝えられる水戸黄門の印籠効果。ことばで理解されている子どもでも、ハッとして行動を切り替えるきっかけにすることができるようです。

 そのような効果があるとされている写真カードですが、いちいち出して使うのはめんどうだったり、まあ、使わなくてもその内にわかってくるだろうと思ったりして、作りはしたけれど、あまり使っていないおうちが実際には多いのではないでしょうか。というわけで、なぜ使うといいのかをこの機会にしっかりと見直してみたいと思います。

 

さて、考えてみましょう。きこえない、きこえにくい子どもたちは、例えばお出かけの時、どのような気持ちでいるでしょうか。「さあ、お買い物に行くわよ。」「〇〇ストアに行くよ~」音声語で子ども達に呼びかけるお母さん。聞こえるお姉ちゃんは隣の部屋にいながら、了解。きこえない、きこえにくい子どもは、お母さんがせわしなくお出かけの用意をし始める様子を見て、毎度のことながら自分も・・.・とあわててくつを履き始めます。あくまでも今までの経験から状況判断して出かけることを察しただけ。子どもの気持ちは、「どこに行くんだろう???ぼく、わからないよ・・・」きっと、行き先がわからない不安だらけのはずです。では、ちゃんとお話しなきゃ、とお母さん。「お買い物にいくよ。」「〇〇ストアに行くよ。」と手話、音声語でしっかりと伝えても、さて、〇〇ストアのイメージはわくでしょうか。確かに、積み重ねていけばいつかわかると思います。しかし、できればそのわかるまでの間の不安をできるだけ取り除いてあげたいものです。「うん、〇〇ストア、あそこね。ぼくわかったよ!」とわかる喜びを味わわせたいと思った時に、写真カードが生きてくるわけですよね。写真カードを使いながら、お話してあげると、一目瞭然、「〇〇ストアって、ここね・・」ことばと結びつけながら、確かなイメージを持って、子どもはお出かけできるわけです。

子どもにとって、生活の中で「わかる」「イメージが持てる」ような機会をたくさん準備してあげることは、子どもの安心感やわかる喜び、人ともっと関わりたいというコミュニケーション意欲につながります。写真がなくても手話や音声語で場所や人、モノがイメージできるようになると、写真カードを使う必要もなくなります。それをいちいち出してくる手間をかけたコミュニケーションもいつか卒業しますから、今、うちの子にはコレがあった方がよくわかって安心するだろうなあ、という発想で、必要な写真カードを用意してあげてほしいと思います。

 

先生が作るように言ったから・・・がスタートではありません。わが子とよりよく伝え合うために、わが子がわかる安心感が持てるようにするためには、何があるといいんだろう?そんな風に考えてください。というわけで、AちゃんのおうちとBちゃんのおうちでは、用意する写真カードの種類や量が違ってきてあたりまえですし、その写真カードを使ったコミュニケーションをいつの時期に始めたらいいかも色々で良いわけです。うちの子は、よく児童館に行って遊ぶけど、「児童館」をことばで説明してもイメージがもちにくいだろうなあ、よし、写真を撮って、カードにして出かける時に必ず見せてお話しよう。うちの子は、毎日のようにおばあちゃんのうちに行くけれど、同居しているおばあちゃん、おじいちゃん、いとこの○○ちゃん、△△おばちゃん・・・の写真を撮って、出かける前に「○○ちゃん、いるかなあ」と毎回、必ずお話してから出かけようかな、今は写真を見てもなめてばかり・・・じっと写真を見るようになったら始めようかな、というように、それぞれが違って良いのですから、我が家に合わせて、進めていかれるといいと思います。

「わかる」安心感に満たされている子どもの姿は、親にとって何よりうれしい姿であるはずです。そんな子どもの安心のために、一手間をかけてみてはどうでしょう? (S記)

 

以下は、写真カードを使った実際の例から。0歳後半から始まって3歳くらいでも使えることがわかります。

①「写真カードを見せると、視線が写真・文字に行く」(0歳7か月、意味のあるものとして認識し始めている)

 

 ②「病院のA先生の写真をみて、実物のA先生と何度も見比べている。」(13か月、Dちゃん、写真のA先生と目の前にいるA先生が同じなんだと気づき始めている)


③「午前中、私がいつもスーパーへ行く時の格好(帽子をかぶって、ジーンズに着替えて)をして、Yに声をかけようとすると、私の方を見たYが「うーうー」とスーパーのカードを指さす。」(14か月、Yちゃん、日々の買い物をするスーパーとスーパーの写真とが結びついており、自分も連れて行ってほしいと訴えている)


④「家族で遊園地に行く前日...Eが乗れる乗り物を選び出し、それぞれの写真をコピーして写真カードを作りました。Eにそれを渡し、「明日、ここ、遊園地にみんな一緒に行くよ。」「楽しみだね。」「今日じゃないよ。」「明日、寝て起きてからだよ。」と説明した。するとEはカードをジーッと見て、「遊園地」「エーン、エーン、赤ちゃん。」とやりました。きっと、前回遊園地に行った時にジェットコースターに乗れず、泣いたことを思い出したんだなあと思いました。「赤ちゃん」は、きっと私がEにジェットコースターに乗れない理由を「Eはまだ赤ちゃんだからお兄さんになったら乗れるよ。」と言った時の「赤ちゃん」のことで「エーンエーン赤ちゃんと」やっていたんだなと思い、よく覚えていたと感心しました。Eには「お兄さんになったから、これ全部乗れるよ。」と説明。ニコニコしながら「遊園地」と何回も言いながら写真カードを見ていました。

当日の朝、お兄ちゃん達に起こされ、すぐに写真カードを見せられたEは、寝起きなのにものすごい勢いでリビングまで走ってきて、私の顔を見てすぐに「お着替え」とやりました。遊園地に行くことを理解しているためか、普段ではありえない位の速さで洋服に着替えていました。遊園地に着くと、カードにある乗り物が早速あったので、「同じだね。」とやると「あ~っ」と嬉しそうな顔をして、すぐに走って行き、乗り物に乗りました。その後も写真カードを見せながらたくさん乗り物に乗って、とても楽しそうでした。」(3歳1か月)

 難聴幼児をおもちの保護者の方から時々「写真カードはどうやって作ればよいですか?」という質問を受けます。そこで、今回は写真カードの作り方と使い方について紹介します。 

 実物の代理物がある便利さ

写真カードの作り方①.jpgきこえる子もきこえない子も生後6か月を過ぎると、だんだんと経験したことを記憶できるようになってきます。ママのことや自分の家の中のことをよく覚えているので、人見知りや場所見知りが出たり(8カ月頃)、また、ママが見えなくなるとママの後追いもするようになります。

このように自分の経験を記憶できると、頭の中に経験したことのイメージが残っているので、その時の写真を見せれば思い出すことができるようになります。ですから、例えば、家族で新幹線(電車)に乗って楽しかったという経験をしたとしたら、その時の新幹線(電車)の写真を見ると新幹線の電車を思い出すことができます。このとき、写真に写っている新幹線の写真は、実物ではなく新幹線の代理物(象徴)にすぎません。でも、実物が目の前になくても、頭の中の記憶をたどっ

写真カードの作り方②.pptx.jpg「新幹線に乗ってたのしかったね~」と子どもと経験を共有することができます。新幹線の実物が目の前になくてもいいわけですから写真という代理物が使えるのは互いに思いを伝えあうときには確かに便利です。このような代理の機能をもつことを「象徴機能」(表象機能)などと言います。

また、ちょうどこの頃1歳前後になると、子どもは自分の乗った新幹線を思い出して、積木を新幹線の代理にして遊んだりもします。いわゆる「見立てあそび」です。楽しかった経験を思い出して一人で頭の中にイメージを浮かべて楽しんでいるわけです。この時、積木は新幹線の代理(象徴)です。これも象徴機能のあらわれです。

 

このように、写真や積木は、一緒に経験していたママやパパには「ああ、あのときのことを思い出しているんだな」とわかりますが、他人には子どもの描いているイメージはわかりません。もう一歩進んで、その絵がさらに「し・ん・か・ん・せ・ん」という日本語や/新幹線/という手話と結びついたとき、これらはだれにも通じるものですから、一般化・社会化された代理物(象徴)として使うことができます。「しんかんせんだよ」と言えば、だれにも通じます。これが最も高度化された象徴機能である言語です。

事例Aは、生後9か月の難聴児です。ベッド(実物)とベッドの絵(代理物)を見比べながら同じだねと手話をすると、子どもはその写真とベッド(実物)を見比べて照合し、「同じだ」という意味の指さしをしています。また、お風呂の写真カードを見せながら「お風呂」の手話をすると、子どもはお風呂のイメージが自分の頭の中に浮かび、ニッコリとしています。お風呂の実体験と写真カードとはすでに結びついていて、そこに/風呂/(手話)という言語をマッチングすることで、風呂(実体験)と手話とが結びついたようです。さらに、靴下に描かれたパンダの絵をみて、「パンダ」の手話をすると、子どもは靴下の絵を指さしています。絵というパンダ(実物)の代理物と「パンダ」という手話(言語)とが結びついているようです。このようにして写真や絵は、実物と言語とのあいだにあって、実物と言語とが結びつきやすくなるための橋渡しをしてくれています。手話は身振りから発展したものが多いので(例えば「新幹線」という手話は新幹線の先頭の尖った部分を象徴しています)、実物のイメージを描きやすく言語として獲得しやすいですが、日本語の「しんかんせん」は、実物とはなんの関係もない単なる恣意的な記号にすぎません。しかも、難聴児とくに感音性難聴児にとっては、例え補聴器をしたとしてもきこえてくる音は、明瞭に一つ一つの音韻が区別できない音のかたまり(例えば「イーアーエー」)ですから、簡単にはことば(言語)にはなりません。そのようなときに、実物とことばを橋渡しして結びつきやすくしてくれるのがこの写真や絵なのです。

 

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〇作り方

 ここでは、写真カードや絵カードの作り方で、よくある質問から。まず写真を撮るときは子ども目線で撮りましょう。子どもがなにに関心を向けているか、どこに視線を向けているかに注意して作ります。また、写真と絵では、写真のほうが実物に近いのでわかりやすいのですが、写真には背景にいろいろなものが写り込むという欠点があります。その点に注意をしておきましょう。子どもがいつも自分で見れるところに置いておくこと、舐めたりしても安全な材質・形への配慮も大事です。

それから写真・絵カードの主な用途は、目の前に見ることができるモノや人、場所などの名詞です。「うれいしい」とか「きれい」といった感情や「食べる・飲む」「行く・帰る」といった動作語(動詞)には使えません。

写真カードの作り方④.pptx.jpgのサムネール画像

さらに、写真とことばが結びついたらことばとして獲得できたかというとそうではありません。子どもはその写真がことば(例:「パンダの写真」が「パンダ」と思っている)だと思っているだけかもしれません。ことばを実物と結びつけるためには本物と出会う経験が大事です。五感を使ってほんものと出会い体験することがそのものの概念の豊かな獲得につながります。

 

〇使い方

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 子どもと一緒に生活するとき、遊ぶときいろいろな時に使えます。興味を持ったものと写真とことばをマッチングしましょう。難聴児のママさんたちはどのように使っているか例をいくつか紹介します。子どもの年齢や興味・関心、実際の生活の中での必要性など、うまく使っていくとよいと思います。

最後に写真・絵カードと「ことば絵じてん」や「絵日記」へのプロセスを紹介しておきま

。「ことば絵じてん」はある程度ことばを身につけてきた2歳過ぎくらいから、ことばの概念を拡げたり整理していくときに使います(語彙の拡充・概念の写真カードの作り方⑥.jpgのサムネール画像整理)。「絵日記」は2歳頃から、子どもがその日に経験したことを振り返り、書きことばへとつないでいくときに使います(構文力・文法力・運用力)。



写真カードの作り方⑦.jpg

 

  今、私は、これまで数年間にわたって積み重ねてきた子どもの諸検査結果や保護者の記録をもとに、幼児期の言語発達過程を整理していますが、そこからわかる大事な問題について書きたいと思います。具体的に言うと、普通にきこえる子であれば、語彙の獲得が始まる1歳代から2歳代の「語彙爆発」の時期を経て、1,000語獲得するといわれる3歳になる頃までの約2年位を、言語をもって生活することの大切さです。とくに2歳代は、きこえる子は非常に沢山の語彙(音声日本語)を獲得しますが、きこえない子とくに高度難聴児(人工内耳装用児を含めて)には、音声日本語でこれだけの語彙を3歳時に獲得することはまず困難でしょう。では、手話でなら可能なのでしょうか? 1000語という語彙数は確かに相当の数ですが、聴者家庭であっても手話をしっかり使っていけばそれに近い語彙数なら獲得できます。ただ、手話は日本語ではありませんから、その手話語彙数がそのまま自動的に日本語に移行するわけではありません。手話と日本語との変換とか、日本語語彙を獲得していく手立て(音声、指文字、文字等による語彙獲得)は別に必要になります。

 このようなプロセスを前提としてですが、2歳代でしっかりと手話によるコミュニケーションができている子どもは、そこから様々な知識も獲得し、考える力や物事への意欲も旺盛な子どもが多いのも確かです。ここでは、現在すでに小学生になっていて、読み書きの力も順調に伸びている子どもたちの1~2歳の頃の記録を拾い出してみます。

 

A児:TV「いないないばあ」を見ていたら、バスが出て、「あ!」と本棚を指して、手話で「本!本!」と言っていたので、もしかして、乗り物の本かな?と渡したら、開いて「あ!」と声を出しました。「あ、これ同じだね。バスだよ~」と会話しました。(16か月)  (*すでに1歳半で「本」という手話を獲得)

 

B児:オムツ一丁で遊んでいたBが、「ズボン、はきたーい。」(手話+音声)。「Bのズボンはここにあるよ、これをはいたら?」と言うと、自分で履いていた。履けると今度はズボンの前後を確認して私の顔を見る。「マーマー、ちがう?大丈夫?」。私が「大丈夫だよ、ちゃんと履けているよ。上手に履けたねぇ」と手話で答えると「大丈夫ねー?」と言いながら満足そうでした。最後まで自分でできてうれしそうでした。(2歳2か月) (*80dB台なので音声と手話を同時習得しています)

 

C児:Cが最近質問することが増えてきた。「木、葉っぱ、ロッカー、門・・」片っ端から目にしたものを指さしできいてくる。これが2歳の「質問期」なんだろうけど、時間に押されるとピューッと早歩きで「そう!葉っぱね」とかササッと答えている自分に反省している。(2歳3ヵ月) (*2歳代で「質問期」があるのは言語獲得が順調に進んでいる証拠です)

 

D児:キッチンにいると、Dが「いっしょ、ご飯作る」と。自分のおもちゃのキッチンと忙しそうに行き来する。本物の人参を見せると、本物とおもちゃの人参を両手に持って、うれしそう。「ママの人参、どっち?」と聞くと、「はい!」とおもちゃをくれる。包丁で切った真似をして、「切れないな~」と困っていると、本物をくれた。・・・少しのシーンで、イメージの手話が一気に思い出されるようで、夜、食事の準備を始めると、私に「ご飯作る。グツグツ。パパ家に帰る。車でブーッ。お仕事終わり。テレビ触るとパパ怒る。こわ~い。メッ。・・・」とどんどん話が広がって来て、一気に手話で話し始める。私もそうそう・・・ってうなずきながら聴いている。そして、何か手話で付け足そうとすると、手を押さえられ、「自分で!」と一人で話し始める。そんな時は、ただただ聞いてほしいらしい。しまいには、「ママ、新聞読んでて!」と指示が出る。(2歳5か月) (*再現遊びをイメージ豊かに展開しています)

 

E児:「お風呂に入ろう」「お風呂洗ってくるね」などは話していても、お風呂がお水からお湯になることなんかも説明しなきゃいけないと気づき、「お風呂をわかそう。今は水で冷たいからあったかくしなきゃ。スイッチ入れてこよう!」と言うと、大きくうなづき、台所に行ってガス台のスイッチを触っている。お風呂のスイッチは教えたことがないが、「お風呂」「煮る」という手話で「お風呂をわかす」を表現したので、「煮る」の手話を見てガス台へ行ったのだろう。家の中ではネタ切れだと思っていたけど、いろいろ話したり、教えたりすることは多いなあと気づいたと同時に、断片的な情報から想像をふくらませて行動するEにも感心した。(2歳8か月)  (*日頃の生活場面を意識的に子どもに見せ、用を足す会話に終わらせることなく、しっかりと言語化しています)

 

 これらの会話は、親御さんは口話併用手話、子どもは手話または口話併用手話です。会話からは楽しそうな雰囲気が伝わってきますし、会話はスムーズで、同じ年齢のきこえている子の会話となんら変わりません。この子たちはその後、手話だけでなく日本語も順調に獲得していきました(年長時WISC言語性ノーマル、Jcoss10項目以上通過)。

もちろん全ての子がこのように順調に伸びていくわけではありません。子どもが本来持っている力の問題もあります。しかし、家族が発達早期から手話を使うということは、その子のきこえなさ(障害)を家族が受けとめ、手話を必要としている本人の存在を肯定しているというメッセージを子どもに伝えます。そして、子どもは自分の存在がこの家族の中でしっかり受けとめられていること、きこえる人ばかりの家族の中にも自分の「居場所」があることを実感するでしょう。そしてそのことが、子どもに成長発達の原動力を与えることになるのだと思います。

 

 

◎手話による子ども同士のコミュニケーション(乳相2歳児グループ)

 

「今日は2歳児グループでした。玄関でアゲハのさなぎを見つけた女の子が「ことば絵じてん」を出してきて「これ(指さし)と同じ(手話)」と言うと、男の子が自分のことば絵じてんをめくって探して「(ぼくの辞典には)ない(手話)」とお互い、さなぎと辞典を見合っていました。自分の作った辞典を使って子ども同士でちゃんと会話している。見ていてとても面白かったです。」

 

 2歳児グループですから、子どもは3歳前後のきこえない子たちです。音声(口話)で育っているきこえない子ども同士では、とてもこのような会話は成立しません。これができるのは、手話だからです。手話はきこえない子たちのれっきとした共通の言語です。手話という共通言語があってはじめて、こうした「発見」を、相手に「言葉(手話)で伝え」ることができます。そして、それぞれが作った絵辞典の「虫の概念カテゴリー」のファイルにある虫たちと「照合」し、目の前のアゲハが、その「虫」のカテゴリーに含まれるものであるかどうかを調べていることになります。このように、同じ経験を互いに言葉で共有しあう中で、子どもは、世界を知り、知識としても蓄えていきます。これが発達早期に手話を獲得する非常に大きなメリットで、こうした理解力や蓄えられた知識が、文章の読みに必要な豊かな知識となっているわけです。

 

 

┃難聴児支援教材研究会
 代表 木島照夫

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