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助詞の指導はどうすればよいか?

年末のNHK・Eテレ「ろうを生きる難聴を生きる」で「日本語獲得の実践」をご覧になり、そこで紹介された『きこえない子の日本語チャレンジ』について問い合わせを沢山いただきました。そのなかで、きこえない子お子さんをお持ちの保護者数名の方から、「助詞がなかなか身につかないので困っている。どうすればよいか?」という質問をいただきました。

この掲示板では、すでに何回もお伝えしていますが、まず、きこえない子にとって難しい助詞とは、「が(は)、を、に、で、と、の」という一文字の格助詞です(「より」とか「から」「まで」といった助詞は比較的わかりやすく、「東京から大阪まで」といった使い方の中で身につきます)。

まず、そこで提案したいのは、日本語の基本的な文型にそって助詞と動詞の組み合わせて助詞の使い方を身につけるということです。

助詞が身についていない子というのは、助詞だけでなく語彙の数も少ない傾向がありますが、それでも「食べる」「飲む」「行く」「作る」といった基本的な動詞は30とか40は知っていると思います。その知っている動詞を使って助詞を身につけるわけです。

例えば「食べる」「飲む」といった動詞には、必ずその動詞とセットになって使う助詞があります。それはなんでしょうか? 「を」ですね。「食べる」「飲む」という動詞は、必ず「を」が必要なわけです。それを確かめるためには、誰かに「飲むよ!」とか「飲もう」とか言ってみればわかります。そのことばを言われた人は「なにを?」ときいてくるはずです。つまり「飲む」という動詞は「~を飲む」とセットで使う動詞なのです。 oroti2.jpg.jpg

では「行く」はどうでしょう? もしあなたが誰かに「行くよ」と言えば、相手は「どこに?」ときいてくるでしょう。「行く」は「~に行く」と「に」とセットで使う動詞なのです。

 では、「作る」はどうでしょうか? もうおわかりかと思いますがこれは「~を作る」ですから「を」とセットに使う動詞ですね。

 それでは「会う」はどうでしょうか? これは「だれに」か「だれと」ですから、「に」もしくは「と」とセットになる動詞です。

 このような動詞と助詞のセットの文型を基本文型と言います。その基本文型は添付したファイルのように5つあります。どのような日本語もだいたいこの基本文型で作られています(但し主語を省略したり、助詞を省略したりは、会話では常にあります)。

 ですから、まずはこの基本文型で動詞と助詞を組み合わせて文が作れるようになればよいわけです。 jyosikigou.JPG

 その次の段階として、私たちが開発した「助詞手話記号」を使って、助詞の使い方を学習します。こうした方法で基本的な格助詞は身につきます。あとは、実際に文を沢山作ることです。それは日記・作文指導のなかで行うわけです。

 

 

 

◎助詞の指導はどうすればよいか(2)

「聾学校の先生に助詞の指導をしてほしいとお願いしていますが、なかなか助詞の誤りがなおりません。聾学校の先生もいろいろな教材を紹介してくれるのですが、いまいちピンときません。なにかよい方法はないのでしょうか?」

 

 このようなメールを、ある保護者からいただきました。きこえない子に関わる多くの教師や親が抱えている悩みです。「そんなプリントなんかで助詞は身に付かない」という人もいます。「では、どんな方法がありますか?」と尋ねると、「日々、学校や家庭の中でのやりとりを通してわからせていくしかない」と。確かに正論です。助詞は子ども本人が自分で表出し、誤りに気づき、修正していくしかないのです。こうした方法は「自然法」と呼ばれ、この20年くらいはきこえない子の指導方法の主流となってきました。で、その結果はどうであったかと考えると、はなはだ心許ない。いや、その結果を客観的に検証してもいない、というのが正確でしょう。子どもの助詞の理解・運用力はいっこうにあがってはいないのが現実です。「生活の中で」というのは、正論ではあっても現実の生活の中では相当の覚悟をしないかぎり難しいのです。

 

 ではどうすればよいのでしょうか? 私は、使えるものはなんでも使えばよいと思っています。先にも書いたように、助詞は自分で「話す」か「書く」ことを通してしか身に付きません。教科書を何十編何百編読んでも「読む」「聞く」(入力)だけでは決して身に付かないのです(「読んで」助詞が使えるようになるのであれば、子どもは毎日、何百の助詞を、教科書の文の中で見たり読んだりしているのですから身に付くはずです)。

 ですから、日常のやりとりの中で助詞の間違いがあったら言い直しさせる(話す=出力)のも必要ですし、日記を書かせたり、短文を暗唱させる(書く=出力)のも必要でしょう。ただ、日記には、その前提となる基礎的な語彙力の問題や表現力の問題があり、語彙を知らないと、毎日毎日「○○をしました。○○をしました。・・・楽しかったです。」というワンパターンの文を書くことになり、なかなかそこから発展していきません。また、間違った助詞の使い方を直されても、なぜ、その助詞が間違っているのかわからないと、また同じ間違いを繰り返します。

しかし、小学生になれば、「『スーパー行きました』ではなくて、どこかに行くときは『に』を使うから、『スーパー行きました』だよ。じゃあ、『学校 行きました』『海 行きました』はどうなる?」と説明すれば、理解できるようになります(こうした方法は「自然法」に対して「構成法」と呼ばれます)。 IMG.jpg

絶対的な音声情報が不足する聞こえない子には、こうした分析的な方法も併せて使わないと、会話の中だけで助詞を習得するというのは、効率的でもないし、現実的でもありません。子どもに合わせていろいろな方法を組み合わせて使うことが、子どもの助詞攻略につながります。本研究会で出版した『日本語チャレンジ!』も、助詞の用法の説明・理解(入力)と練習・表現(出力)の手立てのひとつとして使えますし、ぜひ、使ってみていただきたいと思います。