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意向形・可能形・受身形が作れない動詞とは?

動詞の活用をお子さんに教えておられる方から、以下のような質問を受けましたので、この問題について考えてみたいと思います。

 

 年長児に動詞の活用をやっています。今は、子どもに動詞の活用には3つのグループがあ 1グループ活用(4).jpgることを伝えて、『どのグループでしょうクイズ』をやっています。ルールを理解したら、年長児でもできます。「ます」系をつくってわける方法を使っています。

 そこでさっそく質問なのですが、1グループ動詞(注:①基本形が「~る」以外の全ての動詞「行く、遊ぶ、着く・」と②「~る」で終わる動詞のうち「い段」と「え段」+「る」以外の動詞「作る、上がる、登る・・」⇒上図参照)の意向形について分からないところがあります。意向形は「お」段になるという決まり(上図参照・意向形=「あるこう」)がありますが例外もあるのでしょうか。今日、さっそくとりかかったのですが「あく(空く・開く)」の意向形だと 「あこう」となってしまいますが、文法的には合っているのでしょうか。(下図参照)

  意向形・受身形不可活用.jpg

  〇意向形のない動詞 

確かに、動詞の中には、上記のような「意向形」や「受身形」の活用形が作れない動詞があります。

まず「意向形」ですが、基本的には、「無意志動詞」といわれる動詞では「意向形」や「可能形」は作れません。 無意志動詞というのは、「ある(×あろう)、降る(×降ろう)、むかつく(×むかつこう)、悔やむ(×悔やもう)、困る(×困ろう)、飽きる(×飽きろう)」など、人の意志によって動かせない動詞のことを言います。「あく(空く・開く)」も人の意志でなんとかできることではないので、意向形を作ることができません。(×「あこう」)また、可能形も作れません(×「あける」*注・他動詞の「あける(開ける)」は別の動詞です)。

 

 

〇受身形のない動詞

また、受身形ですが、直接受動文では「~を」「~に」を取る他動詞しか受身を作れません。例をあげると、「父が弟を叱る」(能動文)これは、目的語の「弟」が主語になって、「弟が父に叱られる」(受動文)となります。また「先生が子どもに声をかける」では、「子どもが先生に声をかけられる」となります。

 

 しかし、自動詞も実は受身にすることができます。また、「~と」を取る動詞も受身にすることができます。このような「間接受動文」では、主語にとって迷惑という意味で使われることが多いです。

 

「弟が騒いだ(自動詞)」→「(私は=おもてに出てこない隠れた主語) 弟に騒がれた」(迷惑)

 

「太郎が 花子と 結婚した」→「(私は=隠れた主語)太郎に 花子と 結婚された」(残念)

 

しかし、自然とそうなるという意味をもつ自発を表す動詞(あく→×あかれる、見える、きこえる、売れる)や「ある→×あられる」「要る→×要られる」、また、すでに受身的意味のある「教わる」「見つかる」などは受身が作れません。

 

その一方で能動形をもたない動詞もあります。例えば「うなされる」「とらわれる」などは、はじめから「受身」の意味があり、「うなす」「とらわる」といった能動形の動詞はありません。

 

きこえる人は文法を自然獲得していますから、複雑なルールを教わらなくともわかりますが、きこえない子はなかなかそうはいきません。といって、全ての動詞をあらかじめ取り出して分類するのは実際には不可能なので、その都度、出会った動詞について自分で辞典を引いて、その活用形があるのかどうか確かめるしかありません。辞典で調べるとしたら以下の辞典です。日本ではこれだけのようです。 

小泉保編著「日本語基本動詞用法辞典」大修館書店、5184