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構文の指導

 私達が日々、目にしている文は、決まった文の形でできているのでしょうか?

もしそうだとしたら、その文型はどのようなものでしょうか? きこえる人は幼い頃からの自然な会話の中で、また、本などを読む中で、その基本の文型を自然に身につけ、自分で作文するときも自然にこのかたちを使っていますが、きこえないハンディをもっていると、なかなかこの基本文型を自然に身につけるということが難しくなります。 日本語の5つの基本文型.jpgでは、その文型はどのようなものでしょうか? それは、以下のほぼ5つになります(i右図参照)。ここでは、最も使用頻度の多い、最後に動詞がくる文(文の最後にくる品詞は名詞、形容詞もあります)について説明します。

日本語の基本の文型は以下の5つです。

 

文型1.「~が+動詞・名詞・形容詞」 

 文型2.「~が~を+動詞」 

 文型3.「~が~に+動詞」 

 文型4.「~が~と+動詞」  

 文型5.「~が~に~を+動詞」 

 

 では、実際に使われている文はどのようになっているでしょうか?  白い帽子(学校図書4上).JPG以下は、国語教科書4年上(学校図書)に出てくる「白いぼうし」(あまんきみこ作)の最初の部分です。実際には、修飾語句が沢山使われているので一見複雑ですが、骨格は、上の5つに収まります。

 

1.「これは、レモンのにおいですか?」

2.堀ばたで乗せたお客の紳士が、話しかけました。

3.「いいえ、夏みかんですよ。」

4.「信号が赤なので、ブレーキをかけてから、運転手の松井さんは、にこにこして答えました。

5.今日は、6月の始め。

6.夏がいきなり始まったような暑い日です。(以下略)

7.松井さんもお客も、白いワイシャツのそでを、腕までたくし上げていました。

 

1は、「これは、(レモンの)においです。」= 文型1(文末は名詞(+です)) 

2は、(堀ばたで 乗せた) (お客の)紳士が、話しかけました。=文型1

3は、「(いいえ)、夏みかんですよ。」=文型1(文末は名詞)

4は、(信号が赤なので)、(ブレーキをかけてから)、(運転手の)松井さんは、(にこにこして)答えました。=文型1(「松井さんは答えました」が、文の土台です)

5.今日は、6月の始め。=文型1(文末は名詞)

6.(夏がいきなり始まったような)暑い日です。=文型1(文末は名詞)

7.松井さんもお客も、(白いワイシャツの)そでを、(腕まで)たくし上げていました。

 =文型2

 

 全て上の5つの文型のうちにおさまっています。そして、この文型はちゃんと「主語」(だれ・なにが)、「目的語」(なにを・に・と)、「述語」(どうした・どうだ)、という文の主要なパーツ(「必須成分」)から成り立っています。そして、これらのパーツに「修飾語句」が沢山掛かっていて、文が詳しく、複雑になっています。しかし、私たちは文を読むときに、自然にそのパーツを頭のなかでほとんど無意識に読みとり、文の構造を読みとって解釈しています。しかし、きこえない子は、それは自然には難しい。 oroti5.jpg.jpgですから、基本の文型を意識的・意図的に指導する必要があるわけです。そしてまた、これらの必須成分の語にかかっている修飾語句(=上の例文で(  )で示した部分)のかかり方も学習する必要があるわけです(「名詞修飾句・節の作り方」参照)。

右図は、「ヤマタノオロチ」(学校図書2上)の冒頭の部分を、5つの基本文型を使って、表示したものです。このように品詞カードを使って文の構造を視覚化すると、文がわかりやすくなります。

 

 日本語の特徴の一つは、修飾語句が文の前に前に(横書きでは左へ)と展開していくことです。この点は、関係代名詞をつけて後ろへ(横書きなら右へ)展開する英語とは逆です。

例えば、以下のような文があるとします。

 

1.私は 運動会に 行った。

運動会に行った人はわかりますが、どこの運動会なのかよくわからないので、「運動会」(名詞)を説明する語句を次に付け加えてみます。

 

2.私は 東京の ろう学校の  運動会に 行った。

 運動会という名詞を修飾する文「ろう学校の」を加えます。「名詞+の+名詞」です。ここに、さらに詳しくするために「東京の」を加えてみます。そうすると「東京のろう学校の運動会」になり、上のような文になります。

 

3.私は、きこえない友だちが通う 東京のろう学校の運動会に 行った。

さらに詳しくするために、「きこえない友だち」を加えてみます。そうすると「きこえない友だちが通う 東京のろう学校の運動会」となり、上のような文になります。だいぶ詳しくなりました。もう少しだけ詳しくしてみましょう。

 

 4.私は、都内に住んでいるきこえない友だちが通う東京のろう学校の運動会に行った。

 ずいぶん長くなりました。まだまだいくらでも長くすることは可能ですが、この辺までにしておきましょう。「都内に・・・・東京のろう学校の」までは、すべて「運動会」を説明するための「修飾節」であることがわかります。

  名詞修飾構文.jpg

 このように日本語は修飾する部分が前に前にと出て、理論的にはいくらでも長くすることができます。このような名詞を修飾する複文は、国語の教科書の中でもけっこう早く出てきます。例えば、教育出版の国語小1上の最初の説明文「なにがかくれているのでしょう?」には、最後の頁に「上手に かくれることのできる 虫は、ほかにも いろいろいます。」という文があります。この部分は、子どもたちがしばしば「上手にかくれことのできる」「虫は・・・」と切って、別々の文として読んでしまうところです。もし、「上手にかくれることができる虫は・・」と「の」が「が」になっていたら、「上手にかくれることができる」「虫は・・」切って読む可能性がさらに高くなります(*複文従属節中に出てくる「の」は「が」に変換可能というのが日本語のきまりです)。

 

 こうした名詞修飾構文を教えるには、名詞を修飾する形容詞を使った文で教えるのが最もわかりやすいです。あるろう学校では、先日、小1の自立活動でその指導が行われていました。(右図参照) 名詞修飾.JPG

1.まず「カレーを 食べる」という元の文を提示します。

 

2.この文の「カレー」(名詞)を詳しくするために、「カレー」について説明した形容詞文を作ります。  「カレーは からい」

 

3.「からい」(形容詞)を名詞の前に出して「名詞修飾句」を作ります。  「からいカレー」

名詞修飾3.JPG

.「からいカレー」を元の文に入れると、最初より詳しい文ができあがります。

 「からいカレーを食べる」

 

 

5.次に、さらに詳しい文を作る練習をします。(右図参照)「ラーメンを食べる」の文を「あつい」と「おいしい」の2つの形容詞を使って詳しい文にします。

 

6. ①「ラーメンはあつい」→「あついラーメン」、②「ラーメンはおいしい」→「おいしいラーメン」にします。

 

7.上記①②で作った文を、元の文に付け加えます。

 「ラーメンを食べる」→「あつくて、おいしい ラーメンを たべる」になります。

*形容詞が二つ並ぶときは、はじめの形容詞を「~くて」にします。