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「スイミー」~どっちにかかっている?

 日本語の特徴として、名詞を詳しく説明するとき、名詞の前に修飾フレーズをもってきます。しかし、その意味を明示する仕組みはありません。ここは英語と違うところで、英語の場合はその名詞の後ろに関係代名詞をもってきて、その名詞を説明するしくみになっています。

 

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 例えば、右の図のような国語教科書に出てくる「スイミー」の中には次のような文があります。「にじ色の ゼリーのような くらげ。」 この文で、「にじ色の」は「ゼリー」にかかっていて「にじ色のゼリー」なのか、「くらげ」にかかっていて「にじ色のくらげ」なのかよくわかりません。このようにその文だけをみても判断ができないことがあるのです。従って前後の文脈からどちらの意味なのかを判断するしかないわけですが、この「スイミー」ではどちらともとれるのです。このようなどちらかわからないというかかりうけの文が「スイミー」の中には3か所出てきます、もし、あらかじめどちらかにはっきりとさせるのであれば、そうした誤解を避けるために読点(、)を入れるしかありませんが、訳者(谷川俊太郎)はそれも敢えてしなかったわけですから、どちらにとってもいいようにあえてそうしなかったのかもしれません(ちなみに原文は「にじ色のゼリー」のようですが。)

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このような日本語の難しさは、きこえない子にとってはやっかいなもので、文をどう解釈してよいかわからない子がけっこういます。右のファイルはJcossという文法力を調べる検査の中の問題です。問題文「四角は 青い 星形の 中にあります」という文が4つの図のどれなのかを答える問題(「述部修飾」)ですが、小学部の児童の半分近くが②③と答えています。これらの子は、「四角は 青い」「星がたの 中にあります」と文を途中で切ってしまったために間違えたわけです(後半部分は「星形が 中にある」と考えた児童が6名、「星形の中に ある」と考

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えた児童が3名いますが、これは助詞がわからないために生じた誤り。正解は後者)。この文は、以下の2つのことを指導することが必要です。一つは「文の構造の基本的なルールを教えること」、もう一つは「名詞の修飾のしくみを教えること」です。

そこで、一つ目の「文の基本的なルールを教える」ことですが、ここではJcossの「犬は 茶色い 馬を 追いかけています」という

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文を使って例を示してみます(右上図)。品詞カードを使って文の構造を教えるときに、このような構文図を使います。ここでは詳細は省略しますが、この問題文を「犬は 茶色い。馬をおいかけています。」と「茶色い」で区切って解釈した子どもは、本来ひとつの文であるのに、この図のように二つの文に区切ってしまったことになります。これは「一つの文には述部は一つ」(=一つの文は最後に一つだけ句点(〇)がある)という基本ルールに反しているので、「茶色い」のあとに「〇」はあり得ないこと、では、「茶色い」はどこにもっていくのかを考えさせます。するとこの一続きの文では馬の前にしかこれないことがわかります。そこで「茶色い」を「馬」の前に動かします。それが二つ目の図です。

 

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 ここでは名詞修飾の作り方を指導するためのゲームを紹介します。まず、テーマ「たんぽぽ」について思いついた文をそれぞれの児童に出させます。ここでは右のように5つの文が出ました。



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 文が出たら順番に自分の作った文の述部にある形容詞や動詞を他の文の名詞の前にくっつけます。「タンポポは黄色い」を作った先生は、述部の「黄色い」を「タンポポが風に揺れている」の文の「タンポポ」の前にもっていきました。

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   次の子どもは「タンポポが 咲いた」の述部「咲いた」を「黄色いタンポポ」の前にもってきました。そうすると「咲いた黄色いタンポポ」となりました。さらにその次の子は、「タンポポは可愛い」の述部「可愛い」をさらに前にもっていき、「可愛い 咲いた 黄色い タンポポ」となりましした。ここで二つ形容詞が続く場合は、前の形容詞は「可愛く」と「~く」になることを形容詞の活用表から確認します。
そしてさらに次の子どもは最初に作った文は「タンポポが 風に 揺れている」でしたが、後ろの「風に
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揺れている」を「タンポポ」の前に持ってきます。この時、「風に揺れている 可愛く咲いた 黄色いタンポポ」としてもよいのですが、この子どもは「風に 揺れて」と「て」を接続助詞として文を作りました。このようにして複数の文が一つの文になり、名詞修飾である「大きな名詞」が完成しました。
 
 「大きな名詞」(名詞修飾)を作る指導をしておくと日記の中でも子どもたちは、大きな名詞を使った文を書くようになります。図はそうした日記の例です。

┃難聴児支援教材研究会
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