「から・だから」と「けれど・でも」の使い分け
「・・・『から』(助詞)と『だから』(接続詞)の使い方が少しずつわかってきましたが、ここで新たに課題になってきたのが「けれど」と「から」の使い分けです。とくに「けれど」が分かっていないようです。ルールが分かってないから、目で見てわかる表が必要だと思い作ってみたのですが今一つ説明が難しいです。よい方法はあるでしょうか?
こんなことまで教えないといけないのが難聴児なのか・・・という気持ちと、また新しい課題が見つかった。でも、親が意識して教えたら必ずできるようになるから、次はこれをクリアできるんだ、という気持ちと両方あります。・・・」
これは接続詞の順接と逆接の指導ですが、聴児でも小学校中学年以降の指導内容なので年長児でわからなくてもちっとも悲観する必要はありません。きこえない子にとって難しいのは、これまでも何度が描いてきましたが、複数のものがあってそのものとものとの関係を、ことばで考えることです。能動・受動文、授受文、使役文、比較表現、位置表現などは全てそうです。
接続詞の順接と逆接の表現も、原因となることがらがあって(前文)、その結果として起こったことがら(後文)のつながり方を説明する表現です。
順接の場合は、「だから」「それで」「そこで」などが使われます。
例えば、
「ころんだ」 ⇒ 「だから」 ⇒ 「泣いた」
「風邪をひいた」 ⇒ 「それで」 ⇒ 「薬を飲んだ」
*3歳を過ぎると、子どもの中には、手話を使った「~から・だから」の表現ができる子も出てきます。以下は育児記録からの例です。
事例①
遊んでいる息子に「お風呂入ろう!」と言うと、「あし(指文字)が痛いから(手話)入れない」と答える。「どうして足が痛いの?」と聞くと、「蚊がブーンて刺したから(手話)痛い」と答えた。(3歳2ヵ月)
逆接は、「けれど、でも、しかし」などが使われます。
例えば、
「ころんだ」 ⇒ 「でも」 ⇒ 「泣かなかった」
「風邪をひいた」 ⇒ 「しかし」 ⇒ 「薬は飲まなかった」
ただ、このような説明を文だけでやるのは難しいので、絵を準備するとよいでしょう。
右上図のように、原因の絵に対して、結果の異なる絵をふたつ用意し、どのことばが「?」のところに入るのかを考えさせます。このような絵をいくつか用意して、空欄を埋めてポスターにして壁にはるのもよいでしょう。
〇原因と結果、仮定と予想なども
さらに、発展させるなら、「ころんだ」理由の文を考えさせることもできます。「どうしてころんだの?
」「ころんだわけは?」⇒「石につまずいて転んだ」とか「慌てて走ったから転んだ」などの理由を説明する言い方を学習することもできます。
また、「もし、走らなかったら?」⇒「きっと・たぶん、ころばなかったと思う・だろう」などの仮定の質問に対する予想・推量などの言い方も学習できます。
接続詞はこのような論理的な思考・表現の学習にも関連する大切なことばなので、日常生活
の中でも、手話と一緒に、意識的に使っていくようにするとよいでしょう。考えさせるやりとりは、子どものことばで論理的に考える力を育てます。
右上図は、ある保護者のメモ帳です。いつも持ち歩いて、リアルタイムに子どもにことばを意識させ教えています。右下図は、ある日の絵日記の中で、意図的に「ので」とか「けど」を多用しています。あとでこの接続詞の部分に紙を貼って、何が入るかワーク形式にすることもできます。
以下の文は日常生活の中で、ぜひ、このようなことばを使って子どもに問いかけてみましょうという例です。
「どうして、そうなったと思う?」⇒「~だから、・・・と思う」
「もし~なら、どう思う?」⇒「たぶん・きっと・・・だろうと思う」