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「なにで名詞」の指導

学校で教える文法(=国文法・学校文法)には、「形容動詞」というのがあります。これは、働きは形容詞と同じですが、活用の仕方は動詞(古語文法ですが)と同じように「活用する」という品詞です。例えば「静かなるドン」「遙かなる甲子園」。これらは古語文法動詞「なる」の活用形と同じです。現代では「る」が省略されて「静かな」「遙かな」として使われています。)

形容動詞はいろいろと議論のあるところで、「活用する語」として考えるのがよいのか、それとも、ある特別な「名詞」に「な、に、で」という「助詞」がくっついた語として考えるのがよいのかということで、日本語教育の中ではどっちが子どもにわかりやすいのかということが議論になったりします。 いろいろな「なにで名詞」.jpgのサムネール画像

どっちをとってもすべてがうまく説明できるわけではありません。例えば、形容動詞「きれい」には「な(連体形)」がついて「きれいな+川」とは言えますが、名詞には「な」はつきませんから、「きりんな+ビール」とは言えません。だから形容動詞は名詞とは違うと"国文法派"は主張します。ところが名詞でも「高度」などは「高度な+技術」などと言えたりしますから、「名詞+な」という説明でもよくて、わざわざ形容動詞などと特別な品詞があると考える必要ないという反論も成り立ちます。

また、国語辞典には活用する語(「食べる」「歩く」「美しい」など)は終止形で掲載されています。では、形容動詞はどうでしょう?例えば「きれい」の終止形は「きれいだ」です。ところが辞書には「きれい」で掲載されています。形容動詞の語幹だけが掲載されていることになります。動詞に例えれば、「食べる」の「食べ」だけで載っているのと同じことになります。

このように形容動詞はいろいろと矛盾をはらんだ概念なので、学校文法(国文法)を採用すべきという理論的な正当性はあまりありません。だったら子どもには(とくに日本語の習得に課題のあるきこえない子には)わかりやすく教えたほうがよい、ということで、「ある特定の名詞」に助詞「な、に、で」がくっつく語として教えるのが江副文法(新宿日本語学校長江副隆秀氏の理論)です。

この概念で教えると、確かにきこえない子にはわかりやすいです。ある種の名詞に「な、に、で」がくっついたことば、それを「なにで名詞」と言っています。 なにで名詞」として教える.jpgのサムネール画像

 

 例えば「静か」。名詞ですからうしろには「です」をつけて「静かです」と使います。

また、うしろに「な」「に」「で」をくっつけて使うことができます。「な」がくっつくときは後ろに来るのは名詞や時数詞、「に」がくっつくときは後ろに来るのは動詞、「で」がくっつくときは「形容詞」か「なにで名詞」と決まっています(添付ファイル参照)。

 「静か」+「な」→「静かな+部屋(名詞)」

 「静か」+「に」→「静かに+しましょう(動詞)」

 「静か」+「で」→「静かで+美しい(形容詞)」

 

実は「の」もOKです。「静かの森」などと後ろに名詞をつなげて使います。

 このように、「なにで名詞」は、どんなことばがあるのか、子どもと一緒に探して教室の壁に一覧表にして貼っておくとよいと思います。子どもがよく間違えるのは「きれい」。「きれいかった」と形容詞の活用をさせたりしますが、これは形容詞ではありません。「きれいな人」「きれいにする」「きれいできもちいい」となります。また、(添付ファイル2参照)。

 

  「かわいい」と「きれい」.jpgほかにも混同しやすいのは「かわいい」とか「美しい」。

これらは形容詞ですから、「かわいいでした」「美しいでした」ではなく、「かわいかった」とか「美しかったです」になります。

 「なにで名詞」ですから「きれいかった」ではなく、「きれい+でした」と、名詞のうしろにつける文末の「です」の活用をつけて使います。「です」の活用は、動詞の活用や形容詞の活用と同じように、教室に表にして掲示をしておくとわかりやすいでしょう。

 

  

以下、小1児童へのFAXによる日記指導の中から、形容詞となにで名詞に関わる部分を紹介します。(PDF資料。ルビは省略しています)

 

形容詞となにで名詞の指導(日記から).pdf