動詞形容詞等の指導
動詞は自動詞と他動詞という二つの種類があります。
自動詞は、そのものの動きについて言うときに使う動詞です。例えば、「あく、しまる、まわる」などです。これらは「~が+自動詞」のかたちで使います。助詞「~を」をとることは基本的にありませんが一部例外があります。

他動詞は、そのものを動かす動きについて使う動詞です。例えば、「あける、しめる、まわす」などです。これらは「~が~を+他動詞」のかたちで使います。必ず、それを動かす主体(主語・動作主)があります。
但し、「~が~を+自動詞」になる場合があります。例えば「太郎が 橋を わたる」「電車が トンネルを 出る」などです。
これは、助詞「を」の意味・用法のうちの「場所の『を』」で、「橋を わたる」は

「通過の『を』」、「トンネルを 出る」の「を」は「出発点の『を』」です。どうやって見分ければよいでしょうか?
*助詞「を」の指導法については、本HPの
TOP>日本語文法指導>助詞の指導をご覧ください。
〇自動詞と他動詞の見分け方~手話による区別の仕方
自動詞と他動詞を区別するには手話の文法を使います。自動詞のときは、①そのモノの

状態を表すCL表現(SASS・サス)をした後、②そのモノへの指さしをします。例えば「ドアが あく」の場合は、ドアが自然にあいていく様子をしたあと、ドアに指差しをします。
他動詞のときは、①そのモノを操作する様子を表すCL表現(Handle)と、②主語(動作主)に指差しをします。「ぼくが ドアを あける」なら、取っ手を持ってドアをあける仕草をしたあと、ぼく(私)を指さします。
*SASSとHandleのわかりやすい例は「車」の手話表現。親指と四指を向かい合わせて車のかたちを作り前に動かす「車」の手話がSASS、自分が車のハンドルを握って運転している様子で「車」を表現するのがHandleです。
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では、下のもうひとつのファイルで手話表現の練習をしてみましょう。①「きこえるときく」、②「こぼれるとこぼす」、③「あがるとあげる」です。①「音楽がきこえる」は、音楽がきこえてくる様子を身振り表現(CL表現)で表し、きこえてくる方向(音楽)を指さします。「音楽をきく」は音楽、聴いている、私(指さし)。ここでは自動詞と他動詞を区別する必要があるので必ず最後に指差しを入れます。
さて、少し前に戻って「太郎が 橋を わたる」「電車が トンネルを 出る」というのは「を」を使うのに自動詞と言いましたが、本当でしょうか? これも指さしを使ってやってみるとわかります。前者の例は、手話では「太郎、橋、渡る(太郎がわたっている様子)、(指さし・太郎)」になり、太郎に主語を示す指差しが入ります。後者では「電車、トンネル、出る(電車がトンネルを出た時の様子)、(指さし・電車)」で電車に主語を示す指差しが入ります。他動詞は何かを操作する対象が必要でしたがここでは操作する対象はありません。ですから「を」を使うけれども自動詞なのです。
〇ペアになる自動詞と他動詞

自動詞と他動詞の区別がわかったら、日本語の動詞のうちペアになっている自動詞・他動詞を探してみましょう。関連付けて覚えると覚えやすいものです。
右のファイルは「動詞・形容詞活用練習ノートCD」に入っているリストです。一度、子どもと一緒にこのようなペアになる動詞を探して一覧表に整理してみましょう。
また、右下のファイルのように絵が入っていればさらに意味がわかりやすいと思いま

す。その下は『絵でわかる動詞の学習』

(本会発行)に掲載されている問題です。こちらもぜひ使ってみてください。
『絵でわかる動詞の学習』はこのHP>TOP>
出版案内⑥日本語のワークから購入できます。
http://nanchosien.com/publish/cat58/post_23.html
〇自動詞・他動詞発見のルール
最後に問題です。正しいものには〇を間違っているものには×をつけてください。
①( )動詞の語尾が「~aru」(例:集まる、あがる、まざる)となる動詞は、全て自動詞である。
②( )動詞の語尾が「~reru」(例:かくれる、ぬれる、離れる、汚れる)となる動詞は、全て自動詞である。
③( )動詞の語尾が「~su」(例:うつす、出す、残す、冷ます)となる動詞は、全て他動詞である。
*答は全て〇です。実はこれが自動詞と他動詞を区別する共通のルールですので、ぜひ覚えておいてください。
受動文は、日本語ではごく自然に用いられ、私たちにとってはなじみ深い表現の方法です。幼児でも兄弟げんかで弟が「兄ちゃんにぶたれた~」などと泣いているのを見かけたりしますし、私たちも「雨に降られてびしょびしょだよ」などとしばしば使います。また、教科書の中でも受動文はほぼどの出版社の教科書にも小1から出ています。しかし、受動文の使い方はけっこう複雑です。大きく分けると直接受動文(受身)と間接受動文(受身)があり、前者が通常の受動文です。直接受身とは「~を」をとる文(例「兄が弟を叩いた」)と「~に」をとる文(例「母が私に言った」)とがあります。一方で先にも引用した「雨にふられた」という受動文は能動文にすると「雨がふった」で、「を」も「に」もとりません。自動詞だからです。直接受身は英語の受身にもありますが、自動詞が受身になるのは日本語特有のもので「間接受身」と言い、「迷惑」という意味が含まれます。教科書の中にも登場しますが、小1の教科書ではまだ出てきません。(例えば「スーホの白い馬」小2下・光村図書などに出現)以下、各教科書の初出箇所をみてみましょう。( )内に能動文も対比的に書いてみます。
①光村図書(1年上)「たぬきの糸車」⇒「わなになんかかかるんじゃないよ。たぬきじるにされてしまうで。」(⇔能動文「(だれかが)(おまえを)たぬきじるに してしまうで」)
②教育出版(1年上)「だれが、たべたのでしょう」⇒「まつぼっくりがおちています。まわりだけが、かじられたものもあります。」(⇔能動文(だれかが)まわりだけを かじったものもあります。)

④東京書籍(1年下)「いろいろなふね」⇒「いろいろなふねが、それぞれのやく目にあうように つくられています。」(⇔能動文「(だれかが) ふねを それぞれの役目に あうようにつくっています。」)
⑤学校図書(1年下)「めだかのぼうけん」⇒「田んぼの水は、たいようのひかりで、すぐにあたためられます。」(⇔能動文「たいようのひかりが 田んぼの水を すぐにあたためます。」)
これらの使い方をみると、いずれも能動文は「~を」をとる直接受動文で、それぞれどの文も主格(主語)について何かを述べたいときに受動文のかたちで使われているということがわかります。ただ、どの文も能動文にすると日本語としては不自然です。とくに④などは、主語を明示すると明らかにおかしくなってしまいますし、筆者としては「船とは一般的にそういうものだ」という意味で使っているので、それにそぐわない文になってしまします。日本語では行為・動作の対象となる語を主格にもってきて、主格について言いたいことを受動文であらわすのが自然なのです。
〇受動文をきこえない子はどう理解しているか?

右の資料は、ある聾学校の小1児童のJcoss(日本語理解テスト)の結果です。受動文の問題は4つあり、この4つ全部正解の時、「通過」と評価しますが、1年生12名のうち受動文の問題を通過(4問正解)した子どもは2名、あと1問できれば通過という子も含め

そして児童の誤り方の特徴をみると、半分近くの児童が受動文を能動文(平叙文)として理解してしまっていることがわかります。というか、文とはふつう、この問題文で例えれば「馬が 女の子を 追いかけています」という言い方が当たり前で、この文の表すところを「女の子」の立場から表現できる(視点を転換する)ということがまだよくわかっていないということです。
では、子どもたちはどのようにこの文を読んでいるのでしょうか? 実はこれらの児童は、助詞もまだよく理解できていません。また、名詞「馬」「女の子」は理解し、動詞「追いかける」の基本形もだいたい理解しているようですが、受身の言い方はわかっていません。ですから、わかる単語「馬」「女の子」「追いかける」を手掛かりにして絵から推測して読んでいます。「馬、女の子、追いかける」と順に読めば(語順方略)、子どもの頭の中に浮かんでくるのはやはり①だろうと思います。
また、もう一つ難しいことがあります。それは上にも少し述べましたが、受動文(授受文、使役文もそうですが)は、同じことを立場を変えて言っているという「他者の視点」がもてないと理解ができない文だということです。「誰のことを言おうとしているのか」という関係の変化・視点の転換ができないと理解が難しいのです(これはきこえない子が、なかなか「自己中心的な視点」から脱してなかなか他者の立場からの見方を理解できないこととも関係していると思われます)。
〇受動文の指導はまず直接受動文から

*動詞の活用については以下を参照
*本ホームページTOP>日本語文法指導>文法指導の順序>動詞・形容詞等の指導
nanchosien.com/09/09-1-1/09-2/

*『絵でわかる動詞の学習』1,700円,
難聴児支援教材研究会発行
本ホームページTOP>出版案内⑥>日本語のワーク>「絵でわかる動詞の学習」
nanchosien.com/publish/cat58/post_23.html


ふきのとうと言えば私が真っ先に思い出すのは春の山菜の天ぷらとしてよく食べたことです。独特の香りと少し苦みがあるところがいいです。

この「ふきのとう」は、長い冬が終わり、待ちわびていた春を迎える喜びを、ふきのとう、竹の葉っぱ、雪、お日様、春風たちの会話をとおしてユーモラスに描いた作品で、リズム感もあり、とても素晴らしい作

〇動詞の過去形(タ形)と非過去形(ル形)の使い方

第一場面 よが あけました。・・・
第二場面 どこかで、小さなこえが しまし

第三場面 「ごめんね。と、雪が 言いました。・・・
第四場面 「すまない。」と、竹やぶが 言いました。・・・
第五場面 空の上で、お日さまが わらいました。・・・

これらの場面を読みながら頭の中に映像を浮かべると、撮影しているカメラが新しい場面ごとに切り替わるような印象を受けます。例えば、第一場面の「夜が明けました。」 朝日が差し込んでくる夜明けの竹やぶという導入場面でタ形が使われています。そして竹の葉同士がささやき合っている場面にカメラの焦点が向き、竹の葉同士の会話(情景描写)がル形で表現されています。
と、そこに突然、どこからか小さな声がして、カメラは今度はその声の主であるふきのとうの方に向きます。その場面の転換にタ形が使われています。そしてふきのとうの情景描写がル形で続きます。
次の第三場面は、雪が登場します。カメラはその雪のほうに視点を向け(タ形)、雪の情景描写(ル形)が続きます。このように、誰かが声を出すたびに、その声を探してカメラは新しい登場人物の方に視点を向け、その新しい登場人物の様子を描きますが、その場面の転換にタ形が使われ、それに続く情景描写でル形が使われるというのが特徴です。
このように、『ふきのとう』という作品は、①タ形動詞が場面の転換をあらわすという文法的性質と、②ル形動詞がその場面の中での情景を描写するのに適しているという、タ形とル形のもつ性質を巧みに使った作品ということができます。
〇変化のスピードアップを表現する巧みさ
今、タ形動詞は場面転換を表し、ル形動詞は情景描写を表すと言いましたが、後半の第五場面と第六場面ではタ形動詞が2回使われています。つまり場面転換が速くなってきていることがわかります。場面転換が速くなるということはだんだんと場面が盛り上がってきたということです。そして、第七場面では、「竹やぶが、ゆれる ゆれる、おどる。雪が、とける とける、水になる。」と、動詞を繰り返すことでさらに勢いが増していることが強調されています。これは「竹やぶが、 ゆれる、おどる。雪が、とける、水になる。」と一度だけの場合と比べてみるとその違いがわかります。
また、「ふきのとうが、ふんばる、せがのびる。ふかれて、ゆれて、とけて、ふんばって、ーーもっこり。」
前半の文は「ふんばる、せがのびる」ですから動作に切れ目があり、後半の文は動詞のテ形をつないでいくことで、一連のつながった動きが切れ目なく素早く変化していくことが伝わる文になっています。このあたりの動詞の活用の使い方も見事です。
〇場面の転換にタ形、情景描写にル形、動作の連続にテ形が使われているそのほかの作品

(第三場面) おじいさんは、おばあさんをよんできました。(タ形)
かぶをおじいさんがひっぱって、おじいさんをおばあさんがひっぱって、(テ形)
「うんとこしょ、どっこいしょ。」それでも、かぶはぬけません。(ル形)
(第四場面) おばあさんは、まごをよんできました。(タ形)
かぶをおじいさんがひっぱって、おじいさんをおばあさんがひっぱって、おばあさんをまごがひっぱって、(テ形)
「うんとこしょ、どっこいしょ。」やっぱり、かぶはぬけません。(ル形)

このような作品を味わうには、低学年児童とくに文法的意味を自然習得の難しいきこえない子にとってははり動作化・劇化をすることで、その意味の違いを体感したり視覚化して指導することでしょう。また、動詞活用の違いを自立活動などの時間なども使って取り

本HP・TOPページ>出版案内①斡旋図書>出版案内⑥日本語のワークを参照http://nanchosien.com/publish/cat58/

【作者コメント】
「小学校二年生の教科書の最初に『ふきのとう』という話がのっている。かつて箱根の麓の山村にすんでいたころ、実際に見かけた小さなフキノトウのことを書いたものだ。当時私は、農家の空き地を借りて住んでいた。冬から春に移り変わろうかというある日、季節はずれのドカ雪が降った。かなり積もったが、春も間近なので消えるのも早い。しかし竹やぶの中は日陰なので、ところどころまだらに、雪が溶け残り、夜の冷気と日中に暖気で凍ったり、わずかに溶けたりを繰り返し、ザラメをまぶした煎餅のようになっていた。
ある朝、家を出る用があって竹やぶの小道を通り過ぎた。通り過ぎながら、煎餅のようになった残雪のはしっこが持ち上がっているような気がしたので、なにげなくかがみ込んで雪の下をのぞきこんだ。(おや、こんなところにフキノトウが.........) 雪が、そりかえって持ち上がっているのは、この小さなフキノトウのせいではないのだが、(まるで外に出たくてヨイショ、ヨイショと雪を持ち上げているみたいな)と微笑ましかった。そんな記憶があったので、春の話を書こうとしたとき(そうだ、あのフキノトウをモデルにしよう)と思ったのだ。・・・(略)」(『日本児童文学』,2002)
小1国語教科書の説明文での動詞の使い方をみると、最初に使われる動詞のかたちとして、基本形の「~ます」も使われますが、「~ています」という、表現が多いことに気づかされます。

上記の単元の冒頭の文を以下のようにしてみるとどう印象が変わるでしょうか?
「いろいろな じどう車が、 どうろを はしります。 それぞれのじどう車は、どんなしごとを しますか? そのために、どんなつくりに なりますか?」
自動車について一般的なことを言っているだけで、挿絵に描かれている自動車のことを言っているのか、どうもよくわからない文になります。
〇動詞のアスペクト
日本語では、動詞の過去は「タ形(~ました)」で表します。一方、未来や現在はどのように表すのでしょう? 例えば「犬がいる」「本がある」「遠くが見える」「音が聞こえる」といった状態を表す「状態動詞」は、行為の全体でも部分でも変わりはないのでそのまま「ル形(~ます)」で現在を表すことができます。また、未来も表すことができます(「見える・聞こえる」は「見えている。聞こえている」も現在形)。
その一方で、「ごはんを食べる」「太郎が歩く」「車が走る」といった物や人の動きを表す「動作動詞」は、その動作・行為の全体を表すと同時に、未来をも表しています。
例えば「ごはんを 食べます」という文では、ご飯を食べるという行為全体を表す場合もありますし、これからごはんを食べるという未来を表す場合もあります。では、過去の表し方はどうでしょうか? 「ごはんを 食べました」ですね。また、これはその行為が完了したすなわち今食べ終わったというときにも使います。
では、動作動詞の「現在」を表すかたちはどんなかたちでしょうか? 今ちょうど食べている最中が現在ですから「ごはんを 食べています」が現在になります。現在というのは、「今」であり、まさに、ある動きが「進行し継続している」状態です。

そこで、「車が走る」を例に考えてみましょう。添付ファイルのように、「車が走る」という一連の動きを時間の経過とともにとらえると以下の文のようになります(これを動詞のアスペクトと言います)
「車が走る」(未来)⇒「車が 走っています(現在)⇒「車が走りました」(完了)
こうした一連の動き・動作の流れに位置付けて国語教科書の文をもう一度みてみると、なぜ、「~ています」という現在形が使われているかがよくわかります。教科書の挿絵をよくみると、道路に架かった歩道橋のようなところから、カメラを据えて道路の車の動きを観察しているような印象を受けます。小1の児童は、認知発達的にもまだ自分の視点から物事を考えることが多く、自分以外の他者の視点からものごとを考えることは苦手ですから、このような、まるで自分が「今」まさに歩道橋から道路の車の流れを見ているかのような、いわば視点を固定して定点カメラで見ている感じがわかりやすいのです。
〇「~ていく」「~てくる」の登場
このように、小1国語教科書の説明文では、まず「ル形(~ます)」と「~ている」が出現しますが、その次に「~ていく」「~てくる」といった移動や時間経過を伴った表現が登場します。光村図書では、「どうぶつの赤ちゃん」がそれです。この単元では、例えば、「よそへいくときは、おかあさんに 口にくわえて はこんでもらうのです。」という文、「どのようにして、大きくなっていくのでしょう。」という文があります。前者は空間的な移動ですが、後者の「大きくなっていく」は、時間的な推移が含まれた表現で、現在から未来(「~ていく」)に向けた視点での言い方です(過去から現在に向けた視点が「~てくる」)。「どのようにして、大きくなるのでしょう。」という言い方よりも「大きくなっていくのでしょう。」のほうが、時間が徐々に流れていく感じがします。
〇きこえない子に、「~ている」「~ていく・~てくる」をどう教えるか?

幼児期での動詞語彙の増やし方や活用の学び方について、前回は①会話の中で、②絵日記の中で、③ことば絵じてんの中で、という3つの方法について書きましたが、今回は、④ことばあそびと⑤ワークブックを通して動詞の語彙や活用を身につける方法について書きたいと思います。
〇動詞のゲームができるようになる時期は?
聴児はだいたい3歳を過ぎると、「大きい・小さい、長い・短い、多い・少ない」といった形容詞や「あそぶ・作る・座る・歩く」といった動詞がわかるようになります。また、紅白のゲームでの勝ち負けや鬼ごっこのルールもわかるようになり、3歳代の半ばになるとじゃんけんのルールもわかるようになってきます。この頃になると、簡単なことばあそびのルールもわかるようになってくるので、絵カードなどを使った比較的単純なゲームが楽しめます。
〇動詞を使ったゲーム
①「動詞絵あわせ」(入門コース)
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②「同じ動詞をさがそう」(入門コース)
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③「一日の生活すごろく」(入門コース)

④「動詞王様ゲーム」(入門コース)

⑤「動詞かるた」(入門コース)
手話と日本語(文字)とのマッチングをねらいにしたかるた遊び。読み札の動詞を手話で提示し、その手話に合う動詞絵カードをさがします。
⑥「動詞ビンゴ」(初級コース)

応用編として否定形の動詞だけ、自動詞だけなどでやることもできます。
⑦「食べますか?食べませんか?」(初級コース)

⑧「反対語ゲーム」(初級コース)
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⑨「日本語を手話に換えよう」(初級コース)
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おまけのゲームとして、自分がとったカードでことば(単語)を作ります。いくつできるかやってみてください。
⑩「動詞を使って文をつくろう」(中級コース)
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〇動詞のワークを使おう
ある程度、動詞の語彙が身についてきたらワークブックを使って頭の中のことばを整理します。カテゴリーや文法ルールにそって整理することで、さらに新しいことがらを学んだり、抽象的なことがらの学習がしやすくなります。
①『ことばのネットワークづくり』(別冊解説付,年中~)


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②『絵でわかる動詞の学習』(別冊解説付,年長~)


〇動詞、どれだけ知っていますか?
前回も書いたように、動詞は文のかなめです。動詞の語彙を手話でいくらたくさんもっていても日本語と結びついていなければ教科書は理解できません。小1の教科書が自分で読んでわかるためには、日本語で動詞の語彙(基本形)が最低200語程度は必要です。では、お子さんの動詞のかずは? もし、お子さんの動詞のおおよその習得語彙数をお知りになりたい方は、簡易版『動詞語彙チェック25』(A4版5頁,Word)をお送りしますので、本会事務局 nanchosien@yahoo.co.jp あてにメールをください。返信メールで上記チェックリストをお送りしますので、それをお子さんにやっていただき、答が記入された用紙を添付ファイルで送っていただければ採点してお返しします(無料)。
「聴力100dBの我が子は軽中度難聴や人工内耳のお子さんに比べて動詞の語彙が少ないように思います。どうすれば動詞を増やすことができるでしょうか?」
ある保護者の方からこのような質問をいただきました。確かに、高度・重度難聴の幼児の動詞の獲得語彙数は少ない傾向がみられます。Jcoss(日本語理解テスト)でも、一般的に軽中度難聴や人工内耳の子は「動詞」の項目は年少・年中あたりで「通過」(問題として提示される4つの動詞がいずれもわかる)しますが、高度・重度難聴の子は年長くらいになる子が多いです。後者の子たちは日常会話の中で手話を用いる割合が高い(聴覚からの入力に限界がある)子たちですから、意図的・意識的にかつ視覚的に日本語を使う機会を増やさないとなかなか動詞は増えません。そこで、今回は、日常会話の中での工夫、絵日記やことば絵じてんづくりの中での工夫について、次回は動詞を使ったことばあそびの方法について書きたいと思います。
〇日本語の中で最重要品詞は動詞と助詞

小学校1年の国語教科書(光村図書)には250語位の動詞が出てきますが、そのうちの最低8~9割(200~220)語は知っていないと自分の力で読んで文を理解することは難しいと思います。
〇動詞は大事だけれど学習しにくい
きこえない幼児にことばを教えるとき、机やいす、テレビ、冷蔵庫などそのモノに「つ

さらに面倒なのは、動詞は活用して一つの動詞が多様に変化することです。同じことばが数十通りの変わり方をします(右表参照)。「食べた」も「食べました」も同じ意味を表すことばなのに、見た目の形が違うと

そのような厄介さがあるので、動詞はなかなか幼児期に語彙数が増えませんし、使い方も定着しにくいです。右図の成人の聴覚障害の人が書いた文をみると、動詞と助詞に誤りが集中していることがわかります。そして動詞語彙そのものは間違っていないのに、前文との関係で適切な使い方になっていないことがわかります。適切に運用するためには一定の習熟が必要なのです(きこえる人は会話の中で何十、何百回と繰り返して習熟している)。しかし、動詞と助詞が適切に使えるようになれば、文は正しく書けるようになることもこれらの事例の誤りの特徴が助詞と動詞に集中していることからも理解できます。
〇幼児期の課題は、まず動詞の習得、次に基本的な活用を知る
さて、動詞はそのどれもが活用しますからその変化の規則を知ることも大事ですが、ともかく動詞をたくさん習得することがまず必要です。「おやこ手話じてん」は、実は動詞を重視して作った辞典で、この本の中には動詞が264語掲載されています。これらはいずれも日本語でも手話でも表せる動詞で、これだけのかずの動詞が身についていれば日常生活の中では困ることはまずありません。ですから動詞の語彙数をみるときの一つの目安としてこの辞典に掲載されている動詞の語彙を使うことができます。(獲得語彙数の調べ方は、TOP>乳幼児・学童期>子どもが獲得している語彙数は? 参照)
①会話の中で動詞を指文字で綴る(チェイニング法)
では、手話中心に会話している場合、どうやって手話の動詞を日本語の動詞と結び付ければよいのでしょうか? これには口話併用手話を用いながら、動詞の部分を再度、指文字で強調する"チェイニング法"を使います。例えば以下のようにします。
「太郎は、明日、引っ越すらしいよ」→「たろう(指文字)、は(指文字「ハ」を使うか親指を立てて太郎を示し、その親指を指さす)、明日(手話)、引っ越す(手話をしてさらに指文字で「ヒッコス」をかぶせるように表現)、らしい(手話)、よ(口形または指文字「ヨ」)」
*「引っ越す」という動詞を手話でやって、さらにおっかぶせるように指文字で「ヒッコス」と綴る。さらにもう一度「引っ越す」の手話をやれば"サンドイッチ法"。引っ越すの意味がわからない時は、紙に絵を描いて説明し、「引っ越す・引っ越し」の文字も加えるとよいでしょう。

この幼児は年中までは手話オンリーでしたが、年中の頃から日本語の習得を意識し始め、まずは少しずつ手話での会話の中に指文字を取り入れていきました。指文字が増えて日本語と手話が結びついてきたら、会話の中での難しい言葉は「指文字⇒手話⇒指文字」の順に提示していきました。また、このころから「二語文暗記」も始めました。毎日、一


②絵日記の中で動詞を意識的に扱う


また、右下の絵日記のように、動詞の横にその動詞の元の形(基本形)を書く方法も有効です。こうすることでその動詞は全く別のことばではなく、基本形が変化したものであることを教えることができます。また、一つの動詞を取り出して、すでに終わったかたち(過去・完了形)や否定のかたちであることを教えることも有効です。
さらに、受身形や可能形を使ってその意味


③ことば絵じてんを動詞でつくる
ことば絵じてんを動詞で作ることもできます。例えば、同音異義語で作る。日本語には

きこえない子が身につける語彙数は、きこえる子と較べると圧倒的に少ない。とりわけ動詞の獲得数が少ないということがよく言われます。
JCOSS(ジェイコス)と言われる「日本語理解テスト」においても確かに名詞(事物の名前)、形容詞、動詞の中では、動詞の得点が低くなる傾向があります。
しかし、動詞はいわば「文の要」で、全ての文節が文の最後にある動詞にかかる構造になっている(*文末には名詞や形容詞も来ますが動詞が来る場合がほとんどです)のが日本語ですから、動詞がわからないと文が理解できないと言っても過言ではありません。ですから、動詞を身につけることを最重点課題として意識する必要があります。
〇なぜ、動詞が身につかないか?
では、なぜ、動詞を身につけるのは難しいのでしょうか? それは、ひとことで言えば、動詞は事物名詞のようにはっきりと見えて、区別することができることばとは違うということがあります。例えば、「スマホとって」と言えば、テーブルの上に置いてあるスマホをテーブルと一緒に持とうとする人はいないでしょう。誰でもテーブルとスマホはちゃんと区別がついているからです。
しかし、動詞の「歩く」と「走る」とでは、その区別は明確ではありません。連続した動きのどこからそう呼ぶのか、子どもにはわかりません。そのようなわかりにくさがあるために、子どもは何度もそうした場面を経験するなかで、だんだんと「このゆっくりした動きは『歩く』、この早い動きは『走る』と区別できるようになるわけです。
もうひとつ難しいのは、動詞は活用することです。動詞には、いろいろな意味が加わってかたちが変わります。例えば、「昨日、太郎は、一日、勉強させられていたらしいね」という文があったとします。この文の「勉強させられていたらしいね」という動詞の基本のかたちは、「(勉強)する」ですが、この基本のかたちがいろいろな意味が加わることで変わっていくわけです。
①態(voice) 勉強「させられ」の部分です。
これは使役「させる」と受身「られる」がくっついて、使役受身というかたちになって「させられ」となった部分です。使役によって「誰かがやらせている」という意味が加わり、受身によって「太郎がやらされている」という意味が加わります。この二つから、いやいややらされているということがわかります。
②相(aspect) 勉強させられ「てい(る)」の部分です。
これは、「~ている」で継続の意味が加わります。ただの「させられる」ではなく、「させられている」になることで、いやいやの勉強がある程度長い時間継続していることがわかります。文では「一日」となっていますから、朝から晩までやらされていたのだということがわかります。
③時制(tens) 勉強させられてい「た」の部分です。
「る」ではなく「た」になることで、過去のことだという意味が加わります。文では、昨日のことですね。
④意志・意向(mood) 勉強させられていた「らしいね」の部分です。
ここには話している人の気持、伝聞、推測などが入っています。太郎が勉強させられていたのが事実かどうかはわからないけど、そう私は聞いたよ、あなたは知っている?といった意味がここに入っていることがわかります。
このように動詞は複雑に変化するので、かなり使い慣れないとルールを身につけることが難しいということがあります。きこえる人は、生まれてこのかた何度も何度もこういう言い回しを耳にし、自分でも使う中で、ほとんど無意識にそのルールを習得していきますが、きこえない子には難しいことです。聴力が重くなればなるほど。
そこで、ある程度、きこえない子は、文法を意図的に学習することで対応する必要があります。その学習は聾学校では小学1年生から積み重ねていきます。「動詞の活用」の学習、「使役文」の学習、「受動文」の学習、「~ている(て形)」の学習、「現在形・過去形」の学習などの結果として、この文の動詞部分の正しい理解・表現ができるようになります。
〇動詞の理解度を調べてみよう!
そこでまず、子どもが、動詞の語彙や文法をどのくらい理解できているか調べてみるとよいと思います。もし、動詞が理解できていないのであれば、それなりの学習をする必要があります。
このホームページの「動詞のテスト」のところに、『動詞テスト』(PDF)があります。
動詞の反対語、常体と敬体、自動詞・他動詞、タ形・テ形、授受(やりもらい)文、受動文、使役文、可能表現、尊敬表現、複合動詞などについて調べることができるできますのでぜひやってみていただきたいと思います(ここからもダウンロードできますが、学年別平均点など知りたい方は、本HP>発達の診断と評価>動詞テストをご覧ください)。
〇動詞の学習をしよう!
この『動詞テスト』で80点以下なら、意図的に動詞の指導をする必要があります。といってもどういう内容でどういう順序でやるのかというと、その指導内容も方法も自分で考えなければならないのが我が国の聴覚障害教育の現状です。そこで『絵でわかる動詞の学習』と『はじめての動詞の活用CD』を使っていただけるとよいかもしれません。このワークブックには解説書もついていますので、解説をみながらやる
こともできます。内容も目次のように、語彙から文法
まで一通り学習できるようになっています。(右上は「語彙編」、右下は「活用編、受動文」の例)
また、CDには、パワーポイント教材のほかに、ワークと同様の別問題が80数枚プリントアウトできるようになっています。さらにイラストを使って別のプリント問題を作成することができます。
(本ホームページ>出版案内(難聴支援)または、論文・資料・教材>絵でわかる動詞の学習を参照して下さい。)『絵でわかる動詞の学習』+『はじめての動詞の活用』セット2,200円

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「自動詞と他動詞の違いを、手話を使って理解することはできてきましたが、日本語の自動詞と他動詞はそれぞれ覚えていく以外に方法はないのでしょうか?」という質問を、聾学校の先生からいただきました。
動詞には、自動詞と他動詞が沢山あり、多くは対になっています(例「集まるー集める」など)。そこになんらかのルールがあれば覚えやすいのですが、そのルールとはどういうものなのでしょうか?
日本語文法の本を開いてみると、以下の3つの基本的なルールがあると書かれています。
1.動詞の語尾が「~aru」となる語は全て自動詞である。
2.動詞の語尾が「~reru」となる語は全て自動詞である。
3.動詞の語尾が「~su」となる語は、全て他動詞である。
この3つのルールをもとにして分類していくことになりますが、けっこう複雑です。全ての動詞をあらかじめ分類することは不可能ですから、区分を表にしておき、例をいくつか書き出しておいて、あとはその都度、出てきた動詞をその表に入れて増やしていくのが現実的なような気がします。ここでは、分類表を作成するときに、その区分の仕方をパターンにしてみたいと思います。
1.「~aru」(自動詞)
この自動詞が他動詞となる場合は「~eru」となる語と「~u」となる語に分かれます。
(1)「~aru」-「~eru」型
「集まるー集める、上がるー上げる、混ざるー混ぜる、閉まるー閉める」など。
(2) 「~aru」-「~u」型
「刺さるー刺す、挟まるー挟む、ふさがるーふさぐ」など。
2.「~reru」(自動詞)
この自動詞が他動詞となる場合は、「~su」となる語と「~ru」となる語と「~u」となる語の3つに分かれます。
(1)「~reru」―「~su」型
「隠れるー隠す、濡れるー濡らす、離れるー離す、汚れるー汚す」など。
(2) 「~reru」―「~ru」型
「割れるー割る、折れるー折る、切れるー切る」など。
【例外】入れる(他)⇒入る(自)
(3) 「~reru」―「~u」型
「生まれるー生む」
3.「~su」(他動詞)
この語と対となる自動詞は、「~ru」「~eru」「~u」「~iru」などの語に分かれます。
(1)「~ru」-「~su」型
「うつるーうつす、帰るー帰す、出るー出す、残るー残す、回るー回す」など。
(2)「~eru」-「~asu」 型
「冷めるー冷ます、逃げるー逃がす、冷えるー冷やす、増えるー増やす」など。
(3)「~u」-「~asu」型
「動くー動かす、乾くー乾かす、飛ぶー飛ばす、泣くー泣かす」など。
(4)「~iru」―「~osu」型
「起きるー起こす、落ちるー落とす、降りるー降ろす」など。
4.その他
(1)「~u」―「~eru」型
「開くー開ける、育つー育てる、建つー建てる、つくーつける」など。
(2)「~eru」―「~u」型
「聞こえるー聞く、焼けるー焼く、消えるー消す」など。
以上になりますが、基本の3つのルールをまずしっかり理解しておくことが大事だと思います。
また、手話での自動詞・他動詞の表現方法は、自動詞は、そのものの状態を表現する時に使うSASSという手話文法と指さしを使います。右の絵の例で「ドアが開く」の場合は、ドアが開いていく様子をSASSであらわし、そのドアに指差しを加えます。
他動詞の場合は、モノを扱う仕草であるHandleという文法と指差しを加えて使います。「ぼくがドアを開ける」であれば、ドアを開ける仕草と自分への指さしを入れます。
では、「積み荷が落ちる」と「積み荷を落とす」では、手話表現はどうなるでしょうか? これはぜひ考えてみてください。
動詞の活用をお子さんに教えておられる方から、以下のような質問を受けましたので、この問題について考えてみたいと思います。
年長児に動詞の活用をやっています。今は、子どもに動詞の活用には3つのグループがあ
ることを伝えて、『どのグループでしょうクイズ』をやっています。ルールを理解したら、年長児でもできます。「ます」系をつくってわける方法を使っています。
そこでさっそく質問なのですが、1グループ動詞(注:①基本形が「~る」以外の全ての動詞「行く、遊ぶ、着く・」と②「~る」で終わる動詞のうち「い段」と「え段」+「る」以外の動詞「作る、上がる、登る・・」⇒上図参照)の意向形について分からないところがあります。意向形は「お」段になるという決まり(上図参照・意向形=「あるこう」)がありますが例外もあるのでしょうか。今日、さっそくとりかかったのですが「あく(空く・開く)」の意向形だと 「あこう」となってしまいますが、文法的には合っているのでしょうか。(下図参照)
〇意向形のない動詞
確かに、動詞の中には、上記のような「意向形」や「受身形」の活用形が作れない動詞があります。
まず「意向形」ですが、基本的には、「無意志動詞」といわれる動詞では「意向形」や「可能形」は作れません。 無意志動詞というのは、「ある(×あろう)、降る(×降ろう)、むかつく(×むかつこう)、悔やむ(×悔やもう)、困る(×困ろう)、飽きる(×飽きろう)」など、人の意志によって動かせない動詞のことを言います。「あく(空く・開く)」も人の意志でなんとかできることではないので、意向形を作ることができません。(×「あこう」)また、可能形も作れません(×「あける」*注・他動詞の「あける(開ける)」は別の動詞です)。
〇受身形のない動詞
また、受身形ですが、直接受動文では「~を」「~に」を取る他動詞しか受身を作れません。例をあげると、「父が弟を叱る」(能動文)これは、目的語の「弟」が主語になって、「弟が父に叱られる」(受動文)となります。また「先生が子どもに声をかける」では、「子どもが先生に声をかけられる」となります。
しかし、自動詞も実は受身にすることができます。また、「~と」を取る動詞も受身にすることができます。このような「間接受動文」では、主語にとって迷惑という意味で使われることが多いです。
「弟が騒いだ(自動詞)」→「(私は=おもてに出てこない隠れた主語) 弟に騒がれた」(迷惑)
「太郎が 花子と 結婚した」→「(私は=隠れた主語)太郎に 花子と 結婚された」(残念)
しかし、自然とそうなるという意味をもつ自発を表す動詞(あく→×あかれる、見える、きこえる、売れる)や「ある→×あられる」「要る→×要られる」、また、すでに受身的意味のある「教わる」「見つかる」などは受身が作れません。
その一方で能動形をもたない動詞もあります。例えば「うなされる」「とらわれる」などは、はじめから「受身」の意味があり、「うなす」「とらわる」といった能動形の動詞はありません。
きこえる人は文法を自然獲得していますから、複雑なルールを教わらなくともわかりますが、きこえない子はなかなかそうはいきません。といって、全ての動詞をあらかじめ取り出して分類するのは実際には不可能なので、その都度、出会った動詞について自分で辞典を引いて、その活用形があるのかどうか確かめるしかありません。辞典で調べるとしたら以下の辞典です。日本ではこれだけのようです。
小泉保編著「日本語基本動詞用法辞典」大修館書店、5184円
きこえない子どもたちは、理由を述べるときに、よく「この花は、きれいから好きです」とか「この花は、かわいいだから好きです」といった間違いをします。両方共、最後が「~い」なので、理由を述べる時に使う「から」の使い方が、どっちがどっちだったかわからなくなってしまうのです。
前者「きれい」は、なにで名詞(国文法では形容動詞)です。なにで名詞は、名詞と同じように後ろに助動詞「です(だ)」の活用をつけて用いることができます(きれいだ、きれいだった、きれいでない等)。ですから、「きれい+だ」に、助詞「から」がくっついて「きれい+だ+から」が「から」の使い方として正しいです。
「この花は、きれいだから 好きです。」
因みに形容詞とよく間違う「きらい」「とくい」などもなにで名詞ですから「きらいだ+から」「とくいだ+から」になります。
(右図は保護者が作った「なにで名詞一覧表」です)
また、名詞もなにで名詞と同じようになります。「信号が赤だ+から、止まって下さい。」
「明日は休みです+から、遊びに行きましょう。」など。
☆形容詞+「から」
それに対して、後者「かわいい」は形容詞です。形容詞にはそのまま「から」をつけて使います。ですから、「かわいい+から 好き」が正しいです。「やさしい+から」「大きい+から」なども同じです。
「この花は、かわいいから 好きです。」
ついでに述べておくと、動詞も形容詞とくっつき方は同じです。
「いま、食べるから ちょっと待ってて。」など。
つまり、「から」は活用する語にくっついて使うことばなので、活用しない名詞やなにで名詞では、「だ、です」などの助動詞をくっつけて、その後ろにつなげて使います。また、活用する形容詞や動詞には、そのままその後ろにくっつけて使うということです。
〇接続詞「だから」のくっつき方
☆なにで名詞につく「だから」
「だから」はどうでしょうか? 「だから」は接続詞なので、その前に文が一つあるのが特徴です。前の文の内容(原因)について、「だから~だ」と、話し手の判断や意志などを述べるときに使います。
では、なにで名詞につくと、「だから」はどうなるのでしょうか?
「この花は、きれいだ。だから、好きだ。」
「この花は、きれい。だから、好きです。」などとなります。
形容詞では、どうでしょうか?
「この花は、かわいい。だから、好き。」
「この花は、かわいいです。だから、好きです。」などとなります。
名詞につく場合はどうでしょう?
「信号が赤です。だから、止まって下さい。」
「信号が赤。だから、止まってね。」(*「信号が赤だから・・」と紛らわしいですが、前に句点(〇)があるかどうかが違います)
前の文が動詞の場合もありますね。
「いま、食べている。だから、ちょっと待ってて」など。
添付ファイル(上図)は、「から」と「だから」のつながり方を図にしたものです。下の
ファイルは、ある保護者が作った形容詞の活用表となにで名詞の活用表です。違いがわかるように工夫されています。
これらの図表をみながら、「から」「だから」がどうつながるか、例文の( )に「から」か「だから」を入れてみてください。
「勉強が いやだ( )やめたい。」
「勉強が いやだ。( )やめたい。」
「勉強が 難しい。( )やめたい。」
「勉強が 難しい( )やめたい。」
「顔が 真っ青( ) 休もう。」
「勉強につかれた( )休みたい。」
「勉強につかれた。( )休みたい。」